2015年12月31日木曜日

アイスランド人作家アーナルデュルの警察小説「湿地」を読む 

 今年最後の読書は、アイスランド人作家アーナルデュル・インドリダーソン著『湿地』(柳沢由実子訳、創元推理文庫)だった。アイスランド産の警察小説を読んだのは初めてだ。

 犯人が頭隠して尻隠さずのような間抜けという意味で、やたらに「いかにもアイスランド的犯罪だ」という記述が出てくるのが面白い。ところが、この本の犯人はアイスランド人であるが、事件は「いかにもアイスランド的」なものではなかった。

 作者の2000年の作品で、この訳書は今年半ばに出た。他の2作も翻訳されているから、年明けに読むこととする。私は一年中、ラ米漬のため、極北に近い土地の気候風土の味わえる物語はありがたい。

 この読書をきっかけに、まだ読んだことのないアイスランド人ノーベル文学賞作家ハルドル・ラクスネス(1902~98、55年受賞)の幾つかの作品も読もうと決めた。

 若いころ、米州のどこでだったか覚えていないが、旅行者のアイスランド青年と話し合ったことがある。はにかみ屋で好人物だったのを記憶している。そのとき、いつかアイスランドに行ってみたいと思ったものだ。

 明日は新年だ。アイスランドに行きたいという夢が正夢になるのを期待する。

コンドル繁殖のためチリがコロンビアに番3組贈る

 冠雪の高峰が連なるアンデス山脈の象徴はコンドルだが、コロンビアでは個体数が180羽足らずとなり、絶滅が危ぶまれる事態となった。このためチレから番(つがい)3組を入れ、繁殖させようとしている。

 チレ鳥類学者連盟(UNORCH)のエドゥアルド・パベス会長によると、2013年末にコロンビアに招かれた折、コンドルの番を送ってほしいと依頼された。

 これを受けて同連盟の猛禽類部門は過去3ヶ月間に3組をコロンビアに贈った。それぞれボゴタ、メデジン、カルタヘーナの大型施設内で飼われている。

 このほど3組目の番がカリブ海岸の大都市カルタヘーナの近郊にあるバルー島に到着した。コンドルの生息には、アンデス山脈の寒冷気候が適していると考えられてきたが、今日では熱帯性気候のカリブ海岸地方でも十分に耐えられるようになっているという。

 コンドルはチレ、コロンビアの他、ペルー、ボリビア、エクアドール、アルヘンティーナ、ベンスエラの山岳地帯に生息している。 

2015年12月30日水曜日

ベネズエラ大統領が「直接民主主義」強化戦略を打ち出す

 ベネスエラのニコラース・マドゥーロ大統領は12月29日、国営テレビを通じ演説、6日の国会議員選挙での政権党惨敗を受けて、「政府は革命の修正・再活性化」を図ると強調した。「人民は怪物を見た」とMUD圧勝に触れ、「人民の反逆と覚醒を促す」と述べた。

 大統領は、「汝は人民か、それとも寡頭勢力?」と問い掛け、「彼ら(MUD)に投票することは過去への回帰を意味する」と、改めて警告した。
 
 さらに、「人民が権力に参加する直接民主主義促進のため、労農など広範な市民層および政権党が支配する州・市などで結成する<祖国大会議(GCP)を年明けに招集する」と明らかにした。

 この日、「大統領理事会」設置の政令が出されたが、これも人民参加強化を狙いとしている。国会で112議席の絶対多数を奪われた政府としては、人民動員による国会外での「直接民主主義」でMUDに対抗する戦略だ。

 最高裁選挙法廷は29日、MUD議員8人の当選に異議を申し立てる政権党からの訴えを受理したと発表した。審理の結果、異議が認められれば、8人の当選は無効となり、再選挙が実施される。

 MUDは、勝ち得た絶対多数を切り崩す陰謀だ、激しく反発している。

改憲目指すボリビア大統領が開発5カ年計画を発表

 ボリビアのエボ・モラレス大統領は12月29日、「2016~20年経済社会開発5カ年計画」を発表した。現在、人口の17・3%を占める極貧率を2020年には9・3%に引き下げ、貧困率は39・3%から24%に落とす。富裕層と貧困層の所得格差は39倍だが、これを25倍まで縮小する。

 国内総生産(GDP)を340億ドルから570億ドルに増やす。そのため経済成長は年率5・8%とする。向こう5年間の投資は、石油・天然ガス126億ドル、道路建設110億ドル、電力58億ドル、保健17億ドルなど。輸出は160億ドルに増やす。

 2006年1月就任したモラレスは現在3期目にある。その任期は2020年に終わるが、モラレスと政権党MAS(社会主義運動)は、憲法の大統領再選規定を修正して19年末の次期大統領選挙にモラレスが4選出馬できるようにしようとしている。

 この改憲の是非を問う国民投票は16年2月21日実施される。世論調査では賛否半々で、大統領陣営は集票活動に必死だ。

 11月22日の亜国大統領選挙決選での保守・右翼候補マウルシオ・マクリ当選と12月10日の就任、および12月6日のベネスエラ国会議員選挙での保守・右翼野党連合MUDの圧勝に象徴される南米右傾化の波がボリビアにどこまで波及するか。測りかねるモラレスとMASは危機感を抱いており、「2025年以降は大統領の椅子を望まない」と公約し、支持を訴えている。

ラウール・カストロ議長がキューバ経済は来年2%成長と予測

 クーバのラウール・カストロ国家評議会議長は12月29日、人民権力全国会議(ANPP、国会)の年末会期閉会演説で、クーバ経済は今年4%成長したが、来年は資金確保の難しさなどから成長予測は2%に留まると述べた。外国人観光客350万人が今年来訪したことも指摘した。

 外交関係で議長は、LAC(ラ米・カリブ)の進歩主義政権防衛の必要性と、LAC協和機関としてのラ米・カリブ諸国共同体(CELAC)防衛の必要性を強調した。

 ニコラース・マドゥーロ大統領施政下のベネスエラの主権防衛の闘いへの連帯、および同国革命政権の公約が引き続き守られることへの期待を表明した。(これは特にベネスエラ原油の対玖供給維持への期待を意味する。)

 ラウールはまた、ブラジル国会でのヂウマ・ルセフ大統領弾劾の動きを糾弾、同大統領への連帯を確認した。(クーバ経済浮揚の鍵となるマリエル開発特区=ZEDM=建設の資金と工事はブラジルが担っている。)

 ハバナ交渉でコロンビア政府とFARCが3月実現を目標に9月和平合意したことについては「実現を楽観している」と語った。中米で大問題になっているクーバ経済難民にも触れ、彼らは合法的に出国したが、その後、不法越境業者(コヨーテ)の犠牲になったと指摘。問題の根底に米国の「キューバ調整法」があると批判した。

 2015年に世界184カ国から使節団が来訪したが、うち25カ国からは首脳が来たと、外交の隆盛に触れた。7月に復交した対米関係の正常化深化には、対玖経済封鎖解除とグアンタナモ米海軍基地返還が不可欠だと、改めて強調した。議長はまた、クーバ体制転換を目指す米政府を念頭に、「クーバが主権と尊厳を守るため独立と諸原則を失うことはありえず、失わせようと画策してはならない」と、新たに釘を刺した。

 議長は今年のオランド・フランス大統領来訪への答礼として来年2月、公式に訪仏することを明らかにした。クーバは今年、欧州連合(EU)との関係修復も果たし、パリクラブは対玖債権利子分を免除した。

 ASPPは、26日の玖共産党第12回中央委員会全体会議が討議しまとめた「玖社会主義発展のための経済社会モデル概念化」、2016年経済計画・歳出予算、第1回共産党全国会議採択の労働目標達成報告などを審議し、採択した。

 マリーノ・ムリージョ副首相兼経済・企画相は「経済計画・歳出」報告で、16年経済計画予算の58%に当たる78億4100万ペソ(約3億2000万米ドル)は投資に向けられるとし、優先分野は観光、エネルギー、石油、農牧、干害・灌漑対策、電気通信、生物工学、ZEDMと述べた。

 国会はまた、2016年を「革命58年目の年」と命名した。


2015年12月29日火曜日

世界最悪か、今年ベネズエラで一日当たり77人殺される

 ベネスエラのNGO「ベネスエラ暴力監視」(OVV)は12月28日、今年同国で2万7875人が殺された、と発表した。1日当たり77人強。人口10万人当たり90人で、OVVは「オンドゥーラス(ホンジュラス)を抜き世界最悪になったもよう」と指摘した。去年は2万4980人だった。

 マドゥーロ政権は今年半ばから、カラカス市周辺の山麓などにあるバリオ(低所得者居住地域)で暴力集団を取締まる「住民解放作戦」を続けてきた。OVVは、殺された者には治安部隊に抵抗して射殺された者が多く、「作戦」はかえって暴力を助長してきた、と批判した。

 検察庁は、去年の殺人事件発生率は10万人当たり64人だったと認めているが、OVV集計の今年の殺人事件数は大げさだとして認めていない。これについてOVVは、検察は法的に殺人事件として処理された件数しか数えていない、と反論している。

 一方、1月5日開会する新国会で選出される野党連合MUDの議長候補の一人、ヘンリー・アルップは28日、ニコラース・マドゥーロ大統領の罷免の是非を問う国民投票を推進する、と述べた。憲法規定に基づき、同大統領が6年の任期の半分を経過する来年4月以降、罷免国民投票のための署名運動実施が可能になる。

 アルップは民主行動党(AD)指導者で、ミランダ州知事エンリケ・カプリーレス(元大統領候補)に代表されるMUD内の合憲活動派に属する。カプリーレスは自派の議長を出すことで、次期大統領選挙でMUD統一候補として新たに出馬するのを狙っている。

 これに対し、破壊活動扇動罪などで収監されているレオポルド・ロペスらMUD内極右勢力は、街頭暴力活動(グアリンバ)など非合法活動も否定しない反政府強硬姿勢を示している。

コスタ・リカのキューバ難民、メキシコ行きが決まる

 ニカラグアを除く中米6カ国およびメヒコは12月28日グアテマラ市で実務者会合を開き、コスタ・リカ(CR)国内にいる米国行き希望のクーバ人経済難民8000人を来週、エル・サルバドールの首都サンサルバドールに空路運び、同市からグアテマラ・メヒコ国境までバスで送り届けることで合意した。メヒコ政府は、同難民を米国国境まで安導することを受け入れた。

  CR外務省は、難民は米国までの移動費を自己負担する、と明らかにした。難民たちはクーバを去る際、全財産を処分しているため、米ドルをかなり所持してると見られているが、マイアミの新参クーバ難民支援団体は支援態勢を整えると表明している。

 会合ではグアテマラのカルロス・モラレス外相が議長を務め、コヨーテ(難民の密出入国を手助けして儲けている者たち)を取締まることも決めた。会合には国際移民機関(IOM)代表も出席、領内通過を認めないニカラグアは欠席した。

 クーバ難民問題は米政府が維持している「キューバ調整法」があるため起きている。クーバ政府にとって今回の大問題は、同法廃止促進の好宣伝材料となっている。その立場に同調するオルテガ・ニカラグア政権は、「治安上の理由」からとして難民通過を拒否した。

 CRはエクアドールなどからやってきたクーバ難民に11月14日領内通過査証を発給したが、翌15日、ニカラグアが難民に国境を閉ざしたため、難民はCR領内の収容所37カ所に寝泊まりしてきた。嵩む経費や安全管理でソリースCR政権は音を上げ、中米統合機構(SICA)に早急に解決策を見出すよう要請していた。

 バレーラ・パナマ政権も28日、国内にいるクーバ難民759人を宿泊施設に収容することを決めた。これまでは教会、修道院、路上などで寝泊まりしていた。

 一方、メヒコ移民庁(INM)は28日、今年1~10月、中米から密入国してきた未成年者2万9217人を保護したと明らかにした。その97%はグアテマラ、オンドゥーラス、エル・サルバドールからだった。

 メヒコ外務省は、難民の出身国・通過国・受入国が一堂に会する難民会議を近々開くよう提案している。このところクーバ難民の多くは、クーバからエクアドール、コロンビア、パナマに出て、CR経由で北上する者が多い。だが今回の出来事を契機に、この中米回廊通過は難しくなるかもしれない。

 また米国の国境管理当局は28日、今年既にクーバ難民2万7296人が入国したと公表した。去年は1万5341人で、今年は78%増し。米政府はCRにいるクーバ難民を、国境まで辿りつけば受け入れると表明している。(米議会下院議員2人は29日、難民問題を把握するためCRを訪れた。)
 
 

2015年12月28日月曜日

ラテンアメリカで日韓慰安婦問題合意、広く報道さる

 ラ米メディアは12月28日、慰安婦問題をめぐる日韓合意を大きく報じた。日本に関する今年一番の報道ぶりで、集団自衛権関連法成立時をはるかに上回っている。「エスクラボス・セクスアレス」(性奴隷)という刺戟的な言葉が関心を呼んでいるかに見える。

 「第2次世界大戦時に日本軍に<性奴隷>になるのを強制された<ムヘレス・デ・コンフォルトゥ(慰安婦)>の問題で、日韓両国は歴史的合意に達した」と、通信社や新聞は一斉に伝えている。また、オバーマ米政権が、米国の同盟国である日韓両国に合意するよう圧力をかけた、とも報じている。

 ノティメックス(メヒコ通信)、プレンサ・ラティーナ(クーバ国営通信)、アンディーナ(ペルーアンデス通信)、亜国テラム通信、ラ米多国籍テレビ「テレスール」や各国主要紙は、独自電や、共同通信、スペインEFE通信、フランスAFP通信、韓国ヨンハップ通信、米AP通信、英ロイター通信などの配信記事を基に報じている。

 だが、ラ米人ジャーナリストによる分析記事や解説記事は28日朝刊段階では見当たらない。昼刊・夕刊段階では、韓国人元慰安婦生存者の発言や辿った運命を紹介する記事が目立った。

中国航空の北京・ハバナ直行便が運航開始

 北京とハバナを結ぶ中国航空B777一番機が12月27日、北京空港を離陸。給油などのため寄港するモントリオールを経由し、ハバナに向かった。飛行19時間半、ハバナには現地時間27日夜、到着した。

 中国航空は、このハバナ直行便を週往復3便運航する。昨年クーバを訪れた中国人旅行者は2万2000人。直行便開通で、その数が飛躍的に伸びるのが期待されている。

 LAC(ラ米・カリブ)諸国も、この便でやって来る中国人を迎えたいと方策を練っている。華人とその子孫合わせて250万人が住むペルーは、ハバナから脚を伸ばしてマチュピチュ遺跡などを観てほしいと望んでいる。

 一方、米国移住を願うクーバ人の出国が続いていて、うち8000人がコスタ・リカ(CR)、1000人がパナマで足止めを食らっており、中米で大問題になっている。CRは12月18日、このような「クーバ人経済難民」への査証発給を停止、不法入国した58人を追放した。

 クーバ難民が米国に陸路向かうには、CRの北にあるニカラグアに入国してからオンドゥーラスもしくはエル・サルバドールを経てグアテマラかベリーズを通ってメヒコに入るしかない。

 だがニカラグアが11月15日、入国を拒否、以来CRで難民が動けなくなり、CRに入れなくなった難民がパナマにもたまってしまった。グアテマラとベリーズも難民の入国・領内通過を拒否、難民問題はパナマからグアテマラまで中米全域の問題に発展した。

 中米諸国は28日グアテマラ市で打開のための会議を開く。ローマ法王フランシスコは27日、同会議に先立ち、人道主義的な立場から善処を呼び掛けた。

 グアテマラでは1月14日、ジミー・モラレス新大統領が就任する。新政権発足前に解決できるどうかに関心が集まっている。毎年数十万人の米国行き密航者が領内を通過しているメヒコは、静観している。

 クーバ政府は、米領に入域したクーバ人に定住権を与える「クーバ調整法」を米国が維持してるため難民が絶えないと非難、同法廃止を要求してきた。

 ニカラグアも、現在中米にいるクーバ難民9000人を米国が引き取るべきだと主張している。CRにいる難民の一部は、一人当たり1000ドルを支払ってニカラグアに密入国し、オンドゥーラス経由でグアテマラ方面に向かっている。
 
 

2015年12月27日日曜日

コロンビアゲリラELNが和平交渉の早期開始を期待

 コロンビアゲリラの第2勢力である民族解放軍(ELN)の最高司令ニコラース・ロドリゲス=バウティスタは12月26日、スペイン・バスコ州のバスコ紙ガラとのインタビューで、年明けにも政府との和平交渉開始を期待する、と述べた。

 ELNはクーバ革命路線を採り1964年から武闘を続けてきた。だがゲリラ第1勢力FARC(コロンビア革命軍)が2012年に政府との和平交渉に入ったため、14年1月から隣国エクアドールで政府との非公式交渉を続けていた。FARCは今年9月、来年3月の和平実現で政府と合意したが、これがELNの和平志向に拍車をかけた。

 ロドリゲス司令は同インタビューで、「交渉議題は既に策定されている。話し合いは公開交渉として行なわれるべきだ」と主張した。だが、「政府軍は(エクアドールでの)非公式交渉が始まるや、軍事攻勢をかけ始めた。寡頭支配勢力はELNの力を殺ごうと狙っているようだ。だが、それにも拘わらずELNは和平交渉する用意がある」と強調した。

 司令はさらに、「まず無条件停戦が実現すれば、交渉は一気に進展する」と展望した。

メキシコ43学生強制失踪事件から15カ月、家族らが抗議の巡礼

 メヒコ・ゲレロ州イグアラ市で教諭養成学校生43人が市警らによって強制失踪させられた事件発生から12月26日で15カ月経った。この日、学生の遺族・家族、学友、教員ら300人は首都大聖堂からグアダルーペ大寺院まで巡礼し、学生らの生還と真相解明を政府に要求した。(43人のうちの2人は、発見された遺骨のDNA鑑定で殺害されたことが判明している。)

 事件解明の鍵を握るのは、イグアラ市駐屯の第27陸軍大隊だが、年明けに同大隊が捜査に応じるかどうかに関心が集まっている。陸軍は国軍であり、同大隊の事件関与が明らかになれば、大統領責任が追及されることになる。

 一方、モレリア州都ミチョアカンでは26日、地元の教諭養成学校生30人の釈放を要求する抗議行進が実施された。同30人は12月7日、教育改革などを求めて自動車道を行進、警察機動隊と衝突した。その際、携行していた「模疑手榴弾」を投げたため、武器密造容疑をかけられ、女子学生22人を含む52人が逮捕された。

 その後、20人が釈放されたが、30人はソノラ州エルモシージョ市の刑務所に収監され、取り調べを受けている。

 抗議行進に参加した家族、教員らは、「偽りの容疑をかけられ拘禁されている」と主張、早期釈放を訴えた。また、イグアラ市で強制失踪に遭った学生43人の生還を訴え、家族らへの連帯を表明した。

2015年12月26日土曜日

チリ首都で「Gミストゥラル文化センター」の拡張工事始まる

 チレのミチェル・バチェレー大統領は12月24日、国立ガブリエーラ・ミストゥラル文化セントロ(GAM)の拡張工事開始式を主催した。Gミストゥラル(1889~1957)はチレの女流詩人で1945年、ノーベル文学賞を受賞、ラ米最初の同賞受賞者となった。この工事は受賞70周年の記念事業。

 GAMは、首都サンティアゴの目抜き、解放者ベルナルド・オヒギンス並木道227番に2010年開場、これまでに500万人を超える入場者があった。

 その建物は、アジェンデ社会主義政権期の1972年、国連貿易開発会議の会場として完成した。だが73年の軍事クーデターで登場したピノチェー軍政は、この建物を政府本部として使用した。クーデター時に大統領政庁ラ・モネーダ宮殿を空爆し炎上させたためだった。サルバドール・アジェンデ大統領は政庁内の執務室で自殺した。

 ミストゥラルは、チレ詩人2人目のノーベル文学賞詩人パブロ・ネルーダ(1904~73)に少年時代から目をかけ、パブロの詩人としての成長に貢献した。

 GAMからさほど遠くないビクーニャ・マケーナ大通り37番地には、2014年11月開館した「ビオレタ・パラ博物館」がある。Vパラ(1917~67)はチレ人カンタウトーラ(シンガー・ソングライター)で、「人生よ、ありがとう」、「なんという胸の痛みだろうか」など数々の名曲を作った。

 ミストゥラル-パラ-バチェレーと続く系譜は、「現代チレの偉大な女性の系譜」である。

 一方バチェレー大統領は23日、国会でその日成立した大学無料教育法に署名、公布した。2016年3月国公立及び私立の大学に進学する学生の半数に当たる約18万人は苦学生で、新法の恩恵に最初に与ることになる。今月27日に願書受付が始まる。
  

 

アルゼンチン:「39年ぶりの対面」は事実でなかった

 亜国軍政期の1976年11月24日ブエノスイアレス州都ラプラタ市で、軍・警察コマンドに急襲され殺害されたペロン派極左モントネロス要員4人のうちの一人の娘で軍政に奪われたクラーラ=アナイー・マリアーニ=テルッジ(当時生後3カ月)を名乗る女性が(2015年)12月24日、「祖母」の元を訪れ、「39年ぶりに再会」と大々的に報じられた。だがノーチェ・ブエナ(クリスマスイヴ)に合わせた偽りだったことがわかった。

 祖母マリーア・チェロビック=デ・マリアーニ(91)の代理人である弁護士が、法廷に判断を依頼したところ、法廷は国立遺伝子試料銀行(BNDG)に照会、その結果、名乗り出た女性は孫娘クラーラ=アナイーでないことが判明した。代理人はナビダー(クリスマス)の25日、この沈痛な事実を発表した。

 その女性はコルドバ州内に住むマリーア=エレーナ・ウェルリ(39)。ことし6月、同州内の民間検査施設で遺伝子検査を受け、76年に殺害されたモントネロス要員ディアナ・テルッジ(当時26、母親)の娘に「99・9%間違いない」と判断された。そこでウェルリはBNDGに照会したが、同銀行は保管試料に基づき血縁を否定した。しかし女性は、その事実を「祖母」と対面した時、言わなかった。

 つまり、女性は半年前から孫娘でないことを知っていたことになる。祖母の息子で孫娘の父ダニエル・マリアーニ(当時28)は77年8月治安部隊に殺害されたが、祖母のDNAと名乗り出た女性のDNAはかけ離れたものだった。

 軍政期に奪われた孫たちを探し続ける「五月広場の祖母たちの会」は「120人目の孫が見つかった」と歓喜したが、一転して落胆した。マリーア・チェロビックも同会創設者の一人で、2代目会長を務めた。

 軍部は76年3月、イサベル・ペロン政権をクーデターで倒した。登場したホルヘ・ビデーラ軍政は周到に用意していた左翼活動家、知識人らの暗殺名簿を基に殺戮作戦を開始。82年の対英マルビーナス(フォークランド)戦争敗北を経て83年に4代の軍政が終わった時、少なくとも3万2000人が殺されていた。日本国籍保持者1人を含む日系人約10人も殺された。

 フォード米政権はビデーラ軍政を支持していた。日本政府もビデーラを訪日に招いた。ビデーラは2013年5月、罪を悔い改めないまま獄中で転倒し死亡した。

2015年12月25日金曜日

キューバ訪問の外国人旅行者数が新記録

 クーバ統計庁は12月24日、今年1~11月来訪した外国人は314万人で新記録となった、と発表した。カナダや欧州からの旅行社が多いが、日本からの旅行者も増える傾向にあるという。

 政府の対外友好機関である人民友好庁(ICAP)は24日、創設55周年を迎えた。この日、パキスタン政府は、2005年の大震災時にクーバ医師団が長期間、現地で治療・診療に当たってくれたのに対するお礼として、米1万5000トンをクーバに贈る、と発表した。

 国営電気通信会社ETECSA(エテクサ)は24日、国内に現在ワイファイサービス地域が58カ所あるが、年内に65カ所に増え、来年には新たに80カ所を新設する、と明らかにした。

 全国700カ所にインターネットサービス所があり、一日15万人が利用している。2013年にインターネットサービスを開始して以来、計720万回アクセスがあった。携帯電話は328万あり、うち120万にはインターネットサービスが付いている、という。

 米国際開発局(USAID)はクーバでツイッターによる洗脳作戦「スンスネロ」を展開して失敗したが、23日、クーバ諜報機関についての事前調査が足りなかったなどと、失敗の原因を認めた。

 共産党機関紙グランマによると、米大リーグはバラク・オバーマ大統領に対し、クーバ人野球選手との契約をしやすくしてほしいと要請している。この種の契約は財務省が管轄しているため、行政権限で解決できると見るからだ。

2015年12月24日木曜日

★★★ラテンアメリカ2015年重要ニュース

 ★伊高浩昭が選んだ「2015年ラ米重要ニュース」(ラ米時間12月23日現在)

