サンパウロ検察は3月9日、ルイス=イナシオ・ルーラ=ダ・シルヴァ前ブラジル大統領を、詐欺、偽りの申し立て、不法結託、資金洗浄の疑いで起訴した。同じくマリーザ=レチシア夫人と長男ファビオも「共犯」として起訴された。
検察は4日には、サンパウロ郊外サンベルナルドドカンポの自宅など、ルーラと家族が所有する不動産5カ所を捜索した。その際ルーラは3時間拘禁され、事情聴取された。
容疑の中心は、ラ米最大の建設会社オレブレヒトなどブラジルの建設業界が受注目的で国営石油ペトロブラス重役および、ペロロブラスの政策決定に影響力を持つ政治家に支払った賄賂、およびペトロブラス社が政治家に贈った総額6300万ドルの資金をめぐる「ラヴァ・ジャト」と呼ばれる贈収賄事件への前大統領の関与にある。
ルーラは2018年の次期大統領選挙に政権党PT(労働者党)から出馬する方針だが、起訴は出馬を危うくする。PTのヂウマ・ルセフ現大統領も昨年来、国会で弾劾される可能性に直面している。
南米右傾化の潮流にも乗ったブラジルの保守的「体制」は、ルーラ起訴で、ついに「本丸」に切り込んだと言える。
ルーラは、サンパウロ州の海浜に豪華アパルタメントを所有するが、これがペトロブラスの不法資金によって獲得された不動産として直接的な捜査対象となった。検察は、このほか農場などの入手の経緯も捜査中。
一方、法廷は8日、オデブレヒト社の前社長(最高経営責任者)マルセロ・オデブレヒト(47)に贈賄罪などで禁錮19年4カ月の実刑判決を言い渡した。他の4人の元重役も同じ禁錮刑となった。また、収賄したペトロブラス元重役3人と仲介者1人に6~23年の禁錮刑の判決が下った。
ルセフ大統領にとってルーラは政治の師であり後見役。法廷が起訴を受け入れ逮捕されれば、弾劾の可能性も強まる。そこで不逮捕特権のある閣僚にルーラを急遽任命する方策を検討中とも伝えられる。
ルーラ政権期、国会で少数派だったPTは多数化工作に迫られ、その際、ペトロブラスから資金が流され、議員買収に使われた。「ラヴァ・ジャト」事件は、そこに源流がある。