2018年4月7日土曜日

ベネズエラ大統領選挙の状況▼ファルコン候補は通貨の米ドル化掲げる▼野党連合は統一候補を擁立できず▼仮想通貨エル・ペトロの相場

 ベネズエラ大統領選挙は5月20日実施される。選挙戦も本格化しつつある。国家選挙理事会(CNE)は3月4日、出馬する5人の候補を発表している。
 最有力候補は、再選を狙う「ソモス・べネスエラ運動」(MSV=「私たちはベネズエラ」運動)のニコラース・マドゥーロ大統領。
 政権党・ベネズエラ統一社会党(PSUV)および共産党など左翼諸党の連合「大愛国軸」を背後に持つ。
 選挙母体MSVは、旧来のチャベス派と一線を画し、マドゥーロ色が濃い。制憲議会(ANC)議長のデルシー・ロドリゲスが書記長を務める。

 二番手は、ヘンリー・ファルコン前ララ州知事。自党「進歩主義前哨」(AV)に加え、伝統政党・キリスト教社会党(COPEI)および社会主義運動(MAS)が支持。元チャベス派で、反チャベス派にも支持者がいる。
 ファルコンは、ベネズエラ通貨を従来のボリーバルに替えて米ドルにすることを提案、物議を醸している。

 次いで、福音派牧師で実業家のハビエル・ベルトゥッチ。「変革への希望」から出馬。さらに「89人民政治統合」(UPP)のレイカルド・キハーダ、元チャベス派で無所属のルイス=アレハンドロ・ラッティ。

 一方、旧野党連合MUDは昨年7月以来、ANC議員選挙ボイコットし、10月の州知事選と12月の市長選で惨敗した。内部分裂して有名無実化し、大統領選挙に統一候補を送る力も失ってしまった。
 これに代わって3月8日、「自由ベネズエラ拡大戦線」(FAVL)が発足した。政党、教会、大学、学生、経営者団体、一部労組、NGO、元チャベス派などの寄り合い所帯。MUDも参加する形をとっている。
 同戦線も独自候補を樹立できず、ファルコンか、ベルトゥッチに投票する可能性がある。マドゥーロを落とすためだ。

 ホルヘ・アレアサVEN外相は4月5日、アゼルバイジャンの首都バクーで開かれた非同盟諸国運動(MNOAL)外相会議で議長を務め、「米政府によるベネズエラへの攻撃」を糾弾した。ベネズエラは同運動の議長国。同外相は7日イランを訪問、テヘランで外相会談に臨んだ。
 またブラディーミル・パドゥリーノ国防相は5日モスクワでの第7回国際安全保障会議に出席、「オバマ前米大統領はベネズエラを<米国にとって並外れた脅威>と言い、これをトランプ現政権が引き継いでいる」と指摘。「我々は米国による<緩やかなクーデター>と戦っている」と述べた。
 同国防相はVEN露国防相会談では、兵器協力などを話し合った。

 マドゥーロ大統領は6日、ルーラ元大統領逮捕を決めたブラジルを「犯罪的迫害」と糾弾した。
 米共和党のピート・セションズ下院議員(下院法制委員長)が4月2~3日カラカスを訪問、マドゥーロ大統領と会談していたことが6日明らかになった。
 ベネズエラ政府は、国営石油PDVSAによる対米原油輸出をトランプ政権が打ち切るのを阻止するため、セションズに善処を求めた可能性がある。
 一方、米共和党下院議員ジョー・ウィルソンが、カラカスに本部のあるラ米多国籍TV放送「テレスール」が米国内でベネズエラ政権の情宣工作活動をしてるか否かを調査するようジェフ・セションズ司法長官に書簡で2月末に要請していたことが6日明らかになった。

 ベネズエラ政府が3月創設した仮想通貨「エル・ペトロ(石油)」の同月平均相場は1P=49・04ユーロだった。この仮想通貨は原油1b当たりの国際相場に連動する。