2017年5月23日火曜日

 ベネズエラで州営バス53台が放火で破壊さる。専門家は「反政府勢力は騒擾状態醸成を狙っている」と指摘▼コロンビアで夜間外出禁止令発動▼グアテマラ農民はJ・モラレス大統領辞任を要求

 ベネスエラでは5月22日も反政府勢力による抗議行動と破壊活動が続いた。ボリーバル州では州営バス車庫で未明に53台が放火され炎上、破壊された。利用者17万人に影響が及んでいる。被害額は1100万ドル。

 カラカス首都圏バルータ区では、国営石油PDVSAの職員輸送バスなどが燃やされ破壊された。また同区で自動車道脇に接近する通路がバリケードで封鎖され、多くの市民が路線バスや地下鉄を利用できなくなった。死者も出ている。

 オンブズマンのタレク・サアブは、「右翼勢力による暴力・破壊活動の責任明確化のための客観的捜査に協力する」と述べた。サアブはまた、暴動取締り中の治安部隊が「過剰規制」した場合の捜査にも協力すると語った。

 暴力行使を抑制しない反政府勢力の中核MUD(保守・右翼野党連合)の指導者エンリケ・カプリーレス(ミランダ州知事)は21日、街頭行動について「憲法350条を実行している」と<合憲性>を主張した。

 同条項には、「共和国の伝統および独立・平和・自由のための闘いに忠実なベネスエラ人民は、価値・原則・民主的保障に反するか、もしくは、人権を尊重しない政府・立法・権力を認めない」と書かれている。

 だがMUDは、米国と連携している点で「独立」性に欠け、暴力を手段として行使しているため「価値、原則、平和、自由、民主、人権」に反している。このためカプリーレスの主張はまともには受け止められていない。

 デルシー・ロドリゲス外相は22日記者会見し、「ベネスエラは今、異常な暴力に晒されており、内外の懸念を生んでいる」と指摘。「正義・真実委員会」が間もなく、反政府勢力による現在の暴力事件および、2014年の街頭暴動事件についての報告書をニコラース・マドゥーロ大統領に提出する、と明らかにした。

 外相は21日、西部国境に隣接するコロンビアのラ・グアヒーラ県パラグアチョンに同国の軍装甲車部隊が展開しているのを「ただならぬ挑発行為であり、受け入れられない」と抗議した。これに対しコロンビア国防相は22日、「国境地帯での通常の犯罪防止策」と説明した。デルシーは22日、「依然、受け入れられない」と反駁した。

 著名な社会学者マリクレン・ステリング(「アンデレス・ベージョ」カトリック大学教授)は21日、反政府勢力のメディア戦略について、非通常戦争戦略に基づき「騒擾状態を起こすためだ。最初は心理的に、次いで肉体的・物理的に暴動を起こす」と述べた。

 また、「政府は<国際(世論)裁判>で負けつつある」とし、資金に物を言わせたMUDの内外メディア工作に対し旗色が悪いことを指摘。対策として、明確に的を絞るべきだと提言した。

 だが教授は、「暴動状況が2カ月近く続いてるため、さすがにベネスエラ人は目を覚まし、チャベス派は18年間で得た社会政策の恩恵を守ろうと意識するようになっている」と語った。

▼ラ米短信  ◎コロンビア太平洋岸に夜間外出禁止令発動

 コロンビアのサントス政権は5月22日、太平洋岸のバジェデルカウカ県の港湾都市ブエナベントゥーラに1800~0600時の
夜間12時間の外出禁止令を発動、警察機動部隊1500人、兵士700人を急派した。

 同市では、病院や水道のサービス向上、雇用創出などをめぐり市民が抗議ストを続け、19日から略奪、暴動が起きている。既に130万ドルの被害が出、市民80人が逮捕されている。

▼ラ米短信  ◎グアテマラ農民が大統領辞任を要求

 グアテマラの「農民開発委員会」(CODECA=コデカ)は5月22日、ジミー・モラレス大統領に対し、「無能で腐敗している」として辞任するよう要求した。モラレスは元コメディアンで、伝統的支配階級である保守・右翼勢力に擁立され一昨年の大統領選挙に当選、昨年1月就任。庶民大衆の評判は極めて悪い。

 農民らはまた、「人民・多民族制憲議会」の開設、伯オデブレヒト社から収賄した国会議員らの断罪を求めている。コデカは3月7日に首都グアテマラ市で大統領辞任要求集会を開いた際には4万人を動員した。