1、コロンビア政府とFARCが16年3月期限に内戦終結で合意(9・23)
2、ベネスエラ国会議員選挙で政権党惨敗(12・6)
3、亜国大統領選挙決選で保守・右翼Mマクリ当選(11・22)、12・10就任
4、玖米両国が54年半ぶりに国交再開(7・20)
5、グアテマラ国会がOペレス=モリーナ大統領を事実上解任(9・3)
6、ブラジル国会がDルセフ大統領弾劾手続き開始(12・2)
7、国際司法裁がボリビア・チレ間の海岸領土問題は審理可能と判断(9・24)
8、不正疑惑で混迷のアイチ大統領選挙決選が無期限延期さる(12・21)
9、国際司法裁がコスタ・リカ(CR)とニカラグアのサンフアン河口領土紛争でCR勝訴裁定(12・16)
10、パナマ開催の第7回米州首脳会議に玖首脳初出席、玖米首脳会談実現(4・10~11)
11、Bオバーマ米大統領がベネスエラを「米安保上の脅威」と断定、激しい非難浴びる(3・9)
12、メヒコ麻薬王Jグスマンが再び脱獄に成功(7・11)
13、コスタ・リカで足止めのクーバ経済難民8000人が中米で大問題に(11~12月)
14、パナマ運河第3水路開通が16年4~6月まで延期さる(12・18)
15、カナダ最高裁が米シェヴロン石油にエクアドールへの賠償金支払いを命令(9・4)
16、ベネスエラ・コロンビア間の国境封鎖問題が深刻化(8月以降)
17、ウルグアイ政府が16年から薬局で大麻販売開始と発表(10・1)
18、ローマ法王フランシスコが玖米歴訪(9月)
19、ペルー次期大統領候補一番人気はケイコ・フジモリ(通年)
20、エル・サルバドールの故オスカル・ロメーロ大司教が福者に(5・23)



宇田川彩著『アルゼンチンのユダヤ人』を読む

 風響社のブックレット≪アジアを学ぼう≫別刊9で、「食から見た暮らしと文化」という副題が付いている。60ページ、800円だ。含蓄ある、さまざまな記述が登場する。その一部を紹介する。

 食べ物を分け与えることは、食べ物に本来的に備わっている性質である。他人に食べ物を分け与えないことは、食べ物の精髄を殺すことに等しく、自分に対しても他者に対しても、その食べ物を破壊することになる。

 ユダヤ教には、喜捨という重要な倫理がある。貧者への喜捨は、社会に公正をもたらす。自分、家族、身近な人々以外の人々と食べ物を分かち合うことで繋がりが拡がる。

 ユダヤ人にとり、他のユダヤ人の内臓を体内に移植することは、「適正な食べ物」をとり込むことと同義である。ある学者は、臓器移植は人肉食と原理的に何ら変わらない、と指摘した。

 この本の著者は、ブエノスアイレスを中心に亜国で2年間調査活動した新進気鋭の文化人類学者である。

2015年12月23日水曜日

コロンビアが大麻の医療・科学利用を合法化

 コロンビアのJMサントス大統領は12月21日、大麻の医療・科学使用を合法化する政令に署名した。個人・法人は、国家麻薬理事会(CNE)および保健・社会保障省に申請し、認可を受けて大麻栽培・授受・輸出などが可能になる。

 CNEは、申請を受けてから30日以内に認可の可否を決める。科学利用は、大学、研究所など調査機関に限られる。不正使用は、CNEと国家警察が認可対象を予告なしに査察し、取り締まる。

 薬局は、大麻の加工薬品のみ販売できる。コロンビアでは2012年から、大麻の20g携行が合法化されている。カリブ海岸のサンタマルタ市は最大の大麻密輸港だが、「サンタマルタゴールド」は世界大麻市場で一級品に位置付けられている。

 一方メヒコでは、首都メヒコ市のMAマンセーラ市長(メヒコ連邦地区=DF=長官)が大麻の医療・薬品使用合法化の運動を展開している。このほどメヒコ市大司教区の枢機卿が理解を示し、市長は意を強くしている。

パナマ最高裁がR・マルティネリ前大統領の逮捕を命ず

 パナマ最高裁は12月21日、国外逃亡中のリカルド・マルティネリ前大統領の逮捕を命じた。マルティネリは大統領在任中に犯した公金横領5件、政治家、ジャーナリストら150人の電話盗聴などの容疑で起訴され、検察から禁錮21年を求刑されている。

 マルティネリは「スペル99」という国内最大のスペルメルカード網の経営者で超富裕者だが、金銭に汚いと指摘されてきた。今年1月出国し、マイアミに滞在中。12月11日の公判に出廷しなかったため、最高裁は逮捕命令を出した。

 5年の在任中の4年間マルティネリは、逃亡中だったコロンビア元国家情報局(DAS)長官マリーア・デルピラルを匿っていた。マルティネリは思想的には右翼で、コロンビア極右のアルバロ・ウリーベ前大統領と親しかった。

 パナマでは昨年、フアン・バレーラ大統領が就任、デルピラルは今年コロンビアに追放され、禁錮14年の実刑に処せられた。

27日予定のハイチ大統領選挙決選が無期限延期さる

 アイチ(ハイチ)選管は12月21日、今月27日に予定されていた大統領選挙決選を無期限延期する、と発表した。大統領選挙第1回投票は10月25日実施され、選管は政権党候補ジョヴネル・モイゼ(得票率32・76%)、野党候補ジュドゥ・セレスタン(25・29%)の上位得票者2人が決選に進出する、と発表していた。

 ところがセレスタンをはじめ他の野党候補らから「政府絡みの大規模な投開票時の不正」を指摘され、混乱が拡がっていた。ミシェル・マルテリ大統領は激しい抗議を受けて12月17日、調査委員会を設置する政令を発したが、抗議は収まらなかった。セレスタンは選挙運動を中止し、抗議している。

 「不正」の背後には、マルテリ施政の継続を求める米政府の意向がある。前回選挙でも、不正の結果、マルテリが当選者となった経緯がある。

 規定によれば、新国会は来年1月11日開会、新大統領は2月7日就任することになっている。国連は22日アイチに対し、対話による事態の早期収拾を呼び掛けた。

2015年12月22日火曜日

パナマ運河第3水路開通は来年前半の見通し

 パナマ運河第3水路の建設工事が遅れている。パナマ運河庁(ACP)は2016年1月15日の開通を予定していたが、開通は同年4~6月の第2・4半期になるもようだ。

 ACPのホルヘ・キハーノ長官は12月18日、第3水路太平洋岸の閘門の一つの上部に亀裂が見つかり、その修復工事が来年1月半ばまでかかると明らかにした。第3水路の通航試験は来年4月に予定され、その後6月までに、開通する運びという。

 工事はイタリア企業が率いる企業連合が2007年9月に開始、96%は終わっているという。その過程では工事資金不足で企業連合とACPが対立する事態があり、工期が遅れる原因となった。

 ACPは当初、現行運河開通100周年の2014年8月15日に第3水路の開通を予定していたが、再三延期され、今では「来年前半」となっている。

 一方、近隣のニカラグアでは「ニカラグア大運河」の建設工事が2014年12月から始まっている。その開通は2020年代前半になる模様だが、完成すれば第3水路を備えたパナマ運河の競争相手になると目されている。 

キューバの「永遠のプリマ」アリシア・アロンソが95歳祝う

 クーバのマリーノ・ムリージョ経済相は閣僚評議会で12月21日、同国経済は今年4%成長した、と報告した。同評議会は、2016年度の経済計画を承認した。

 この日、ラウール・カストロ国家評議会議長は、南アフリカ共産党(SAPC)のブレイド・ウンジマンデ書記長を迎え会談した。クーバ軍は1980年代後半、アンゴラ南部で当時の南ア白人政府軍を撃破し、ナミビア独立と南ア・アパルトヘイト体制崩壊を促進した。

 20日には、アリジェリア南西部のティンドゥフにある難民収容所で11月12日から、民主サハラアラブ共和国(RASD)難民に医療手当を施していたクーバ医療派遣団が帰国した。クーバは1970年代半ばから、モロッコに占領された旧スペイン領西サハラで独立を求めて戦うサハラウイ(RASD人民)をアルジェリアと共に支援してきた。

 クーバ国立バレエ団(BNC)のアリシア・アロンソ団長は21日、95歳の誕生日を迎えた。1943年に23歳でバレエ「ジゼル」でデビューして以来、プリマとして国際的に活躍。革命後もクーバに留まり、後年、視力を失ってからもBNCを執り仕切ってきた。「永遠のプリマ」の称号を持つ。

 祝賀会には、国家評議会顧問アベル・プリエト前文化相、玖作家芸術家協会(UNEAC)のミゲル・バルネー会長、BNC団員らが出席した。
 

激しいやりとりを経て、メルコスール首脳会議閉会

 アスンシオンで12月21日開かれた南部共同市場(メルコスール)の第49回首脳会議は同日、共同声明を発表して閉会した。声明は、地域統合促進、太平洋同盟(AP、チレ、ペルー、コロンビア、メヒコ)との協力関係強化を謳っている。

 声明はまた、アスンシオンで2005年に調印された「人権促進・擁護規約議定書」を祝福。「自由が発展と統合に不可欠の要素」指摘した。さらに、パラグアイ、ボリビアの両内陸国に大西洋、太平洋への接近路建設などの便宜を図る配慮を盛り込んだ。

 このほか、玖米復交を祝福し、米国に対玖経済封鎖解除を求めた。シリア内戦にも触れ、政治解決を呼び掛け、難民への連帯を表明した。半年交代の輪番制議長国は、パラグアイからウルグアイに移った。

 声明採択に先立つ首脳会議では、議長を務めたパラグアイのオラシオ・カルテース大統領が演説で、「共同市場実現という初期の理想に戻ろう」と訴え、関税障壁が依然80もあると指摘した。

 ブラジルのヂウマ・ルセフ大統領は、欧州連合(EU)との自由貿易協定(FTA)交渉促進や、コロンビア、クーバなどとのFTA交渉を手掛けるよう求めた。

 首脳会議初参加のマウリシオ・マクリ亜国大統領は、ベネスエラに「政治囚釈放」を要求、同国に「民主促進」を、国会議員選挙で勝った同国野党陣営に「慎重さ」を求めた。

 これに対し、ベネスエラ大統領代行のデルシー・ロドリゲス外相は、「マクリ大統領、あなたは内政干渉しています」と切り返し、獄中にいるベネスエラの極右政治家が昨年カラカスで街頭暴動を煽った首謀者だった事実を強調、テロリズム加担者を釈放しろというのかと激しく詰め寄った。

 また、マクリ政権が亜国「五月広場の母たちの会」のエベ・デ・ボナフィニ会長を法的に追及している事実を挙げ、「二重基準だ」とマクリを批判した。

 同外相は、「マクリが就任早々、投獄されてきた亜国軍政期の人権犯罪責任者らを恩赦する政令を発した」と述べ、マクリを攻撃した。だが、そのような政令を発した事実はなく、亜国側は事実でないと反論した。

 外相は、暴動扇動の政治家が「政治囚」と意図的に宣伝され報道されてきた状況を逆手にとって、亜国大統領の施政に関し「意図的に政令発言をやってのけたのではないか」と解釈えきる。

 「加盟過程にある国」という資格を持つボリビアのエボ・モラレス大統領は、「域外からの資源価格操作などからラ米・カリブを守るため、多民族大陸国家を創設しよう」と訴えた。

 協賛国チレのミチェル・バチェレー大統領は、「チレは1996年に最初の協賛国になった。チレの対外投資の48%(400億ドル)はメルコスール向けだ。チレのメルコスールとの貿易は昨年700億ドルに達し、チレにとり第4位の貿易相手になっている」と述べた。

 新議長国ウルグアイのタバレー・バスケス大統領は、「(EUだけでなく)他の経済ブロックとの対話を進める」と抱負を語った。
 
 首脳会議には、協賛国ガイアナのモーゼス・ナガムートゥー首相も出席した。
 


2015年12月21日月曜日

メルコスール首脳会議にベネズエラ大統領欠席へ

 南米の関税同盟・南部共同市場(メルコスール)は12月20日、パラグアイのアスンシオンで外相・経済担当相会議を開き、21日の第49回メルコスール首脳会議で採択される最終宣言の草案を策定した。

 会議の議長を務めたパラグアイのアラディオ・ロイサガ外相は、ベネスエラのニコラース・マドゥーロ大統領は内政にかかりきりのため首脳会議に出席せず、デルシー・ロドリゲス外相が代行する、と明らかにした。

 マドゥーロ欠席は、亜国で今月10日就任した保守・右翼路線のマウリシオ・マクリ大統領が、就任前に「ベネスエラ民主主義の欠陥」を指摘し、メルコスールの「民主条項」適用を唱えていたことと無関係ではない。これに対しマドゥーロは、マクリを「極右主義者」と扱き下ろしていた。

 同条項が適用されると、メルコスール加盟資格が停止されることになる。過去に、「国会クーデター」でフェルナンド・ルーゴ大統領を不当に弾劾したパラグアイが資格停止に遭ったことがある。

 だがマクリ政権はその後、メルコス-ル首脳会議で民主条項適用を提案することはないと表明した。この首脳会議はマクリにとり最初の多国間外交の舞台となり、しかもそれは地元の南米南部中心の機構であり、会議をぶち壊すのを控えたものと受け止められている。また、マクリのような右翼路線は少数派だからだ。

 ロドリゲス・ベネスエラ外相は20日の会議で、メルコスールと、米州ボリバリアーナ同盟(ALBA)、およびカリブ共同体(カリコム)との広域経済圏結成を呼び掛けた。

 首脳会議には、ベネスエラ以外のパラグアイ、ブラジル、亜国、ウルグアイの加盟4カ国、加盟手続き中のボリビア、協賛国チレの計6カ国大統領と、ベネスエラ外相が出席する。
 

スペイン総選挙:2大政党支配体制崩れる

 スペイン国会下院350議席を争う総選挙が12月20日実施され、予想通り、政権党PP(国民党、保守・右翼)が過半数を大きく割り込む123議席となり、第一党の地位は維持したが敗北した。

 前政権党PSOE(ペソエ=労働社会党、略称・社会党)は過去最低の90議席に落ち込んだ。代わって急台頭したのが総選挙初参加のポデモスで、一気に69議席を獲得した。第2保守党「シウダダーノス(市民)」は40議席に留まった。

 この結果は、1975年の独裁者フランシスコ・フランコ死後40年の民主化過程の多くの期間を占めてきたPSOEとPPの2大政党制が崩れたことを意味する。

 新国会は来年1月13日召集される。それまでに新内閣結成のための多数派工作が展開される。国王はまず第一党PPのマリアーノ・ラホーイ党首(現首相)に組閣を打診する。だがPPと「市民」を合わせても163議席で、過半数176議席に届かない。

 そこで考えられるのが、PSOE、ポデモス両党、およびカタルーニャ2党(計17議席)、バスコ民族党(PNV、6議席)、統一左翼(IU、2議席)など小政党による中道左翼・左翼・民族主義連合政権だ。これであれば、180議席を上回ることになる。

 もう一つの可能性は、PPとPSOEの「大連立」だが、これは両党それぞれの支持者に対する「裏切り」となり、実現性は乏しい。

 どのような組み合わせの政権ができても安定性に欠け、1年ないし1年半内に新たな総選挙が実施される公算が大きい、と見られている。

 PPは、長引く経済不調、ラホーイら幹部らの報酬不正受領事件、右翼的社会・文化政策などが災いし後退した。PSOEは、進歩主義よりも保守主義に傾斜したと批判され、ポデモスの躍進を許した。

 

2015年12月20日日曜日

LATINA誌「ラ米乱反射」はアルゼンチン右傾化分析

◎最近の伊高浩昭執筆記事

★月刊LATINA誌1月号(2015年12月20日刊)

☆「ラ米乱反射」連載第117回 「亜国右旋回、マクリ新自由主義政権が誕生  ベネズエラ国会でも保守・右翼が多数派に」

☆書評:立石博高編著『概説 近代スペイン文化史 18世紀から現代まで』(ミネルヴァ書房、3200円)

☆松枝愛執筆書評:伊高浩昭著『われらのアメリカ万華鏡』(立教大学ラテンアメリカ研究所刊行、非売品)

ボリビアのエボ・モラレス大統領が初当選10周年迎える

 ボリビアのエボ・モラレス大統領は12月18日、初当選10周年を迎えた。2006年1月23日政権に就いてから間もなく10周年を迎える。

 この日、大統領は地元コチャバンバ市の競技場で4万5000人の支持者を前に、2019年の大統領選挙に4選を目指して出馬する意向をあらためて表明。来年2月21日実施の、大統領連続再選規定改正の是非を問う国民投票での支持を訴えた。

 大統領は19日にはタリーハ市で、国際通貨基金(IMF)批判を展開、IMIFは過去20余年、新自由主義の害悪をばらまいた責任を考察すべきだ、と述べた。モラレスはまた、IMFは資本主義の基盤であり、異なる基盤を持つボリビアには介入するな、と突き放した。

 一方、ボリビア政府は19日、2013年12月20日に中国で打ち上げられたボリビア初の通信衛星「トゥパック・カタリ」は今年1900万ドルの通信サービスの売り上げを記録、来年は2400万ドルとなる、と明らかにした。

 この衛星は中国製で打ち上げを含め3億200万ドルかかった。うち85%を中国、15%をボリビア政府が融資した。政府は、この衛星の通信寿命は15年で、建設・打ち上げ費用を除いても総額2億ドルの利益をボリビアにもたらす、と予測している。

 サービスは国内の官民企業に売られているが、政府は南米近隣諸国への販路を開こうとしている。  

キューバ難民問題めぐりコスタ・リカが中米政治会合参加を停止

 コスタ・リカ(CR)のルイス・ソリース大統領は12月18日サンホセで記者会見し、中米統合機構(SICA=シカ)の政治会合参加を無期限停止する、と発表した。

 大統領は同日サンサルバドールで開かれたSICA首脳会議に出席したが、CRが切り出した、米国行き希望のクーバ人経済難民問題の実効ある解決策を会議が真剣に討議しなかったとして、参加停止に踏み切った。だがCRはSICAの経済、通商など他分野には従来通り参加する。

 CR国内には、クーバ人難民がニカラグア国境地帯に5989人、パナマ国境地帯に2053人がいる。ソリース大統領は「中米3国が解決を阻んでいる」と非難したが、それは同難民の入国と領内通過を認めないニカラグア、グアテマラ、ベリーズを指す。

 大統領はSICA会議で、問題解決のため中米に「人道回廊」を開こうと訴えたが、グアテマラは「(米国への入り口である)メヒコが受け入れを保障しなければ我が国に留まってしまう。ただでさえ今年10万人を超える難民がグアテマラを通過した」と異議を唱え、クーバ人が(政治難民でなく)経済難民である点も共感を得にくいとの見方を示した。

 ニカラグアは会議で、米政府が米領に足を踏み入れたクーバ人に定住権を与える「キューバ調整法」を維持しているため難民問題が起きるとして、「CRから米国へのクーバ人空輸」を提案したが、会議は議題として取り上げなかった。

 CR大統領は、今後はクーバ人経済難民に査証を発給しない、と表明した。問題の背景には、玖米復交で「キューバ調整法」が廃止されるのではないかとの観測が、正規の米移住手続きを待てないクーバ人の間に拡がったことがある。この種のクーバ難民は今年4万5000に達している。

2015年12月19日土曜日

キューバ議長が対米正常化深化を前に主権・独立堅持強調

 クーバのラウール・カストロ国家評議会議長は12月18日、全閣僚と政府高官らを前に演説、「クーバは対米国交正常化達成に際しても独立を失わず、独自の経済・政治・社会制度を選ぶ権利を失うこともない」と強調した。

 議長はまた、「いかなる者もクーバに独立の大義を捨てさせようと企図してはならない。クーバ人民が、過去半世紀に亘って闘ってきた原則と理想を捨てることはあり得ない。独自の制度を選ぶ権利は、いかなる内政干渉もなしに尊重されねばならない」と述べた。

 この発言は、バラク・オバーマ米大統領が17日の国交正常化合意1周年に際し、来年内の訪玖希望を新たに表明、米国の願うクーバ民主化促進のため訪玖を役立てたいとの意志を打ち出したのに対する牽制だ。

 議長はさらに、「クーバは主権と独立を相互に尊重しつつ、過去の玖米関係史と異なる両国関係を構築する用意がある。クーバは正常化達成を前に、米国が過去の対玖政策をすべて破棄することに執着する」とも述べた。同時に、経済封鎖解除、グアンタナモ基地返還、「キューバ調整法」廃止などの重要懸案に変化がないことを指摘した。

 正常化合意1周年を機に在米クーバ系社会で実施された世論調査では、56%が正常化に賛成。経済封鎖解除には53%が賛成している、との結果が出た。

 一方18日、イタリアMSCの豪華クルーズ船(最大乗客数2600人)がハバナ港に入港した。この船はジェノヴァを11月下旬出航、クーバの他、ジャマイカ、ケイマン、コスメルなどカリブ海の観光地をめぐる。

中米首脳会議がキューバ人難民問題で成果なく終了

 中米統合機構(SICA、加盟8カ国)は12月18日サンサルバドールで第46回首脳会議を開いた。だが11月15日以来コスタ・リカ(CR)北部のニカラグア国境地帯で足止めを食らっている米国行き希望のクーバ人経済難民6000人の処遇をめぐり紛糾、具体的成果のないまま終了した。

 ルイス・ソリースCR大統領は、SICAが同クーバ人問題を正式議題にしないことに不満で、首脳会議の場から中途退場した。

 会議にはエル・サルバドール(ES)、グアテマラ、オンドゥーラス、CR、ドミニカ共和国の大統領、パナマ副大統領、ニカラグア副外相、ベリーズ首相代理が出席した。

 同経済難民の入国と領内通過を拒否するニカラグアの副外相は、米領土に足を踏み入れたクーバ難民に市民権、永住権を与える「キューバ調整法」を米国が維持しているために今回の問題も起きているとして、米政府に解決責任がある、と強調。その立場を記した政府声明を首脳会議会場で発表した。

 SICAは21日サンサルバドールで、問題解決に向けて実務者会議を開くことを決めた。SICAの半年交代の輪番制議長は、サルバドール・サンチェス=セレーンES大統領からオンドゥーラスのフアン・エルネンデス大統領に交代した。 
 
 

チリ元軍政高官に左翼青年抹殺で実刑判決

 チレ法廷は12月18日、大学生で左翼武闘組織「革命的左翼運動」(MIR)要員だったイスマエル・チャベス=ロボスを拉致、拷問し失踪させた元将軍セサル・マンリケスら元国家情報局(DINA)高官4人に禁錮13年の実刑判決を言い渡した。

 当時22歳だったチャベス青年はDINAに抹殺されながら、翌1975年、DINAが流した「MIRの内輪もめで要員119人が惨殺された」との偽りの情報の死亡者名簿に掲載されていた。

 DINAは、当時のピノチェー軍政に抵抗するMIR要員を「コロンボ作戦」で虐殺しながら、「内輪もめ」をでっちあげたわけだ。

 法廷は、他の39人に禁錮10年、31人に4年をそれぞれ言い渡した。また国家に対し、チャベスの遺族に賠償金1億5000万ペソ(約21万ドル)を支払うよう命じた。

 ピノチェー軍政期に3225人が殺害されたが、うち1192人は遺体が見つかっておらず「行方不明」扱いともなっている。 

2015年12月18日金曜日

ブラジル最高裁が大統領弾劾の是非を上院に委ねる

 ブラジル最高裁は12月17日、国会下院のエドゥアルド・クーニャが今月初めに下したヂウマ・ルセフ大統領弾劾裁判手続き開始の決定を非合法として、手続き続行の是非は上院の決定に委ねることを6対3で決めた。

 大統領弾劾のような重要事項を下院だけで決めるのは正当ではない、と最高裁は判断している。

 最高裁はまた、クーニャ議長が選んだ野党下院議員ばかり65人の弾劾委員会を無効とした。さらに、上院が弾劾裁判開始を決めた場合でも大統領は180日間、職務を離れるだけでよい、とする判断を下した。

 ブラジルは間もなく年末年始休暇およびカルナヴァルの季節を迎えるため、上院の弾劾に関する審議はカルナヴァル明けの2月になると見られている。

 下院の弾劾手続き決定は、巨額の収賄容疑で窮地に陥っているクーニャ議長と、過去4回連続で大統領選挙に敗れた保守・右翼政党PSDB(伯民社党)が連携しての労働者党(PT)政権潰しの策謀と内外で受け止められている。 

2015年12月17日木曜日

キューバ米正常化合意1周年、民間航空機乗り入れで合意

 玖米両国首脳が国交正常化合意を発表してから12月17日で1年経つ。この日、民間航空機の相互乗り入れを決める民間航空協定交渉の妥結が発表された。またバラク・オバーマ米大統領は、米議会に対し対玖経済封鎖解除をあらためて要請した。2月から断続的に続けられていた両国間の水路交渉も17日、ワシントンで終了した。

 玖外務省は17日、1周年に際し声明を発表したが、内容は、対米交渉を執り仕切ってきたクーバ外務省のフォセフィーナ・ビダル米国局長が16日、過去1年を振り返って発表した談話とほぼ同じだった。

 局長は、両国間の民間航空協定交渉に重要な進展があったと明かし、環境保護、海域保護、調節郵便制度などの合意に続く成果となる、と述べた。

 だが、米ドルによる対外決済、米民間金融機関接近、往復通商関係などは依然クーバに認められていない、と指摘した。局長は、オバーマ大統領の権限には限界があり、対玖経済封鎖解除などは米議会の決定次第であると認識していることをあらためて表明した。

