2017年2月20日月曜日

マドゥーロ・ベネズエラ大統領がトランプに「目を開け」と忠告

 ベネスエラのニコラース・マドゥ-ロ大統領は2月19日、定例のテレビ番組を通じ、ドナルド・トランプ米大統領に対し、「目を開き、ブッシュ、オバーマ両政権が失敗したベネスエラ政権転覆政策に取り込まれないように」と忠告した。

 また、「あなた(トランプ)を反ベネスエラ政策に巻き込むため、巨額のロビー工作費が使われてい」と指摘。ベネスエラの保守・右翼野党連合MUD幹部、MUDが圧倒的多数派の国会の議長、これと結びつく在米右翼ロビーストらが動いていると述べた。

 マドゥーロ大統領はその上で、トランプに「関係正常化のため協働しよう」と呼びかけた。両国はチャベス前政権期から相互に大使を置いておらず、臨時代理大使級外交が続いている。

 ベネスエラ大統領の今回の発言は、米政府がタレク・エルアイサミVEN執権副大統領を「麻薬取引首領」名簿に加え、同氏の在米資産凍結などの措置を講じたことや、刑事囚として過去3年間服役中のベネスエラの極右政治家らの釈放を求めるという内政干渉に出たのに対する回答としてだ。

 マドゥーロは、この定例テレビ番組でエルアイサミ副大統領を横に座らせ、「彼が内相だった時、麻薬業者102人を逮捕し、うち21人の身柄を米国に引き渡した」と述べ、功績を讃えた。

 大統領はさらに、エルアイサミに対し、「自身と家族の名誉を守るため、誹謗者をベネスエラと、米国を含む外国の法廷で早急に訴えるべきだ」と伝え、提訴を許可した。

 一方、著名なジャーナリスト、ホセ=ビセンテ・ランヘール(元副大統領)も自身の19日の定例テレビ報道番組で、エルアイサミ攻撃に触れ、一連のベネスエラ体制を貶めるための策謀の一環、と批判した。

▼ラ米短信   ◎エクアドール大統領選挙の結果判明遅れる

 2月19日実施されたエクアドール(赤道国)大統領選挙は、JST20日夜現在、政権党「パイース同盟」候補レニーン・モレーノが39%、2位の銀行家ギジェルモ・ラッソが29%。過半数得票者がいない場合、1位得票者が40%を超え、2位に10ポイント差をつければ当選する。モレーノがこの条件を満たしているかどうかが判明していない。

 この条件を満たさない場合、モレーノとラッソは4月2日の決選投票に臨むこことになる。モレーノはコレア現政権で副大統領を務めたことがあり、穏健な改革路線。ラッソはこのこの国の伝統的な富裕層で、政治的には右翼で、新自由主義経済路線復活を目指している。
 
  

2017年2月19日日曜日

 ガイアナ開催のカリコム首脳会議が「単一市場・経済」設立で合意。ハバナで3月、キューバと関税自由化決定へ

 カリブ共同体(カリコム)は2月16~17両日、ガイアナの首都ジョージタウンで第28回首脳会議を開催。デイヴィド・グランジャー同国大統領を議長に諸問題を討議し、「カリコム単一市場・経済」(CSME)の早期設立で合意した。

 今会議には、2月7日就任したばかりのアイチ(ハイチ)のジョヴネル・モイーズ大統領が初出席、外交デビューした。首脳は他に6カ国首相が出席、あとは外相らが出席した。

 グランジャー議長は、「加盟15カ国・地域の総面積は240万km2だが、相互に隔たっていて交通が不便であり、天変地異が頻繁に起き、インフラ整備もままならない。米英をはじめとする対外関係も堅固ではない」と状況を総括。観光立国だけでは経済が立ち行かないことや、カリブ地域の団結強化の必要性を強調した。

 ハバナで3月、カリコム・クーバ関税協定をめぐる外相会議が開かれ、クーバがカリコム産品349品目、カリコムが玖86品目の関税をそれぞれ自由化することも明らかにされた。

 グレナダのケイス・ミチェル首相が7月から次期議長になることも決まった。

▼ラ米短信  ◎米政府がベネスエラに内政干渉強化

 米国務省は2月18日、ベネスエラ政府に対し、野党極右指導者レオポルド・ロペス受刑囚の釈放を求めた。共和党右翼でフロリダ州選出の玖系上院議員マルコ・ルビオの進言などを受け、ドナルド・トランプ大統領はベネスエラ締め付け政策を決めている。

 ロペスは2014年2月にカラカスなどで始まったグアリンバ(街頭暴力)を教唆した罪などで、禁錮14年の実刑に服役中。米政府、ロペス支援者、多くのメディアはロペスを「良心の囚人」、「政治囚」などと呼んでいる。だが、刑事犯罪関与については全く触れていない。このため「虚偽ニュース」の様相を呈している。

 カラカスでは18日、街頭暴力で殺された43人の遺族や800人の負傷者の家族らと支援者多数が行進。代表者は、3年前の暴力事件に関与したロペスの実刑14年は軽すぎると抗議した。ニコラース・マドゥーロ大統領は犠牲者遺族らの立場を支持、間接的ながら米国務省への意思表示をした。この日、ロペス支援者も別途、釈放要求行動を展開した。

 一方、タレク・エルアイサミ副大統領を「ヒズボラの代理人」と伝える電脳メディアがある。これも確固たる証拠を明確に提示していない。

 「ポスト真実」期と呼ばれる現代、反真実、フェイクニュースが飛び交っている。基盤には反知性がある。マスメディアの保守化、政府付随化などが「反真実」状況を促進している。

▼ラ米短信  ◎エクアドール大統領選挙始まる

 エクアドール(赤道国)で2月19日、正副大統領、国会議員137人、アンデス議会議員5人を選ぶ総選挙が始まった。結果はJST(日本時間)20日昼前に判明する見通し。 

 

米メキシコ国境で「トランプの壁」に「人間の壁」で対抗

 墨米国境3200kmの中間に位置する墨チウアウア州国境のフアレス市と対岸の米テキサス州エルパソ市の間を流れる国境河川ブラボ川の墨側堰堤で2月17日、「人間の壁-両国の懸け橋」と題した平和行事が展開された。

 墨全政党が呼び掛けたもので、民主革命党(PRD)元党首クアウテモキウ・カルデナス元メヒコ市長、チウアウア州のハビエル・コラル知事、フアレスのアルマード・カバル市長、エルパソのオスカル・リーサー市長をはじめ2000人が参加した。

