2016年1月17日日曜日

ベネズエラが60日間の「経済非常事態」を発動

 ベネズエラのニコラース・マドゥーロ大統領は1月15日、野党勢力が圧倒的多数を占める国会で施政報告演説をしたが、これに先立ち、60日間の「経済非常事態」を発動した。

 その内容は、物資供給を満たすため民間企業が保有する財を活用することや、通貨ボリーバル紙幣の国外持ち出し・国内持ち込みを制限すること、など。

 中央銀行によると、昨年1~9月の累積インフレは108・7%。その間、GDPは4・5%縮小した。

 マドゥーロ大統領は演説で、「経済非常事態に対応するため国内団結と建設的対話が必要」と前置きし、「石油利益中心の経済は破綻しつつあり末期的症状を示しており、他の経済形態に飛躍的に移行せねばならない」と強調。「通貨・物価騰貴のためのメカニズモを破棄し、通貨が残酷な資本主義に飲み込まれないようにしよう」と訴えた。

 大統領はまた、「ベネスエラは経済的暴風に見舞われている。二つの経済モデルが対立しているが、社会主義こそが唯一のモデルだ。民営化を招く新自由主義は駄目だ。民営化法を制定して私を倒せるだろうか? 断じてノーだ」と言い切った。

 チャベス前政権が発足した1999年2月から2014年まで、歳出の62%は社会投資だった、とも強調した。

 昨年8月から閉鎖が続いているコロンビア国境に関しては、「安全が確保されるまで国境再開はない。武装勢力がコロンビアから侵入しないような、ベネスエラに武装地下勢力が存在しないような国境にしよう。密輸、準軍部隊、麻薬との関わりを持たないよう、国境地帯の各当局は踏ん張っている」と指摘した。

 大統領は、「憲法のお陰で野党は国会で多数派を形成することができた。2015年は革命が新しい局面に置かれた年として記憶されよう」と前置きし、「平和醸成のため、あらゆる議題で対話しよう」と野党に呼び掛けた。

 野党は街頭暴力事件に加担し禁錮刑に処せられている右翼政治家らの恩赦を求めているが、大統領は「恩赦を云々する前に、<正義・真実・平和委員会>を設立しよう。殺人者免罪を考えてはならない」と釘を刺した。

 さらに、「分立する権力間の均衡を破ろうとしてはならない。生じた(行政と立法の間の)<ねじれ>に対応するのは難しいが、憲法を遵守し、公的権力を尊重し、反革命行為に陥ってはならない」と警告した。

 ヘンリー・ラモス国会議長は大統領報告演説を受けて演説、「あなた方は(チャベス派政権が)17年続いた今ようやく対話を求めた。現在の経済モデルは正されねばならない。誤りに耐え続ければ、誤りは一層深刻になる。あなたは極めて困難な状況を引き継いだと思う。野党は、あなた方が間違いを正し、誠実な対話を求めるのであれば、応じる用意がある」と述べた。