ドナルド・トランプ米大統領は昨年8月、マドゥーロ・ベネズエラ政権打倒のため軍事侵攻を提案した。AP、CNNなど米メディアが、米高官からの情報として、7月4日報じた。
トランプはホワイトハウスで主要閣僚や補佐官らと同政権への制裁政策を検討中、「なぜ米国は南米のその国(VEN)に侵攻できないのか」と切り出した。
その場にいたレックス・ティラーソン国務長官(当時)やHRマクマスター安保担当補佐官(同)は唖然としたが、軍事攻撃を掛けた場合、ラ米諸国から米国が得てきた支持が損なわれるなど否定的影響が出ることを説明、思いとどまらせようと努めた。
するとトランプは、「域内にはグレナダ侵攻(1983)、パナマ侵攻(1989)など成功例がいろいろある」と返したという。
トランプは同じ8月の17日、「米国には軍事攻撃を含む様々な選択肢がある」と口にした。その直後、マイク・ペンス副大統領はコロンビア、アルゼンチン、チリ、パナマを歴訪、軍事侵攻への支持を打診した。
この報道を受けたニコラース・マドゥーロ大統領は4日、国軍将官昇進式の場で垂れた訓示で国軍にあらためて忠誠を誓うよう求めた。そして「VENの資源を狙う帝国主義の(侵攻)意欲を削ぐため、我々は強力な軍部を必要としている」と強調した。
さらに、「去年、ある元米高官は、VEN野党勢力幹部らが訪米した折、同幹部らに、VENへの軍事侵攻を米政府に要請するよう求めた、と明らかにした」と述べた。
制憲議会のディオスダード・カベ―ジョ議長は4日、「米政府に祖国侵攻を要請した野党幹部らを反逆罪容疑で捜査し始めた」と発表した。
一方、ボリビアのエボ・モラレス大統領は4日ラパスで記者会見し、「昨年秋、国連総会に集まったラ米首脳たちに米政府はVEN侵攻への支持を求めたが、ラ米側は一致して拒否した。その場にいたある首脳から聴いた」と暴露した。
エボはまた、ペンス(米副大統領)は軍事侵攻支持を勝ち得るためラ米諸国を歴訪した
と指摘した。ペンスは昨年8月17日のトランプ発言を受けてコロンビア、アルゼンチン、チリ、パナマを歴訪。最近はブラジル、エクアドール、グアテマラを訪問した。
ブラジル、チリ、エクアドールの首脳や外相は、「VEN問題での平和裏の解決」を主張し、暗に米国の軍事侵攻計画への反対を示している。
老舗政党・民主行動党(AD、キリスト教民主主義)は4日、保守・右翼野党連合MUDを離脱した、と表明した。理由を「MUDは些細なことで内部対立し、昨年来、事務局長を選出できないままだ。国内向け政策も策定せずに、マドゥーロ政権を国際社会の協力という奇跡頼みで倒そうとしてきた」と説明した。
ADは5月の大統領選挙に出馬、健闘して敗れたヘンリー・ファルコン候補を支持した。MUD極右は、選挙をボイコットした。
別件だが、シモーン・セルパVEN経済相は3日、オリノコ油田での原油生産拡大のため中国が50億ドル融資してくれることになった、と発表した。原油生産拡大には200億ドルの投資が必要で、あと150億ドル足りない。
▼コレア前赤道国大統領を国際手配
エクアドール政府は7月3日、ベルギー在住のラファエル・コレア前大統領を「拉致事件関与容疑」で国際手配し、ベルギー政府に手配への協力を求めた。
拉致されたのは、ボゴタに逃亡していたフェルナンド・バルダ元国会議員。スパイ用電子機器不法取引などで追及されていた。
VENボリビア両国大統領はコレアへの連帯を相次いで表明し、「コレア氏に対する迫害」と糾弾。これを受けて赤道国政府は声明で、両大統領の発言は赤民主制度の名誉を傷つけるものと非難した。
▼メキシコ次期政権が大麻合法化検討か
アムロ次期大統領の下で内相就任が内定しているオルガ・サンチェス元最高裁判事は7月4日、麻薬取締政策の一環として、大麻消費を罰しないようにすることをアムロ氏に提案する、と明らかにした。
また芥子を製薬会社や薬局に売るのを合法化することも提案すると述べた。芥子からできるモルヒネは医療用に使われる。だがモルヒネからは麻薬ヘロインが作られる。