 封鎖解除のほか、110年以上も米軍占領下にあるグアンタナモ基地の返還、対玖破壊活動防止、不法移民を促す「クーバ調整法」などの重要問題の解決には進展がない、と局長は強調した。

 オバーマ政権は9月、対敵通商法の対玖適用延長を決め、10月には国連総会での経済封鎖解除決議にイスラエルとともに反対した。

 同法の及ぼす影響については15日ハバナで、ラウール・カストロ議長と、米国渡航を求めるクーバ人6000人を抱えるコスタ・リカのルイス・ソリース大統領が協議した。過去1年間にクーバ人4万5000人が渡米の可能性を求めて密出国している。

 ビダル局長はまた、この1年は人権問題などで双方の立場の隔たりが鮮明になった時期だった、と述べた。だが大使館再開、首脳会談、外相・高官会談、米議員来訪、グアンタナモ基地境界での両国軍人同士の交流維持などの成果があった、と認めた。

 オバーマ大統領が2016年内の訪玖計画を打ち出していることについては、歓迎するが内政干渉は受け入れない、と強調。「節度ある共存」関係を樹立するのがクーバの目的だと述べた。

 米議会下院では16日、共和・民主両党議員が、対玖関係に対応する作業部会を結成した。局長は、これをも進展として評価した。

 一方、米国務省当局者は17日、通貨一本化、民間企業による直接雇用制度確立、政治・社会・経済の活動自由化促進をクーバに求めた。民間部門支援や人民同士の関係強化への関心も表明した。クーバ人の雇用は、国営斡旋会社を通じて行われてきた。

 民間航空協定合意により、これまで両国間でチャーター便を運航してきたアメリカン、ウナイテッド、ブルージェットなど各社は定期便運航に関心を示している。

 だが米国人一般旅行者の自由訪玖が解禁されていないこと、クーバの観光客大量受け入れ態勢が整っていないこと、出入国管理上の問題などから、定期便運航が急速に進むとは受け止められていない。

 クーバは、在米クーバ人30万人の帰国を禁止している。またクーバ航空機は米国で接収される恐れがあるため、乗り入れに踏み切れない。因みに、外国人訪玖観光者は今年前半230万人で、前年比30万人増。

 米ドルにありつけないクーバ庶民の生活は依然、楽ではない。だがテマス誌のラファエル・エルナンデス編集長は、「玖米関係は大きく変わった。長らく敵対関係をとっていた米国が政策を一変させ、相違点を対話で解決するようになったからだ」と指摘している。

 スペインはパリクラブ決定の一環として、対玖債権のうち18億8000万ドルをこのほど帳消しにした。

 

ブラジル全国でルセフ大統領支持行動実施

 サンパウロ、リオデジャネイロ、ミナスジェライスなどブラジル26州の18州都を含む主要70都市で12月16日、国会下院で弾劾される可能性に直面しているヂウマ・ルセフ大統領を支持する広範な集会と行進が決行された。参加者数はまだ集計されていない。

 参加したのは、労働者党(PT)政権を支持する諸団体。労働者単一中央連盟(CUT)、ブラジル労働者中央連盟(CTB)、土地無し農村労働者運動(MST)、家無し労働者運動(MTST)、労組間機構(インテルシンヂカル)、全国学生連盟(UNE)など。

 この日の行動は、弾劾手続き開始を決めたエドゥアルド・クーニャ下院議長の解任も要求した。当局はこのほど、汚職容疑がかけられているクーニャ議長のリオ事務所を家宅捜査した。これは、政府による報復と見られている。

 一方、ルセフ大統領は16日、ブラジリアでの国軍将官を集めた式典で演説、ブラジルは人民を守る国軍を必要としていると述べ、民主擁護と併せて国軍の協力を訴えた。
 

アルゼンチン政府が為替管理制度を廃止

 亜国のマクリ新政権は12月16日、外為二重相場制度を廃止、17日から自由変動相場制にすると発表した。個人・法人は月200万米ドルまでのドル買いが認められる。

 16日現在の相場は公定交換率が1ドル=9・84ペソ、並行相場(闇相場)が同14・25ペソだった。為替一本化で、公定価値が切り下げられる形で実勢が反映されることになる。インフレ加速が予想されている。

 マウリシオ・マクリ大統領は16日、ウラディーミル・プーチン露大統領と電話会談し、国連、G20など多国間機関での外交協力、通商、麻薬取締り、テロリズム対策などについて話し合った。

 一方、検察は16日、「五月広場の母たちの会」のエベ・デ・ボナフィニ会長の発言を有罪と判断、捜査を開始した。同会長は11月末、大統領就任直前のマクリを「敵」と位置付け、就任翌日の12月11日に首都で「抵抗行進」をするよう呼び掛けた。

 検察は、これを「集団暴行罪」および「治安撹乱罪」で起訴可能と捉えた。世論は、マクリ政権による反対派人権団体への弾圧が始まった、と受け止めている。

 同「母の会」は国家予算で運営され、「労働大学」などを維持してきた。だが予算打ち切りの公算が大きくなっている。

国際司法裁がサンフアン河口紛争でコスタ・リカ勝訴の裁定

 国際司法裁判所は12月16日、ニカラグア(ニカ)とコスタ・リカ(CR)の国境河川サンフアン川河口のCR領ロス・ポルティージョス島北西部(ニカ名ハーバーヘッド=港頭)の2・5km2の土地をCR領と認めた。オルテガ・ニカ政権は裁定に従うと表明した。

 カリブ海に注ぐサンフアン川河口にはロス・ポルティージョス潟湖があり、「港頭」は潟湖に突き出している。ニカ政府は2010年、同地に軍隊を派遣し、「港頭」をロス・ポルティージョス島から切り離す形で「浚渫」を進めていた。

 「浚渫」路が新しいサンフアン川河口になれば、その左岸(西側)はニカ領となるとの計算からだった。19世紀の条約で同河口左岸がニカ領、右岸がCR領と規定されているからだ。

 2010年当時のチンチージャCR政権は国際司法裁に提訴、今回の裁定となった。司法裁は、ニカ政府に対し、「浚渫」工事がCR領に及ぼした自然破壊などに関し賠償金の支払いも命じた。オルテガ政権は、ソリースCR政権と話し合うと表明している。

 ニカラグアは数年前に同司法裁の裁定でコロンビアから広大な領海・経済水域を獲得しており、今回、素直に裁定に従った。

 因みに、「浚渫」工事の責任者は、ニカラグア革命の英雄の一人、エデン・パストーラ(コマンダンテ・セロ)だった。

2015年12月16日水曜日

エルマンノ・オルミ監督の長編「木靴の樹」を観る

 イタリア映画の巨匠エルマンノ・オルミ監督(83)が1978年に制作し、カンヌ国際映画祭最高賞パルムドールをはじめ数々の映画賞を獲得した『木靴の樹』を試写会で観た。187分の一大長編だ。

 監督の生地であるイタリア北部ロンバルディア州ベルガモの田園が舞台で、時代設定は19世紀末。悪代官を彷彿させる万能の地主の下で虐げられて働く貧しいの農民4家族の喜怒哀楽と過酷な運命を描く。

 彼方の山脈まで続く広大で美しい田園の四季、絵画の「落ち穂拾い」や「種まく人」を想起させる人々など、情景描写が素晴らしい。だが家畜のガチョウや豚を殺し料理する残酷なリアリズムも映し出される。

 封建的風土で農奴のように生きる人々の実存を見る。現代に生きる私たちは、時空を超えて、彼らに私たちの過去を見る。さらに現在も苦境から解放されていない世界各地の無数の人々の存在に思いを馳せる。だから共感できるのだ。

 制作から38年、今も新しいのは、作品が人間を深く描き、「古典」となっているからだ。

 ★2016年3月26日(土)から、東京・神田神保町の岩波ホールで公開され、順次全国展開する。必見の名作!

コロンビア政府とFARCが犠牲者賠償と責任者断罪で合意

 ハバナで内戦終結のための和平交渉を続けているコロンビア政府と、ゲリラFARC(コロンビア革命軍)は12月15日、和平議題のうち妥結が最も困難と見なされてきた「内戦人道犯罪などの被害者・犠牲者への賠償と正義(法的断罪)」で合意が成立した、と発表した。

 5項目の「統合的制度」合意は、①真実究明委員会設置②行方不明者捜索特別部隊編成③和平特別法制(JEP)制定④統合的賠償制度確立⑤内戦人道犯罪を繰り返さない保障-。

 JEPは9月23日の和平合意で決まっていたが、人道犯罪に直接・間接的に関与した政府治安部隊とFARCの双方の当事者も断罪の対象と明記されたのが新しい。

 この点で譲歩したFARCは、政府軍の補完勢力だった極右殺戮部隊パラミリタレスの「解体・断罪」を勝ち取った。

 2012年に始まった和平交渉で、農地、政治参加、麻薬の3議題に次ぎ、今回の賠償が合意された。残るは、FARCの武装解除、復員、検証を含む「最終停戦」だ。

 一方、コロンビア国会は14日、和平合意承認の是非を問う国民投票実施、およびJMサントス大統領に和平合意実施のため政令を発する特権を与える法案を可決した。下院は可決済みで、憲法裁判所の合憲性の確認作業を経て大統領が署名すれば発効する。

 フアン・クリスト内相は、2016年前半に法的整備が整えば、その後に国民投票が実施されると展望した。サントスは、「コロンビアは来年、戦争のない国として夜明けを迎える」と語った。

 サントスは15日カリ市での第4回コロンビア・エクアドール(赤道国)合同閣僚会議にラファエル・コレア赤大統領とともに出席、アンデス共同体のコロンビア、ペルーの先進両国が欧州共同体(EU)と結んでいる特恵関税を含む多目的協定への赤国加盟を支持すると表明した。サントスはまた、赤国は、コロンビア、ペルー、チレ、メヒコで構成する太平洋同盟(AP)の加盟候補国だと指摘した。

 両国合同閣僚会議では、治安、防衛、基礎構造、教育、通商、環境、スポーツなどで両国統合的な協力関係を樹立することで合意した。

ベネズエラ大統領が革命体制強化方針を発表

 ベネスエラのニコラース・マドゥーロ大統領は12月15日、ボリバリアーナ革命体制強化のためとして、①政策上の過ちの検証②野党勢力による国家民営化の脅威に対抗するため街頭で平和的蜂起決行③革命過程の政治的・人民的復興-の3方策を実行すると明らかにした。

 大統領はまた、これまでのチャベス派2代政権下で、電気通信は国民の88%にまで拡充、基礎医療は同80%に達した、と施政の成果を讃えた。

 だが15日、ベネスエラ原油の国際価格は1バレル=29米ドルに下がったと前置きし、歳出資金確保が一層困難になりつつある状況を指摘した。

 一方、NYT紙によると米検察は、ベネスエラのボリバリアーナ国家警備隊(GNB)のネストル・レベロル総司令官と、同国麻薬取締機関のエディルベルト・モリーナ幹部の2人を麻薬取引関与罪で近く起訴する方針を固めた。

 因みに、マドゥーロ大統領夫妻の親類縁者2人が11月ハイチで麻薬犯罪で逮捕され、身柄を米国に送られ収監されている。
  

アルゼンチン新政権が人権政策支出削減に着手

 今月10日に新自由主義経済路線のマクリ保守・右翼政権が発足した亜国で、早くも人権・社会政策の後退が始まった。軍政期(1976~83)に犯された夥しい数の人道犯罪の現場を象徴する旧海軍機会学校(ESMA)=現「記憶・人権空間」=で建物の修復・維持作業に携わってきた労働者2000人に15日、18日をもって解雇するという通告がなされた。

 この作業は、ペロン派左翼のフェルナンス前政権下で、社会開発省、人権庁、国立ブエノスアイレス大学建築・設計・都市計画学部(FADU)が共同で進めてきた「アルヘンティーナは働く」計画に基づく事業の一つだった。

 旧ESMAはブエノスアイレスのリベルタドール大通り8151番地にあるが、解雇通告を受けた労働者のうち500人は15日、同施設前で抗議行動を展開、「政府の不当な決定」を訴えた。

 新政権のへルマン・カラバーノ法相は14日、旧ESMAを視察、人道犯罪被害者の代表的組織である「五月広場の祖母たちの会」のエステラ・デ・カルロット会長に会い、「人権政策継続」を伝えている。法相は、「忘却・沈黙に反対し責任者特定と正義を求める息子・娘たちの会」代表とも会った。その翌日の解雇通告ゆえに、不信感が拡がっている。

2015年12月15日火曜日

未成年者だけで1万人が2カ月間に米国に越境

 米墨国境3200kmを監視する米当局は12月14日、今年10~11月に同国境を不法に越境し拘禁された、親など成人を伴わない未成年者は1万588人に達した、と発表した。昨年同期比106%増という。

 また、同じ期間に密入国し拘禁された家族は、1万2505家族だった。未成年者も家族も多くはグアテマラ、エル・サルバドール、オンドlクーラスなど中米諸国民。

 拘禁された人々は、国境地帯の米国側の収容所で一定期間保護された後、出身国に送還されることが多い。
 

日本含むパリクラブがキューバ債権85億ドルを帳消し

 パリクラブは12月14日、対玖債権利子分85億米ドルを棒引きすると発表した。1980年以来、クーバは返済できずにいた。クーバは債務元本26億ドルだけを18年かけて返済することになった。

 最大債権国はフランスで、利子分40億ドルを帳消しにした。元本は4億7000万ドルで、うち2億4000万ドルはクーバが現金で返済し、残りはクーバ国内での開発投資資金に回される。

 パリクラブの対玖債権国は日本、カナダおよび欧州12カ国の計14カ国。クーバは1986年に返済停止に踏み切り、91年末にソ連が消滅してからは返済不能に陥っていた。

 米国は、対玖経済封鎖を敷いてきたため、債権国には含まれていない。その米国のバラク・オバーマ大統領は14日、来年の訪玖希望をあらためて表明、数か月内に決めると述べた。だが大統領は、反体制派とも会うとし、「私はクーバの現状維持を強化するため訪玖はしない」と強調した。

 マクリ保守・右翼政権になった亜国のスサーナ・マルコーラ外相は14日、オバーマ大統領がマクリ大統領への祝電で訪亜の可能性を示唆した、と明らかにしており、訪玖と訪亜が同時期になる公算が出てきた。

 米玖間での問題点の一つは、米国が1966年から施行してきた、クーバ難民流出を促す「クーバ調整法」の扱い。同法が有効であるため、国交再開後も米移住を願うクーバ人の密出国が絶えない。同法が、米領土に一歩踏み入れたクーバ人には1年内に定住許可を与える、としているからだ。

 最近、6000人のクーバ人がエクアドールに渡り、そこから北上してコスタ・リカ(CR)に到着、だがニカラグアが入国および国内通過を認めないため、6000人はCR国内で足止めを食らい、「難民問題」化している。13日ハバナ入りしたCRのルイス・ソリース大統領は15日、ラウール・カストロ議長と「6000人問題」で話し合う。

 玖米間では11日、航空郵便・小包輸送再開が決まった。8日からはハバナで、相互に主張する賠償問題について話し合っている。クーバは経済封鎖による被害8337億ドルの賠償を要求。米国は、米市民6000人が要求している、クーバ革命後に接収された米資産総額80億ドルの賠償を求めてきた。

 イタリアのMSCクルーズ社は今月18日、クルーズ船をハバナに入港させる。米カーニヴァル社は、経済封鎖緩和の動きを横目に、来年5月のハバナ入港を目指している。日本のNGOピスボートも来秋の入港を予定している。

 クーバ蹴球協会(AFC)は14日、近日中にクーバ人サッカー選手の在外活動のための交渉を開始する、と明らかにした。

 クーバにとって深刻なのは、ベネスエラ政権党が国会で野党連合MUDに絶対多数議席を握られたことで、同国からの原油優遇供給が止まる可能性があることだ。MUDは対玖優遇供給停止を公約している。

 一方、シンガポール法廷は14日、2013年7月パナマ運河カリブ海側のコロンで発覚した北朝鮮貨物船のクーバ軍旧式武器類の無届輸送事件の責任は、この貨物船を運航していた北朝鮮の海事会社OMMを顧客とするシンガポールのチンポー海運会社に帰するとの判断を下した。

 同社は、OMMに対し、積荷をパナマ運河通航に際し、正直に申請するよう求める義務を怠ったという。またチンポー社は、国連や米国による北朝鮮への経済制裁を認識していたとされる。同社が、北朝鮮の核開発計画に関与した可能性もあるという。
  
 


 

2015年12月14日月曜日

閣僚人事で<背水の陣>敷くか、ベネズエラ政権

 ベネスエラのニコラース・マドゥーロ大統領は12月12日、カラカス市内の陸軍ティウーナ要塞で演説、政府や政府機関で要職にある軍人たちに対し、これまでの貢献を讃えると同時に、兵営に復帰し国防に専念するよう求めた。

 国軍の将軍、佐官らの多くは、陸軍中佐だった故ウーゴ・チャベス大統領に起用され、政府の要職に就いたが、マドゥーロ現政権になってからも、その状態が続いていた。「脱軍人」は政府の「文民化」強化と、軍内部の規律強化を図るためだ。

 大統領はまた、チャベスが始めたボリバリアーナ革命(解放者シモン・ボリーバルの遺志を継ぐ変革政策)の継続、主権防衛、人民のための国営石油会社PDVSA運営への覚悟を軍人たちに訴えた。

 6日の国会議員選挙での政権党惨敗を受け、全閣僚は辞任した。日本時間14日正午、現地から届いた情報によると、新国防相には国会議長ディオスダード・カベージョが就任する見込み。カベージョも陸軍士官出身で、チャベスの腹心の一人。現政権で大統領に次ぐ実力者だ。

 外相には、米州諸国機構(OEA)でチャベス路線外交を守ってきた外交官ロイ・チャデルトンが有力。またチャベスの娘2人も登用される可能性がある。<背水の陣>を敷いて難局に対応する大統領の決意を表す人事になるだろう。新閣僚の顔ぶれは15日発表される見込み。

 今選挙で政権党は42%の投票があった。圧勝した野党の「民主連合会議」(MUD=ムドゥ)は、これを侮れない。政府と国会に「ねじれ」が生じたが、正常な施政には対話が不可欠だ。

 MUDが大勝に酔い驕り、建設的言動をとらなければ、早晩支持を失うこともあるだろう。なぜなら、有権者の多くは、MUDを積極的に支持したのではなく、政府の経済政策の失敗を糾弾して野党に票を与えただけだからだ。

 MUD内の極右勢力は、一気に政治・社会の撹乱工作に出て、来年4月以降、大統領罷免の是非を問う国民投票に持ち込もうという戦略を描いているようだ。

 だが、チャベス派政権下で17年間、手厚い社会保障の恩恵に浴してきた人民大衆は、簡単に財界・米国寄り姿勢の強いMUDを支持し続けることはないだろう。MUDにとっては、どこまで人民主義政策を採り入れることができるかが政権奪取の鍵とる。

 一方、政府は批判の的である官僚主義、腐敗、不効率、犯罪激化に早急に対応しなければ、支持挽回は覚束ない。マドゥーロ大統領は敗北直後、「民主でなく反革命の勝利だ」と述べたが、このような発想では状況に対応できまい。

 チャベスとマドゥーロの「革命の師匠」を自他ともに認めるフィデル・カストロ前玖議長は12月10日付の公開書簡で、チャベス路線が内外で果たしてきた多大な人民主義政策の実績を讃え、マドウーロを励ました。 
 

ペルーアンデス上空をドローンが飛んでゆく

 アンデス山脈上空の大気汚染を調査しているペルーの科学者チームは、極寒の標高5000mの高度での飛行を可能にするドローン用電池の開発に成功、これを備えたドローンが観測活動で活躍している。

 フランシスコ・クエージャル教授らのチームが開発した電池を搭載したドローンは、強風、雨雪にも耐えて20分は高度飛行ができる。超軽量のセンサーを搭載、アンデス山頂上空で窒素2酸化物、硫黄2酸化物、一酸化炭素、硫黄、オゾンなどの分量を観測している。

 ペルー北部のカハマルカ近郊にあるヤナコチャ金山(標高4200m)上空の汚染度、クスコ近郊のスユ・パリーナ氷河(5100m)の後退状況などの調査も済ませている。

 ウビーナス火山(5600m)の噴火状況観測への出動にも期待されているが、高度が高く、火口上空を飛行する危険が伴うため、検討中だ。

 何かと話題になっているドローンがアンデス山脈上空を観測飛行するとは、せせこましい某国のドローン状況と大きく異なって、何と雄大なことか!

ボリビア大統領が改憲国民投票目指し集票運動開始

 ボリビアのエボ・モラレス大統領は12月13日、憲法上の首都であるチュキサカ州都スクレのアニセト・アルセ広場で国民投票を勝利に導くための集票運動を開始した。(政治首都はラパス)

 この国民投票は、憲法の大統領再選規定を改正し、2019年の次期大統領選挙にエボが4選をかけ出馬するのを可能にするたものもので、改憲の是非を問う。

 エボは、ボリビア独立200周年の2025年までの政策綱領を策定しているとして、「だからこそ2019年選挙出馬を目指すのだ」と表明した。

 政権党「社会主義運動」(MAS)は、国民投票での賛成票60%強の獲得を狙っている。

 南米では、アルヘンティーナで12月10日、保守・右翼、新自由主義路線のマウリシオ・マクリ大統領が就任。ベネスエラで12月6日実施された国会議員選挙では保守・右翼野党連合MUDが3分の2の絶対多数を獲得、チャベス主義のマドゥーロ左翼政権は窮地に陥った。ブラジル中道左翼のヂウマ・ルセフ大統領も弾劾される可能性のある苦境に追い込まれている。

 21世紀第2・十年期(2010年代)後半のラ米の潮流は右旋回が顕著になったのだ。ラ米・南米左翼路線の維持・延命の使命は、エボと、エクアドール(赤道国)のラファエル・コレア大統領の肩にかかっており、特にエボに重くのしかかっている。

 エボは10日のマクリ大統領就任式に出席し、11日初会談に臨んだ。隣国同士ゆえ、善隣関係を壊すわけにはいかない。

 ボリビア国民投票は来年2月21日実施される。今年9月、国際司法裁判所は、1879年の太平洋戦争でチレに奪われた太平洋岸領土の回復を求めるボリビアの訴えを受けて審理開始を決めた。この裁定はエボ政権継続に有利に作用すると見られている。 

~波路はるかに~最終回

 PBオーシャンドゥリーム号での船路は12月6日に終わった。実は、横浜に帰着したら、パソコンが通じなくなっていた。長旅の疲れをいいことに故障を1週間放置していた。だから、このブログを更新できなかった。その間、南米政治の右旋回の長物を雑誌用に書き、雑誌社編集部で処理した。

 昨夜(12日夜)、PB船が停泊中の横浜港大桟橋に戻って、船内での水案(船上講師・エンターテナー)忘年会に出た。懐かしい顔ぶれが半分、残り半分は知らない若い世代で、計40人。PB幹部たちとしばし歓談した。

 88回航海を終えたばかりのパシオン田村美和子航海PBディレクターらも勢揃いしていた。横浜と名古屋での船内見学会を終えてから下船し、90回航海乗り組みのPB仲間に船を託すという。最後まで御苦労さまだ。

 この水案会で、パソコン故障放置を咎められた。急遽手を尽くして奇蹟的に復旧させた。だから今、この記事を書くことができた。

 今回の船旅で、本ブログの読者が何人かできたかもしれない。その人たちに感謝しつつ、ら米情勢の愛読者になってほしいと願う。

 もう今日になってしまったが、14日から新規まき直し、せっせと記事を書き、毎日更新する。 

 

2015年11月29日日曜日

~~2015波路はるかに 第4回~~

~~2015波路はるかに 第4回~~

 PB船オーシャンドゥリーム号うは11月27日、赤道を越え、再び北半球に戻った。29日未明、船は北東に進路を変更して、マーシャル諸島に接近し、病人一人を下ろした。このような事態は常にある。慣れたもので、整然と事が運ばれる。
 注目の22日実施の亜国大統領選挙決戦は、野党のマウリシオ・マクリが接戦で、政権党のダニエル・シオーリを破った。12月、政権が」交代。ネストル・キルチネル4年、その夫人クリスティーナ・フェルナンデスの8年の、計12年間のペロン派キルチネル路線の中道左翼政権は野に下る。
 この結果は、12月6日実施のベネスエラ国会議員選挙で、野党mudに有利に作用するだろう。ラ米とりわけ南米の左翼、中道左翼路線は厳しい時代を迎えそうだ。米国の思うつぼになる。
 船を降りたら、分析と展望に取り組まねばならない。
 海面は濃紺、深い海だ。驚いたトビウオの群れが飛び交う。
 船内講座の情勢ものは終わり、若者対象のシリーズ討論会を続けている。では次回まで、

