2012年8月31日金曜日

「維新」とは復古主義か


★大阪市の現職市長が「維新」を標榜している。144年前、1868年の明治維新に発想の源があるのは疑いない。何が市長の目指す「維新」なのか?
 
市長は最近、旧日本軍慰安婦問題に関する「河野談話」に疑問を挟む発言をした。そして、同談話批判の急先鋒、安倍元首相と「急接近」していると伝えられる。安倍は、戦後最たる右翼(ライトウィング)政権を率いた岸信介の孫であり、「祖父を尊敬する」と強調してきた。
 
日本政界の右翼党である自民党の中の右翼派閥・町村派に安倍は属している。平和憲法の手直しに執念を燃やす安倍は政界における、現代国家主義、復古主義の代表格と目されている。それと連携する構えを見せる大阪市長の「維新」とは、「いつか来た道」に後戻りする復古主義以外の何なのか。思想の自由を求める学校教師への締め付けの態度からも、国家主義や復古調はうかがわれていた。
 
日本は、中国、韓国、ロシアという近隣3国との外交関係がぎくしゃくし、北朝鮮とは外交関係がいまだにない。東シナ海、日本海、オホーツク海の波は昨今、一層高く荒くなっている。そんなときには、A紙が指摘するように「枝でなく幹を見る」政治家、あるいは「木でなく森を見る」政治家が不可欠だ。国際情勢を直視しない、内向きの狭い復古調では何も変わらない。いや、事態を悪化させるばかりだろう。
 
★政治や行政の「能率」を求める大阪市長の政策には、一考に値するものもないわけではない。だが、そうした「能率」に、歴史や思想をめぐる復古政策が伴うとしたら、全くいただけない。何が目指す「維新」なのか。市長は連携を模索する前に、全体像を明確に示すべきである。
 
★マスメディアも、市長絡みの政局報道に熱中せずに、この点を追求すべきだ。