月刊誌「世界」7月号(岩波書店)に、「貧乏であることが一つの選択肢となる社会を築く」という、極めて興味深いインタビュー記が掲載されている。『雇用なしで生きる』の著者フリオ・ヒスベールに、。ジャーナリスト工藤律子がマドリードで会見し、まとめた。
ヒスベールは、銀行勤務の傍ら、既存の資本主義経済でない「もう一つの経済」を確立し広める研究を続け、「もう一つの銀行構想(IABA=イアバ)」を仲間とともに運営してきた。経済力でなく人間を評価して資金を貸す銀行だ。構想は、既に各地で流通している地域通貨の発想と通底する。
「時間銀行」の発想が面白い。従来のボランティアの概念を超えるもので、助けられる側も他者に貢献すべき資質を見つけ提供できるようになる。いわゆる弱者も自信を得て、「自己肯定感」が向上する。しかしアフリカなどの発展途上国には「時間銀行」がない。それは、「私でなく、私たち」という集団的生存を重視する共同体が生きているからという。ラ米の先住民社会も同じだ。
この優れたインタビュー記事を読むことを、お勧めする。読者の脳裏には、日本社会の欠陥も浮かび上がることだろう。
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