2015年11月25日水曜日

~2015波路遥かに~第3回

~2015波路遥かに~第3回

 PBオーシャンドゥリーム号はタヒチのパペーテとボラボラ島に寄港して、11月4日、独立サモアの首都アピアに入港した。初めてのアピアゆえに午前中は歩き、記事執筆に備えて写真を何枚か撮った。午後は、島の反対側の集落で、住民と交流した。石焼料理がうまかった。南洋の島ではココヤシの実と葉は万能だ。これなしに生活が成り立たないと言っても過言ではない。あらためて実感した。
 パペーテでは、タヒチ舞踊の踊り手、歌手、演出家、振付師、小道具製作を一人でこなすココさんの家で、できたてのプアソンクルー、マグロ刺身をご馳走になった。うまかった。今航海最高の食事だった。
 ボラボラでは海につからず、去年見た巨大鰻を見に、街のドブ川に行った。だが鰻はいなかった。
 船上講義は大方終わり、アピア前には、サマセット・、モームが英国の諜報員として滞在したことの話と文学について語った。
 今日からは船内に250人ぐらいいる若者たちのための連続講座を始めた。「少数派の存在を認め多様性豊かな社会に日本を変えていくには」を主題にパネル討議をした。
 船は27日、赤道を越え、北半球に戻る。スコールが続き、気温は心持ち涼しい。船にいると、通信事情などから国際情勢がなかなか分からない。これが痛い。2015・11・26 伊高浩昭

2015年11月17日火曜日

「波路はるかに2015」第2回

~2015波路はるかに~第2回

 PBオーシャンドゥリーム号は明後日、タヒチのパペーテに着く。仏領ポリネシアの首都で、人口は18万人。タヒチ島の面積は東京都の半分弱。熱帯の猛暑が甲板を覆っている。

 船は、南回帰線と赤道の間を走っている。太陽と地球の緯度が重なっているため、太陽は南中しっぱなしで、人の影は足元に小さく丸くあるだけで、日中は影のない情景が醸し出される。因みに、に太陽の緯度は「赤緯」と言うらしい。

 船の侵入に平和を脅かされたトビウオの群れが、飛び逃げる。銀色の木の葉が紺碧の波の上を舞う。時折、海鳥が上空を過ぎる。島が、そう遠くない距離にあるのだろう。

 先日、疲れた黒色の海鳥が一羽、船で翼を休めていた。船は一晩に250kmも走る。運ばれた鳥は、帰るべき島から遠ざかってしまう。哀れ! だが鳥の生死は自然に任せるだけだ。助けてはいけない。野生なのだから。

 カヤオで出てから一連のラ米講座を終え、タヒチ講座に入っている。今日はタヒチとポール・ゴーギャンの関係を話した。明日は、タヒチ舞踊の先生ココさんと対談する。

 ラ米ではハイチ大統領選決戦に進出する2候補が決まった。亜国決戦は22日だ。12月6日にはベネスエラ国会議員選挙がある。風雲急を告げている。201501116 伊高浩昭

2015年11月9日月曜日

「波路はるかに2015」第1回

「波路はるかに2015」 第1回 リマ市およびカヤオ港にて    伊高浩昭

 日本時間(JST)11月4日~ペルー時間4日にかけて丸一日、メヒコ市経由で19500kmを飛んでリマ市のホルヘ・チャベス国際空港に着いた。昔は荒れ地に空港ビルがそびえ立つだけのこじんまりした空港だったが、21世紀に入ってからのペルー経済のいびつな隆盛を反映して、すっかり現代化している。タクシーの客引きが群がる光景は相変わらずだが、車の床に穴の開いたタクシーはもはや見当たらない。5日未明0130ごろ、カヤオ港に停泊中のピースボート「オーシャンドゥリーム」号に入った。これが私の動くホテルである。

  カヤオで下船する、リマ在住の写真家義井豊の送別宴に駆け込み参加し、仮眠をとる。明けた朝、義井豊とリマ中心街のアルマス広場に行き、某有力紙政治部長にインタビューする。来年4月の大統領選挙の展望を訊いた。政治部長は主な候補の品定めをしてくれたが、もちろんオフ・ザ・レコードだった。発言者の特定に繋がるようなことを一切書かずに、発言内容を報じること。これは守らねばならない。

 次いで、治安関係の元高官にインタビューした。過去の対ゲリラ戦、現在の治安状況、大統領選挙展望などを訊いた。来年12月には、リマの日本大使公邸占拠事件発生20周年となる。この事件も振り返り、質疑した。

 晩春のリマは涼しかった。フンボルト寒流の影響が際立っている。油断すれば風邪をひく。PB船は6日夜、カヤオを出港、西方彼方のタヒチに向かう。2週間の航海だ。7日は安息日、8日午前、日本内外のニュースを船客たちに報告した。安倍参戦法、「マイナンバー制度」、TPP大筋合意、辺野古埋め立て予備工事強行に関心が集まった。明日は、クーバとUSAMERICA(ウサメリカ=USA=米国)の国交再開の歴史的経緯について語る。

 船上も涼しいが、数日後には夏らしい暑さが甦る、と船長は予想している。船からのパソコン交信は電波事情次第だ。これが素早く届くのを期待する。

2015年11月4日水曜日

ラ米3国が国連の核兵器廃絶決議採決で棄権

 国連総会は11月2日、日本提案の核兵器廃絶決議を賛成156、反対3(中露朝)、棄権17で採択した。棄権国には、ラ米のクーバ、ボリビア、エクアドールの3国が含まれている。

 クーバは、フィデル・カストロ前国家評議会議長の時代から核兵器廃絶を熱心に訴えてきた。ここで棄権に回ったのは、経済援助を受けてきた中露に慮ったためと容易に想像できる。また北朝鮮とも友好関係を維持している。

 ボリビアは、エボ・モラレス大統領がこのほど、ロシアからの資金・技術援助による原子力研究所建設計画を発表したばかりだ。

 エクアドールは、国際金融界から締め出されており、特に中国に資金援助を仰がねばならない立場にある。

 中露と経済上の関係の深いアルヘンティーナのフェルナンデス政権が棄権しなかったのは、12月で政権交代となるからだ。ベネスエラは故ウーゴ・チャベス前大統領の核兵器廃絶路線を引き継ぎ、「米国と同じ棄権」の立場に身を置きたくなかったからだろう。

2015年11月3日火曜日

エクアドールが米0XY石油に賠償金10億ドル支払いへ

 エクアドール(赤道国)のラファエル・コレア大統領は11月2日、係争相手だった米オクシデンタル石油会社(OXY)に賠償金10億ドル支払うことで同意した、と発表した。

 OXYは、赤東部のアマソニア油田を開発していた2006年、開発権の4割を赤政府に無断でカナダのエンカナ社に売却。当時のアルフレド・パラシオス赤大統領は赤石油法違反として開発権を取り消し、事実上、接収した。

 これに対しOXYは米赤投資条約違反として提訴。世界銀行の下部機関である国際投資関連紛争調停所が介在、同条約違反を認め、17億ドルの支払いを赤政府に命じた。その後の話し合いで、最終的な支払額は10億ドルになった。

 10億ドルは、赤道国の2016年度歳出の3・3%に及ぶ重い負担だ。コレア大統領は、「私が就任する前の新自由主義政権時代に問題は起きた」と指摘した。

ベネズエラが東カリブ諸国専用の貿易会社設立へ

 ベネスエラのニコラース・マドゥーロ大統領は11月2日、セントヴィンセント・グラナディーン(STVG)をはじめ東カリブ諸国との貿易専用の「ベネスエラ東部貿易会社」(CCEOV)を設立する、と発表した。

 大統領は1日からSTVG首都キングズタウンに滞在中。同社の中心は、ベネスエラ東部のアンソアテギ州プエルトラクルース港となる。


 

世界で2006~14年にジャーナリスト700人が殺される

 ユネスコは11月2日、2006~14年に世界中で殺害されたジャーナりスト、フォトジャーナリスト(写真・執筆両道家)、フォトグラファー(報道写真家)、カメラマン(TVニュース映像撮影者)、メディア報道部門労働者は計700人を超える、と明らかにした。

 「ジャーナリストに対する犯罪無処罰を終わらせるための国際日」に因み、公表された。

 これらのジャーナリスト殺害事件のうち解決されたのは7%にすぎず、ほとんどは迷宮入りしている。

 2014年には118人が殺された。13~14年の地域別発生件数は、アラブ諸国64、ラ米51、アジア太平洋30、中東欧10など。

 一方、米州人権委員会(CIDH)の統計では、2010年から現在までラ米でジャーナリスト150人が殺された。内訳は、メヒコ55人、オンドゥーラス28人、ブラジル25人、コロンビア11人、グアテマラ9人、ペルー6人、パラグアイ4人など。

コロンビア和平のため「地方ごとの停戦」を提案へ

 内戦が和平の方向に進んでいるコロンビアで、ゲリラ組織コロンビア革命軍(FARC)が7月20日に踏み切った「一方的停戦」を監視・検証してきた「和平のための拡大戦線」(FAPP)は11月2日、近くハバナに行き、FARC、コロンビア政府の双方に新たな和平案を提案する、と明らかにした。

 その和平案は、コロンビアの州(県)ごとに停戦し、それを全土に拡大させ、内戦を終わらせるというもの。政府は、FARCを特定地域に集結させる案を提案していたが、FARCはこれを拒否した。

 FARCは、一方的停戦実施後、政府軍および極右準軍部隊による50件を超える戦闘行為があった、と政府側を非難、このままでは和平過程進展が危ぶまれると警告していた。

 FAPPは、FARCの要請を受けて、和平交渉が行なわれているハバナに赴き、仲裁役の立場から提案することになった。

 

2015年11月2日月曜日

ボリビアがロシアの援助で原子力研究所を建設へ

 ボリビアのエボ・モラレス大統領は10月28日、同国初の原子力研究所を4年内に建設する、と発表した。政治首都ラパスの郊外に拡がる標高4000mのエルアルト市で、2016年3月20日着工される。

 建設費は3億ドルで、ロシアが融資する。技術もロシアだが、原子力発電の経験国アルヘンティーナも技術支援する。実験用原子炉1基などが設置される。

 モラレスは昨年、この建設計画を打ち出し、国際原子力機関(IAEA)の支援を得てきた。同大統領は以前、イランとの協力を決めていたが、立ち消えになった。施設の正式名称は、「原子力技術研究開発所」。

 当初、住民の反対が強かったが、モラレスは人体、家畜、空気、河川、「母なる大地」にも汚染の心配はない、と説得、同意を得るのに成功した。

11月の伊高浩昭執筆記事予告

◎伊高浩昭の11月執筆記事予告

★月刊誌LATINA12月号(11月20日刊)

「ラ米乱反射」連載第116回 「10月25日実施のハイチ大統領選挙長編解説」

書評:『キャプテン・クックの列聖』(ガナナート・オベーセーカラ著、中村忠男約、みすず書房、6800円)

コロンビア政府軍の軍事作戦が停戦に脅威、とFARC警鐘

 コロンビア革命軍(FARC)は11月1日、同ゲリラ組織が7月20日から維持している「一方的停戦」を監視・検証している「和平のための拡大戦線」(FAPP)に対し、FARCとの緊急会合開催を要請した。

 理由は、このところの政府軍の全国的な軍事化強化によってFARC要員が殺されており、停戦が脅かされている、との判断から。

 FARCは10月31日には、ハバナでの和平交渉を支援しているクーバ、ノルウェー、ベネスエラ、チレ4カ国代表と、交渉に側面参加している米独EU代表に、「軍事化による危険性」について詳しく説明した。

 和平過程を支援しているコロンビア超党派議員団も1日、政府、FARC双方に対し、和平過程を壊さないため言動を慎重にするよう呼び掛けた。

 一方、コロンビア紙はハバナでFARC交渉代表団広報担当のカルロス=アントニオ・ロサーダの発言として、JMサントス大統領は相互停戦の監視・検証を国連安保理に提案すること、および、相互停戦前にFARCは特定地域に終結すべきこと、の2点を条件としてFARCに提示したが、FARCはこれを拒否した、と報じた。

 FARCは、国連の関与は不要であると同時に、9月23日の和平合意に反する、と見ている。また、FARC要員の集結については、「政府に真の政治的意志があれば集結は不要」との立場だ。

ラ米エネルギー機構が英の油田開発を国連決議違反と判断

 ラ米エネルギー機構(OLADE=オラデ)は10月30日、ボリビア南部のタリーハ市で石油相会議を開き、英国によるマルビーナス(フォークランド)諸島近海での油田開発を国連決議違反と認定した。

 国連は、亜国によるM諸島領有権の主張を支持し、英国による一方的な油田開発を、「亜英両国は現状を変更する一方的行動をとってはならない」とする国連決議に反していると判断、亜国が英国に対し法的措置をとるのを是とした。

 亜国は1833年に英国に奪われたM諸島および南大西洋の他の2諸島の奪回のため1982年4月、M諸島に先制攻撃を仕掛け占領した。だが英本国から派遣された海空軍部隊により6月、敗北に追い込まれた。

 その後、国連の仲介で対話による対立解消を求められてきた。だが英国は、領土問題の話し合いには応じず、島民投票で諸島の英国帰属継続を決めるなどし、近年、亜国の反対を無視して海底油田開発に踏み切った。 

2015年11月1日日曜日

コロンビア和平は来年3月23日前にも可能と大統領予測

 コロンビアのJMサントス大統領は10月31日、政府とFARCとの和平交渉が現在の調子で進行すれば、最終和平合意には、期限の来年3月23日より早く到達できそうだ、と述べた。

 双方は目下ハバナで、最終和平前のFARCゲリラ要員の集結および集結地域、停戦監視・検証の方法などについて話し合っている、と明らかにした。

 大統領はまた、和平実現に向けて私の政敵を含む全コロンビア人の支援が必要だ、と強調した。

日本とチリが津波対策で協力強化へ

 太平洋を隔てて向き合うチレと日本が津波対策でセミナリオ(セミナー)を開き、津波対策計画を打ち出した。セミナリオは10月29日、サンティアゴ市で開かれた。

 計画は、「STREPS(持続可能開発向け科学技術協力調査計画)-津波計画」と呼ばれる。早期予報、被害規模推定、非難、海岸地方居住地域での普段の準備などを通じて津波の危険性を最小限にするというもの。

 2010年にチレ南部のコンセプシオン市一帯で起きた地震でも、11年の北日本大震災でも、大きな津波被害が出た。これらの経験を経て、両国の協力関係は強化された。

 セミナリオには、日本から国際協力事業機構(JICA)、地震専門家、日本大使館など、チレからは国家緊急事態事務所(ONEMI)、海軍水路・海洋学研究所(SHOA)、公共事業省港湾事業局、大学の専門家ら、双方合わせて40人が参加した。

 ONEMIのリカルド・トロ所長は、我々は日本の経験に学び従う、と述べた。

2015年10月31日土曜日

アルゼンチンタンゴ演奏会のお知らせ

◎タンゴ・アルヘンティーノ演奏会のお知らせ

「タンゴ・ルネサンス」: 出演 パブロ・エスティガリビア以下「セスセート・メリディオナル」(南米6人組)

歌手 エステバン・リエラ、 踊り 亜国人3組

★2016年1月21日~3月2日、神奈川県、東京都、埼玉県、千葉県で公演。

▼問い合わせ:03-3226-9999
 



キューバが対スペイン債務返済調整で合意

 クーバとスペインは10月30日、クーバがスペインに負っている短期債務2億150万ユーロ(2億2200万ドル)の返済のための再融資で合意した。

 リカルド・カブリーサス玖副首相がマドリーでスペイン高官と会談し、決まった。両国は12月2日ハバナで、合意書に調印する。

キューバのラウール・カストロ議長がメキシコ訪問へ

 メヒコ外務省は10月29日、クーバのラウール・カストロ国家評議会議長が11月5~7日、国賓として来訪すると発表した。訪問地は首都メヒコ市ではなく、ユカタン州都メリダ。

 マヤ文化圏にあるメヒコの中心都市であり、かつて野口英世博士が黄熱病の研究などで滞在した。

 言わばクーバの最寄りの都市だが、84歳と高齢のラウール議長は、標高2300mで酸素の薄いメヒコ市を避け、クーバと気候が似ている熱帯性気候の低地メリダを選んだもよう。

 1956年11月、ラウールは兄フィデル・カストロ、チェ・ゲバラらとともにクルーザー、グランマ号でメヒコ湾岸のトゥースパン港を出航、ユカタン半島沖からカリブ海に出た。船は12月2日クーバ島東部に到着、革命戦争が始まった。メヒコは1年半近く亡命していた国として、また出撃拠点として、ラウールにとって思い出の地だ。 

 今月19日、クラウディア・ルイス=マシュー墨外相が訪玖し、ブルーノ・ロドリゲス玖外相とラウール訪墨日程を協議した。

 クーバ外交は花盛りで、米国土安全保障次官補アレハンドロ・マヨルカスが27~30日訪玖、28日にはハバナでカルロス・フェルナンデス=ゴンディーン新内相と会談した。

 同次官補はハバナに生まれ1960年に米国に移住したクーバ系米国人の2世。

 アンゴラの首都ルアンダでは29日、リカルド・カブリーサス玖副首相がジョゼ=エドゥアルド・ドサントス大統領と会談した。クーバ経済水域内での海底油田試掘などを話し合ったもよう。

2015年10月30日金曜日

ボリビア憲法裁が大統領多選の是非問う国民投票を可と判断

 ボリビア憲法裁判所は10月29日、大統領連続再選に関する改憲の是非を問う国民投票実施を合憲とする判断を下した。国会は9月29日、同国民投票実施法を可決している。

 エボ・モラレス大統領は旧憲法下で2006年1月大統領に就任、新憲法下で2選、現在は3期目(2015~20年)となる。だが2020~25年の任期を目指しており、そのためには改憲が必要。

 従来、新憲法下での2選は現行任期までとされたが、改憲法は、新憲法下での最初の当選後、「さらに2度再選が可能」と解釈を拡大する。つまり新憲法下で連続3任期務めるのを可能とする。

 政府は憲法裁の判断を受けて11月3日、国民投票を来年2月21日実施する決定を公布する。モラレスが19年の大統領で勝利し、25年まで連続19年政権を維持する公算が大きくなりつつある。

コロンビア政府とFARCが12月16日に停戦署名へ

 コロンビアのJMサントス大統領は10月29日、政府軍とFARCが12月16日に停戦合意書に署名する、というFARC提案を受け入れる、と発表した。

 大統領は28日、来年元日の停戦発効に漕ぎ着けるため、クリスマス前の相互停戦を提唱した。これに対しFARCは同日、「12月16日」を提案してきたという。

 調印場所は明らかにされていないが、和平交渉中のハバナになる可能性がある。大統領は28日、停戦発効後、国際監視団が展開し、停戦状況を検証する、との考えを明らかにしている。

 双方は来年3月23日までの和平最終合意達成で合意書を交わしており、停戦が成れば、半世紀に及んだ内戦終結の現実味が増すことになる。

2015年10月29日木曜日

コロンビア大統領が来年元日の相互停戦をFARCに呼び掛け

 コロンビアのJMサントス大統領は10月28日、2016年元日に相互停戦を実現するため、今から12月31日の間に停戦すべく努力しようではないか、とゲリラ組織コロンビア革命軍(FARC)に呼び掛けた。

 サントスは9月23日、半世紀余り続くコロンビア内戦の和平交渉が続けられているハバナで、FARC最高司令ティモチェンコと会談し、来年3月23日までに和平を達成するという歴史的合意に達している。

 サントスは、「ナビダー(クリスマス)の贈り物をコロンビア人に与えようではないか」と訴え、政府軍とFARCが年内に停戦に踏み切り、元日から国際監視団が展開し検証するようにすればよい、と述べた。

 停戦問題を協議する国会議員団が近々、ハバナを訪れるとも明らかにした。

2015年10月28日水曜日

リアドで近く第4回南米・アラブ諸国首脳会議開催

 ベネスエラのニコラース・マドゥーロ大統領は10月27日、第4回南米・アラブ諸国首脳会議(ASPA)出席のため、サウディアラビアを訪問する、と明らかにした。

 会議は11月3~5日、リアドで開かれる。ASPAは第1回会議が2005年5月ブラジリア、第2回が09年3月ドーハ、第3回が12年10月リマで開かれてきた。

 マドゥーロは、この会議で石油輸出国機構(OPEC)加盟国と非加盟産油国の首脳会議開催をあらためて呼び掛ける、と述べた。大統領は、1バレル40ドル台に低迷する国際原油価格の上昇による安定化のため、この首脳会議が不可欠だと主張してきた。

LATINA「乱反射」は「コロンビア和平合意」詳述特集

 ◎最近の伊高浩昭執筆記事

★月刊誌LATINA11月号(10月20日刊)
「ラ米乱反射」連載第115回 「半世紀超えるコロンビア内戦が16年3月終息へ  政府とゲリラFARCがハバナで歴史的合意」--5ページの詳述特集。

「書評」:『バイクとユニコーン』(ジョシュ著、見田悠子訳、東宣出版、1800円)--現代クーバ人作家の短編5作集

★NGOレコム機関冊子「そんりさ」154号(10月17日刊)
「ラ米百景」連載第57回 「ウルグアイの土になった元日本帝国海軍兵」

★週刊読書人10月23日号書評
『バイクとユニコーン』(同上)--クーバ社会に潜む「もう一つの現実」を読者は、著者が駆使する巧みなメタフォラ(隠喩)によって垣間見ることができる。

★週刊金曜日10月23日号「たとえば世界でいま」
「コロンビア和平合意から1カ月  来年3月の和平実現へ、難題は反体勢力封じ込め」

ベネズエラ国営石油会社が2016~25年戦略計画打ち出す

 ベネスエラのニコラース・マドゥーロ大統領は10月27日、エウロヒオ・デルピノ石油相兼国営石油会社PDVSA(ペデベサ)社長と共にスリア州都マラカイボで、「2016~25年PDVSA社会主義戦略計画」を発表した。

 9万7000人の同社労働者から寄せられた9万7472の提案から選ばれた466案も、「計画」に盛り込まれている。大統領は、労働者福利第一主義でPDVSAの効率化を推進する、と述べた。

 デルピノ石油相は「計画」の目的について、地方開発と国家経済の機動化、市場多角化強化と地域エネルギー統合、効率最大化による操業、操業に伴う環境保全、日常労働での社会主義的価値・原則の新たな推進、を挙げた。

 だが、具体的な方策や数値目標は明かさなかった。超重質油の希釈は、課題の一つ。

 大統領は、米南方軍のジョン・ケリー司令官が最近テレビ番組で、ベネスエラの「問題点」を列挙し、「国連や米州諸国機構(OEA)などからの要請があれば軍事介入行動も辞さない」旨の発言をしたことを取り上げ、糾弾した。大統領は前日、「クーデターの陰謀がある」と警鐘を鳴らしている。

 マラカイボでは27日、第3回南米石油ガス会議が開かれた。

 

国連が対キューバ経済封鎖解除要求を191カ国賛成で決議

 国連総会は10月27日、米国に対玖経済封鎖を破棄するよう勧告する決議を、加盟193カ国中、賛成191、反対2(米、イスラエル)、棄権なしで可決した。この決議可決は1992年以来、連続24回目。

 従来、南太平洋にあるキリバス、ミクロネシア連邦、マーシャル諸島の米自由連合3国が反対ないし棄権に回っていたが、今回は3国そろって経済封鎖房解除に賛成し、賛成国は史上最高の191に達した。クーバは、同3国と国交樹立済み、ないし、その交渉中。

 米国は7月、クーバと54年半ぶりに国交再開に漕ぎ着けたため、初めて棄権に回るのではないかとの観測もあったが、反対した。米政府は、経済封鎖解除が米議会の決定事項であるのを念頭に、また来年の大統領選挙への影響を避けるため、反対を維持したもよう。

 ブルーノ・ロドリゲス玖外相は、決議採択前に30分演説し、クーバは経済封鎖により総額8337億5500万ドルの損害を受けたと指摘、米国に対し国交再開にふさわしい措置を講じるよう呼び掛けていた。

キューバのA・コロメー内相が健康理由に辞任

 クーバのアベラルド・コロメー内相(76)が10月26日、健康上の理由で辞任した。2013年2月の政府指導部人事前には、国家評議会副議長の再任を辞退した。共産党政治局員も退いた。

 コロメーは10代後半で革命戦争に参加、マエストラ山脈でカストロ兄弟の信頼を得た。「フリー」の愛称で親しまれ、革命後は警察畑に長く身を置いた。1989年、社会主義体制維持の要である内相に就任、26年間その地位にあった。

 1963年、チェ・ゲバラの盟友ホルヘ=リカルド・マセッティが「人民ゲリラ軍」(EGP)を率いてボリビア南部からアルヘンティーナ北部に潜入した際、これをボリビアで支援した。その後、アンゴラ戦争期には革命軍幹部としてアンゴラに駐在した。革命軍大将だったが今回退役し、国家評議会員も辞めた。

 後任の内相には、第一副内相カルロス・フェルナンデス=コンディーン中将(共産党中央委員、国家評議会員)が昇格。第一副内相にはフリオ=セサル・ガンダリージャ海軍中将(革命軍防諜局長、中央委員、同会員)が就任した。

 これで革命第1世代の中心的人物がまた一人、表舞台から去った。
  

2015年10月27日火曜日

ベネズエラ大統領が「選挙後のクーデター計画」に警鐘鳴らす

 ベネスエラのニコラース・マドゥーロ大統領は10月26日、国家選挙理事会(CNE、中央選管)で、12月6日実施の国会議員選挙を公明正大に実施することや、CNE発表の選挙結果を受け入れることなどを定めた選挙協約に調印した。

