ベネスエラのニコラース・マドゥーロ大統領は12月12日、カラカス市内の陸軍ティウーナ要塞で演説、政府や政府機関で要職にある軍人たちに対し、これまでの貢献を讃えると同時に、兵営に復帰し国防に専念するよう求めた。
国軍の将軍、佐官らの多くは、陸軍中佐だった故ウーゴ・チャベス大統領に起用され、政府の要職に就いたが、マドゥーロ現政権になってからも、その状態が続いていた。「脱軍人」は政府の「文民化」強化と、軍内部の規律強化を図るためだ。
大統領はまた、チャベスが始めたボリバリアーナ革命(解放者シモン・ボリーバルの遺志を継ぐ変革政策)の継続、主権防衛、人民のための国営石油会社PDVSA運営への覚悟を軍人たちに訴えた。
6日の国会議員選挙での政権党惨敗を受け、全閣僚は辞任した。日本時間14日正午、現地から届いた情報によると、新国防相には国会議長ディオスダード・カベージョが就任する見込み。カベージョも陸軍士官出身で、チャベスの腹心の一人。現政権で大統領に次ぐ実力者だ。
外相には、米州諸国機構(OEA)でチャベス路線外交を守ってきた外交官ロイ・チャデルトンが有力。またチャベスの娘2人も登用される可能性がある。<背水の陣>を敷いて難局に対応する大統領の決意を表す人事になるだろう。新閣僚の顔ぶれは15日発表される見込み。
今選挙で政権党は42%の投票があった。圧勝した野党の「民主連合会議」(MUD=ムドゥ)は、これを侮れない。政府と国会に「ねじれ」が生じたが、正常な施政には対話が不可欠だ。
MUDが大勝に酔い驕り、建設的言動をとらなければ、早晩支持を失うこともあるだろう。なぜなら、有権者の多くは、MUDを積極的に支持したのではなく、政府の経済政策の失敗を糾弾して野党に票を与えただけだからだ。
MUD内の極右勢力は、一気に政治・社会の撹乱工作に出て、来年4月以降、大統領罷免の是非を問う国民投票に持ち込もうという戦略を描いているようだ。
だが、チャベス派政権下で17年間、手厚い社会保障の恩恵に浴してきた人民大衆は、簡単に財界・米国寄り姿勢の強いMUDを支持し続けることはないだろう。MUDにとっては、どこまで人民主義政策を採り入れることができるかが政権奪取の鍵とる。
一方、政府は批判の的である官僚主義、腐敗、不効率、犯罪激化に早急に対応しなければ、支持挽回は覚束ない。マドゥーロ大統領は敗北直後、「民主でなく反革命の勝利だ」と述べたが、このような発想では状況に対応できまい。
チャベスとマドゥーロの「革命の師匠」を自他ともに認めるフィデル・カストロ前玖議長は12月10日付の公開書簡で、チャベス路線が内外で果たしてきた多大な人民主義政策の実績を讃え、マドウーロを励ました。