ベネスエラは4月19日、全土で緊張が高まる中で不気味な朝を迎えた。1810年のこの日、ベネスエラ独立派は宗主国スペインに対し独立を叫び、独立闘争を開始した。祝日だが、政府支持派と反政府派はそれぞれ、首都カラカスをはじめ全国各地で最大動員をかけ、対決する構えだ。
ニコラース・マドゥーロ大統領のチャベス派政権は、「米政府主導で野党連合MUDが策謀しているゴルペ(クーデター)を潰すため」行動すると主張。フリオ・ボルヘス国会議長以下の保守・右翼野党連合MUDは、マドゥーロ政権打倒を目指して展開する。
マドゥーロ大統領は18日、民・軍共同で治安を維持する「対ゴルペ作戦」である「サモーラ計画」を発動した。全国で陸海空軍および国家警備隊(GNB)の4軍(16万5000人)、国家警察と、予備役(2万5000人)を含む民兵隊(MNB、10万人)が出動、治安維持に当たっている。
カラカス一帯では18日夜から主要自動車道の閉鎖と検問が始まり、早朝の首都の街は閑散としていた。当局は18日までに、ゴルぺ誘発を狙う破壊活動を準備していた武装集団の一部を逮捕した、と明らかにしている。
ボルヘス議長は18日、国会内で声明を発表、国軍に「憲政と人民の側に立ってほしい」と要請、暗に政府との離反を求めた。国軍は17日、「政府無条件支持」を大統領に誓っている。
MUDを支援するトランプ米政権は18日、国務省声明を通じて、マドゥーロ政権に「対話による問題解決、憲政擁護、囚人釈放、選挙早期実施」を呼び掛けた。17日のラ米11カ国政府の共同声明に沿った要求だ。
デルシー・ロドリゲス外相は18日、同11カ国政府に対し、「粗暴な内政干渉を排撃する。反政府勢力に蛮行を保障する低俗な二重基準だ」と糾弾。「国際法に違反して内政干渉している。彼らは自分たちの国で人権を蹂躙しながらベネスエラを統治しようとしているが、馬鹿げたことだ」と反撃した。米政府に対しても同様の反応を示すはずだ。
外相はまた、ベネスエラ攻撃を続けている米州諸国機構(OEA)について、「政権党指導部にOEA脱退論があるが、OEA内に留まって闘う」と述べた。
OEAのルイス・アルマグロ事務総長は18日、ドミニカ共和国(RD)の首都サントドミンゴでレオネル・フェルナンス前RD大統領とベネスエラ情勢をめぐって会談した。フェルナンデスは、南米諸国連合(ウナスール)のベネスエラ対話仲介班の元首脳3人の一人。マドリードでは19日、スペインとメヒコの外相がベネスエラ情勢について会談した。
マドゥーロ大統領は17日の民兵隊創設記念日の式典で、現在10万人の民兵を50万人に増やし、各要員に自動ライフル銃を持たせると表明した。ジュネーヴの国連人権担当高等弁務官事務所は18日、人民(民兵隊)へ武器供与(武装)は緊張と紛争を激化させると批判した。隣国コロンビアのJMサントス大統領も18日、武装民兵隊大増員計画に「深刻な懸念」を表明した。
マドゥーロ大統領は18日、カラカスの表玄関の空港と港のあるバルガス州の海岸地帯に建設された広大な「ボリーバル広場」の開場式に出席。馬上のシモン・ボリーバル像と故ウーゴ・チャベス前大統領像の除幕式を執り行った。
MUDは昨年来、内部分裂し支持率も下がっていた。だがマドゥーロ政権が3月末、最高裁・憲法法廷による国会機能代行を決める、事実上の国会閉鎖に踏み切ったことで、MUDを団結させてしまった。
内外の激しい反発を受けた政権は、検事総長に国会機能代行を違憲と宣言させ、決定を元に戻した。この失態に勢いづいた反政府勢力は4月初めから6波の大動員をかけ、政府を揺さぶってきた。
反政府勢力には街頭暴力に訴える若者たちの別働隊がいて、破壊活動を働いてきた。これに対し政府側は治安部隊による鎮圧の他、対暴力組織を出動させ、対抗している。行進する両派の大多数の市民は平和裡の行動を望んでいるが、両派の暴力装置が衝突すれば、流血の事態となる。
反政府側には、流血が大惨事になり、国軍が分裂、ゴルペに繋がるのを期待する極右がいる。治安部隊が挑発にどこまで耐えられるかも試される。