 大統領は政権党ベネスエラ統一社会党(PSUV)党首でもある。野党連合MUDは協約に調印しなかった。

 これを受けて大統領は、野党勢力は選挙後(敗北が明らかになった段階で)、クーデターを打つ可能性があり、それを防止する対策に着手した、と明らかにした。

 一方、デルシー・ロドリゲス外相はカラカスで、トゥリニダードトバゴ(TT)のデニス・モーゼス外相と会談し、両国領海・経済水域の接する海域で天然ガス田を共同開発することについて話し合った。

メキシコ学生事件から13カ月、家族らが抗議行進

 メヒコで学生43人強制失踪事件が起きてから13カ月経った10月26日、メヒコ市中心部を犠牲者家族、支援者らが、政府に早期真相解明を求めて抗議行進した。

 別件だが、メヒコ人漫画家ホセ・エルナンデスは26日、メヒコ訪問中の米人ジャーナリスト、ジョン・リー・アンダーソンと共に、チェ・ゲバラの劇画本を11月出版する、と発表した。

 アンダーソン執筆のチェの伝記を基に、エルナンデスが重要部分を中心に描くという。チェの劇画本は約10年前に日本で刊行されている。

ハイチ大統領選挙は12月27日の決選が不可避か

 カリブ海のアイチで10月25日実施された大統領選挙は50人強の候補が乱立、12月27日の決選が不可避と見られている。暫定選挙理事会(CEP、中央選管)のピエール=ルイ・オポン議長は、「暫定的結果は10日後に判明する」と語った。

 大方の見るところ有力候補は、野党「進歩のための代替同盟・アイチ解放」(LAPEH)のジュドゥ・セレスチン、政権党「スキンヘッド・アイチ党」(PHTK)のジュヴェネル・モイス、「貧者の味方」モイス・ジャン=シャルル、ラバラス家族党(FL)のマリース・ナルシスら。

 「テトゥ・カレ(スキンヘッド)」とは、ミシェル・マルテリ現大統領の風貌を指す。FLは、ジャン=ベルトゥラン・アリスティド元大統領派の政党。セレスチンの後ろ盾は、ルネ・プレヴァル前大統領。

 次期大統領は来年2月就任、任期は5年。マルテリ大統領は本職の歌手「スウィート・ミッキー」に戻るという。



アルゼンチン大統領は11月22日、初の決選実施へ

 10月25日実施の亜国大統領選挙は、予想通り、政権党候補ダニエル・シオーリBA州知事(58、中道、勝利のための戦線FPV)と、野党連合候補マウルシオ・マクリBA市長(56、右翼・中道右翼・保守、カンビエモス)が11月22日の決選に進出することとなった。

 決選はこの国の大統領選挙史上、初めて実施されることとなる。これまでは決選前に一方の候補が降りて、投票はなかった。

 開票率96%段階で、シオーリ36・83%、マクリ34・35%と、接戦だった。落選したのは3位で経済重視のペロン派反支流派(中道右翼)のセルヒオ・マッサ(47)21・34%、および他の3候補(合計得票率7・63%。

 決選は、マッサら落選4候補の合計票が誰に付くかで決まる。事実上、「決定権」を握ったマッサは「早急に政策提案をまとめる」と表明した。

 シオーリは、あわよくば決選なしで当選することを狙っていた。だが自ら知事を8年間務めてきた、有権者の37%が固まるBA州の知事選(同時選挙)で、政権党候補アニーバル・フェルナンデスがマクリ派の女性候補マリーア・ビダルに敗れる大番狂わせが起きるなど、ペロン派支持勢力の退潮が著しく、マクリの「大躍進」を許した。

 マクリは新自由主義を採る経済・財界優先派。経済再建を願う有権者の心情をとらえた。シオーリはクリスティーナ・フェルナデス現大統領ほど「左翼的」ではなく、社会政策維持を掲げつつ、経済再建重視策を打ち出していた。言わば、現大統領とマクリの間で政策的に「どっちつかず」と見なされ、票が伸びなかった。

 シオーリもマクリも勝つためには、マッサに譲歩し連携するしかない。その場合、「ペロン派同士」のシオーリか、中道右翼・保守路線で共通するマクリか、どちらにマッサがなびくかで当落が決まることになる。

 シオーリは元自動車レーサー。1989年に事故で右腕を切断、90年代にメネム政権下で政界入りした。一方マクリは実業家出身。BA市長として今月初め、政敵の元祖であるはずのペロン将軍の銅像除幕式を市内で盛大に催すなど、したたかさでのしてきた。

2015年10月26日月曜日

グアテマラ次期大統領はJモラレス、亜国大統領選は決選へ

  グアテマラで10月25日実施された大統領選挙決選で、喜劇役者だったジミー・モラレス(保守・中道右翼)が当確を決めた。元大統領夫人サンドラ・トーレス(中道左翼)は貧困層に目覚めるよう訴えたが、及ばなかった。投票箱の78%が開票された段階で、モラレス71%、トーレス29%で、予想通りの結果となった。

 同日の亜国大統領選は、これまた予想通り、政権党所属のペロン派中道保守ダニエル・シオーリと、新自由主義派らの野党連合マウリシオ・マクリが上位1、2位を占め、11月22日の決選に進出する公算が大きい。第3位のペロン派非主流派セルヒオ・マッサは敗北を認めたが、決選で誰を支援するかは語っていない。

 混戦のハイチ大統領選挙の結果は判明していない。

 コロンビアの統一地方選挙は、最大の注目点だった首都ボゴタ市長に、無所属のエンリケ・ペニャローサが当選した。1998~2000年にボゴタ市長を務めて以来15年ぶりの返り咲きとなった。

 開票率99・6%で90万票を得て、当選した。自由党のラファエル・パルド77万票、民主軸のクララ・ロペス49万票、民主中道(CD)のフランシスコ・サントス32万票を優に上回った。

 振るわなかったサントスは、ウリーベ前政権で副大統領を務めた。アルバロ・ウリーベ前大統領は政界極右の指導者で、JMサントス大統領が9月23日ゲリラFARCと合意した来年3月の内戦終結に反対してきた。

 「ウリーベの候補」フランシスコ・サントスが惨敗したことは、有権者が和平に賛成していることを示したものと受け止められている。

2015年10月25日日曜日

ガルシア=マルケスの遺品アルバムに黒澤明との写真も

 米テキサス州都オースティンにあるテキサス大学ハリー・ランサム人文学センター文書館で、コロンビア人作家、故ガブリエル・ガルシア=マルケス(愛称ガボ)の資料の分析が進んでいる。

 10月24日公表されたところでは、1990年代初め来日した際に会った黒澤明監督との写真も見つかった。

 同センターは昨年、メヒコ市に住むガボの遺族から220万ドルで段ボール78箱分の資料を買い取った。手紙2000通、写真アルバム43冊、手書きのノート22冊、小説作品10作分のタイプ記述などである。

 アルバムには題名が付けられており、「ラ・アバーナ」(ハバナ)4冊には、革命軍最高司令官、共産党第1書記、国家評議会議長(元首)、首相を兼任していたころの元気なフィデル・カストロとのさまざまな写真が貼られている。

 「フィデル、ビラーン」には1996年に、ガボがフィデルと共に訪れたフィデルの生地、オルギン州ビラーンの復元された生家での写真が収められている。

 友人たちとの華やかな交流の記録でもある「アミーゴス」には、黒澤のほか、映画監督ルイス・ブニュエル、俳優ウッディー・アレン、作家グレアム・グリーン、同フリオ・コルタサル、同カルロス・フエンテス、詩人パブロ・ネルーダらが登場する。

 「大統領たちと共に」には、ミハイル・ゴルバチョフ、ビル・クリントンらが出てくる。ガボは革命初期からCIAに眼をつけられ、米入国が禁止されていたが、90年代に、ガボの愛読者クリントン大統領が解禁。ガボは、クーバから米国への筏難民流入事件を解決するため、クリントンの密使としてハバナを訪れ、フィデルに米政府の意志を伝えたことがある。

 ガボ゙夫妻は2008年、病気療養中だったフィデルをハバナの自邸に訪ね歓談したが、その時のことをフィデルは「楽しい時間だった」と記している。

 同センターの今後の分析で、重要な資料や事実関係が明らかにされる可能性があり、センターの分析者は「驚きがあるはずだ」と言い、そのことを示唆している。

CELACが2024年までの飢餓・貧困一掃を決議

 ラ米・カリブ諸国共同体(CELAC、加盟33国)は10月23日、ベネスエラ外務省で第2回社会開発担当相会議を開き、2024年までに域内から飢餓と貧困を一掃することを決めた。

 2024年は、ラ米解放軍がスペイン軍主力を撃破したペルー・アヤクーチョでの「アヤクーチョの戦い」200周年の年。加盟諸国は、保健、栄養、教育、性差別廃止、女性進出の各分野で政策を強化する。

 一方、デルシー・ロドリゲスVEN外相は24日、ベネスエラは28日、国連人権理事会で再選を目指す、と述べた。

ラテンアメリカ4カ国で今日、大統領選挙など実施

 今日10月25日、ラ米4カ国で選挙が実施される。グアテマラでは大統領選挙決選投票があり、9月6日の第1回投票での上位得票者2人が勝敗を争う。

 アイチ(ハイチ)では、大統領選挙が実施される。候補者53人が乱立しているが多くは泡沫で、事実上、3~4人の争いとなる。過半数得票者が出ない場合、12月27日の決選に上位2候補が進出する。また8月9日実施された国会議員選挙の未確定選挙区では決選が実施される。

 アルヘンティーナでは大統領、国会議員、南部共同市場(メルコスール)議会議員を選ぶ選挙がある。大統領選挙には6候補が出馬しているが、実施的には3人の争い。得票率45%、もしくは同40%で2位に10ポイント差をつける候補が出ない場合、11月22日の決選に2人が進出する。

 コロンビアでは州知事、州議会、市長、市会の統一地方選挙がある。サントス政権とFARCは9月23日ハバナで来年3月の内戦終結で合意したが、これに対する有権者の反応が示されることになる。

 年内に残る重要選挙は、12月6日のベネスエラ国会議員選挙である。

『概説 近代スペイン文化史』を読む

 『概説 近代スペイン文化史 18世紀から現代まで』(立石博高編著、ミネルヴァ書房、3200円)を読んだ。「近現代スペインの豊かな文化と歴史を学ぶ。一面的なスペインのイメージから脱し、魅力あふれる多様な文化と歴史的背景を解説」と帯に記されている通り、総合的な記述がなされており、スペイン文化の高級な入門書だ。

 スペイン史を学ぶことは、歴史が連動したラ米の歴史を理解することにも繋がる。書評に書いたので詳しくは触れないが、読み応えのある本書をラ米学徒にお薦めしたい。

 骨組みに触れれば、第1部(1~6章)は、啓蒙思想期、自由主義とロマン主義、王政復古、内戦、フランコ独裁期、民主化。第2部(7~16章)は、言語、文学、女性像、教会、市民性、美術、映画、フラメンコ、闘牛、スポーツ。

2015年10月24日土曜日

マリオ・バルガス=ジョサがフジモリ物の新作を3月刊行へ

 作家マリオ・バルガス=ジョサ(MVLL、79)は10月23日、新作の小説『五つの曲がり角』(シンコ・エスキーナス)を来年3月3日刊行すると明らかにした。

 内容は1990年代のフジモリ政権とペルーの政治社会状況を描いたもので、当時のアルベルト・フジモリ大統領とブラディミロ・モンテシーノス大統領顧問の関係、イエロージャーナリズム、テロリズム、愛欲などが盛り込まれているという。

 MVLLは1990年の大統領選挙決選で、まさにフジモリに敗れた。その屈辱感を維持し、激しくフジモリ政治を非難したり、その娘で大統領候補のケイコ・フジモリを貶める発言を繰り返したりしてきた。

 新作刊行の翌月にはペルー大統領選挙があり、 フジモリの長女ケイコが最有力候補と目されている。作家の怨念が窺える。

 一方、MVLLとの愛人関係が今年6月暴露されたマニラ生まれのスペイン人モデル、イサベル・プレイスレル(64)はこのほど、MVLLとの結婚に関し、「マリオがパトリシア夫人と正式に離婚するのが先決」と語った。

 イサベルは、歌手フリオ・イスレシアスと70年代に結婚。離婚後、2度再婚を繰り返し、3人目の夫と昨年死別した。

 MVLLは、80歳になるのを意識し、「この年になって、かつてなかったような高揚、情熱、幻想を抱いている」と語っている。
 

2015年10月23日金曜日

ベネズエラがOPEC加盟・非加盟産油諸国に新たに提案

 ベネスエラのニコラース・マドゥーロ大統領は10月22日、石油輸出国機構(OPEC)加盟国および非加盟産油諸国に、原油価格安定化の方策を探る機構づくりと首脳会議開催を提案した、と明らかにした。

 それによると、同国のエウロヒオ・デルピノ石油相は、ビエンナ(ウィーン)で21~22日開かれたOPEC技術会合でマドゥーロ大統領が書いた書簡を各国代表に手渡した。この会合には幾つかの非加盟国も出席した。

 書簡には、原油の国際価格安定化のため、「生産・価格・世界経済均衡のためのOPEC加盟・非加盟諸国技術委員会」を設置し、定期的に価格、生産、投資などを調整することや、OPEC加盟・非加盟諸国首脳会議開催の提案が盛り込まれている。

 マドゥーロ大統領は、11月に開かれる次回OPEC技術会合の日程、場所決定と、その会合で「技術委員会」設置および「首脳会議開催」を決議してほしい旨を記している。

 大統領はこれまで何度か、この種の首脳会議開催を提案してきたが、賛同が得られなかった。

キューバ共産党青年部の機関紙が創刊50周年迎える

 キューバ共産主義青年同盟(UJC)の機関紙「フベントゥー・レベルデ」(反逆青年、JR)が10月21日、創刊50周年を迎えた。1965年のこの日、タルデ紙とメージャ誌が合体して創刊されたJRは当初、タブロイド版で、発行部数は6万5000部だった。

 66年1月、4万5000分に減ったが、翌月、大型版になり、8万部に増えた。第1版は首都ハバナ以外の国内各地で朝刊として配布され、第2版はハバナで夕刊として発行された。

 共産党機関紙「グランマ」の弟分の新聞として親しまれてきた。現編集長はマリーナ・メネンデス。第7代編集長は、ブルーノ・ロドリゲス現外相が務めた。

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 国営クーバ石油会社(CUPET)は10月21日、クーバ島北西のメヒコ湾にあるクーバ経済水域で2016年末か17年初めに海底油田の採掘を始める計画だ、と明らかにした。

 国営ベネスエラ石油(PDVSA)、およびアンゴラ石油(SONANGOL)と組んで、7000mの深海で1カ所ずつ計2カ所掘る計画だが、3か所になる可能性もある。

 同海域海底油田の埋蔵量は豊かと判断されてきたが、これまでCUPETと合弁で採掘してきた諸外国の石油会社は油田を掘り当てていない。

 クーバ海域での採掘は長年、米国による経済封鎖に影響されてきたが、昨年来、国際原油価格の低迷が石油会社の新たな開発投資意欲を殺いでいる。

 現時点では、米石油会社からの採掘・生産をめぐる商議はない。法的問題もあって、米企業が採掘分野で殺到してくることはないもよう。

 クーバは日量10万バレルの原油を陸地で生産し、日量数万バレルをベネスエラから供給されている。ベネスエラからの供給量は、かつては日量10万バレルだったが、昨年来、6~7万バレルに減っているとの情報がある。
                         

2015年10月22日木曜日

エボ・モラレスがボリビア最長政権を記録

 ボリビアのエボ・モラレス大統領は10月21日、1825年に独立した同国史上、最長の政権首班となった。モラレスは2006年1月22日、大統領に就任、3選して、この日、9年8ヶ月27日を記録。これまで最長政権だった1829~30年のアンデレス・デサンタクルース元帥を1日上回った。

 モラレスはこの日、政治首都ラパス西方郊外のティティカカ湖畔にあるティワナク遺跡で、先住民族アイマラ人の伝統儀式に臨んだ。「祖先から活力を受け継ぐため」である。

 大統領は記念演説で、「ボリビアでは長らくインディオは政治ができないと誹謗され排除されていた。06年以来、このインディオ(モラレス自身)は政権にある。何かしなければならないと常に考え、きょうまでやってきた」と述懐した。

 また、フィデル・カストロ前クーバ国家評議会議長、故ウーゴ・チャベスVEN大統領、ルーラ前ブラジル大統領、故ネストル・キルチネル前アルヘンティーナ大統領の名を挙げて、謝意を表明した。

 モラエスの現任期は2019年まで続くが、改憲により18年の大統領選挙に4選出馬し、19~25年の新たな任期に挑む意欲を示している。モラレスは今月26日、56歳になる。
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2015年10月21日水曜日

ロシアがキューバに電力用借款を供与

 ロシア政府は10月20日、クーバに対し、火力発電機4基建設用資金として12億ユーロの借款を16~24年に供与する、と発表した。返済期間10年、利率は4・5%。また、製鉄所現代化用資金1億ドルを無償供与するとも発表した。

 モスクワ訪問中のリカルド・カブリーサス副首相(対外経済関係担当)とロシア関係閣僚との話し合いで決まった。

 同副首相は、ウラディーミル・プーチン露大統領の顧問セルゲイ・グラゼフとも会い、欧亜経済同盟(UEE)へのクーバのオブザーバー参加の可能性について話し合った。

 UEEは今年元日発足、ロシア、ベラルーシ、カザフスタン、アルメニア、キルギスタンが加盟している。クーバは1972~89年、旧「経済相互援助会議」(コメコン)の加盟国だった。 

フィデル・カストロの息子がキューバの改革政策で発言

 フィデル・カストロ前玖国家評議会議長の息子の一人アレックス・カストロは10月20日ハバナで、チレTV「24時間」のインタューに応じ、「現在クーバで多くの変化が見られる。自営業者が増えていることなどがそうだ。クーバ人民は民営化が増えるのを歓迎している」と述べた。

 アレックスは、父フィデルの公式写真家であり、フィデルの側近でもある。「父は自営業などで人民が生産し潤うことに賛成している。だが父があらゆる変化(改革)に賛成しているかどうかはわからない」と指摘した。

 「対米国交再開で体制変換を展望する人々がいるが、社会主義体制は不変であり、その枠内で改革が進められる」とし、共産党一党体制も変わらないと述べた。

 また、「多くを改善・改革せねばならなが、人民生活に悪影響を及ぼさないようにするため、衝撃的措置はとらない。改革は急がず慎重に進められている」と語った。しかし個人的には改革の進展が遅すぎるとし、「もっと早い方がいい」と述べた。

 進展が遅い理由として、改革より保身を重視する官僚機構の存在を挙げ、「あらゆる部門に保守派がいる」と批判。「たとえば外資導入やマリエル開発特区などで規制が多すぎ、緩和が必要だ」と述べた。「重要な地位にいる者が、見返りがないと動かない」と、腐敗の存在を認めた。

 さらに、「(社会主義市場経済をとる)ヴェトナムの経済水準にクーバが達するには30~40年かかるだろう」と展望した。

 因みにクーバ政府は外資導入策として、246事業計画・総額710億ドルの受け入れを想定している。教育、保健、軍事部門への外資参入は禁止されている。
 
 
 

ブラジルがベネズエラへの選挙監視団派遣を拒否

 ブラジル選挙最高裁判所は10月20日、ブラジルは12月6日のベネスエラ国会議員選挙に監視団を派遣しない、と発表した。

 南米全12カ国が加盟する南米諸国連合(ウナスール)の選挙監視団の団長に、ブラジル最高裁元長官ネルソン・ジョビンを指名したところ、ベネスエラ政府が反対した、というのが理由。事実上の派遣拒否だ。

 ウナスールのエルネスト・サンペール事務局長(元コロンビア大統領)は最近訪伯し、アルヘンティーナ元外相ホルヘ・タイアーナを団長にしてはどうかと提案したが、これもブラジル側の心証を悪くした。

 ニコラース・マドゥーロVEN大統領にとりブラジルは極めて重要な盟友国であり、選挙監視団問題でブラジルを怒らせたのは外交上の大きな痛手となる。

 マドゥーロは、米政府が望む米州諸国機構(OEA)の監視団派遣を拒否してきたが、頼みのウナスール監視団からブラジルが抜けたのでは監視団の存在感が薄れ、結果的にベネスエラ政府の選挙制度が批判を受けることになりかねない。

 一方、ベネスエラ政府は20日国会に、歳出を1兆5485億ボリーバルとする2016年度予算法案を提出した。歳入を支える原油の国際価格を1b=40ドルで計算して組んだ歳出額だ。今年度は1b=60ドルで歳出を組み、中途で歳出削減を余儀なくされた。 

コロンビア停戦は概ね守られていると、オンブズマン発表

 コロンビアのオンブズマン、ホルヘ・オターロラは10月20日、コロンビア革命軍(FARC)の一方的停戦に7月20日、政府軍が応じて以来3カ月経ったが、停戦は概ね守られてきた、と語った。

 FARCと、政府軍の補完部隊である極右準軍部隊の戦闘は散発的に起きているが、9月20日からの1ヶ月間に軍の戦闘行動は探知されていない、と述べた。

 だが、FARCの最高司令ティモチェンコは16日、メタ州内で9日政府軍による空爆があったと非難しており、オンブズマン発言と食い違っている。

 一方、JMサントス大統領は20日、コロンビア財界代表と19日会合したが、財界は内戦終結に賛意を示している、と述べた。

メキシコ検察庁人権部が学生失踪事件捜査を担当へ

 米州諸国機構(OEA)の米州人権委員会(CIDH)は10月20日ワシントンの本部で、メヒコの教諭養成学校生43人強制失踪事件の捜査協力任期は31日切れることになっていたが、半年間延長する、と発表した。

 CIDHが昨年11月結成した「独立系専門家学際集団」(GIEI)とメヒコ政府が19日話し合った結果、延長が決まった。

 またこの話し合いにより、同事件の捜査は今月22日から検察庁人権部が担当することになった。これまでは検察庁組織犯罪特捜部(SEIDO)が担当してきたが、その捜査結果はメヒコ世論やCIDHからの承認を得られなかった。

 ペニャ=ニエト墨政権は、昨年9月同事件が起きたゲレロ州イグアラ市に駐屯する陸軍第27大隊への事情聴取をCIDHに認めないなど、真相解明意欲の欠如が際立ち、メヒコ政府の威信は国際社会で深く傷ついた。


 

2015年10月20日火曜日

ベネズエラで電力網への破壊活動が13件続発

 ベネスエラのルイス・モッタ電力相は10月19日記者会見し、10月に入ってから電力システムへの破壊活動が国内各地で計13件起きている、と明らかにした。特にコロンビア国境沿いのタチラ州と、産油中心地のスリア州で目立っている、という。

 モッタ電力相は、送電線切断、変電所破壊などが組織的に行なわれているとして、12月6日の国会議員選挙を前に停電によって社会不安を煽る陰謀だ、と指摘した。

ロシア国防相がキューバに海軍協力関係強化を求める

 訪露中のリカルド・カブリーサス玖副首相は10月20日、モスクワでセルゲイ・ショイグ国防相と会談した。ハバナ放送がノーヴォスティ通信電を基に報じたところでは、国防相はクーバとの海軍同士の協力関係を促進したいと副首相に伝えた。

 露国防相は、「両国の軍事協力関係は極めて良好だ。ロシアは(ソ連時代から)クーバに協力してきたが、引き続き協力してゆきたい。その展望は開けている」と語った。同国防相はまた、露海軍艦船がクーバに入港する際の支援に謝意を表した。
                                     
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 ロシアは、ウクライナへの侵略、シリア内戦への軍事介入の仕方などをめぐって米欧と厳しい対立関係にある。米国と7月国交を再開したばかりのクーバに敢えて軍事協力強化を持ちかけたのは、米国を意識してのことだ。

ブラジル下院の汚職調査委員会が大統領の関与責任を排除

 ブラジル国営石油会社ペトロブラス関連の汚職事件を2月から調査してきたブラジル国会下院の委員会(ルイス・ヂオルヴェイラ委員長)は10月19日、最終報告を発表、政府や政党による制度的な関与を示す証拠はないと結論づけた。

 これにより、ヂウマ・ルセフ大統領、ルーラ前大統領、ペトロブラス元社長2人らの事件責任は排除された。報告書は、国営企業管理強化、腐敗取締法改正、内部告発奨励など14措置を提案している。

 この調査委員会は下院議員27人で構成され、22日に報告書承認の可否を採決する。修正があるもよう。

 事件は、ルーラ、ルセフ両労働者党(PT)政権下の2004~14年の間に、事業入落札に際し建設業者、政治家、同社職員らが絡んで総額20億ドルの収賄がなされたというもの。

 野党は、資金がPTの選挙資金や国会多数派工作に用いられたと非難し、ルセフ大統領の国会での弾劾を求めてきた。大統領選挙で連続4回勝てないままの保守・右翼諸党は、弾劾後の選挙で政権奪取を狙う戦略を描いている。

 これまでにPT会計担当者が収賄により禁錮15年の実刑判決を受けたのをはじめ、44人が断罪された。また123人が起訴されている。上下両院議員約50人が捜査され、現下院議長にも500万ドル収賄の嫌疑がかかっている。 