 国境の壁建設を決めたドナルド・トランプ米大統領への異議を唱える抗議行動で、メヒコ国歌を歌い、対岸の米側に向かって友情と連帯のメンサヘ(メッセージ)を送った。

 これに先立ち市内では、「国益防衛フォーラム」が開かれた。カルデナスは「両国の友情はメヒコ人の生活向上につながる。双方は長い歴史を経つつ共存してきた」と述べた。コラル知事は、「異なる声を一つにして友情を訴えよう。異なる手を一つにして、二国社会という在り方を続けたい我々の望みを確認し合おう」と語った。リーサー市長も「両都市は一つの同じ都市だ」と強調した。

 メヒコでは来年7月、大統領選挙が実施されるが、PRDから分派したMORENA(国民刷新運動)党首、アンデレス=マヌエル・ロペス=オブラドール(AMLO=アムロ)が現時点での支持率28%で有力。AMLOは2006年の選挙で事実上勝ちながら、開票操作で勝利を奪われた苦い経験の持ち主。

 12年の前回は、金権候補エンリケ・ペニャ=ニエト(EPN)現大統領に敗れた。AMLOに次ぐのは、EPNの政権党PRI(制度的革命党)のオソリオ内相で17%。3番手は、06年に当選したとされたPAN(国民行動党)のフェリーペ・カルデロン大統領の妻マルガリータ・サバーラで5%。AMLOにとっては、宿敵の妻だ。

 AMLOは、穏健左翼で改革派だが、メヒコをいじめているトランプに対抗できる「民族主義的アンチテーゼ」として、人気が急浮上している。これに伴い、AMLOは財界と会合するなど、革新色を薄めようと努めている。

 一方、ユカタン州都メリダで18日開かれた第16回墨玖友好国会議員同盟会合は、トランプの排外主義を「メヒコ人の尊厳を侵す」と捉え、移民排除や壁建設政策と併せて糾弾。話し合いによる問題解決を呼び掛けた。

 双方はまた、ラ米団結強化でも一致した。

▼ラ米短信   ◎オデブレヒト事件捜査で11カ国が協力

 ブラジル最大手の建設会社オデブレヒトの絡む巨額贈収賄事件に関連する11カ国の検察は2月16日、ブラジリアで検事総長級会合を開き、捜査協力協定を結んだ。伯亜智秘コロンビア赤ベネスエラ墨巴RD葡の各国。
 

2017年2月17日金曜日

 ベネズエラ大統領が「悪宣伝に対抗する」ため「強力なディジタル伝達基盤」構築を命ず

 国連難民高等弁務官事務所は2月16日ベネスエラ政府に対し、コロンビア人難民を収容するなどの人道的支援を評価、謝意を伝えた。先週から難民約400人がベネスエラ西部のスリア州などコロンビア国境地帯の地域に流入している。

 コロンビアでは政府とゲリラ組織FARCとの和平過程が進み、FARCは全国26カ所の集結地域に移動した。これにより、力関係に空白の生じたノルテ・デ・サンタンデル州カタトゥンボ地方に、殺戮やコカイン取引をする極右準軍部隊が流入。恐怖にかられた住民はベネスエラに越境した。コロンビア国防相は13日から同地方に兵士と武装警官隊を増派、準軍部隊を追跡している。

 エクアドールのキト郊外ではコロンビア政府と、FARCに次ぐもう一つのゲリラ組織ELNが和平交渉をしている。双方は16日、コロンビア社会代表の和平交渉参加、および内戦の「人道的な停戦」に関し、それぞれ小委員会を設け話し合うことで合意した。和平交渉で得られた初の合意である。

 一方、NYの国連本部にある非同盟諸国運動(MNOAL)事務局は16日、トランプ米政権によるタレク・エルアイサミVEN副大統領への追及措置を「一方的かつ弾圧的」と非難し、ベネスエラ政府への連帯を表明した。現在のMNOAL議長は、ベネスエラのニコラース・マドゥーロ大統領。

 マドゥーロ大統領は16日、「裏切り者は皆、米政府の庇護下に逃げ去る」と指摘。国際メディアによる意図的誤報(虚偽報道)に対抗し、「ベネスエラの真の姿を伝え発信するため」として、「強力なディジタル伝達基盤」を創るよう指示した。

 大統領はまた、トランプに同調し、暴動教唆罪などで服役中のベネスエラ極右政治家の釈放を呼び掛けたスペイン保守・右翼政権のマリアーノ・ラホーイ首相を、「ならず者だ。犯罪者と殺人者の保護者」と扱き下ろした。これに対しスペイン外務省は17日、駐西VEN・大使を呼び、真意を質した。

▼ラ米短信   ◎ハバナにガルシア=マルケス像登場

 ハバナ旧市街の芸術・文学学校の庭に2月16日、コロンビアのノーベル文学賞作家ガブリエル・ガルシア=マルケス(GGM、1927~2014)の銅像除幕式が催された。ハバナ史家エウセビオ・レアル、駐玖コロンビア大使らが出席した。

 コロンビアの彫刻家ホセ・ビージャ=ソベロンの作で、高さは生前のGGMより背の高い180cm。昨年、若き日のGGMが活動したコロンビアのバランキージャ市に建てられた銅像の複製だ。

 作家の出世作『百年の孤独(孤独の百年)』の執筆50周年とノーベル文学賞受賞35周年および、作家の生誕90周年に因んで設置された。クーバはGGMがクーバ通信社プレンサ・ラティーナの創設期に記者として働き、故フィデル・カストロ議長と親交を結び、さらに映画学校を設立し指導した縁の深い国だ。GGMは「クーバの養子」と呼ばれることもある。

 彫刻家ビージャ=ソベロンは、ジョン・レノン、アントニオ・ガデス(西人フランメンコ舞踊家)、マザー・テレサらの彫像の政策者として知られている。  

 

2017年2月16日木曜日

「メキシコの次はベネズエラか」。トランプの内政干渉発言にベネズエラ外相が激しく反応、緊張走る

 ベネスエラの国家電気通信委員会(CONATEL=コナテル)は2月15日、米CNNテレビ西語放送のベネスエラでの有線放送を禁止した。「ベネスエラの民主と主権を直接的に侵した」のが理由だ。

 同放送は6日、ベネスエラの在イラク大使館がベネスエラ旅券をテロリズムに関係する可能性のあるアラブ人に売却しており、タレク・エルアイサミ副大統領が関与している、と伝えた。これが原因だ。報道は、ミサエル・ロペスという人物の証言を基にしている。

 クーバ系右翼のマルコ・ルビオ共和党上院議員(フロリダ州選出)は真っ先にCNN報道を取り上げ、これを受けて米政府は13日、エルアイサミVEN副大統領を「首領級麻薬取引者」名簿に加え、在米資産凍結処分とした。

