ピースボート「オーシャン・ドゥリーム号」は3月25日昼過ぎ、100余日間の世界周遊航海を終えて、横浜港大桟橋に帰着した。私は半分ちょっとの55日間の船旅だったが、東京から乗船地ブエノスアイレスまでの空路の旅を入れると57日間になる。水案(水先案内人=船上講師)としての今回の旅も、寄港した各地で取材ができ、船内での多くの人々との交流も含め、実り多い旅路だった。
予想していたとはいえ、ウーゴ・チャベス大統領の3月5日の死は衝撃だった。船内で「チャベス後のラ米情勢」という緊急講座を開いたが、船客の半数に当たる450人が熱心に聴いてくれた。
さて長旅の報いで、過去2ヶ月間の情報の空白を埋めなければならない。これなしには先に進めない。ラ米情勢についてのまとめ記事も、少しずつこのブログに復活させたい。
パペーテ・横浜間の最後の16日間の航海では、パペーテから乗船の水案で軍事ジャーナリスト前田哲男さんの太平洋戦争、安保条約、憲法9条の今日的有効性、自衛隊、原爆と原発などをめぐる連続講座が圧巻だった。3月20日の「イラク戦争」開戦10周年の日には、私は前田さんと特別講座を開き、米戦略や報道の観点から、会場を交えて論じ合った。
私は会場からの「なぜ日本のマスメディアは、権力批判という根源的役割を捨てて体制の宣伝機関になり下がってしまったのか」という質問を受け、「戦前の天皇制軍国主義という国体(国の体制)に代わる日米安保・同盟という今日の国体にがんじがらめにされ、多くのメディアと記者が麻痺してしまっている。だからだ」と答えた。
「中国や北朝鮮と政治的・外交的に敵対する状況をいかに打開していくか」という質問に対して私は、「小さな祖国日本、大きな祖国アジア太平洋という新しい認同=アイデンティティーを構築していくのが肝要だ」と応じた。
船客の中に86歳の元従軍看護婦、上野みつるさんがいて、前日19日に特別講演をした。「満州国」で直面した虐殺、戦闘、死、抑留などの地獄絵を淡々と語った。最後を「だからこそ戦争をしてはならない。殺し合ってはならないのです」と、声を振り絞って叫んだ。会場は、深い沈黙と感動に包まれた。
私たち水案仲間は、早すぎる桜花爛漫の横浜を中華街まで歩き、解散宴を張った。
「7月の荒海に挑む平和船」(参議院議員選挙を展望しつつ)
「7月の荒海に挑む平和船」(参議院議員選挙を展望しつつ)