2017年8月12日土曜日

★トランプ米大統領がベネズエラへの軍事攻撃も選択肢と表明▼ピノチェー軍政の苦い経験持つチリはトランプ発言を糾弾▼制憲議会(ANC)は州選挙の10月実施を審議▼新検事総長は検察庁の腐敗を摘発

 ドナルド・トランプ米大統領は8月11日、休暇先のニュージャージー州で記者団からの質問を受けて、「ベネスエラに対し必要ならば軍事的選択をすることももありうる」と述べ、軍事攻撃する可能性が残されていることを示唆した。

 トランプは、レックス・ティラーソン国務長官、Hマクマスター安保担当補佐官、ニッキ・ヘイリー国連大使との会談後、記者団と会った。米国防省は同日、現時点でベネスエラへの出撃命令は受けていない、と述べた。

 大統領の軍事的脅迫発言は、ベネスエラのニコラース・マドゥーロ大統領のチャベス派政権および支持派人民を「抗米」で団結させる一方、保守・右翼野党連合MUD内の極右勢力にテロリズムや破壊活動を焚きつける効果を持つ。

 米国は、ブッシュ政権が2002年4月にチャベス前VEN政権打倒の軍事クーデターを仕掛けて失敗。オバマ前政権は15年、ベネスエラを、あろうことか「米国の安全保障にとって重大な脅威」と位置付け、マイアミに司令部を置く米南方軍を中心にクーデター計画を練ってきた。

 当時の南方軍司令官だったジョン・ケリーが今やトランプの首席補佐官に収まり、軍事攻撃の可能性が増している。また共和党極右クーバ系2世の上院議員マルコ・ルビオが強硬策をトランプに入れ知恵してきた。

 ベネスエラのエルネスト・ビジェガス情報相は11日、「シモン・ボリーバルの祖国に対する、かつてなかったほど傲慢で重大な脅迫だ」と指摘した。またブラディーミル・パドゥリーノ国防相は、「極端極まりない、常軌を逸した言動だ」と糾弾した。

 チレのエラルド・ムニョス外相は首都サンティアゴで、軍事侵攻の脅迫を糾弾した。1973年に米国に支援された流血の軍事クーデターでアジェンデ社会主義政権を倒されたチレだが、同政権の流れを汲むバチェレー現政権は、軍事侵攻絶対反対の立場をとっている。

 ヂウマ・ルセーフ前伯大統領は、米国がベネスエラ攻撃の材料にしてきた内外報道について、「右翼が起こした暴力事件であるのに、メディアは無責任で馬鹿げた報道をしてきた」と厳しく批判した。

 これに対しトランプ政権べったりのPPクチンスキ秘大統領は11日、ベネスエラのディエゴ・モレーロ駐秘大使に国外退去を命じた。マドゥーロ大統領は、報復としてペルー臨時代理大使に退去を命じた。秘大使は既に本国に召還されている。マドゥーロは、「PPクチンスキはベネスエラの敵であり、ラ米統合の破壊者だ」と非難した。

 一方、ベネスエラ制憲議会(ANC)は11日、12月10日実施予定の州知事・州会議員選挙を10月繰り上げ実施するための審議を開始した。

 パドゥリーノ国防相は11日、バレンシア市の陸軍基地を6日攻撃した武装集団の首謀者フアン・カグアリパーノ国警隊退役大尉と、現役中尉ジェファーソン・ガルシアをカラカス市内で逮捕した、と発表。「極右テロ集団に打撃を与えた」と述べた。

 タレク・サアブ検事総長は、「官僚主義と腐敗だらけの検察庁を掃除している。幹部職250人を調査のうえ更迭しており、全国24支部検事長も交代させつつある」と明らかにした。賄賂の有無で起訴するか否かを決めることもあったという。

 ビジェガス情報相は10日、カラカス市内に創設された「ラ米伝達大学」(ULAC)の開学式で、「学生は、国際メディアの虚偽報道に対抗するジャーナリズムを学ぶ」と強調した。

 ANC議員ディオスダード・カベージョ(政権党副党首)は9日、カラカスの米大使館に勤務するVEN人退役大佐1人を8日逮捕した、と明らかにした。この男は、カベージョの所在を調べ回っていたという。