2014年12月23日火曜日

★ニカラグア横断運河建設工事始まる

 ニカラグアの太平洋岸ブリート港とカリブ海岸のプンタゴルダ河口を結ぶ総延長278kmの「ニカラグア大運河」の着工式が12月22日、太平洋岸のりバスで行なわれた。モイーセス=オマール・アジェスレベンス副大統領、工事を請け負った香港HKNDの王靖(ワンジン)社長らが出席した。

 副大統領は、「大運河はニカラグアの歴史と地理だけでなく、経済を大きく変える」と述べた。王社長は「この日は歴史に刻まれる」と語った。

 運河建設は昨年6月に正式決定した。総工費は当初400億ドルと見積もられていたが、今では500億ドルとされている。ニカラグア政府とHKNDは、諸外国や国際金融界に融資を仰いでいる。

 運河は幅230m~520m。深さ30m。建設中のパナマ運河第3閘門式水路よりも規模が大きい。278kmのうち105kmは、太平洋岸に近いニカラグア湖(コシボルカ湖)を通過する。このため、湖の環境汚染が最大の問題となっている。

 工事は、運河建設地への接近路確保のため、自動車道建設、港湾整備、鉄筋・セメント製造工場などの建設から始まる。最終的には、運河両出入地の深海港、運河沿いの自動車道、空港、人造湖、観光複合体、自由貿易港などが建設される。

 運河開通時期は2020年代前半とされる。開通すれば、世界海洋貿易の5%を担うことになるという。工事はニカラグア人20万人に職を与えると期待されている。この国の経済成長率は4~5%だが、政府は、工事開始後の2015年は10%、16年は15%に膨らむと計算している。

 ニカラグア横断運河構想は19世紀初めからあったが、20世紀初めのパナマ運河建設に先を越された。ダニエル・オルテガ現大統領は、貧困脱出と、自ら歴史に名を残すことを願って、一大土木事業に挑んだ。

 だが、建設用地として土地を奪われる農民は激しく反発している。この日もリバス近郊で道路を封鎖し、タイヤを燃やして抗議した。環境団体も反対している。環境調査を請け負っている英ERM社は、調査結果を提出するが工事続行・停止などの助言はしない、と表明している。

 かつてオルテガと同志だった作家セルヒオ・ラミーレスは、「悲劇的な日だ。主権が大国に渡される」と嘆いた。首都マナグアでは、オルテガ主催の着工行事が催されることになている。

 パナマをはじめラ米諸国は、完成への懐疑心を抱きつつ、工事開始を見守っている。