2015年10月19日月曜日

ハイチでも10月25日、大統領選挙実施

 アイチで10月25日大統領選挙が実施される。候補者53人が乱立している。過半数得票による当選者がいない場合は、12月27日の決選に上位2候補が進出する。

 主張は、2010年の大震災からの復興促進で一致している。有力候補と目されているのは次の3人。

 野党勢力の「アイチ進歩・解放のための代替同盟」(LAPEH)のジュドゥ・セレスティン。

 ミシェル・マルテリ現大統領の後継候補である「テトゥカレ・アイチ党」(PHTK)のジョヴェネル・モイス。

 ジャン=ベルトゥラン・アリスティド元大統領の政党「ラバラス家族党」の女性候補アリース・ナルシス。

「キューバ軍がシリア展開」の情報をキューバが断固否定

 クーバ外務省は10月18日、「クーバ軍部隊がアサド政権支援のためシリアに展開している」との情報や報道を、「無責任で根拠がない」として、断固否定した。

 今週初め、マイアミ大学クーバ・クーバ系米国人研究所が「未確認情報」として情報を流した。これを受けて米フォックスTVは14日、「ペンタゴン(米国防省)情報」として「200~300人のクーバ人部隊がシリアで展開している」と伝えた。

 だが米国務省は15日、「情報の信憑性を裏付ける証拠はない」と表明した。

アルゼンチン大統領はDシオーリ候補優勢

 アルヘンティーナで10月25日、大統領選挙が実施される。得票率45%強、もしくは40%強で2位候補に10ポイント差をつければ当選する。当選者がいない場合は、得票上位2候補が11月22日の決選に進出する。

 最有力候補は、ブエノスイアレス(BA)州知事で「勝利のための戦線」のダニエル・シオーリ。支持率調査で40%に達している。ペロン派左翼キルチネる派のクリスティーナ・フェルナデス現大統領の後継候補と位置付けられている。

 2番手は、首都ブエノスイアレス(BA)前市長で、「カンビエモス(変革しよう)連合」のマウリシオ・マクリ。同30%。新自由主義経済路線をとるため、財界の期待が大きい。

 これに続くのが、元フェルナンデス政権官房長官で、「新アルヘンティーナ団結戦線」(UNA)のセルヒオ・マッサ。同20%。残る10%は、他の3候補および浮動票。

 有権者は3200万人で、その3分の1を上回る1180人を持つBA州の知事シオーリが優勢なわけだ。マクリの首都BA市は250万人でしかない。

 決選へのシオーリ進出は確定的だが、もう一人はマクリかマッサになる公算が大きい。その場合、3位以下の落選候補の票が決選を左右することになる。シオーリはマクリ相手を意識しつつ、現政権とは異なる経済改革路線をとる可能性を示唆している。
 

メキシコで学生43人失踪事件描いた映画が物議醸す

 メヒコ・ゲレロ州イグアラ市一帯で昨年9月26~27日起きた教諭養成学校生43人強制失踪事件を描いたメヒコ映画「イグアラの夜」(ラウール・キンタニージャ監督、80分)が10月16日、首都など30映画館で公開され、物議を醸している。

 ウェブサイトで2分間の予告編が流された数日前から犠牲者の遺族・家族、支援者らから抗議が巻き起こり、上映中止を求める署名運動が展開されている。

 支援団体は、このドキュドラマは事件に関する政府の主張に沿っていると批判している。だが脚本を書いたジャーナリスト、ホルヘ・フェルナンデス=メネンデスは、「ドラマ部分は30分足らずであり、あとは実録だ」と反論している。

 この映画の題名は、1964年の米映画「イグアナの夜」(ジョン・ヒューストン監督)をもじったもの。この映画も、物語の舞台はメヒコだった。
 
 

グアテマラ大統領選挙決選まで1週間、必死のSトーレス候補

 グアテマラ大統領選挙(9月6日実施)は10月25日の決選投票で決着がつくが、1週間と迫った18日、劣勢を伝えられるサンドラ・トーレス候補(希望国民連合UNE)は遊説で、当選が確実視されている相手候補ジミー・モラレス(国民結集戦線FCN)との違いを強調した。この国初の女性大統領を目指す。

 トーレスはアルバロ・コロム元大統領(2008~12年)の元夫人で、大統領夫人として政治に関与した。相手のモラレスは喜劇俳優出身で、政治経験はない。体質的に保守で、軍部、富裕層ら旧体制に支配されるとの見方が広く為されている。

 モラレスを皮肉って「グアテマラは喜劇ではない。真の悲劇なのだ」とぶち上げたトーレスは、対立候補に政治経験がないことも指摘した。トーレスは「国が必要としている団結と平和のメンサヘ(メッセージ)を発するため投票しよう。団結は力だ。貧者の力を示そう」と群衆に呼び掛けた。

 コロム政権が設立し、後継のペレス=モリーナ前政権が廃止した「連帯資金」など貧困対策の復活を約束している。トーレスは、経済面の経験不足を補うため、実業家マリオ・レアルを副大統領候補にしている。また、一日平均16人が殺される極悪の治安の対策として、国軍の治安出動を維持する方針だ。

 一方モラレスは、大規模な税関汚職事件の主犯として9月初め政権を追われたペレスモリーナ前大統領の腐敗追及で支持率を挙げてきた。見識不足を攻撃されていることもあって、副大統領候補に国立サンカルロス大学(USAC)の元学長ハフェス・カブレラを据えている。

 有権者は754万人。当選者は来年1月14日、政権に就く。任期は4年。

 
 
 

2015年10月18日日曜日

コロンビア政府とFARCが「失踪者捜索」で合意

 ハバナで和平交渉中のコロンビア政府とゲリラ組織FARC(コロンビア革命軍)は10月17日、内戦中に出た強制失踪者の捜索などについて合意に達した。同失踪者は4万5000人~6万9000人と推計されている。

 双方は、失踪者について捜索、遺体位置特定、身元確認、遺族への遺骨・遺品返還を図る。そのための計画を双方は向こう4ヶ月間に「失踪者捜索委員会」(CBPD)に提出する。来年3月の「和平最終合意」調印後、「失踪者捜索部隊」(UBPD)を創設し、活動を開始する。

 UBPDは、「真実究明・共生・繰り返すまじ委員会」の規定に沿う。活動には、赤十字国際委員会、コロンビア法医学研究所、同検察庁、関係諸組織が関与する。

 双方は「和平特別法廷」の判事25人(うち外国人5人)を選出する。

 双方は9月23日、来年3月23日までに「和平最終合意」を達成する旨を記した合意書に調印している。

ベネズエラ大統領がカリブ地域4カ国を歴訪

 ベネスエラのニコラース・マドゥーロ大統領は10月16、17両日、スリナム、アンティグア・バーブーダ(AB)、セントルシーア、グレナダの4カ国を歴訪した。いすれもベネスエラが主導するカリブ石油連帯機構(ペトロカリーベ)加盟国。

 大統領は16日訪れたABの首都セントジョージズではガストン・ブラウン首相と会談、同首相は「大胆な社会主義」実施を提唱した。マドゥーロは賛意を示し、「ベネスエラは、カリブ地域を強力な経済地域にするため燃料を提供してきた」と述べた。

 大統領は訪問した4カ国で、ペトロカリーベ資金で建設されたエネルギー施設の開所式などに出席した。

 その後、明らかにされたところによると、ベネスエラ国有石油会社(PDVSA)が、 AB国有の西インド諸島石油会社(WIOC)の株の25%を買収することが決まった。これで同社の株は、AB政府51%、PDVSA25%、中国ファンシーブリッヂ社24%となる。
 

2015年10月17日土曜日

経済封鎖解除後も市場多角化図るとキューバ貿易相強調

 クーバのロドリゴ・マルミエルカ貿易・外資相は10月16日ベイルートで、「米国による経済封鎖が解除されても、クーバが米市場だけに頼ることは決してない」と強調した。

 マルミエルカは、クーバ・レバノン経済フォロ(フォーラム)で発言、「クーバの優先政策は、中東諸国を含む世界の国々と経済・通商関係を築き、市場の多様化を図ることだ」と述べた。同相はクーバへの投資条件も説明、レバノンからの投資を仰いだ。

 クーバは、スペイン植民地400年、米国の事実上の属国60年、ソ連圏30年を経て、1990年代以降はベネスエラ、中国、ブラジル、ロシアなどとの関係を深めてきた。

 こうした歴史的経験からクーバは、一国だけの市場に頼れば従属を余儀なくされる、ということを学んだ。

伊藤昌輝訳『スペイン語で奏でる方丈記』が受賞

 鴨長明の『方丈記』をスペイン語に訳した『スペイン語で奏でる方丈記』(大盛堂書房)が、日本翻訳家協会(平野裕理事長)の「翻訳特別賞」となり、訳者の元外交官、伊藤昌輝ラテンアメリカ協会理事長が受賞した。

 「異文化間の相互理解と日本文化の向上に貢献する優れた翻訳作品」と評価された。表彰式は10月16日、学士会館で催された。

 対訳形式になっており、ラ米学徒、スペイン語学徒には教本ともなる。今年3月、出版された。

ペルー法廷がフジモリ元大統領のきょうだいを指名手配

 ペルー法廷は10月15日、アルベルト・フジモリ元大統領の姉フアーナ、弟ペドロ、妹ロサおよび、ロサの夫ビクトル・アリトミ元駐日大使を、フジモリ政権期の1990年代に日本から東京銀行経由で届いた寄付金を横領した容疑で内外に指名手配した、と明らかにした。

 法廷は同日、元大統領政庁官房長官ホセ・カミヤに、同横領事件共犯として禁錮4年、執行猶予3年、罰金40万ソル支払いを命じる判決を下した。

 ペルーは来年4月の次期大統領選挙に向けて政治の季節に入っており、元大統領の娘ケイコ・フジモリが支持率調査で1位の座に居続けている。

 反フジモリ派はメディアや知識人発言を通じて反対運動を展開している。裁判所がこの時期に、元大統領のきょうだい追及を表明したのには、ケイコに打撃を与える狙いが込められている。  

ベネズエラ外相がヒラリー・C発言をはねつける

 米大統領選挙に民主党候補として出馬しようとしているヒラリー・クリントン前国務長官は10月16日、遊説先のテキサス州サナントニオ市でスペイン通信EFEのインタビューに応じ、「ベネスエラではチャベス前政権以降、民主が後退している」と述べた。

 これに対し、ベネスエラのデルシー・ロドリゲス外相は、「ヒラリー・クリントンは意図的誤報に影響されているようだ」と指摘し、ヒラリー発言をはねつけた。

 一方、ホワイトハウスでは15日、クーバの伝説的楽団ブエナビスタ・ソシアルクルブが「チャン・チャン」など、おなじみの曲を生演奏し、84歳のオマーラ・ポルトゥオンドが声の衰えを感じさせず歌った。

 バラク・オバーマ大統領と、駐米クーバ大使ら来賓400人が、クーバ調をしばし楽しんだ。 

エクアドル大統領がコロンビア政府とELNの極秘交渉明かす

 エクアドール(赤道国)のラファエル・コレア大統領は10月16日、北部のコロンビア国境地帯で記者会見し、「コロンビア政府と民族解放軍(ELN)はこれまでエクアドール国内で極秘裡に6回話し合ってきたが成功裡に進んでおり、コロンビア政府は喜んでいる」と明らかにした。

 一連の話し合いは昨年1月に始まり、正式な和平交渉開始に向けての予備交渉として行なわれてきた。コレア大統領は、赤国家情報庁(SNIE)が仲介した、と明かした。

 コレアはまた、「いずれ公開交渉(本交渉)になるはずだが、その場所や時期は未定だ。もし我が国が望まれれば、全面的に受け入れる用意がある」と強調した。

 大統領は、ハバナで交渉してきたコロンビア政府とコロンビア革命軍(FARC)が来年3月の和平実現で合意に達した今年9月にも、同政府とELNによる和平交渉の場になる用意があると表明していた。

 同じ9月、ELNのニコラース・ロドリゲス=バウティスタ最高司令は、「近く良いニュースがあるだろう。足りなのは3%だけだ」と語っている。「3%」とは、正式な和平交渉の開始を指す。

 コロンビア政府は、ELNの兵力を2500人程度を推定している。

2015年10月16日金曜日

コロンビア最高裁がウリーベ前大統領捜査を検察に許可

 アンティオキア首都メデジンのコロンビア最高裁支部は10月15日、陸軍の補完勢力として殺戮や土地奪取を恣(ほしいまま)にしてきた極右の準軍部隊(パタミリタレス)と、政界極右勢力の筆頭アルバロ・ウリーベ前大統領との関係を検察が捜査するのを認めた。

 アレハンドロ・オルドニェース検事総長は6日、1997年に起きた「エル・アロ村虐殺事件」に、当時アンティオキア州知事だったウリーベが関与したか否かについての捜査許可を最高裁に要請していた。

 コロンビア革命軍(FARC)との和平を来年3月達成しようと目指すJMサントス大統領も、FARC指導部も、和平合意の最大の撹乱要因は準軍部隊とみている。最高裁のウリーベ捜査許可は、サントスの意向に沿っている。ウリーベはこの日、激しくサントスを非難した。

 一方サントスは15日、財界人と会合し、和平特別法制によって財界人が裁かれることはない、と保証した。財界人の一部は、準軍部隊に軍資金を送っていた。

ベネズエラの今年のインフレは80%と大統領が予測

 ベネスエラのニコラース・マドゥーロ大統領は10月15日、労働者代表と会合し、ことしのインフレは80%に達する見込みと述べ、最低賃金を11月1日から30%引き上げて1万6339b(ボリーバレス)にすると発表した。

 大統領はまた、国家公務員給与を30日以内に引き上げ調整するが、その引き上げは年率にして137%に上る、と明らかにした。

 財界は、今年のインフレが180%に及ぶと見ており、大統領の80%に疑念を示している。去年のインフレは68・5%だった。

 ベネスエラは12月6日の国会議員選挙に向けて、選挙の季節が深まっている。政府の賃上げ策は恒例とはいえ選挙対策の柱であるのは間違いない。

 ベネスエラ統一社会党(PSUV)を中心とする政権党選挙連合「大愛国軸」(GPP)加盟32党は15日、国家選挙理事会(CNE)で、国会議員選挙を公明正大な選挙とするための合意書に署名した。

 合意書には、「民主・安寧・憲法尊重」、「選挙結果への異議表明は暴力でなく法廷で」などが明記されている。野党連合MUDをはじめとする野党勢力は署名式に現れなかった。

 一方、15日帰国したマヌエル・スアレス元スリア州知事は、アルバから到着したマラカイボ空港で逮捕された。身柄をカラカスに送られ、国家情報局(SEBIN)本部に連行された。グスタボ・ゴンサレス内相は、スアレス容疑者は腐敗、不正蓄財、公金横領など11件で取り調べられる、と明らかにした。

 スアレスは「新時代」(UNT)党首で、かつて故ウーゴ・チャベス大統領に対抗し大統領選挙に出馬したことがある。09年逮捕状が出たため国外に逃れた。以来6年ぶりの帰国で、逮捕されるのを覚悟していた。

 国連は15日、ベネスエラとガイアナが領有権をめぐって歴史的に対立しているエセキーボ地方の問題で、両国が話し合い解決の道を進んでいると評価した。バン・ギムン事務総長の特使がこのほど両国を訪れ、首脳らから意見聴取した。

ベネズエラ交響楽団演奏会のお知らせ

◎ベネスエラ「テレサ・カレーニョ青年オーケストラ」公演=東京芸術劇場(池袋)で=

☆クリスティアン・バスケス指揮 演奏家160人強

★11月17日(火)1800開場、1900開演
交響曲「ドン・フアン」
パガニーニの主題による狂詩曲(ピアノ:小曽根真)
交響詩「英雄の生涯」

★11月21日(土)1400開場、1500開演
キャンディード序曲
バレエ「エスタンシア」舞曲
シンフォニア・インディア
幻想交響曲

▼入場券 1500円~6000円まで5種類
チケットぴあ 0570-02-9999
ローソンチケット 0570-084-003

2015年10月15日木曜日

キューバ第1副議長が「精神的豊かさ」の重要性強調

 クーバ国家評議会のミゲル・ディアスカネル第1副議長は10月14日、ハバナで開かれた「クーバ革命、由来、歴史的発展」国際シンポジウムで、「クーバの未来は思想に懸っている。つまり歴史と我々の文化に懸っている」と述べた。

 副議長は、「クーバはまずまずの物質的豊かさを提供できる経済によって際立つのではなく、その豊かさを公平に、かつ社会正義を伴って分配する点において際立ちたい」と強調した。

 「それは、解放と連帯する文化を通じて、換言すれば、市場を埋めている似非文化と正反対の思想の解放的基盤に立ってのみ可能となる」と指摘した。

 さらに副議長は、「クーバは精神的視座をもって知識や独自文化を通じて貢献できる点で際立ちたい」と語った。

 ラウール・カストロ議長の後継者である第1副議長のこの発言は、対米国交再開に伴う経済面の向上に傾斜しがちな社会状況に警鐘を鳴らしたものと言える。
  

2015年10月14日水曜日

ボリビアとベネズエラが「2015~25年開発計画」策定へ

 ボリビアのエボ・モラレス、ベネスエラのニコラース・マドゥ-ロの両大統領は10月13日、コチャバンバ郊外のティキパヤで会談し、両国が協力し合い共同開発するための「2015~25年特別計画」を来年1月結ぶと発表した。協力分野は経済、通商、エネルギー、科学調査、軍事などで、1月に関係閣僚会議が開かれる。

 マドゥーロは先週ハバナで、ラウール・カストロ玖国家評議会議長と「2015~30年特別計画」を結んでいる。両計画とも、米州ボリバリアーナ同盟(ALBA)の枠内で遂行される。

 マドゥーロは記者会見で、ボリビアの民主・文化革命とベネスエラのボリバリアーナ革命という二つの「共同体革命」は、資本主義後、新自由主義後の開発モデルだ、と指摘した。

 両首脳は、09年にボリビア・サンタクルース市郊外の5000m2の敷地に180万ドルで校舎などが建設された「ALBA軍事学校」を軌道に乗せることで合意した。同校はALBA加盟国軍人に反帝国主義教義を植え付けるための教育が目的で、当時のウーゴ・チャベスVEN大統領が創設を決めた。だが機能していない。

 両首脳はまた、ブラジルのヂウマ・ルセフ大統領が「ブラジルにクーデターの陰謀がうごめいている」と警鐘を鳴らしたのを受けて、ルセフ大統領に支持と連帯を表明した。

チリ大統領が新憲法制定手順を発表

 チレのミチェル・バチェレー大統領は10月13日、現行憲法はピノチェー軍事独裁下で制定されたもので現代と民主にそぐわないばかりか、少数者が押しつけたもので正統性がないと前置きし、懸案の新憲法制定手順を発表した。

 第1段階は「新憲法計画」で、近日中に発足する作業機関が同計画を策定し、来年3月まで市民に情宣教育する。次いで、居住地域(市、共同体など)、地方、州の各段階順に新憲法に盛り込む条項を話し合い、その結果は2016年10月、大統領に提出される。

 この過程を、「市民オブザーバー理事会」(CCO)が監視する。大統領に提出された市民提案は、新憲法起草の基になる。
 
 16年末から国会で改憲法案を審議し、上下両院はそれぞれ議席の5分の3の多数をもって可決できる。可決されれば、第2段階の新憲法起草作業に入る。

 新憲法草案は、①国会両院合同委員会②両院・市民合同制憲会議③制憲議会④以上の3通りから国民投票で選択された一つ-のいずれかが起草する。

 草案は国会で17年から審議される。同年の国会議員選挙の結果発足する新国会が新憲法草案を可決すれば、国民投票で承認の是非を問うことになる。

 バチェレー大統領の任期は17年3月で切れるため、新憲法は次期政権下で制定されることになる。
  

グアテマラ山崩れ不明者の捜索打ち切り

 グアテマラ政府は10月13日、首都グアテマラ市郊外のサンタカタリーナ・ピヌーラ市エル・カンブライⅡ地区で1日発生した山崩れでの行方不明者の捜索活動を打ち切った。

 これまで土砂の下から38人が救出され、280人の遺体が収容されたが、依然約70人の所在が分からないままだ。

 政府は捜索活動打ち切りに合わせ、住宅建設、住民の臨時就職などの活動を開始した。

ペルー次期大統領最有力候補は依然ケイコ・フジモリ

 ペルー次期大統領選挙(来年4月実施)の支持率調査結果が10月13日発表され、ケイコ・フジモリ元国会議員が32%で、従来通り首位の座を守った。

 2位は、ケイコとともに決選投票に進出すると予測されているペドロ=パブロ・クチンスキ元経済相で、15%。3位はアラン・ガルシア前大統領7%、4位はアレハンドロ・トレード元大統領5%だった。他の6候補は計13%。浮動票は28%前後。
 
 首位を維持するケイコに対しては各勢力からの攻撃が激化しており、政治的には右翼のノーベル賞作家マリオ・バルガス=ジョサ(MVLL)はクチンスキ支持を喧伝している。

 MVLLは2011年の前回選挙で決選に進出したオヤンタ・ウマーラ(現大統領)とケイコについて「癌かエイズかの選択だ」と品性を疑われる発言をして物議をかもしながらウマーラを支持した。1990年選挙でケイコの父親アルベルト・フジモリに敗れた屈辱感から依然抜け出せないでいる、と見られている。
 

米9州知事が議会に対キューバ経済封鎖解除を要請

 クーバ共産党機関紙グランマは10月13日、米9州知事が9日、米議会に対玖経済封鎖を解除し対玖貿易を自由化すべきだとする意見書を提出した、と報じた。

 9州はヴァージニア、ワシントン、ペンシルヴァニア、モンターナ、ミネソタ、アイダホ、アラバマ、カリフォルニア、ヴァーモントで、いずれも農業が盛ん。

 一方、米議会の民主、共和両党議員4人がハバナで12、13日、クーバ外務省高官と会談した。

ブラジル最高裁が大統領弾劾裁判申請を不可とする

 ブラジル最高裁は10月13日、大統領弾劾裁判開始には下院定数の5分の3の賛成による発議が不可欠だとして、この条件を満たさない野党議員らによる一連の弾劾裁判申請を不可とした。

 一方、下院のエドゥアルド・クーニャ議長も同日、野党議員らから出されていた申請のうち審査済みの5件を却下した。これで却下された同様の申請は11件となった。だが依然、3通りの弾劾裁判申請が残っている。

 ヂウマ・ルセフ大統領は、財政均衡化のための赤字削減操作や、昨年の大統領選挙時の選挙資金の出所をめぐって疑惑がもたれている。これで勢いづいた野党は、相次いで弾劾裁判を求めて動き出した。

 この日サンパウロで開かれた労連会合でルセフは、「野党はクーデター(弾劾)で政権を奪取しようと画策している」と糾弾した。ルセフの指南役であるルーラ前大統領も同じ会合で、野党は選挙での敗北に従うべきだと述べ、ルーラ、ルセフ2代連続4期続く労働者党(PT)政権を選挙で倒せない野党勢力を批判した。

 ラ米では、新自由主義派財界、保守・右翼勢力、マスメディアなどが国境を越えて連携し、選挙で選ばれた改革政権や進歩主義政権を打倒しようと狙う陰謀が渦巻いている。その中心はマイアミにあり、日本の一部<ネット右翼>とも繋がっている。

 セラヤ・オンドゥーラス政権、ルーゴ・パラグアイ政権が倒され、ボリビア、エクアドール、ベネスエラ、そしてブラジルの合法政権が揺さぶりをかけられてきた。

2015年10月13日火曜日

チリ先住民族マプーチェが土地回復求め抗議行進

 クリストーバル・コロン(コロンブス)がカリブ海に到着した523周年記念日の10月12日、チレの首都サンティアゴで、先住民族マプーチェ1万5000人が抗議行進し、植民地状態打破を訴えた。

 マプーチェは人口1700万人のチレに70万人いる少数民族だが、スペイン人入植前はチレ中南部を統治していた。国境線で分断された隣国アルヘンティーナにも住む。

 この日、行進は大統領政庁前まで進んだ。マプーチェの指導者たちは、奪われた土地の回復、民族自決権確立、マプーチェが多く住むラ・アラウカニーア地方の軍事化終焉を訴えた。

 指導者らは、政府は今も土地を奪い続け、大森林業者に味方し、マプーチェの正当な闘争を弾圧し断罪している、と非難した。また、地域の軍事化はピノチェー軍事独裁期の政策であり、それがまだ続いている、と糾弾した。

 この抗議行進の目的については、民族の政治囚と死者たちのために闘い続ける意志と、その闘争が存在し継続されていることをチレと国際社会に示すため、と述べた。マプーチェ政治囚は少なくとも16人いるとされる。

 この日、ラ米各地で行事が催されたが、最も保守的な行事はドミニカ共和国首都サントドミンゴのコロン廟で催された「米州発見とイスパニダー(スペイン性)の日」の式典。

 だが「人種の日」(混血が始まった日)と捉えるものや、「民族出会いの日」とするものが少なくない。ハバナ放送は「米州先住民7000万人の虐殺が始まった日」と報じた。このように「侵略開始の日」と解釈するものも拡がりつつある。
 

