ベネスエラのニコラース・マドゥーロ大統領は3月18日未明、ハバナに到着、空港でミゲル・ディアスカネル第1副議長の出迎えを受けた。大統領とラウール・カストロ議長は18日会談し、クーバが4月中旬の第7回共産党大会で決める2016~30年15年計画への原油援助をはじめとする両国間の協力関係について話し合い、協定を結ぶ。
だがバラク・オバーマ米大統領が20日~22日、歴史的なクーバ公式訪問を実施する直前のベネスエラ最高指導者の訪玖に政治的、外交的狙いがあるのは明らかだ。
オバーマは3日、昨年3月9日に出した政令を1年間延長することを決めた。「ベネスラは米国の安全保障にとって脅威であるため、米国は非常事態を発動する」という内容。この突拍子もない政令にベネスエラだけでなく国際社会はあきれはて、米政府を厳しく批判した。クーバとベネスエラを分断し、マドゥーロ政権潰しの圧力をかける狙いが見え見えだからだ。
ラウール議長は政令延長の報を受け「ベネスエラへの無条件支持」を表明した。だがオバーマは続いて14日、「ベネスエラには誰もが正統と認める政府が必要だ」という趣旨の発言で、マドゥーロ政権崩壊を期待する、あからさまな内政干渉をした。
ベネスエラ国会で圧倒的多数を占める保守・右翼政党連合は、米政府の措置や発言に勇気づけられて、政府への対決姿勢を先鋭化させている。
ベネスエラ政府、政権党PSUV、国軍などは、オバーマ政権に激しく反駁、米国や野党への敵愾心を顕わにしている。
一方、オバーマを迎えるクーバは、オバーマがハバナで反体制派代表とも会合するのを快くは思っていない。平和裏にクーバ社会主義体制を転覆させる「和平演変」策をオバーマが公言してきたのを承知の上で対米国交を再開、オバーマを迎え入れるわけだが、来訪直前に社会主義体制厳守という基本的立場を新たに内外に向け鮮明にしておくのが得策だ。
ラウールは、マドゥーロをこの時期に迎えたことで、フィデル・カストロ前議長と故ウーゴ・チャベス前大統領が築いた両国の思想的同盟関係を敢えて誇示した。
マドゥーロはハバナで、オバーマが会わない予定のフィデルとも会談するが、これによってクーバとベネスエラの「対米共通姿勢」を国際社会にあらためて示す。
ベネスエラのラファエル・ラミーレス国連大使は17日、米国はラ米を親米派とそうでない派に分断しようとしている、と非難した。オバーマはクーバに続いて訪問するアルヘンティーナのマクリ保守・右翼政権を南米外交の新しい同伴者に選んでいる。ベネスエラは、チャベス派変革政権を潰し、マクリ政権を南米での新自由主義路線復活の象徴にするのが米国の意向と見ている。
ベネスエラ最高裁は18日、マドゥーロ政権が発動中の「経済非常事態」を60日間延長するのを認めた。国会が17日延長を拒否したのを覆した。
ベネスエラ原油は18日、1バレル=30・75ドルだった。先週末より1ドル上がっている。