キューバで4月19日、ミゲル・ディアスカネル国家評議会議長が正式に就任、新政権が発足した。新議長は就任演説でカストロ兄弟の遺産や教えを守ると強調、現状を維持しつつ経済改革や改憲を進めてゆくことになる。
1959年元日の革命で権力を掌握したフィデル・カストロ反乱軍最高司令官は、同年2月首相に就任。65年に新しい玖共産党(PCC)の発足に伴い、第1書記になった。
76年にはソ連型政治機構に移行、大統領制は廃止され、フィデルは国家評議会議長(国家元首)兼・閣僚評議会議長(首相)となり、革命軍最高司令官と第1書記も兼任した。
フィデルは2006年7月、大腸癌とされる重病で倒れ、実弟ラウール・カストロ革命軍相兼第2書記(当時)ら集団指導部に政権を暫定的に委譲、回復を期した。だが叶わず08年2月、正式にラウールに政権を渡した。
ラウールは長年、兄フィデルの政治を陰で支え続け、キューバの抱える問題点を知り尽くしていた。1人の人物の長期支配の弊害も知り、要職の任期を1期5年、1人2期までと決めた。
11年のPCC大会で第1書記に就任、市場原理を導入する経済社会改革に着手。16年のPCC大会で改革路線継続を確認した。13年1月移民法を改正、出入国を大幅に自由化した。
13年2月、2期目に入ったラウールは30歳若いディアスカネルを第1副議長に抜擢、帝王学を授けてきた。14年12月、バラク・オバマ米大統領と国交正常化で合意、15年7月国交を54年ぶりに回復。16年3月にはオバマが訪玖した。
ラウールは21年の次回第8回PCC大会まで第1書記として新議長の後ろ盾となる。新議長は党政治局員だが、それまで3年間の施政が成功すれば、第1書記に道が開かれる。
6月に87歳になるラウールは、生まれ故郷に近く、革命戦争を戦ったマエストラ山脈東方のサンティアゴ市で余生を送りたい構え。妻ビルマ・エスピンやフィデルの墓もある。だが党務をこなし革命軍の団結を図りながら、新議長を支えねばならない。
ディアスカネル議長は、オバマ前政権とは打って変わったトランプ米政権の締め付けの下で、難しい対米関係や経済改革の舵取りを迫られる。