 ベネスエラのデルシー・ロドリゲス外相は15日、「CNNは偽りに基づくメディア運動を展開し、VEN野党および国際右翼勢力のクーデター意図に貢献している」と、CNNを激しく糾弾した。

 外相は、「CNNが証言者としたロペスなる人物は野党勢力の回し者であり、イラク駐在VEN大使の名をかたり現金詐取を謀り、同大使館女性職員に性的脅しをかけ、これらの犯罪行為で裁かれようとしている」と指摘した。

 デルシーROD外相はさらに、「公然と反駁したのは、このような米国からの工作は、人民にとって不吉な戦争宣伝行為だからだ」と説明した。

 ニコラース・マドゥーロ大統領は、副大統領に対する米政府の措置を「前代未聞で侮辱的だ」と批判。デルシー外相が米大使館の臨時代理大使に文書で抗議した。

 マドゥーロ大統領は15日、エルアイサミを、犯罪撲滅と治安確保を目指す「社会正義大任務」計画の首席調整官に任命した。政府の「安全な祖国」政策の一環で、やはり犯罪対策のための「ベネスエラ生命尊重任務」と並行して進められる。

 一方、ワシントンではルビオ議員が15日、ベネスエラ野党連合MUDの一翼を担う極右政党の党首で破壊活動教唆罪などで服役中のレオポルド・ロペスの妻をドナルド・トランプ大統領とペンス副大統領に引き会わせた。これを受けてトランプは、べネスエラ政府にロペス釈放を要求した。

 これに対し、デルシー外相は、同日「内政干渉だ」として一蹴。トランプを「ベネスエラ野党と、マイアミマフィアおよびロビーストに唆(そそのか)されて共犯者になった」と扱き下ろした。ルビオは15日、トランプとホワイトハウスで夕食を共にした。

 マドゥーロ大統領はこれまで、あからさまなトランプ批判は避けつつ「良好な関係を築きたい」と呼び掛け、「ベネスエラに対するブッシュやオバマの過ちを繰り返さないよう」柔らかに警告していた。

 だが反カストロ派でもある右翼ルビオの介在で、メヒコに向けられていたトランプのラ米諸国への牙がベネスエラに向かう可能性が出てきたと受け止められる今、マドゥーロ政権は事態を熟考している。

 トランプはメヒコについては独自の意見を持っているようだが、ベネスエラやクーバについては定見がなく、ルビオのような右翼世論代表の言いなりになる恐れが出ており、当時国やラ米知識層は懸念している。

▼ラ米短信   ◎エクアドール国会議長が「爆殺テロ」免れる

 赤道国のガブリエーラ・リバデネイラ国会議長は2月15日、事務所に届いた封書に爆発物が入っていたと明らかにし、殺害される可能性のあったテロを免れた、と述べた。爆発物は爆発しなかったという。

 この国では19日、正副大統領、国会議員137人、アンデス議会議員5人を選ぶ総選挙が実施され、国中が騒然とした空気に包まれている。政権党「パイース同盟」所属のリバデネイラも再選をかけて出馬している。
 

2017年2月15日水曜日

 ラテンアメリカ・カリブ核兵器禁止条約(トラテロルコ条約)調印から半世紀。記念式典でメキシコ大統領はトランプ米政権を厳しく批判、ラ米・カリブ諸国の連帯に感謝する

 ラ米核兵器禁止条約(通称トラテロルコ条約)が1967年2月14日、メヒコ外務省(当時の通称トラテロルコ)で調印されてから14日で50周年となった。今はフアレス大通りにある外務省で記念の外相会議が催された。

 条約は1962年10月のクーバ核ミサイル危機を教訓として生まれ、69年4月25日発効した。推進者のメヒコ外相アルフォンソ・ガルシア=ロブレスは82年、ノーベル平和賞を受章した。

 条約は後に「ラ米・カリブ核兵器禁止条約」と改名された。事務局「LAC(ラ米・カリブ)核兵器禁止機構」(OPANAL=オパナール)はメヒコ市にある。この日、第25回OPANAL総会(外相会議)が開かれた。今日、LAC33カ国全部が加盟、批准している。

 総会で演説したエンリケ・ペニャ=ニエト(EPN)墨大統領は、「世界は依然核兵器の危険に晒されているが、我々はLACを世界平和の約束の地として再確認する」と述べた。

 だが演説の力点は、トランプ米政権の対墨政策への批判に置かれた。大統領は、「強国を含むいかなる国も、国際社会の諸原則に反する独自の原則や意思を押し付けてはならない。国際関係は権利、敬意、対話に基づかねばならず、脅迫や実力に依ってはならない」と強調した。

 EPNはまた、「今新たに世界は我々LACの団結ぶりを観ている。LACが寄せてくれた連帯に、全メヒコ人民を代表して感謝する。メヒコは将来に亘ってLACの国だと、誇りを持って言う。困難な時の友こそ善き友と言われるが、メヒコは支持を受けて感動した。価値ある大きな支援だった」と語った。

 会場からは強い拍手が続いた。トラテロルコ条約は、その後の南太平洋、東南アジア、アフリカ大陸、中央アジア・モンゴルの各地域の核兵器禁止条約締結に繋がった。

 メヒコと、中米北部三角形3国(グアテマラ、エル・サルバドール、オンドゥーラス)の外相は今会議に先立つ13日メヒコ市で会合し、同3国からメヒコを経て米国に向かう移民希望者の扱いなどを協議した。

▼ラ米短信   ◎ドミニカ共和国(RD)でジャーナリスト2人殺害さる

 RDのサンペドロ・デ・マコリス市のラジオ放送局で2月14日、ルイス・マルティネス局長と、ニュースを読み上げていたルイス・メディーナ記者兼アナウンサーが侵入者に射殺された。女性秘書ダヤナ・ガルシアは重傷を負った。

 ドミニカ・ジャーナリスト協会(CDP)と全国報道労働者組合(SNTP)は、メディーナ政権に事件の早期解決を要請した。RDでは一昨年4月にも記者が殺害されている。

▼ラ米短信   ◎大量のベネズエラ紙幣がパラグアイで発見さる

 ベネスエラ通貨ボリーバル・フエルテ(bf)の50bf、100bf札を詰めた約500の袋(重さ30トン)が2月13日、ブラジル国境に近い、パラグアイ東部のカニンデジュー県サルト・デル・グアイラ市の武器商人の家で発見され、警察に押収された。

 警察は資金洗浄および犯罪関与の疑いで武器商人を逮捕、取り調べ中。紙幣は14日、首都アスンシオンの中央銀行に運ばれ、金額計算などにふされた。

 警察は、米国のDEA(麻薬捜査局)とベネスエラ当局と連携、事件解明に努める。ベネスエラ政府は、100bf札を2月20日に使用不可とすることを、本事件発覚前から決めている。

