2015年12月24日木曜日

宇田川彩著『アルゼンチンのユダヤ人』を読む

 風響社のブックレット≪アジアを学ぼう≫別刊9で、「食から見た暮らしと文化」という副題が付いている。60ページ、800円だ。含蓄ある、さまざまな記述が登場する。その一部を紹介する。

 食べ物を分け与えることは、食べ物に本来的に備わっている性質である。他人に食べ物を分け与えないことは、食べ物の精髄を殺すことに等しく、自分に対しても他者に対しても、その食べ物を破壊することになる。

 ユダヤ教には、喜捨という重要な倫理がある。貧者への喜捨は、社会に公正をもたらす。自分、家族、身近な人々以外の人々と食べ物を分かち合うことで繋がりが拡がる。

 ユダヤ人にとり、他のユダヤ人の内臓を体内に移植することは、「適正な食べ物」をとり込むことと同義である。ある学者は、臓器移植は人肉食と原理的に何ら変わらない、と指摘した。

 この本の著者は、ブエノスアイレスを中心に亜国で2年間調査活動した新進気鋭の文化人類学者である。