2013年4月3日水曜日

サンパウロ州が旧ブラジル秘密警察の文書を公開


 ブラジルの最重要州サンパウロ州は4月1日、軍政独裁期(1964~85)の人権蹂躙に関する機密文書100万点の電子網向け公開を開始した。軍政時代、軍人大統領の直属機関だった秘密警察「政治・社会秩序局」(DOPS=ドプス)のサンパウロ州支部(DEOPS)の文書で、ゲリラ組織の要員として迫害された経験のあるジルマ・ルセフ現大統領の要請で、同州真実委員会などが公開の準備をしていた。

 64年の軍事クーデター当時のジョンソン米大統領がクーデターを率いて政権に就いたウンベルト・カステロ=ブランコ将軍を熱烈に祝福する書簡、ブラジル軍政と米大使館・総領事館との密接な関係を示す文書も含まれている。在サンパウロ米総領事館の米人職員が政治囚を拷問した事実があるが、その当人らしい人物の記述もある。

 強制失踪者、逮捕・拷問・殺害された人々、殺害犯である官吏、多数の監視対象者らの氏名を記した名簿もある。ルイス・ルーラ前大統領は監視対象者で、80年に逮捕されている。サッカーの王様エジソン・アランテス=ド・ナシメント(ペレー)も対象者だった。

 公開文書の電子化作業は来年まで続けられる。専門家は、DOPS長官だった故ロメウ・ツーマが、決定的に重要な文書は破棄していた、と見ている。ブラジルには、軍政が民政移管の前提として定めた恩赦法が今も有効なため、人権犯罪を断罪しにくい事情がある。裁けないからこそ、文書公開も可能になったと言える。

 軍部保有の機密文書は依然未公開だが、その公開を求める声が高まっている。