 Bf札は、ベネスエラ西部コロンビアの国境地帯、南部ブラジルの国境地帯で出回っている。だがなぜ遠いパラグアイに運ばれたのか、そこに関心が集まっている。
 
 

2017年2月14日火曜日

パラグアイ農民らが首都まで行進、政府・支配体制を告発

 パラグアイの首都アスンシオン中枢部で2月13日、「長い行進」(ラルガ・マルチャ)と名付けて、遠隔地からの数百キロに及ぶ道程を歩いてきた農民、先住民、労働者ら1500人が「新しいパラグアイ建国」を求めて抗議行動を展開した。

 参加者は、「新しいパラグアイ党」(PPP、エラディオ・フレチャ書記長)と、全国農民連盟(FNC、テオドリーナ・ビジャルバ幹部)が組織。6日、二派に分かれて北部のコンセプシオン市、東部のカニンデジュー県を出発、1週間かけて首都に到着した。

 合流した一行は大統領政庁前で、オラシオ・カルテス大統領を「略奪者」と呼び、退陣を求めた。カルテスは今年8月15日に5年の任期が切れるが、憲法を手直しして連続再選を可能にしようと工作している。人々は「即時退陣」を要求した。

 一行は国会前では、議員たちを「守銭奴」と呼び、「権力は腐敗まみれ、恥知らず、売国奴、反人民、麻薬汚染された政治家に奪われている」と糾弾した。カルテスには就任前、麻薬取引との関係した嫌疑がかけられていたが、うやむやにされた。最高裁判所前では、判事たちを「買収されている」と扱き下ろした。

 PPPのフレチャ書記長らは、先住民や貧農からの土地奪取、住民の強制移住、北部地域の軍事化、逮捕者拷問、強姦など「当局者による人民迫害」を告発した。同党は労農政権樹立を目指し、1996年結党された。「ピャウラ(新しい)」というグアラニー語を党名に用いている。

 一行はまた、差別状況、生活苦、土地無し状態、保健・教育への接近困難、住宅不足、恒常的失業、道路不備なども訴えた。財務相の邸宅付近にも押しかけ、「国有資産売却したコルテスの共犯者」と叫んだ。

 1980年代末まで故アルフレド・ストロエスネル将軍の長期軍事独裁が続いたパラグアイは、南米で民主度が最も低い国とされる。21世紀になってから初めて伝統的支配層に属さない、「解放の神学」派のカトリック司教上がりのフェルナンド・ルーゴ大統領が穏健な改革を進めた。だが支配層の画策で、正当な理由なしに国会で弾劾され解任された。

 この政変は「国会クーデター」と呼ばれる。この手法は16年8月末のブラジルの国会クーデターで踏襲された。ヂウマ・ルセフ大統領の労働者党(PT)に選挙で勝てない支配層が企てた強引な弾劾による政権奪取だった。

 パラグアイでは今年1月15~23日には、東部から首都まで200km余の「パラグアイ愛国の長い行進」が実施された。かつて独裁と闘ったパラグアヨ・クバス弁護士が行進を組織した。

▼ラ米短信   ◎米国がベネスエラ副大統領を麻薬犯名簿に加える

 米財務省は2月13日、ベネスエラのタレク・エルアイサミ執権副大統領を「麻薬組織首領名簿」に加えた。またベネスエラの政商で企業家のサマルク・ロペスを、同副大統領の「名義人」と特定、麻薬取引を実行していると指摘した。

 カラカスでは13日、ベネスエラ中国高級合同委員会が開かれたが、エルアイサミ副大統領は中国代表団と会合した。

 ドナルド・トランプ米大統領は12日、ペルーのPPクチンスキ大統領と電話会談した際、「ベネスエラの人道的状況を懸念している」と述べた。ラ米では、メヒコに続いてトランプに痛めつけられる国はどこかに関心が集まっているが、ベネスエラはメヒコに次いで名指しされた国となった。

 ベネスエラの保守・右翼野党連合MUDの代表団は最近訪米、ワシントンでベネスエラ政府を退陣に追い込むための根回し工作をした。それが奏功したとも言える。

 一方、ニコラース・マドゥーロVEN大統領は12日、「ベネスエラはラ米の安定と平和を支援する堅固な地だ」と述べた。

2017年2月13日月曜日

メキシコ政府が批判交わす狙いも込め「反トランプ」行動実施

 メヒコ各地の主要都市で2月12日、政府が組織した「政府支持、反トランプ米政権」のデモ行進が展開された。約60団体が参加したが、首都メヒコ市では政権党PRI、前政権党PAN、財界、宗教界、政府系労連などが1万8000人を動員。一方で非政府計1500人も別途、行進した。

 グアダラハラ、モンテレイ、モレリア、アグアスカリエンテス、ビヤエルモサなど諸都市でもデモ行進が実施された。政府系は、メヒコ人への侮辱、国境の壁、移民排斥、関税障壁などでドナルド・トランプ大統領に抗議した。これに対し非政府系は、トランプ批判と併せて、エンリケ・ペニャ=ニエト(EPN)墨大統領退陣を要求した。

 今回の抗議行動を政府が組織したのには、ガソリン値上げで高まった反政府・反大統領世論や生活苦への抗議の声をかき消し「反米」に転じさせようとの狙いがあった。トランプ登場で「メヒコ民族主義」が久々に高まっているが、それもEPN大統領が極度に不人気とあって、高まりは燃え上がるまでに至らない。

 大統領の威信が一層地に落ちたのは、トランプに叩かれっ放しだったことに加え、新事実が暴露されたことによる。トランプが国境の壁建設政策を公式に発表した1月25日、その発表に先立ち、訪米していたルイス・ビデガライ墨外相がホワイトハウスで、トランプの女婿で大統領顧問のジャレット・クシュナーと、壁建設に関するトランプの発表文の内容を調整していたことが明るみに出されたのだ。

 暴露報道によると、ビデガライは旧知のクシュナーから発表文草稿を見せられ、米墨関係悪化を和らげるためとして、文言の変更を求め、クシュナーがそれを認めた。2人はそろって大統領執務室に行き、トランプに修正した原稿を見せた。トランプは怒ったが、修正を受け入れ、それを発表したという。

 メヒコ紙の論説は、ビデガライを「大馬鹿者」と扱き下ろしている。「被害国」の外相が「加害国」大統領の「加害政令」の内容を和らげるなどということは前代未聞、というわけだ。