国連ミレニアム目標達成へキューバとベネズエラが15年計画策定

 ボリビアで開催された国際気候変動人民会議最終日の10月12日、ベネスエラのニコラース・マドゥーロ大統領が演説、このほどハバナでラウール・カストロ国家評議会議長と6時間会談し、国連ミレニアム目標達成のため「2015~30年クーバ・ベネスエラ特別計画」を策定した、と発表した。

 大統領は、その成果は、米州ボリバリアーナ同盟(ALBA)にもたらされると述べた。ハバナではフィデル・カストロ前議長とも会談したが、フィデルはすこぶる気だった、と披露した。

 今会議には42カ国から環境問題専門家ら7600人の代表が参加。ボリビアはチレに要求している「太平洋岸領土回復」の主張を強調した。アルヘンティーナは、「主権に基づく対外債務返済再編」を訴えた。「世界人民銀行」創設案も出された。

 会議には、エクアドールのラファエル・コレア大統領、クーバのブルーノ・ロドリゲス外相、ボゴタ市長グスタボ・ペトロ、亜国人ノーベル平和賞受賞者で人権活動家のアドルフォ・ペレス=エスキベルらも出席した。開会段階では、バン・ギムン国連事務総長、ローラン・ファビウス仏外相も出席した。

ボリビア気候会議がパリCOP21への提言を採択

 ボリビア・コチャバンバ市郊外のティキパヤで10月10日から開かれていた第2回国際気候変動・生命生活人民会議は12日、最終宣言を採択して閉会した。この「ティキパヤ宣言」は12項目からなり、11月末からパリで開かれる国連気候首脳会議(COP21)に提案される。

 宣言内容は以下の通り。

1、生命生活に反する資本主義的利益に反対する行動:「母なる大地」(MT)を害する他国籍企業追放、「ビビール・ビエン(善く生きる)」(VB)主義を資本主義の代替思想とする

2、諸帝国の醸す戦争・地政学的脅威に反対する行動:植民地主義に依然苦しむ人民への支援、人民の水利権の保障

3、「善く生きる」(VB)主義強化:人類の地平線として強化すること、「母なる大地」(MT)の権利強化

4、MT権利の国際的承認:MTのために闘う国際的綱領策定、国連決議による「世界MT権利宣言」実現

5、気候変動に関する実践的・技術的知識化強化:人民教育強化、「大なる祖国多民族大学」創設

6、我々の共有資産防衛のための行動:「環境・気候・生命生活司法裁判所」設立、環境汚染防止強化

7、生命生活のための「気候科学」創設:資本主義でなく人類とMTに寄与する科学、そのためのマスメディアでの情宣

8、「国際気候・MT司法裁判所」開設の促進:国際決定事項を守らない国を裁く、VBの見地からMTとの調和ある在り方のため

9、自然の商業化反対強化:天然資源防衛・保護、気候変動に伴う商業化反対

10、資本主義・気候・社会・環境の各債務返済のための行動:先進工業諸国に要求する、気候債務の責任を認めるよう要求

11、宗教間対話によるMT救済:倫理道徳強化、「MTの日」記念行事を世界中で催すこと

12、パリCOP21首脳会議に向けての提言:資本主義モデルを強化するものであってはならない、拘束力なく民間部門や新自由主義に利するものであってはならない ☆気温上昇は2度でなく1・5未満に抑えること

2015年10月12日月曜日

メキシコ政府が学生失踪など「イグアラ事件」の捜査資料公開

 メヒコ検察庁は10月11日、ゲレロ州イグアラ市で昨年9月26~27日起きた教諭養成学校生43人強制失踪および6人殺害など「イグアラ事件」の捜査資料をインターネットで公開した。

 5万4000枚の大部で、85巻、13付属文書に分かれている。この事件は、陸軍駐屯部隊、州・市警察、州・市政府、麻薬組織などの関与があったり疑われたりし、1年以上たっても未解明のため、政府は内外から厳しく批判されてきた。

 捜査資料は事件に関する政府の判断を打ち出したものだが、政府は世論の圧力を受けて、厖大な資料の公開に踏み切らざるを得なかったと言える。

 だが犠牲者家族や人権団体は、これまで政府判断に異議を唱えてきており、資料公開で納得するとは考えられない。 

ハバナ市内にエバ・ペロン像が登場

 クーバを10月7日から訪問していたエクトル・ティメルマン亜国外相は最終日の9日、ハバナ市内ベダード地区にあるビジャローン公園で、エバ・ペロンの胸像の除幕式を挙行した。

 外相は、「亜国をこよなく愛するクーバで像ができて幸せなことだろう」と述べ、「エバは<必要のあるところに権利がある>と言った。1944年に政界に現れ52年に死ぬまで短い期間に、貧しい人々のために闘う時代の先駆者として国際的に評価された彼女の人生は嵐のようだった」と指摘した。

 フアン=ドミンゴ・ペロン大統領の夫人だったエバは52年7月26日、33歳の若さで癌で死去した。その日、亜国人医学生エルネスト・ゲバラは南米旅行を終えてカラカスからマイアミに着いた。その1年後のこの日、フィデル・カストロらがサンティアゴ市の陸軍モンカーダ兵営を襲撃し、革命の狼煙を上げた。

 エルネストは55年7月、メキシコ市でフィデルと邂逅し、チェ・ゲバラとして56年12月、グランマ号でクーバ島東部に上陸し、革命戦争に従軍医師として参戦した。チェはその後、ボリビアで革命戦争を率い、39歳で人生を終える。

 エバとチェは、疾風の如く通り過ぎた亜国人として、ラ米でしばしば並べられ比較される。エバ像除幕式はまさに、チェの歿後48周年記念日に挙行された。

2015年10月11日日曜日

ボリビア大統領が「資本主義は大地を破壊する癌」と糾弾

 ボリビアのコチャバンバ州ティキパヤ市で10月10日、第2回世界気候変動・生命生活防衛人民会議が開かれた。エボ・モラレス大統領は開会演説で、資本主義を厳しく批判した。

 大統領は、「資本主義にとって気候危機は二酸化炭素を取引する市場にすぎない。それは巨額の資金を動かすが効果はなく、地球を痛めつけるばかりだ」と前置きし、「資本主義は、パチャ・ママ(母なる大地)を徐々に破壊する癌だ」と扱き下ろした。

 モラレスはまた、「先進工業諸国は南の国々に二酸化炭素排出を抑え込むよう求めているが、我々南は決して資本制のための森林保護官にはならない」と述べた。

 この会議は12日まで続き、その決議は、11月30日~12月11日パリで開かれる世界気候変動首脳会議に提出される。

 パン・ギムン国連事務総長は10日現地入りした。ベネスエラ、エクアドール両国大統領、クーバ、フランス両国外相らの出席が予定されている。
 

コロンビアゲリラFARCが要員補充打ち切りを検討

 ゲリラ組織コロンビア革命軍(FARC)のティモチェンコ最高司令は10月10日、新たなゲリラ要員補充を打ち切ることを検討中、と表明した。FARCは9月23日ハバナで、コロンビア政府と「来年3月までに和平を実現する」という歴史的合意書に調印している。

 同司令はハバナ合意後、FARC全要員に対し、和平後の政治参加に備え、武闘でなく政治の勉強をするよう命じた。これに続く要員補充打ち切り検討であり、FARCが和平に向かって具体的に動き始めたことを示すものと受け止められている。

 ティモチェンコは今年2月、17歳以下のゲリラ要員はもはや隊列に加えないと発表している。

 ハバナでの和平交渉は8日、42回目の交渉が終了、小休止に入っている。ボゴタでは17日、ハナバ合意で決まった「和平特別法制」の効力の解釈が政府とFARCで異なる点を調整する法律家会合が開かれる。

ハバナでキューバ議長とベネズエラ大統領が会談

 クーバのラウール・カストロ国家評議会議長は10月9日ハバナで、来訪したベネスエラのニコラース・マドゥーロ大統領と会談した。クーバのブルーノ・ロドリゲス外相が同席した。両国関係および国際情勢について話し合われた。

 マドゥーロ大統領は、フィデル・カストロ前議長とも会談した。

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2015年10月10日土曜日

ブラジル大統領が「パラグアイ型の国会クーデター」を警戒

 ブラジルのヂウマ・ルセフ大統領は10月8日、新たに就任した閣僚たちとの会合で「野党はパラグアイ型のクーデターを狙っている。ブラジルは制度がしっかりしており、パラグアイとは違う」と述べた-そう報じられた。

 パラグアイの進歩主義の大統領フェルナンド・ルーゴは2012年6月、国会で多数派だった守旧派と右翼の議員らの陰謀で弾劾され、追放された。この「国会クーデター」を念頭に置いた発言だった。

 ブラジル国会には、ルセフ弾劾を推進する動きが進行し、激しい鬩ぎ合いが続いている。大規模な汚職事件を契機に表面化したさまざまな要因から、ルセフを追い落とし権力を奪回したいと目論む新自由主義勢力の声が大きくなっているのだ。

 だがパラグアイ政府はルセフ発言に怒った。エラディオ・ロイサガ外相はブラジル大使を外務省に呼び、「驚きと不快感」を表明、ルセフ発言の説明を求めた。ブラジリアでもパラグアイ大使が伯外務省に説明を求めた。

 当のルセフは9日コロンビアを初訪問し、JMサントス大統領と会談、共有する1645kmの国境一帯のアマゾニア(アマゾン川流域)での先住民保護、生物多様性について話し合い、投資、農業開発、小規模農家支援を含め協力協定と合意を結んだ。

 ルセフはサントスに、コロンビア内戦が終結に向かい始めた9月23日のハバナ合意を讃え、和平への支援を確認した。

冴木杏奈の歌を4半世紀ぶりに聴く

 東京・大手町の日経ホールで10月9日、冴木杏奈の歌を聴いた。ハバナで9月23日合意された「半年後のコロンビア和平達成」について長い記事を書き、その編集作業を終えたところに突然、招待が舞い込んだのだ。頭の疲れを休めるのに音楽は良い。

 彼女は美貌と声量が売り物の歌手で、「デビューし28年経った」と言った。4半世紀前のことだが、歌手になって間もないころ、彼女はピアニストの故羽田健太郎やタイム・ファイブとともにテレビの音楽番組出ていた。この番組や他の番組で、「愚かなりし我が心」、「小雨降る路」など、ゆっくりした歌をよく歌っていた。とてもよかった。以来初めて、そして生で初めて彼女の歌を聴いた。

 テレビで観ていた若いころの面影はない。別の型の美貌を築いている。亜国から来たキンテート(5人組)の演奏で歌い、かつ語る2時間の舞台は、まるで宝塚スターと追っかけファン集団の掛け合いの場のようだった。言わば「身内のショー」なのだ。歌を味わいたい一見の客は閉口する。

 私は、25年前のあの声の名残を探し、ところどころで確認した。そしてフアン集団の居ない場所で、「歌手個人」としての彼女の歌を聴いてみたいと思った。「山あり谷ありでした」と彼女は言った。その味が出るのはサロンで歌う時だろう。

 タンゴも数曲歌ったが、歌詞はほとんどが日本語だった。スペイン語で歌うと、どのような感じになるのか、これも聴いてみたい。ブエノスアイレスで故メルセデス・ソサから「アニータ」と呼ばれて可愛がられたと言った。私もインタビュー取材で訪れたソサの自宅や劇場を、彼女も訪れたに違いない。そして共演したのだろう。

 歌の合間に、実はノーベル平和賞の受賞者が誰になるのか、気になっていた。それが「憲法9条」でなかったことを後で知った。

2015年10月9日金曜日

ピノチェーは元外相暗殺を命じ、暗殺実行指揮者殺害も検討

 チリ社会党のフアン=パブロ・レテリエル上院議員は10月8日、父オルランド・レテリエル元外相の暗殺を命じたのは独裁者アウグスト・ピノチェー(故人)だった、と述べた。

 同上院議員は5日、この事件の真相をめぐる米政府極秘解禁文書を、チレ訪問中のジョン・ケリー米国務長官から渡されていた。

 上院議員はまた、ピノチェーは自身の関与を隠すため、暗殺の指揮を執った当時の国家情報局(DINA)長官マヌエル・コントレラスの殺害を検討していた、と指摘した。

 ピノチェーが1973年9月の軍事クーデターで倒したアジェンデ社会主義政権の外相だったオルランド・レテリエルは1976年9月ワシントンで、秘書の米国人女性ロニー・モフィットとともに自動車内で爆殺された。

 73年当時のニクソン米政権は、アジェンデ政権打倒を支援した。ニクソン大統領を補佐していたのはヘンリー・キッシンジャー(大統領補佐官-国務長官)だった。

2015年10月8日木曜日

アルゼンチン陸軍初の女性の将軍が誕生

 アルヘンティーナ陸軍史上初の女性の将軍が誕生する。クリスティーナ・フェルナンデス大統領が国会に9月、この人事法案を提出、国会は10月7日、この人事を承認した。

 将軍に昇進するのは、2007年から大統領付き陸軍武官を務めてきたマリーア=イサベル・パンサ大佐(54)。1982年、対英マルビーナス(フォークランド)戦争のさなか、陸軍女性部隊に入隊した。

 その後33年の勤務過程で2つの大学に学び、異なる2つの学位を取得、将軍への昇進資格を得ていた。 

2015年10月7日水曜日

米商務長官がクーバを訪問

 ペニー・プリツカー米商務長官は10月6日クーバを訪問し、ハバナ西方45kmのマリエル港地域に建設中のマリエル経済特区(ZEDM)を視察した。

 長官は7日にはハバナで、米財務、商務、国務3省当局者とクーバ側との会合に出席した。この会合は、オバーマ政権が今年実施した対玖経済封鎖緩和策の実効など影響を検証するため開かれた。

 プリツカーはまた、クーバのロドリゴ・マルミエルカ貿易・外資相、ブルーノ・ロドリゲス外相、リカルド・カブリーサス副首相と会談した。

 玖米国交再開後、訪玖した米閣僚は、8月のジョン・ケリー国務長官に次いで2人目。
 

ベネズエラがガイアナ・エセキーボ問題めぐり米国に抗議

 ベネスエラのニコラース・マドゥーロ大統領は10月6日、同国とガイアナが領有権問題を抱えているガイアナ西部のエセキーボ地方をめぐり米国がガイアナに肩入れする立場をとったとして、2国間問題への干渉だとして米政府に抗議したことを明らかにした。

 ガイアナのデイヴィド・グランジャー大統領は2日、新しい米国大使ペリー・ハロウェイから信任状を受け取ったが、その際、同大使にガイアナの平和を守るため米国の影響力を行使してほしい、と要請した。

 ハロウェイ大使はこれを受けて、治安に必要な機材などを提供する約束を再確認した、と伝えられる。ベネスエラは、これを「軍事支援の可能性がある」と受け止めている。

2015年10月6日火曜日

キューバ民主化より経済封鎖解除が先、とケリー長官発言

 ジョン・ケリー米国務長官は10月4日、チレの首都サンティアゴ入りし、国営TVによる会見で、「クーバの民主化実現より先に、米国による対玖経済封鎖が解除される」との見通しを示した。

 長官は、「個人的には経済封鎖解除に賛成だ。解除がクーバ人民を助けることに繋がるからだ」と述べた。また、「クーバ民主化には時間がかかるが、進展しつつある」と指摘した。

 オバーマ米政権は、対玖国交再開の最大の狙いが「平和裡の社会主義体制転換」にあることを明確にしてきた。クーバは、それと知りながらも、社会主義体制延命と強化のため、対米復交に踏み切った。

 ケリーは、ベネスエラについても発言、「民主主義に問題がある」と批判した。

 これを受けて同国のデルシー・ロドリゲス外相は5日、ケリー発言をはねつけ、「米国には大統領を選挙民が直接選ぶ制度がない。他国の民主制度を批判するなど道徳的見地からおこがましい」と述べた。

 ケリー長官は、太平洋岸のビニャデルマル市で5日開会した第2回「われらの海洋」会議出席のためチレを訪れた。長官は同日、ミチェル・バチェレー智大統領と会談し、1976年9月ワシントンで爆殺されたオルランド・レテリエル元チレ外相の事件に関する約1000種類の極秘解除文書のメモリーを渡した。

 同メモリーは次いで、元外書の息子フアン=パブロ・レテリエル上院議員に渡された。内容は8日、智米両国で同時公開される。ピノチェー軍政期の国家情報局(DINA)の犯行として知られている。
 

グアテマラ税関汚職事件の鍵握る人物が法廷証言

 大規模なグアテマラ税関汚職事件解明の鍵を握る人物が10月5日出頭、首都グアテマラ市の予審法廷で証言した。ロクサーナ・バルデッティ被告(元副大統領)の秘書だったフアン=カルロス・モンソン(47)で、逃亡していた。

 モンソンは、「オットー・ペレス=モリーナ被告(前大統領)とバルデッティ被告の2人がすべてを決めていた。前大統領は、収賄した人々から、その金額の半分を受け取っていた」と述べた。

 「身の安全が保障された今、証言する」とモンソンは口にしており、司法取引があったと見られている。税関絡みの贈収賄網を動かしていたモンソンは、4月の事件発覚後、暗殺される危険を察知して身を隠していたようだ。

 モンソンは、税関汚職事件に関わる金額は、伝えられてきたような370万ドルでなく19億4800万ドルに上る、と暴露した。

2015年10月5日月曜日

アルゼンチンで史上初の大統領候補公開討論会実施

 アルヘンティーナ大統領選挙は10月25日実施されるが、4日、主要6候補のうち5候補による公開討論会が催された。討論会は亜国大統領選挙史上初めて。だが「本命」のダニエル・シオーリ候補(ブエノスアイレス州知事)は欠席した。

 出席した5候補は次の通り。マウリシオ・マクリ:「共和国綱領」(PRO)党首。選挙運動「変革しよう」候補。ブエノスアイレス市長。中道・中道右翼・保守。新自由主義経済政策支持。老舗政党・急進市民同盟(UCR)も同選挙運動に参加。

 セルヒオ・マッサ:クリスティーナ・フェルナンデス=デ・キルチネル現大統領の政権党・ペロン主義キルチネル派(キルチニズモ)から分派。「新代替連合」(UNA)候補。

 アドルフォロ・ドリゲス=サア:元暫定大統領。ペロン主義保守。「連邦公約」候補。
 マルガリータ・ストルビセル:「進歩主義者」候補。
 ニコラース・デルカノ:「左翼・労働者戦線」候補。

 「キルチニズモ」のシオーリは、この日、支持者食事会を開き、公開討論会への懐疑的立場を表明した。

 選挙での当選条件は、得票率45%以上、もしくは得票率40%で2位得票者に10ポイント差をつけること。これを満たす候補がいない場合は、11月22日実施の決選に得票上位2候補が進出する。 

 

ビオレタ・パラ博物館がサンティアゴ市内に開館

 チレのカンタウトーラ(シンガー・ソングライター)ビオレタ・パラ(1917~67)の人生や業績を展示する「ビオレタ・パラ博物館」が10月4日、首都サンティアゴ市内のビクーニャ・マケナ大通り37番地に開館した。

 開所式には、パラの娘イサベル、息子アンヘル、ミチェル・バチェレー大統領、エルネスト・オトーネ文化相、カロリーナ・トア首都市長、セシラ・ガルシアウイドブロVP博物館財団理事長らが出席した。

 パラは、「人生よ、ありがとう」、「何という胸の痛みだろうか」など数々の作品で知られる。博物館は月曜休館、火~日曜0930~1800開館。 

マドゥーロ・ベネズエラ大統領が米外交官らを非難

 ベネスエラのニコラース・マドゥーロ大統領は10月4日、国会議員選挙に向けて「ボリーバル-チャベス」選対本部の開所式を挙行、12月6日実施の選挙はボリバリアーナ革命体制が直面する最も難しい選挙になるだろうが勝利する、と述べた。

 選対本部は、政権党・ベネスエラ統一社会党(PSUV=ペスーブ)と連立諸党が構成する「大愛国軸」(GPP=ヘペペ)の選挙拠点。

 大統領は開所式で、米政府に向け「ベネスエラはクーバが得たような相互尊敬、平等、主権に立った対米関係構築を望む」と述べ、関係改善への合図を送った。

  だが大統領は、ベネスエラが任命した駐米大使を米政府が依然承認していないことに触れ、バラク・オバーマ大統領は関係改善を口にしながら、なぜ大使承認がこれほど遅れているのか、と強い不満と疑念を表した。

 マドゥーロはさらに、6月に交代したカラカスの米大使館駐在外交官らは前任者らに増して悪く、その陰謀ぶりは常軌を逸している、と非難した。大統領は6月、米政府特使トーマス・シャノンに「陰謀」事実を伝えたが、その結果、悪い外交官らを派遣してきた、と指摘した。

 大統領はまた、新任の外交官たちは米南方軍で訓練を受けており、米大使館員らがチャベス前政権に対し2003~05年に使っていた陰謀網を復活させている、と暴露した。


2015年10月4日日曜日

グアテマラ大統領選挙決選はジミー・モラレスに圧勝の勢い

 グアテマラ大統領選挙(9月6日実施)の決選投票は10月25日実施され、右翼・保守の国民結集戦線(FCN)候補ジミー・モラレス(46、喜劇俳優)と、中道・中道左翼の希望国民連合(UNE)候補サンドラ・トーレス(59、元大統領夫人)が進出しているが、世論調査によると、モラレスが圧勝する勢いを示している。

 9月下旬実施の調査の結果が10月2日公表され、モラレス64%、トーレス20・6%、未定(浮動票)15・4%だった。仮に浮動票全部がトーレスに投じられたとしても、モラレスの優位は動かない。

 一方、首都グアテマラ市南方15kmのサンタカタリーナ・ピヌーラ市カンブライ・ドス地区で1日発生した山崩れによる犠牲者は4日現在86人に達した。約350人が土砂に埋まったままになっている。救出されたのは34人だけだ。

 同地区は山間の谷にあり、豪雨により山の斜面の地盤が緩み、崩れ落ちた。政府当局は以前から、居住に適さない危険地域に指定していたという。

コロンビア軍がゲリラEPL残党司令ナバーロを倒す

 コロンビア政府は10月2日、同国のゲリラ組織「解放人民軍」(EPL)の最高司令ビクトル=ラモーン・ナバーロ(39)を1日の戦闘で殺害した、と発表した。ナバーロは、「メガテオ」の渾名で知られていた。

 政府軍は、ベネスエラとの北部国境沿いのノルテ・デ・サンタンデル州カタトゥンボ地方の山岳地帯でEPLを爆撃、用心棒役のゲリラ幹部4人とともにナバーロを倒した。

 ナバーロは軍資金をコロンビア産コカインの密輸に頼り、それをベネスエラ経由で欧米に送って巨額の資金を稼いでいた。米政府はナバーロに懸賞金500万ドル、コロンビア政府は2000万ペソ(約67万ドル)をそれぞれかけていた。

 EPLは東西冷戦期には毛沢東路線のゲリラ組織だったが、1991年に政府との和平合意により解体、社会復帰した。だが、これに従わない分派が武闘を継続。ナバーロは100人程度に減った残党を率いていた。 

2015年10月3日土曜日

キューバ共産党が結党半世紀を迎える

 クーバ共産党(PCC)は10月3日、結党50周年を迎えた。その記念行事が2日、ホセ=ラモーン・マチャード第2書記(国家評議会副議長)によって執り行われた。ミゲル・ディアスカネル政治局員(同第1副議長)、ラミーロ・バルデス政治局員(同副議長、革命司令官)、ギジェルモ・ガルシア中央委員(革命司令官)ら、党と政府の幹部が出席した。

  マチャードは、「革命の英雄的業績はすべて中央委員会に集積されている」とのフィデル・カストロ前第1書記の祝辞を読み上げた。

 1959年元日の革命戦争勝利後、権力闘争を経て、フィデルの率いる「7月26日運動」(M-26-7)、人民社会党(PSP=旧共産党)、革命幹部会(DR、ハバナ大学生らの組織)は1961年7月26日、新しい共産党結成に向けて「革命統一機構」(0RI)を組織。ORIは63年2月、「社会主義革命統一党」(PURS)に再組織された。

 PURS内部では、M-26-7系とPSP系がさらなる権力闘争を展開、最終的に65年10月3日、フィデルが中央委員会名簿を発表、新生共産党が成った。フィデルが第1書記、実弟ラウールが第2書記(現・第1書記)に就任した。

 この名簿発表の際、フィデルは「ここにいるべき人物がいない」として、チェ・ゲバラの不在に触れ、チェがその年4月1日フィデルに渡した「別れの手紙」を読み上げた。チェはクーバを去り、ルムンバ派ゲリラを支援するためコンゴで戦っていた。

 フィデルは手紙の末尾を改竄し、「アスタ・ラ・ビクトリア、シエンプレ」(勝利まで、必ず)という「チェの革命標語」を仕立てた。[伊高浩昭著『チェ・ゲバラ 旅、キューバ革命、ボリビア』(中公新書2015年)参照]

 PCC中央委員会発足と同時に、M-26-7機関紙レボルシオンとPSP機関紙オイは統合されて、今日に続くPCC機関紙グランマとなった。「グランマ」は1956年末、フィデル、ラウール、チェら82人の青年が革命戦争開始のためメヒコを出航、クーバ島東部に乗り着けたクルーザーの名前だ。

