社会主義キューバの人民権力全国会議(ANPP,国会)は4月18日、首都ハバナの会議殿堂で特別本会議を開き、3月の選挙で当選した605人(うち1人欠席)の議員が就任、同議会内に設置される最高意志決定機関、国家評議会の会員候補31人を選出した。
ラウール・カストロ現国家評議会議長の後任には、ミゲル・ディアスカネル現第1副議長が予想通り推挙された。同氏は57歳だが、間もなく58歳になる。
第1副議長には、元キューバ労働者中央同盟(CTC)議長サルバドール・バルデス=メサが推薦された。就任すれば、エステバン・ラソANPP議長と並び、黒人系最高位となる。
5人の副議長には、ラミーロ・バルデス(85)、ロベルト・モラレス、グラディス・ベへラーノ、イネース=マリーア・チャプマン、ベアトゥリス・ジョンソンが推薦された。グラディス以下3人は女性。
また「官房長官」役の書記には、オメーロ・アコスタが推挙された。他の23人は平会員。事実上の決定で、31人は19日正式に就任する。
ラウール議長は政権を離れ、共産党(PCC)第1書記として、新議長の後ろ盾になる。
今回の人事の特色は、第1副議長に労働界指導者バルデス=メサが内定したこと、および革命第1世代のラミーロ・バルデスが5人の副議長の首席の地位に就くこと。
バルデス=メサは72歳で旧世代に繋がり、「労働者主体の経済改革」というラウール政権の建前(政策)を継承する。また革命司令官ラミーロはラウールの腹心として、新しい国家評議会に「にらみ」を利かせることになる。
女性3人の副議長登用は、「男女平等」政策にほぼ合致する。
新議長となるディアスカネルは電気技師。出身州ビージャクラーラで共産主義青年同盟(UJC)幹部となり、次いで同州共産党第1書記に就任。大学で教鞭もとった。
ラウール議長は2013年に自身の後継者の地位である第1副議長に抜擢、「帝王学」を授けてきた。
2016年半ばに来日し、安倍首相らと会談した。この時の招待で安倍首相は同年9月末、日本の首相として初めてキューバを訪問し、カストロ兄弟と会談した。
首相はラウール議長の訪日を招待したが、実現しないまま議長は19日任期を終える。ディアスカネル新議長が日本をキューバ議長として初めて公式訪問する可能性がある。
故フィデル・カストロ前議長は非公式に2度来日した。
18日にはANPP議長選挙もあり、エステバン・ラソ現議長が再任された。議員605人のうち女性は322人、男性は283人。
これでカストロ一族でない人物が初めてキューバ政府の最高指導者になることが確定した。1959年元日の革命から実に59年、ようやく世代交代が実現する。
一方、ベネズエラのニコラース・マドゥーロ大統領は18日、ラウール議長を祝福するメッセージを送り、近くディアスカネル新議長に会うため訪玖したいと述べた。