 レックス・ティラーソン国務長官は2月8日ワシントンでビデガライと会談、両国問題は「壁」から北米自由貿易協定(TLCAN/NAFTA)見直しに移行しつつある感がある。この米墨外相会談の場にもクシュナーが立ち合った。

2017年2月11日土曜日

 ノーベル平和賞受賞のサントス・コロンビア大統領の選挙戦に収賄資金? ブラジル建設会社オデブレヒトの一大贈賄事件がラテンアメリカを揺さぶる

 ブラジルおよびラ米の最大手建設会社オデブレヒトに絡む贈収賄事件がラ米を揺さぶっている。同社は昨年12月21日、米司法省と司法取引し、2009~14年にラ米10ヵ国とアフリカ2カ国で総額7億8800万ドルの賄賂を贈ったと供述、波紋が拡がった。

 その12カ国は、ブラジル、亜国、エクアドール、ペルー、コロンビア、ベネスエラ、メヒコ、パナマ、グアテマラ、ドミニカ共和国、アンゴラ、モサンビーク。アフリカ両国は、ブラジルと同じポルトガル語圏。

 ペルーでは、アレハンドロ・トレード元大統領が自動車道建設事業に絡み2000万ドルを収賄していた事実が明らかになり、逮捕状が出されている。トレードは事態を察知しパリに逃亡、所在不明となっている。ペルー政府は国際刑事警察機構(インターポール)に逮捕を要請するとともに、逮捕につながる情報提供者に賞金3万ドルを贈ることにしている。

 コロンビアでは2月7日、検察庁が、2014年の大統領選挙の選挙戦時、オ社資金100万ドルが現大統領JMサントス陣営に渡った疑いがあると明らかにした。サントス大統領は直ちに検事総長に電話し、証拠の有無を尋ねたという。

 これも自動車道建設事業に絡む汚職で、1100万ドルがコロンビア側に渡されたが、100万ドルはその一部。香港企業経由で渡されたとの情報もある。検察庁は国家選挙理事会(中央選管)に調査を要請した。 

 サントスは昨年、ゲリラFARC(コロンビア革命軍)との半世紀余り続いた内戦の和平に漕ぎつけ、ノーベル平和賞を受賞した。2月7日には、残るゲリラELN(民族解放軍)との和平交渉を赤道国のキト郊外で正式に始めたばかり。サントスの威信が陰れば、FARCとの和平過程深化、およびELNとの和平交渉に影響が出ると懸念されている。

 サントスにとり「不幸中の幸い」は、14年選挙で対立候補だった右翼政党「民主中心」(CD)のオスカル・スルアガ候補もオ社から160万ドルを受け取っていた疑惑が出ていること。

 一方、パナマでは1月下旬、リカルド・マルティネリ前大統領が建設事業に絡んでオ社から2200万ドルを収賄した事実が暴露された。この金は、スイスにあるマルティネリの息子2人名義の銀行口座に入っていた。スイス政府は、同口座を凍結した。前大統領は米国に逃亡中。

 ところが事態はさらに発展、2月9日、パナマのJCバレーラ現大統領がオ社から14年の大統領選挙戦時、資金を受け取っていたと告発された。昨年4月以降、国際社会を震撼させてきた「パナマ文書」に関与しているパナマ市のモサック・フォンセカ法律事務所のラモーン・フォンセカ弁護士が暴いたのだ。

 ラモーンは、政権党「パナマ主義者党」(PP)でバレーラと長年の同志で、バレーラ政権で閣僚級の政策顧問となり、PP党首にも就任した。だが昨年3月、オ社関連の汚職事件関与が浮かびあがり、辞任した。

 9日ラモーンは検察で取り調べを受ける直前に、バレーラが選挙資金をオ社からもらっていたと爆弾発言した。パナマ社会では一気に反腐敗運動が拡がっている。

 またエクアドールのラファエル・コレア大統領は10日、先手を打つかのように、オ社関連疑惑が赤道国に及ぶとすれば、それは19日の同国大統領選挙(第1回投票)に影響を与えるための政治的策謀だ、と表明した。

 ブラジルではオ社は、国営石油ペロとブラスと絡む政財界を巻き込んだ一大汚職事件で裁かれ、収賄者の裁判や捜査が続いている。

▼ラ米短信   ◎長期受刑囚がプエルト・リコで刑期満了へ

 米本土各地の刑務所で35年の禁錮刑を受けいてきたプエルト・リコ独立派のオスカル・ロペス=リベーラ服役囚(74)は2月9日、インディアナ州テレホート刑務所を出され、民間航空機で島都サンフアンの空港に身柄を移された。

 バラク・オバーマ前大統領は1月17日、ロペスを5月17日に釈放する減刑措置を発表していた。今後は、実の娘クラリサの家族と暮らす「自宅軟禁」の形で5月までの刑期を勤める。

 サンフアンのカルメン・ユリーン市長は、ロペスには市の安定職が待っている、と明らかにしている。 
 
 

2017年2月8日水曜日

コロンビア政府とゲリラELNがキトで内戦和平交渉開始

 コロンビア政府とゲリラ組織民族解放軍(ELN)が2月7日、エクアドール(赤道国)政府の肝煎りで、内戦和平のための公式交渉を開始した。8日、第1段階の実質交渉に着手、40日間をかけて、段階的停戦実施方式や、交渉への「社会参加」について話し合う。「社会参加」に備え、コロンビアの社会団体80が加盟する「和平社会会議」 がキトで会合している。

 交渉開会式は、キト郊外にあるイエズス会所有のカスアパンバ農園で挙行され、ギヨーム・ロング赤外相、コロンビア政府交渉代表フアン・レストゥレポ、ELN代表イスラエル・ラミーレス(作戦名パブロ・ベルトゥラン)が演壇前列に並んだ。赤道国と並ぶ保証国のクーバ、ベネスエラ、チレ、ブラジル、ノルウェーの代表も出席した。招待者140人、報道陣60人も参加した。

 ロング外相は「コロンビアの和平は我が国の和平であり、南米の和平であり、大なる祖国(ラ米)の和平だ。国境に壁を建設する者がいる傍ら、我々は平和な国境を拓こう」と挨拶した。トランプ米政権を皮肉った発言だ。

 レストゥレポ政府代表は、内外世論は内戦終結を待っていると前置きし、ELNに「合法政治をするよう促す」と述べ、併せて「誘拐戦術を打ち切るよう宣言してほしい」と要求した。

 これに対しラミーレスELN代表は、「政治解決を図る用意がある。ELNは内戦中の暴力への責任をとるが、政府も同様に
責任を取るべきだ」と注文を付けた。ラミーレスはELN序列第2位の最高幹部の一人。

