2011年12月18日日曜日

駐日ペルー大使が熱弁

★☆★フアン・カプニャイ駐日ペルー大使(63)が12月17日午後、立教大学ラテンアメリカ研究所主催の講演会で、質疑応答を含め3時間にわたりペルーを説き、対日関係を語った。静かなたたずまいを保ちながらの熱弁だった。池袋キャンパス「マキムホール」の大教室は満員となった。

    「ペルー情勢と展望-21世紀の秘日関係」と題した講演は1時間20分に及び、ペルーの資源の豊かさ、高度経済成長、マクロ経済の安定、投資環境の良さ、広域貿易態勢の確立、ウマーラ現政権の社会政策など「現代ペルー」 をまず語った。過去20年間の市場開放政策による恐るべき経済と開発の拡大が、統計の数字とともに説明された。

    対日関係では、ペルーに日系人が20万人おり、日本にもペルー人が定住していることなどを挙げて、「秘日両国は太平洋によって隔てられているが、一つの大きな家族だ」と強調した。

    日本の考古学者たちがペルーで発掘を始めてから2008年で50周年を迎えたことに触れ、
その業績を讃えた。

    進行役の伊高(ラ米研「現代ラ米情勢」担当講師)との対談では、12月3日生まれたばかりの「ラ米・カリブ諸国共同体」(CELAC=セラック)について、リオグルー(GRIO=グリオ)やラ米・カリブ首脳会議(CALC=カルク)の延長線上にあると指摘。政治・人権・民主などの問題を話し合う協議機関ではあるが、経済政策が加盟国によって異なるため全球化(グロバリサシオン)問題は議題にならない、と明言した。

    ペルーとしては、チリ、コロンビア、メキシコと組んでいる「太平洋同盟」(アリアンサ・デル・パシフィコ)と、アジア太平洋圏に対する全球化や市場開放について共同戦略を練っていく方針であることを示唆した。

    CELACと、米州諸国機構(OEA=オエア、英語ではOAS=オウエイエス)との関係については、「CELACはOEAの代替機構にはならない」と確言した。また「ラ米・カリブ(LAC=ラック)にとってOEAは大国(米国)との唯一の対話機構として重要だ」と前置きし、「LACは、CELACで協議した議題をOEAに持ち込むことができる」と述べた。

    オバマ米政権は今年3月、「太平洋沿岸パートナーシップ協定」をラ米太平洋岸諸国に呼びかけた。この米国の政策と「太平洋同盟」との関係について、大使は、「北米自由貿易協定(TLCAN=テエレカン、英語ではNAFTA=ナフタ)、アジア太平洋経済協力会議(APEC)、対米2国間自由貿易協定(TLC=テエレセ)など対米協議の場は他にある」とし、「太平洋同盟」は加盟諸国が連携してAPEC地域に進出していくための機関であるとの認識を示した。

    大使は、このほか「太平洋孤(アルコ・デル・パシフィコ)」があり、これにはエクアドール、中米諸国も加盟している」と述べた。「太平洋孤」は環太平洋経済圏との経済交流強化のためのフォーラムで、「太平洋同盟」4カ国、エクアドール、中米6カ国の計11カ国が参加している。

    「高度経済成長でペルー人の認同(イデンティダー=アイデンティティー)が変容することはないか」との質問には、「ペルー人は先住民族、アジア人、欧州人、アフリカ人らが混ざり合った民族であり、その認同は変わらない」と強調し、「経済向上でむしろ誇りが増すだろう」と付言した。

    昨今のカハマルカ州内での金山開発をめぐる地元自治体・住民と政府との反目など、開発に伴う軋轢(あつれき)については、「こうした問題は話し合いによって克服でき、克服すれば、かえって基盤が賢固になっていく」と語った。

    会場を埋め尽くした受講者たちからは約50の質問が寄せられた。大使は一時間にわたって丁寧に答えたが、18時過ぎに時間切れとなった。大使と、通訳を務めた大使秘書の田中由子さんは大きな拍手に送られて、会場を後にした。カプニャイ大使は来年2月初め、任務を終えて帰国する予定。