ニカラグアの作家セルヒオ・ラミーレス(75)が4月23日、スペイン語文学界の最高賞とされるセルバンテス賞(2017年度、賞金14万 8000ドル)を受賞した。
マドリード郊外のセルバンテスの故郷アルカラデエナーレスの同名の大学で授賞式が催され、ラミーレスは国王フェリーペ6世から賞を授けられた。
ラミーレスは小説、物語、論文など多作。『狼狽と迫害』(1971)、『神々しい罰』(1988)、『ある仮面舞踏会』(1998)などの小説が有名。
ラミーレスは受賞講演で、母国の詩人ルベーン・ダリーオに触れ、「中米の小国ニカラグアの国家基盤が、剣を天に向けてかざす将軍でなく一詩人によって築かれたのは興味深い」と述べた。
作家はまた、この賞を過去数日間に「正義のために闘って死んだニカラグア人に捧げる」と強調。「彼らはニカラグアを共和国に戻すために戦っている」と讃えた。
マドリード中心部のプエルタデルソル広場では22日、オルテガ・ニカラグア政権への抗議集会が開かれたが、ラミーレスは同伴した家族とともに参加した。
ラミーレスは1960年代から作家活動を始めていたが、70年代にソモサ独裁打倒を目指すサンディニスタ民族解放戦線(FSLN)に参加。79年7月19日のサンディニスタ革命後、政府評議会のメンバーになった。
85~90年、ダニエル・オルテガ大統領の下で副大統領を務めた。90~95年は国会議員を務めたが、野に下っていたオルテガのFSLN から分派した「サンディニスタ刷新運動」(MRS)に参加。96年の大統領選挙にMRSから出馬、落選したが1万5000票を得た。
その後、作家活動中心の生活に戻った。一方、オルテガは21世紀に大統領選挙で返り咲き、現在連続3期目の政権にある。その政権が先週、社会保障改革に強引に踏み切ったことから抗議行動が全国に波及、首都マナグアなど数都市に軍隊が治安出動した。
一連の市民と治安部隊との衝突で25人以上が死亡したと伝えられる。その死者にラミーレスはセルバンテス賞を捧げたわけだ。
ラミーレスが「共和国に戻すため」と言ったのは、オルテガ夫妻の長期政権支配を「王政」のように捉えているからだ。