 ELNはクーバ革命の影響を受けた北東部サンタンデル州の学生らが、クーバでゲリラ訓練を受け、1965年初め結成した。解放の神学の司祭だったカミーロ・トーレスはELNに参加、1966年戦死した。

 スペイン人神父も参加、73~98年、マヌエル・ペレス神父が最高司令を務めた。98年に病死し、後をニコラース・ロドリゲス(67)が継ぎ、今日に至る。戦闘員の現有勢力は2000人と見られている。

 政府とELNは、最大ゲリラ組織FARCが和平過程に入っている今、「ラ米最後、コロンビア最後の和平、つまり<完全な和平>に漕ぎつける」点で一致している。

▼ラ米短信   ◎ハイチ大統領が就任

 アイチのジョヴネル・モイーズ大統領が2月7日就任した。任期は5年。「テトゥ・カレ・ハイチ党」(PHTK)所属。昨年11月20日の出直し大統領選挙で55・6%を得票、当選した。だが不正批判が相次いだ。

 バナナ業者である大統領は、就任演説で「発想を変えれば、この国は良くなる」と述べ、野党勢力に協力を呼び掛けた。人口の8割が他は農民。国民の60%は貧困状態にある。

 モイーズはまた、「国外出稼ぎ労働者が帰国できる条件を整備する」、「司法を政治目的に使わない」、「国家資金を開発に回す」ことなどを約束した。

 就任式には、隣国ドミニカ共和国(RD)のダニーロ・メディーナ大統領、ベネスエラのニコラース・マドゥーロ大統領、海を隔てた隣国クーバのエステバン・ラソ国会議長、米国務省のトーマス・シャノン政務担当次官補らが出席した。

▼ラ米短信  ◎亜伯両国がメヒコに関係強化を呼び掛け

 ミシュエル・テメル伯、マウリシオ・マクリ亜の両大統領は2月7日ブラジリアで会談。南部共同市場(メルコスール)加盟両大国間の関税障壁撤廃、メルコスール強化、メルコスールと太平洋同盟(AP)との関係強化などで一致した。

 マクリ大統領は、エンリケ・ペニャ=ニエト墨大統領と6日電話会談したと明らかにし、「南方に意識的に顔を向けているメヒコ」との経済関係強化を図りたい、と述べた。伯亜は、メルコスールと日本、韓国、カナダ、ノルウェー、アイスランド、スイスとの関係強化でも一致した。

 亜伯両国はかつては左翼・進歩主義政権同士として関係が良好だったが、今は保守・右翼政権同士として仲が良い。双方ともにこのところ経済が縮小、対策を迫られている。

2017年2月7日火曜日

「新しい歌」のチリ人旗頭ビオレタ・パラが歿後50周年経つ

 チレ民俗歌謡の大歌手ビオレタ・パラ(1917~67)は1967年2月5日、首都サンティアゴ郊外で経営していた音楽酒場で拳銃自殺を遂げた。それから半世紀経った5日、首都の一般墓地の墓前で歌手たちがギターを弾きながらビオレタが作詞作曲した歌の数々を歌い、故人に敬意を表した。

 ビオレタは1917年10月4日、南部のビオビオ州サンカルロスに音楽教師で民俗歌謡歌手だったニカノール・パラを父に生まれた。7歳で父親のギターを自己流で弾き始める。父が病気で倒れ苦しい生活を送るが、父の死後、首都で学んでいた兄に呼ばれてサンティアゴに出、17歳でカンタアウトーラ(シンガー・ソングライター)になる。

 世界的名曲となった『人生よ、ありがとう』や、1973年の軍事クーデターを予知したような『ケ・ペーナ(何という胸の痛みだろうか)』など、自作の約130曲を世に出した。

 ビオレタの声はチレ農民女性に多い「疲れた声」であり、いわゆる美しい声ではない。だが情熱あふれる存在感とギターのうまさが声に勝って、聴く人々の心を掴んだ。

 先住民族マプーチェの血を引くビオレタは、気性の激しい女性で、差別や無視に対して怒り、抗議した。自らを「人民に同一化している」と言って憚らなかった。作詞には「人民」や虐げられたマプーチェが主題としてしばしば登場、白人が支配するレコード会社、ラジオ・テレビ局、新聞社などはビオレタに門戸を閉ざした。

 共産党員だったビオレタは1953年、「世界青年・学生祭」に招かれ渡欧、東欧やソ連を回り、パリにも滞在する。ビオレタはギター弾き語りの他、絵画、彫刻、刺繍など幅広い創作活動を展開、64年にはパリのルーヴル博物館に絵画などの作品が展示された。

 パリでは、フランコ独裁に抗議するためスペイン大使館への抗議行進に参加した。50年代には、同胞の詩人パブロ・ネルーダと知己になった。ルーヴル展示により故国チレで名士になったが、白人社会からの差別、無理解、無関心は大きくは変わらなかった。

 しかしビオレタの歌は「新しい歌」として既に脚光を浴びており、59年元日のクーバ革命によって生まれた新しい芸術運動と相俟って、ラ米で広く賞賛されていた。同胞のビクトル・ハラ、キラパジュン(歌謡団)、インティ・イリマニ(同)、ロランド・アラルコン、マウリシオ・レドレースらとともに一世を風靡した。

 ビオレタは恋多き女でもあり、2度の結婚や恋愛生活を続けた。息子アンヘルと娘イサベルは歌手で、ビオレタの歌をひき継いでいる。

 ビオレタは67年2月、恋人のウルグアイ人音楽家とモンテビデーオに汽車で旅行することになり切符も買っていたが、出発の2日前、自殺した。死後に訪れたピノチェー軍事独裁政権下で、ビオレタの作詞した歌詞は「反戦歌」、「抗議歌」と捉えられ、検閲された。

 2011年、アンデレス・ウッド監督が映画「ビオレタ、空に去る」(110分)で、ビオレタの生涯を描いた。その中で主人公は、「描く、刺繍する、歌う、は私にとって同じこと」と語り、何が一番重要かと問われては「私は人民と共にありたい」と答える。

 今年10月4日には、盛大な生誕100周年記念行事が計画されている。この誕生日は「チレ音楽の日」に指定されている。

▼ラ米短信   ◎早大でクーバ情勢シンポジウム催さる

 最新のクーバ情勢などを主題とするシンポジウムが2月6日午後、東京都新宿区戸塚の早稲田大学・小野梓記念講堂に130人を集めて催された。

 発言者は、ジャーナリスト伊高浩昭(現代クーバ情勢)、中部大学教授・田中高(日本でのラ米への取り組み)、早稲田大学準教授・岩村健二郎(クーバのアフリカ系の状況)。早稲田大学準教授・高橋百合子が意見を述べたうえで3人に質問、司会は早稲田大学教授・山崎眞次が務めた。

