2017年7月12日水曜日

 ベネズエラ情勢:マドゥーロ政権は30日の制憲議会(ANC)議員選挙に向け邁進。反政府野党連合MUDは政権を否定する投票実施へ▼コロンビア政府がFARC要員7700人を恩赦

 ベネスエラでは今、マドゥーロ政権が推進する制憲議会(ANC)開設のための議員選挙(7月30日)と、これに反対する保守・右翼野党連合MUDが進める同政権否定の是非を問う「国民投票」(7月16日)に向かって、政府と反政府勢力が激しく闘っている。

 ニコラース・マドゥーロ大統領の政権党PSUV(ペスーブ=ベネスエラ統一社会党)は7月11日、MUDの「国民投票」は国家選挙理事会(CNE)の承認を得ていないため違憲かつ無効と主張、同日にも最高裁選挙法廷に投票差し止めを求め提訴する構えだ。

 これに対しMUDは、後ろ盾の米政府、米州諸国機構(OEA)、内外マスメディアなど外部勢力の支援を基に、ANC開設を阻み、マドゥーロ政権の正統性を否定、大統領選挙実施に持ち込もうと謀っている。

 トランプ米大統領に反ベネスエラ政策を指南している米共和党右翼のマルコ・ルビオ上院議員(反カストロ派クーバ系2世)は11日、マドゥーロ政権に対し「ANC開設を止め、選挙を実施せよ。さもなければ米国は厳しい制裁を科す」と内政干渉した。

 マドゥーロ大統領は直ちに、「ベネスエラは主権国家であり、誰の指図も受けない。ANCを開設し、米帝国主義は吐いた言葉を呑み込まざるをえなくなる」と一蹴した。

 マドゥーロ政権は、埋蔵量世界一のベネスエラ原油と、LAC(ラ米・カリブ)での覇権復活を狙って米国は同政権を倒そうと画策しうている、と見ている。これは内外知識人の味方と一致する。米政府の「民主化」要求は「石油確保の野望隠し」よ見なされている。

 アラグア州マラカイ市で10日、ANC議員候補ホセルイス・リバスが選挙運動中、反政府勢力側の殺し屋と見られる男から射殺された。4月初めの反政府暴動開始から100日を経て、死者は94に達した。

 同日、首都カラカスでは反政府暴徒が自動車道にガソリンを撒いたうえで火炎瓶を投げ、そこに差し掛かった国家警備隊(GNB)のオートバイ部隊の要員7人に火傷を負わせた。報道陣は、この犯行準備を知りながらGNBに通報せず、取材態勢をとっていた。

 政府は8日、MUD極右政党VP(人民意志)党首レオポルド・ロペス受刑囚を健康の理由で刑務所から出し、GPS装置を付けて自宅軟禁処分に切り替えた。ロペス夫人リリアンは9日、この措置に関与したデンルシー・ロドリゲス前外相、その実兄ホルヘ・ロドリゲス首都圏リベルタドール区長に謝意を表明した。

▼ラ米短信   ◎コロンビア政府がFARC要員に恩赦

 コロンビアのJMサントス大統領は7月11日、和平過程にあるゲリラ組織コロンビア革命軍(FARC)の要員7696人を恩赦および赦免で、自由の身にした。この要員は6月末までに武装解除を終え、社会復帰に備えている。FARCは政党になる。

▼ラ米短信   ◎米国の駐玖臨時代理大使が交代

 米臨時代理大使は7月11日、スコット・ハミルトンに交代した。クーバは2015年7月20日の国交再開と同時にワシントン駐在大使を置いているが、米側は依然、大使を任命していない。