ベネスエラの「対ゴルペ・コマンド」(対クーデター司令部)のタレク・エルアイサミ議長(執権副大統領)は1月11日、武器を携行していた野党「人民意志」(VP)所属の国会議員補欠ヒルベルト・カロをテロリズム関連容疑で逮捕した、と発表した。
それによると、カロ容疑者は8日、コロンビア国境のタチラ州内で3人組と会合し、コロンビアに密入国。ククタ市に滞在し、9日未明、ベネスエラに密帰国した。国家情報局(SEBIN)が監視下に置いていた。
SEBINは11日、カラボボ州バレンシア近郊でカロを逮捕した。ベネスエラ国軍の武器である軽自動小銃FAL、プラスティック爆発物C4などを所持していた。カロには党員仲間のベネスエラ人女性が同行していた。その女性はスイス在住だが12月帰国していた。
カロは襲撃計画などを記した書類も携行、そこには暗殺対象の要人名簿が含まれていたという。カロはカラボボ州内のSEBIN拘置所に拘禁され、取り調べを受けている。
発表によると、カロは1985年に殺人を犯し、93年麻薬保持で逮捕され、禁錮刑を科されていたが、2013年出所。14年のグアリンバ(反政府街頭暴力事件)に加担していた。グアリンバ教唆罪などで服役中のVP党首レオポルド・ロペスに近いとされる。
「対ゴルペ司令部」は10日発足したばかり。泳がせていたカロの逮捕で最初の成果を挙げた。同司令部は、エルアイサミ議長ほか9人で構成されている。その顔触れは以下の通り。
政治主権・安全保障・平和担当副大統領カルメン・メレンデス、外相デルシー・ロドリゲス、国防相ブラディーミル・パドゥリーノ、内務・司法相ネストル・レベソル、政権党国会議員ディオスダード・カベージョ、SEBIN長官グスタボ・ゴンサレス、国家民兵隊司令官ベガ・ゴンサレス、国家警察長官フランクリン・ガルシア、対軍事諜報局長イバン・エルナンデス。
ニコラース・マドゥーロ大統領のチャベス派政権は10日、任期6年の3分の2が経過した。憲法が定める大統領罷免国民投票が今後実施され、同大統領が罷免された場合、エルアイサミ執権副大統領が暫定大統領として残る任期を全うすることになる。
マドゥーロは去年、VPも加盟している保守・右翼野党連合MUDから罷免同国民投票実施を要求されたが、実施請求有権者名簿の不備を理由に請求を却下した。1月10日以前に実施され大統領が罷免されていたとしたら、政権党は30日以内の大統領選挙実施を迫られることになっていた。そうなれば政権党が敗れる公算が大きいと見られていた。
次期大統領選挙は来年末ごろになるが、政権党はエルアイサミ副大統領をはじめ何人かの大統領候補をそろえており、約2年間かけて選挙準備をすることができる。
「対ゴルペ司令部」は、MUDを筆頭とする反政府勢力による体制不安定化戦略を封じ込めるのが狙い。ベネスエラに対し厳しく臨もうとしているトランプ次期米政権の登場に備えた体制引き締め措置の一環でもある。