 聴衆は、大学教員、研究者、ジャーナリスト、大学生、映画監督、国会議員、NGO関係者ら多彩な顔ぶれだった。

 
  
 

2017年2月5日日曜日

H・チャベスが率いたベネズエラ軍事蜂起25周年式典催さる

 故ウーゴ・チャベス前大統領が陸軍中佐時代の1992年2月4日に決行した軍事クーデター未遂事件(4F)から25年経った4日、記念式典が盛大に挙行された。ニコラース・マドゥーロ大統領のチャベス派政権は、四半世紀前のこの日を「現代史の転換点」と位置付けている。

 式典は軍事蜂起が始まった未明の時刻に合わせ、チャベスが指揮を執った「山の兵営」で開始された。この兵営は、カラカス市リベルタドール区1月23日町モンテピエダー地区にある。チャベスは蜂起を「エセキエル・サモーラ作戦」と命名、自身の暗号名を「ホセ=マリーア」としていた。

 式典では、チャベスに従って決起したディオスダード・カベージョ大尉(現国会議員、政権党PSUV=ベネスエラ統一社会党=副党首)が記念演説をぶった。

 「兵士たちはベネスエラの自由、主権、独立のため、そして人民に最大幸福を与えるため、旧制度を変革しようと蜂起した」と強調した。チャベスは1998年の大統領選挙で当選、99年2月政権に就いた。クーデター失敗後に逮捕されたチャベスは、「今は引き下がろう」と部下たちに降伏するよう勧めた。その「今は」の発言の主が7年後、大統領に上り詰めたのだ。

、禁錮刑に処せられたチャベスは94年、恩赦で釈放され、苦難の道を歩みながら、政治運動を展開。それが実った。だが同志たちの離脱が相次いだ。カベージョは、「25年間に離脱者が出たのは仕方ない。革命の深さが理解できなかったからだ。我々には団結するしか道はない。我々は4Fの30周年記念日、40周年記念日を見据えている」と謳いあげた。

 決起の政治的意味については、「限界に達していた2大政党制(プント・フィホ体制)を崩壊に導いた」と指摘。だが、コムーナ(コミューン)権力体制の確立などはまだまだだと、課題が少なからず残っていることにも触れた。

 マドゥーロ大統領夫妻、副大統領、国防相、故大統領の実兄アダン・チャベス文化相、チャベスの娘らも出席した。「山の兵営」では続いて軍隊が行進した。

 次いで大統領以下はアラグア州マラカイ市のパエス兵営に移動、第2の式典が催された。チャベスは蜂起当時、同兵営に所属する陸軍空挺大隊の司令官だった。91年12月上旬、蜂起を謀議、2ヶ月後に決行した。

 マドゥーロ大統領は、「ここから反IMF(国際通貨基金)、反寡頭搾取階級への革命的反逆が始まった。それは160年に亘る人民搾取と売国への叛乱だった。その流れを変える出発点となった」と指摘した。

 さらに、「チャベスの真実」を克明かつ正確に描く映画と、テレビ映画を制作するよう、関係当局に命じた。また4F蜂起および、これに続く92年11月27日の軍事蜂起「27N」に参加した元兵士計310人を国軍社会保障受給者とすることを決めた。両蜂起で戦死した兵卒たちを第2軍曹に死後昇格させ、遺族に年金を支払うことも決めた。

 一方、チャベスとの共著のあるアレイダ・ゲバラ=マルチ医師(チェ・ゲバラの娘)は2日、滞在中のスペイン・カナリア諸島中心地テネリフェ市で、「ベネスエラの石油は以前は米国に支えられた家族らのものだったが、今は学校、病院、住宅、無料福利のために流れている」と讃えた。

 「革命過程を不安定化させようとする陰謀のせいで物資不足はあるが、ベネスエラは連帯を拡げている」、「ベネスエラは革命過程成熟化の時間が十分にない。常に米国が頭上にいて<第2のクーバは許さない>と圧力をかけているからだ。ベネスエラと石油が彼らの手を離れてしまい、大打撃を受けたからだ」とも語った。

▼ラ米短信  ◎ロシアとベネスエラが外相会談へ

 ロシア外務省は2月4日声明を発表、モスクワで6日、セルゲイ・ラヴロフ外相とデルシー・ロドリゲス外相が会談すると明らかにした。両国は、国際価格安定化のための原油生産削減、軍備、投資などで協力関係にある。

 ロシアにとってベネスエラは、クーバ、ニカラグアと並ぶ重要なラ米の同盟国である。外相会談を受けて、マドゥーロ大統領が訪露する可能性がある。

▼ラ米短信  ◎コロンビアが「紛争後内閣」組織

 コロンビアのJMサントス大統領は2月4日、内戦終結過程進行に伴い、「紛争後内閣」を結成した。内務、外務、労働、財務、防衛、農業、運輸、鉱山エネルギーの8閣僚および、関係機関高官7人で構成されている。
 

2017年2月4日土曜日

ペルーのトレード元大統領の2000万ドル収賄解明近づく

 ペルーのアレハンドロ・トレード元大統領(2001~06年)が2000万ドルの賄賂をブラジル建設大手から受け取っていた事実が明らかになり、逮捕間近と見られている。

 伯建設最大手オデブレヒトは昨年12月、米司法省との司法取引で、05~14年の期間のペルーでの公共事業参入に関連して総額2900万ドルの賄賂を支払ったと認めた。うち2000万ドルがトレード政権期、残る900万ドルはガルシア、ウマーラ両政権期に支払われた。

 英当局は2月初め、トレード政権期に支払われた2000万ドルが、トレードと密接な関係にあるユダヤ系ペルー人ヨセフ・マイマン名義でロンドンのシティバンクに預金されていた事実を確認した。

 マイマンは、同口座から引き出した資金で、トレードの義母(妻の母親)と共にコスタ・リカで「エコテバ」という不動産会社を設立、事業を展開していたとされ、この件でトレードも捜査されていた。

 トレードへの贈賄は、大西洋岸の伯サントス港から秘国太平洋岸の港を結ぶ「両洋間自動車道」の建設事業入札~落札時に支払われたもよう。

 PPクチンスキ現大統領は、トレード政権で経済相を務めたが、3日、「司法は誰にも公平に適用されねばならず、汚職があれば罰せられる」と述べた。ペルー警察は4日、リマ市内の高級住宅街にあるトレード邸を家宅捜査した。

