2012年1月27日金曜日

キューバ軍が「国防準備の年」へ

▼▽▼キューバ政府は1月26日、防衛戦闘能力を維持するための「国防準備の年」を2月1日、恒例の「バスティオン(要塞)戦略的演習」をもって開始すると発表した。

     政府は1991年10月の第4回共産党大会で、侵略軍に対しキューバ人全員で対抗するという「全人民戦争戦略」を打ち出した。「国防準備の年」は同戦略に基づいており、防衛態勢全般の点検が行なわれる。

     わざわざ「年」を定めたのは、チュニジア、エジプト、リビア、イエメン、シリアと、アラブイスラム諸国で政変や動乱が続いてきたことと無関係ではない。

     キューバ政府は、内なる「破壊的集団(反革命派)」と外部勢力が結託して共産党体制を崩壊に導くという陰謀を警戒している。

     最近、米共和党の大統領候補選出の予備選に出馬している候補らが、フロリダ州などでキューバ系有権者の関心を集めるため「カストロ体制打倒支持」などを口にしていることも「無視できない要因」として背景にある。

     2月1日からの1年は、来年1月の次期米政権発足直後までの1年となる。キューバにとっては、オバマ民主党政権の継続が望ましい。だが、伝統的に反カストロ派の在米キューバ人勢力と結びついてきた共和党の政権が復活すれば、キューバにとっては穏やかではなくなる。

     それにカストロ体制にとって最大の同盟国であるベネズエラのウーゴ・チャベス大統領が癌を抱え、先行きが不安なことも深刻だ。チャベスは10月7日の大統領選挙に出馬し4選を狙うが、万が一、親米保守の野党統一候補に敗れれば、両国関係は急速にしぼみかねない。

     潤沢に供給されているベネズエラ原油が来なくなれば、キューバはエネルギー源を大幅に失うことになる。メキシコ湾経済水域内の海底油田を掘削するためのリグがキューバ沖に到着しており、近く掘削が始まるが、キューバが海底油田開発を急ぐのも「チャベス後」を見据えてのことだ。 

  (2012年1月27日未明 伊高浩昭執筆)