グアヤキルと聞いて、すぐに思い浮かべるのは昔、アンデス諸国南部の解放者ホセ・デ・サンマルティンと、同北部の解放者シモン・ボリーバルが会談した歴史的な港町という史実だ。
エクアドール最大の都市で、すべてを平然と呑み込んでしまいそうな大河グアヤスの河口に開けた熱帯の、人間がうごめく街である。
日本人ならば、かつて野口英世が黄熱病の研究のため滞在した地だと知っている。その銅像がある。
新しくは、若き日のエルネスト・ゲバーラが友人の意見をいれて船でパナマに渡った港でもある。そこから北上し、やがてはクーバ革命に参加することになる。
現代の旅人にとっては、ガラーパゴス諸島に向かう空路の拠点であろう。
また、ラファエル・コレーア現大統領が登場するまで跋扈していた「政党割拠支配政治」(パルティートクラシーア)の一大牙城で、バナナ財閥が支配している。グアヤキルは、一にバナナの積み出し港である。
この港町で去年12月28日夜、若い日本人新婚旅行夫妻が、おそらくタクシーを選び間違ったがゆえに殺傷された。
本日(6日)フジTVから求められ、台場のスタジオに行き、1800時のニュース番組向けに数十秒間、夫妻の事件に関して言及した。
魅力あるラ米は、奈落と板一枚で繋がっている。亡くなった新郎の無念と、生き残った新妻への何としても生きていってほしいという思いが、私の脳裏に拡がっていた。