▼ラ米短信   ◎エボ・モラレス大統領が博物館を開場

 ボリビアのエボ・モラレス大統領は2月2日、オルーロ州内の生地オリノカで、「オリノカ民主・文化革命博物館」の開場式を催し、演説した。その折、感涙にむせんだ。

 「民主・文化革命」とは、モラレスが過去10年間、推進してきた改革政策を指す。開館したのは、先住民族重視の新憲法制定、地下資源国有化、経済開発など施政の成果をまとめて展示する博物館で、大統領は故郷に錦を飾った形になる。

 総工費は710万ドル。総面積は1万平方m強。野党は「国費の無駄遣い」と非難している。

▼ラ米短信   ◎米政府が「対玖政策見直し中」

 ホワイトハウス報道官は2月3日、「トランプ政権は対玖政策全般の見直し作業を進めている」と明らかにした。「大統領は全世界の人々の人権保障に関与しており、人権が焦点となる」とも述べた。

 この日は、対玖経済封鎖発動55周年の日。報道官は、「目下、(具体的な決定などは)無い」と付け加えた。

★クーバ最新情勢シンポジウム開催のお知らせ

 2月6日(月)1300~1500、新宿区戸塚の早稲田大学正門に近い小野記念講堂で。主催:早稲田大学ラテンアメリカ研究所。入場無料。
 報告者:伊高浩昭(ジャーナリスト)、田中高(中部大学)、岩村健二郎(早稲田大学)。討論者:高橋百合子(早稲田大学)。司会:山崎眞次(早稲田大学)。 
  

2017年2月3日金曜日

アルゼンチンのセステートタンゴ「オラシオ・ロモ」を聴く

 タンゴ・アルヘンティーノ(亜国タンゴ)の6人編成バンド(セステート)「オラシオ・ロモ」セステートの演奏を2月3日、東京の中野サンプラザで聴いた。オルケスタ・ティピカ(標準編成バンド)の半分の規模だが、若手奏者ばかりで勢いがある。

 このセステートを率いるバンドネオニスタのオラシオ・ロモは力強く巧みな弾きっぷりが魅力的だ。前半の曲目にある「エル・アボリヒート」(可愛いあざみ)は良かった。

 第一バイオリンのウンベルト・リドルフィは、欧州大陸(コンティネンタル)タンゴの名曲「ジェラシー」で聴かせた。ピアノのフルビオ・ヒラウドは全体的に光った。

 踊りは3組。シルビアyガスパル、ビクトリアyリカルド、アグスティーナyウーゴ。ガスパルは日本でお馴染だ。ウーゴ組は昨年、バイレス(ブエノスアイス)の世界選手権大会で優勝した。細かな振りが目立った。

 男女の絡み踊りが中心のタンゴ舞踊は、人間男女のすることだから振りに限界がある。毎回、どんな工夫をして来るのか楽しみだが、今回も少しは新鮮さが出ていた。アクロバットの絡み踊りでない、正統的な踊りを一曲でも加えれば、かえって新鮮さが出るのではないか。

 歌手は、若手のイネス・クエージョ(27か28歳)。人生も、ラ・ビーダ・タンゲーラ(タンゴ人生)も浅く、歌に味が出ていない。バイレス場末のタンゴ酒場で聴く、人生に疲れたような風貌の初老の歌手の太く低く、くぐもったような声の歌が最高だ。

 この全国演奏旅行は1月下旬から3月上旬まで一カ月半の期間に横浜、金沢、松戸、八王子、長崎、東京中野(本日・明日)、名古屋、豊橋、尼崎、福岡、佐賀、広島、高知、大阪、四日市、山形、札幌、仙台、小美玉、上田、栃木、竜ヶ崎、川崎をどさ回りする。

 うち東京、尼崎、神戸、大阪は昼夜2回の興行だ。バイレス・成田の往復の長旅に、この強行日程とあって、初老の歌手には向かないのだろう。

 亜国人総勢13人。曲目は前半11曲、後半12曲。これにアンコールの「ラ・クンパルシータ」が付く。タンゴは古典が多いが、最近の作「夜明けの道」や、ピアソーラ調、ミロンガも盛り込まれている。

 客層はいつもながら老人男女が圧倒的に多い。中野駅で中央線の電車を降りるや、明らかな老タンゴ愛好家たちが群なしていて、会場に向かって動いていた。帰りも同じだ。

 節分とあって、新井薬師から招かれて上京していた、岩手県花巻市東和町の「金津流丹内獅子踊り」がサンプラザ前の広場で踊りを披露した。なかなか良かった。

 今回のセステート日本公演も主催は民音、および各公演地の新聞やテレビ。ラティーナ社が制作協力。後援は亜国大使館。

2017年2月1日水曜日

キューバのヘンリー・リーブ医療派遣団にWHO賞決定

 世界保健機構(WHO)は1月31日、クーバの「ヘンリー・リーブ医療派遣団」に今年度の「公衆医療賞」を授賞することを決めた。先年、西アフリカで猛威を振るったエボラ出血熱の患者治療への貢献が評価された。

 同派遣団は2005年に故フィデル・カストロ国家評議会議長が結成した。エボラ出血熱には医師ら250人が現地入りして対応した。派遣団は、これまでに19カ国に延べ7254人が派遣されてきた。

 「公衆医療賞」は09年創設された。授賞式は5月下旬、ジュネーブで催される。

▼ラ米短信   ◎南米諸国連合(ウナスール)事務総長が交代へ

 南米12カ国が加盟するウナスールの事務総長エルネスト・サンペール(元コロンビア大統領)が1月31日、任期を終えた。14年8月から2年半務めた。サンペールはコロンビアに戻り、内戦和平過程に関与するという。

 キトの同機構本部で31日開かれた加盟国外相会議は、2月いっぱいかけて後継候補を絞り、3月の外相会議で選出することを決めた。

 サンペールは最後の任務報告でトランプ米政権による脅威に触れて、「メヒコに手出しすればラ米に手出ししたことになる」と警告した。「外国人排斥主義と人種主義の国境壁建設や移民送還という驚異の前に合意は困難だ。我々はこの戦略的脅威を冷静に考えねばならない」と指摘した。

 この日の外相会議にはエクアドール(赤道国)、ベネスエラ、コロンビア、ボリビア、アルヘンティーナの5カ国外相と代理が出席。ベネスエラのデルシー・ロドリゲス外相は、「既に複数の事務総長候補の名が挙がっている」と記者団に明かした。

 一方、ウナスールは2月19日実施される赤道国大統領選挙のウナスール選挙監視団の団長にホセ・ムヒーカ前ウルグアイ大統領(現上院議員)を任命した。

 サンペールは主として、ベネスエラでマドゥーロ政権と野党連合MUDとの対話に精力を注いだ。だが成果は上がらなかった。南米では亜伯両大国が右傾化し、かつてのようなまとまりを欠いている。