 記念式典にラウール第1書記が出席しなかった理由は、来年4月の第7回党大会で退任が予想されるマチャード第2書記に花を持たせるためか、ラウールが国連総会訪問や相次ぐ来賓への対応などで疲労がたまっているためか、過去の「偉業」に拘泥しないラウールが対米関係深化過程にあるため敢えて共産党式典への出席を避けたのか、これらの「理由」が重なったためか、定かでない。

ブラジル大統領が閣僚を39人から31人に減らす

 ブラジルのヂウマ・ルセフ大統領は10月2日、これまで39人いた閣僚を31人に減らすなど省庁を統廃合し、政府経費削減のための改革を断行した。官房長官、国防相などは交代した。

 併せて次官級30職位を廃止。合計3000幹部職位を減らした。閣僚の月給も10%削減。今回の措置で、政府経費は20%減ることになった。統廃合で、「女性・人種平等・人権省」が創設された。

 ブラジル経済は、中国経済の減速などにより勢いが止まり景気は低迷。財政赤字に苦しみ、大規模な汚職事件と相俟って、選挙民のルセフ支持は急速に落ちている。

 ルセフは、前任者で後見役のルーラの意見に沿って今回の人事を決行した。政権党PT(労働者党)の閣僚は減り、連立する保守政党・ブラジル民主運動党(PMDB)の閣僚が増えた。

 大統領は一方で、庶民用住宅建設、保健拡充などで成果を挙げてきたことを強調した。 

2015年10月2日金曜日

ウルグアイで来年から大麻を薬局で販売へ

 ウルグアイ政府は10月1日、来年5月にも大麻を国内の薬局で販売する、と発表した。国内の2社が生産認可を受けた。

 この国ではホセ・ムヒーカ前大統領の政権が個人消費用の大麻栽培を合法化した。これを発展させたのが、タバレー・バスケス大統領の現政権の決定だ。

 2社は年間、それぞれ2トンまで大麻を生産することができる。ウルグアイの闇市場では、大麻1g=1米ドルで売られている。

ペルー次期大統領候補ケイコ・フジモリが父親と距離置く

 ペルーの次期大統領最有力候補ケイコ・フジモリ(人民勢力党首)は9月30日、ハーヴァード大学ラ米研究所で講演、質疑応答で、父アルベルト・フジモリ元大統領政権期の人道犯罪を調査した「真実・和解委員会」(CVR)の活動について「国にとって有益だった」と初めて評価した。

 CVRは、フジモリ政権による1992年4月5日のお手盛りクーデターで法治国家が崩壊したと捉え、諜報機関や軍・警察を動員しての暗殺など国家テロリズムを糾弾した。

 従来、CVRに批判的だったケイコが態度を一変させたのは来年4月の大統領選挙と、これに続く上位2候補による決選投票を突破するための選挙戦略と受け止められているが、ペルー国内では物議を醸している。

 ケイコは前回2011年の選挙では決選に進出しながら、父親との繋がりを攻撃され落選した。このため今回、早い機会に父親から身を切り離しておくのが得策と判断したものと見られている。

 ケイコはまた、強制不妊手術反対、臨床的堕胎手術賛成、同性愛者結婚容認などを表明、大統領再選制度については民主制度を弱めてきたと指摘した。これは連続3選の父親だけでなく、既に2期務め来年の選挙で3期目を狙うアラン・ガルシア前大統領、同じく2期目を目指すアレハンドロ・トレード元大統領を批判したものだ。[連続再選制度はフジモリ政権崩壊後に廃棄され、その後、連続でない再選が認められている。]

 ケイコ同性愛結婚容認発言を受けて10月1日、フリオ・ロサス議員は人民勢力を離党した。

政権交代の懸かるスペイン総選挙は12月20日実施へ

 スペインのマリアーノ・ラホーイ首相は10月1日、総選挙を12月20日実施する、と明らかにした。政権党PP(国民党、右翼・保守)は今年の地方選挙で後退、総選挙で政権が交代する可能性も指摘されている。

 それというのも、フランコ独裁後の民主時代に政権を担ってきたエスパーニャ労働社会党(PSOE=ペソエ、中道・中道左翼)およびPPに次ぐ第3勢力として新興のポデモス(中道左翼・左翼)が同地方選で台頭。ポデモスとPSOEが連立すれば、国会で過半数を制することになりうるからだ。

 ラホーイは先月のカタルーニャ州議会選挙で独立派が過半数を握ったことにより、国内他州に動揺が拡がっていることや、同州選挙で独立派が得票率では48%未満だった事実を踏まえ、総選挙期日発表に踏み切った。

ベネズエラ経済は原油価格低迷で昨年、4%縮小

 ベネスエラ政府は10月1日、同国経済が昨年4%縮小した、と明らかにした。国際原油価格の低迷で前年比210億ドルの減収となったことや、超インフレが響いた。

 外交面では1日、ベネスエラは米州諸国機構(OEA)の輪番制議長国になった。12月末まで3カ月務める。デルシー・ロドリゲス外相は、OEAを米州人民のためになるよう改革すべき好機だ、と述べた。

 外相は、帝国主義(米国)は覇権主義的利益のために人権問題を二重基準で政治的に利用してきたが、この悪しき習慣を打破すべき時だ、と強調した。

 一方、国境の治安問題を話し合うため、コロンビア・カリブ海岸のサンタマルタ市で2日、同国とベネスエラの国防相会談が開かれることになった。これは、9月キトで開かれた両国首脳会談で合意されていた。

2015年10月1日木曜日

国連記録官がチリ警察の過剰警備を止めさせるよう要請

 各国の集会・結社の自由について調査している国連特別記録官マイナ・キアイ(ケニア人)はチレでの調査を終えた9月30日サンティアゴで記者会見し、チレ政府に対し、ピノチェー軍事独裁政権の遺制をなくすよう要請したことを明らかにした。

 キアイ記録官は来年6月、ジュネーブの国連人権理事会で今回のチレ調査の結果を報告するが、30日、報告内容の概要をミチェル・バチェレー大統領に伝えた。

 記録官は記者会見で、治安警備隊(カラビネロス)は労働者、学生、先住民族マプーチェらの抗議行動に対し「過剰な実力行使と粗暴な弾圧」をしていると指摘、これを止めるよう訴えた。

 チレ北部のエル・サルバドール銅山で7月、鉱夫ネルソン・キチジャオがカラビネロスに撃たれて死亡する事件が起きた。現場を訪れ調査した記録官は、これを弾圧の実例として挙げた。

 抗議行動では一部勢力が暴力行為に出、これをカラビネロスが弾圧するが、一般市民は、この種の弾圧を我慢し黙認する。こうした事態について記録官は、「不適切だ。なぜなら市民が抗議行動に敵意を抱くことになりうるからだ」と批判した。

 記録官はさらに、軍政期1983年の政令でカラビネロスに無許可デモを規制する任務が与えられたことに関し、カラビネロスが市民の抗議行動の許可・不許可を恣意的に決める自由裁量権を握っているため、それが事実上、法制化されているような状態になる危険性を秘めている、と懸念を表明。同政令の廃止を求めた。

 記録官は調査過程で、カラビネロスのブルーノ・ビジャロボス長官とも会談した。カラビネロスは内務省管轄下にあるが、軍政期には国防省に編入され、陸海空軍と共に「4軍」とされ、ピノチェー独裁を支えた。
 

 

ウルグアイにパレスティーナ大使館開館

 ウルグアイ首都モンテビデオのカラスコ地区に9月30日、パレスティーナ大使館が開館した。ワリド・アブデルラヒム大使は開館式で、「パレスティーナ独立国家実現の日が近づいている。この民族の夢を誰も壊せない」と述べた。

 来賓のホセ・ムヒーカ前大統領(現上院議員)は、「共生のためパレスティーナを承認した」と語った。

2015年9月30日水曜日

ベネズエラ大統領が国連で米大統領に政令破棄を訴える

 ベネスエラのニコラース・マドゥーロ大統領は9月29日国連総会で演説、ベネスエラはクーバ革命の歴史的道程にある社会主義の道をボリビア、エクアドール、ニカラグアの姉妹革命とともに歩み、新しい社会主義社会を建設する選択をしてきた、と強調した。

 米国に関しては、バラク・オバーマ大統領が3月9日の政令で「ベネスエラは米国の安全保障にとり尋常でない脅威である」として締付け措置をとったことに触れ、大統領がその後「脅威」を打ち消したのは評価するが、政令そのものを破棄してもらいたい、と要求した。

 ラ米外交では、玖米国交再開を讃えるとともに、1979年にパナマ運河返還を決めた米国がグアンタナモ基地をクーバに返還することも可能ではないか、と指摘した。英国に対しては、マルビーナス(フォークランド)諸島領有権問題でアルヘンティーナと話し合うべきだ、と求めた。

 大統領は28日、NYで米労働界の指導者と会談。次いでハーレム地区の黒人劇場でベネスエラ政府の肝煎りで開かれた「アフリカ系指導者サミット」に出席し、「人種差別は奴隷制度から生まれた」と指摘し、差別撤廃への努力継続を訴えた。

 マドゥーロはまた、フィデル・カストロが革命直後にハーレムを訪れ、故マルコムXらと会談したことに触れた。この会合には、ビル・パーキンス上院議員、カリブ諸国首相、米各界黒人指導者らが出席した。

 一方、コロンビア国境のタチラ州のホセ・ビエルマ知事は29日、過去数日間にコロンビアの極右準軍部隊(パラミリタレス)要員と見られる31人を逮捕した、と明らかにした。またベネスエラ産燃料6080万リットルの密輸を防止した、と述べた。

 首都に隣接するミランダ州では、バイクに乗った2人組による警察署などへの手榴弾投擲事件が今年に入ってから最近まで15件発生、市民11人と警官4人の計15人が死亡している。負傷者は警官33人を含む50人に上る。

 同州のエンリケ・カプリーレス知事は29日、手榴弾は通常、軍にしかなく、国防相は調査すべきだと述べた。知事はまた、一連の事件が12月6日の国会議員選挙の妨害工作でなければよいが、と懸念を表した。

 カプリーレスは野党連合MUDの統一候補として過去2度大統領選挙に出馬し落選したが、次期選挙での3度目の出馬を目指している。そのためにも地元州での国会議員選挙に負けられない。

キューバ議長と米大統領が今年2度目の会談

 クーバのラウール・カストロ国家評議会議長は9月29日、国連総会で7分余り演説、米国による経済封鎖を厳しく批判し、世界188カ国が封鎖継続に反対している、と述べた。

 ラウール議長とバラク・オバーマ米大統領は同日、国連内で会談した。会談後、ブルーノ・ロドリゲス玖外相は記者会見で、議長は首脳会談で、経済封鎖撤廃、封鎖による累積損害賠償、グアンタナモ米海軍基地返還がないかぎり玖米国交正常化は成らないと強調した、と明らかにした。

 これに対し米国務省は、オバーマ大統領はクーバ議長に人権問題改善を求めた、と明らかにした。両首脳の会談は4月パナマ市での第7回米州首脳会議時の会談以来、小半年ぶり。

 ロドリゲス外相は、10月27日に国連総会で経済封鎖解除要請決議の採択があるが、これまで一貫して反対してきた米国がどう出るか、と述べた。米メディアには、米国が初めて棄権するのではないかとの観測も出ている。

 28日にはハバナで、玖米間の民間航空便就航に関する話し合いが始まった。10月6~7日には、ペニー・プリツカー商務長官が訪玖する。革命直後に打ち切られたクーバ糖の対米輸出再開も話し合われると見られている。

 現在メヒコは年間130~150万トンの砂糖を米国に輸出しているが、米国がクーバ糖輸入を再開すれば、メヒコの輸出が減らされることになると推測されている。

 一方、ヴェトナムのチュオン・タンサン国家主席は28日訪玖、29日、人民権力全国会議(国会)のエステバン・ラソ議長と会談した。ラウール議長がNYから戻るのを待って会談し、30日出国する。

2015年9月29日火曜日

チリ大統領が新憲法制定段取りを15日内に発表へ

 チレのミチェル・バチェレー大統領は9月26日、国連総会出席のため滞在中していたNYのコロンビア大学で講演し、チレ新憲法制定の段取りは15日以内に発表する、と明らかにした。大統領は4月末、半年後に段取りを明らかにする方針を打ち出していた。

 政権党連合「新多数派」内には、制憲議会を開設し憲法草案を策定すべきだと主張する立場と、国会が新憲法制定の主導権を握るべきだとする立場あって、対立している。

 バチェレーは29日には国連の平和維持活動(PKO)などをめぐる会合で演説し、チレは来年1月から国連平和維持軍参謀本部に士官4人を派遣すると述べた。また来年中にアフリカでのPKOにチレ陸軍工兵中隊を派遣する、と発表した。

キューバが農業開発用に中国製トラクターを大量輸入

 クーバは、中国の農業機械製造大手YTO社製のトラクター587台を8月輸入、9月28日、引き渡し式が催された。砂糖黍、穀物などの耕作地に配置される。クーバは今後、新たに486台を輸入することになっている。両国貿易は昨年、16億ドルに上った。

 一方、米アーカンソー州のアーサ・ハチンソン知事(共和党)は28日ハバナで、米国による対玖経済封鎖撤廃への支持を表明した。

 クーバには、米・北カロライナ州農業経営者28人が滞在中。食糧品輸出などの可能性を探るため。
  

ローマ法王がコロンビア和平交渉進展を支援

 玖米歴訪を終えたフランシスコ法王は9月28日、ローマに戻る機中で記者会見し、「サントス大統領と2度話し合った」と指摘、コロンビア和平合意促進に協力したことを認めた。

 コロンビア政府とゲリラ組織FARCは23日ハバナで、半年以内に和平最終合意に到達するための合意書に調印した。

 一方、コロンビアのエドゥアルド・モンテアレーグレ検事は28日ボゴタで、アルバロ・ウリーベ前大統領(現上院議員)は(不逮捕特権があり)取り調べできないが、ウリーベがかつてのアンティオキア州知事時代に極右準軍部隊(パラス)を支援したことに関しては捜査可能だ、との見方を示した。この捜査は、和平後に発足する「和平特別法廷」が担当する。

 JMサントス大統領は29日国連総会で演説、FARCとの和平日程合意に触れ、FARCが和平後、政治勢力となって政府と共に麻薬取引取締りをすることになるが素晴らしいことだ、と述べた。

 大統領はまた、「来年のこの時期この場に、平和になったコロンビアの大統領として来る」と強調、和平実現に向かって歩み始めたコロンビアの標準時に時計の針を合わせるよう呼び掛け、拍手を浴びた。

ペルーの銅山開発めぐる抗議行動で18人死傷

 ペルー・アプリマック州コタバンバ郡チャルウアウアチョにあるラス・バンバス鉱山で9月28日、銅山開発による環境破壊に抗議する住民5000人が押し寄せ、出動した警察機動隊と衝突、死者3人、負傷者15人が出た。

 この鉱山は標高4000mのアンデス山脈の渓谷にあり、豪州MMG社以下の企業連合が開発権を得ている。銅のほか、モリブデンなどの金属が眠っている。

 住民は、いったん合意された環境対策が変更されたとして怒り、抗議行動に出た。政府は対話を求めたが、開発計画に後戻りはないと言明している。

 ペルー経済はマクロで好調だが、それは鉱山開発によって支えられている。開発をめぐる抗争は全国的に拡がっており、数百件に上る。

キューバのアフリカ政策を担ったホルヘ・リスケーが死去

 社会主義クーバの古参指導者がまた一人、この世を去った。アフリカ政策を長年担ったホルヘ・リスケー(85)が9月28日、死去した。

 リスケーは人民社会党(PSP=旧共産党)青年部指導者として活躍、革命戦争では、1958年にラウール・カストロ司令(現議長)が率いた東部第2戦線に参加した。

 革命後は1965年の共産党(PCC)結党に参加。労相、党書記局員、政治局員などを歴任。1965~67年、コンゴで「パトリス・ルムンバ国際大隊」の司令官を務めた。

 その時期、チェ・ゲバラがコンゴでルムンバ派のゲリラ組織・解放人民軍(EPL)を支援し戦っていた。リスケーは、ゲバラを側面支援する任務を帯びており、ゲバラの現地司令部を訪れている。

 その後、南アフリカ解放組織・アフリカ民族会議(ANC=現在の政権党)のゲリラ組織「民族の槍」の戦略・戦術顧問を務めた。またアンゴラ戦争では、アンゴラ解放人民運動(MPLA)を支援、和平交渉ではクーバ代表団の中心となった。

 最近まで、クーバを訪れるアフリカ諸国要人と会っていた。数年前までアフリカ諸国をしばしば歴訪していた。

 ラウール・カストロはハバナ大学年代、PSP青年部に属し、リスケーと接点があった。リスケーの遺骨は、東部第2戦線の霊廟に安置される。

オバマ大統領が対キューバ経済封鎖解除を米議会に要請

 バラク・オバーマ米大統領は9月28日、国連総会で演説、国交再開に7月漕ぎ付けたクーバに触れて、「経済封鎖(エンバーゴ)にはもはや居場所はない」として、米議会に対玖経済封鎖解除を求めた。

 大統領は、「議会は不可避的に経済封鎖を解除することになろう」と述べた。

 大統領は29日、国連の場で、ラウール・カストロ国家評議会議長と歓談する。

 オバーマが国連総会で敢えて経済封鎖問題で発言したのは、毎年、この総会で経済封鎖解除決議が採択されてきたからだ。今年も10月に採決が予定されており、米国が初めて解除に賛成するかどうかが関心を集めている。

 大統領は、「経済封鎖でクーバを孤立させようとして孤立したのは米国だった」と認めている。

2015年9月28日月曜日

カタルーニャ州議会選挙で独立派が過半数制す

 スペイン北東端のカタルーニャ州で9月27日総選挙が実施され、独立派2勢力の合計獲得議席が州議会(定数135議席)の過半数72議席に達した。独立推進者のアルトゥール・マスの「独立賛成運動」(62議席)と、独立派「人民連合候補団」(CUP、10議席)は正統性が得られたとして、2017年の独立実現を目指す意志を表明した。

 だが両勢力の合計得票率は47・85%で、50%にわずかに及ばなかった。このため中央政府のマリアーノ・ラホーイ首相は、独立には正統性がないとの立場を打ち出した。選挙が、独立の是非をかけた一種の住民投票と見なされていたからだ。

 カタルーニャはスペイン一の富裕州で、「最も欧州的」で、ロマンス語系の独自の言語カタランを持ち、歴史的に独立志向が強い。人口は750万人、主権者は551万人。今回の投票率は77%を超えた。

 他党の獲得議席数は、中道右翼「市民たち」25、中道カタルーニャ社会党(PSC)16、右翼政権党PP(国民党)11、中道左翼ポデモス系「カタルーニャは可能だ」11。

領土問題で対立するベネズエラとガイアナが大使帰任で合意

 ベネスエラのニコラース・マドゥーロ大統領とガイアナのデイヴィド・グランジャー大統領は9月27日、NYの国連本部で会談し、相互に召還していた大使を帰任させることで合意した。会談は、パン・ギムン国連事務総長の仲介で実現した。

 両国はガイアナ西部エセキーボ地方の領有権問題を歴史的に抱えているが、昨年来、ガイアナが米石油会社に同地方沖の海底油田開発権を与え開発が開始されたことから、険悪な関係になっていた。

 ガイアナ大使はベネスエラ政府から忌避されており、新しい大使がカラカスに赴任することになる。

 一方、ラウール・カストロ玖議長は29日、NYでバラク・オバーマ米大統領と会談することになった。
 

2015年9月27日日曜日

ベネズエラとロシアが宇宙戦略兵器使用禁止で合意

 ベネスエラのニコラース・マドゥーロ大統領は9月26日、NYの国連代表部にセルゲイ・ラヴロフ露外相を迎え会談した。これに続き、デルシー・ロドリゲスVEN外相とラヴロフ外相は、宇宙での戦略兵器使用を禁止する合意書に署名した。

 マドゥーロは25日には、クーバ国連代表部でラウール・カストロ議長と会談した。

 大統領はまた、国連総会出席の石油輸出国機構(OPEC)、ラ米・カリブ諸国共同体(CELAC)、南米諸国連合(ウナスール)の首脳たちとの会合への出席を予定している。

ラウール・キューバ議長が国連で経済封鎖解除を訴える

 クーバのラウール・カストロ国家評議会議長は初めて国連総会に出席し9月26日演説、「玖米国交再開は重要な前進だったが、半世紀以上続く経済封鎖が依然、クーバの発展を阻害する最大の要因となっている」と指摘、封鎖解除を訴えた。

 議長はまた、先進工業諸国に対し、貧困諸国が開発目標を達成できるよう一層努力してほしい、と呼び掛けた。

 ラウールは26日、パン・ギムン国連事務総長と会談、総長はコロンビア和平交渉の貸座敷として貢献してきたクーバの役割を果たした。コロンビア政府とゲリラFARCは23日、半年以内の和平達成で合意書に署名した。

 議長は25日にはNYで、経済封鎖解除賛成派の米連邦議員団と会合した。またNY州知事アンドゥルー・コモ知事と会談した。同州は4月、通商使節団をクーバに派遣している。ラウールは25日、モサンビークのフィリプ・ニュシ大統領とも会談した。

 一方、ボリビアのエボ・モラレス大統領は25日の国連演説で、「今日、戦争をつくりだし、<イスラム国>のような狂信的宗教軍団を生み出しながら統御不能に陥り、それによって生じた危機を人民に押し付けている」と述べ、暗に米国を批判した。そして「貧困をなくすため資本主義を止めよう」と呼び掛けた。

 ブラジルのヂウマ・ルセフ大統領は、国連安保理理事国入りを目指すG4会合で、印独日3国首相と会談した。

 ローマ法王は今回の訪米中、米議会で演説し、「血塗られた資金を稼ぐ兵器・武器輸出」を止めるよう呼び掛けた。これは武器輸出をしているすべての国々と、それに道を開いた安倍政権をも間接的に批判する発言だ。

  ワシントンのクーバ大使館は26日、米商業会議所のトーマス・ドノウエ会頭と玖商業会議所のオルランド・エルナンデス会頭が同地で会談し、「商議理事会」の設立を決めた、と明らかにした。両国間の通商関係樹立、経済封鎖解除、企業家同士の関係醸成、商議機会特定などを活動目的とする。

【日本の大方の新聞やテレビニュースは、ラウール演説報道で従来からの過ちを犯している。ラウールは経済封鎖を「経済制裁」とは絶対に呼ばない。クーバには米国から制裁されるいわれはなく、制裁されるべきはクーバに軍事侵攻や破壊活動、暗殺などをさんざん仕掛けた米国ではないか、との立場をとるからだ。米国メディアは、経済封鎖を政策としては「制裁」であるが、「封鎖」に意味が近い「エムバーゴ」(禁輸、禁止)という用語を用いることが少なくない。にも拘わらず日本メディアの大勢は相変わらず「経済制裁」一辺倒のナイーヴな報道が多い。記者やデスクの不勉強ゆえだが、誤った価値観を押し付けられる読者は、たまったものではない。米国メディアの方が「経済封鎖」の用語に関しては、日本のメディアよりもリベラルと言える場合が少なくないのだ。日本政府の対米従属主義が必要以上に記者らに影響を及ぼし、思考を停止させているのかもしれない。】

学生失踪事件1周年、メヒコ市内を2万5000人が抗議行進

 メヒコの教諭養成学校生43人強制失踪事件発生から1年経った9月26日、首都メヒコ市では目抜き通りパセオ・デ・ラ・レフォルマから憲法広場(ソカロ)にかけて雨中、2万5000人が行進、政府に事件解明を要求した。

 失踪者のある父親は、「雨が降っているのではない。メヒコ人民が泣いているのだ」と語った。人々は「国家犯罪糾弾」、「大統領辞めろ」、「無処罰許さぬ」などと書かれたプラカードや紙片を掲げていた。

 事件当日、現場のゲレロ州イグアラ市では、失踪者以外の学生3人が警官らに虐殺され、とばっちりで市民3人も殺されている。麻薬組織、地元市長・警察などが犯行に関与した事実が判明している。

 この日の抗議行動参加者は犠牲者家族、友人学生、教員、先住民族ヤキ、住民運動指導者、別の失踪事件被害者家族ら。ある参加者は「43人の背後には無数の失踪者がいる」と指摘した。政府統計では、カルデロン前政権が「麻薬戦争」を始めた2006年以来、2万5000人の失踪者が出ている。

 エンリケ・ペニャ=ニエト大統領は24日、犠牲者家族らと会合し、事件捜査継続を約束したが、26日は国連に出席、メヒコを留守にした。

 ある政治評論家は、1968年10月2日のトラテロルコ学生・労働者虐殺事件が時のグスタボ・ディアス=オルダース大統領施政の象徴として歴史に刻印されたように、43人失踪事件はペニャ=ニエト現大統領施政の象徴として刻印される、と述べた。

 一方、ボリビアの政治首都ラパスでも26日、学生ら100人がメヒコ大使館前で抗議デモをした。その中心には、エボ・モラレス大統領の娘、エバ=リス・モラレス(21)がいた。彼女はカトリック大学法学部生で、父親の支援団体「エボ世代」のメンバー。


 

コロンビアのペソ新札にガルシア=マルケスが登場へ

 コロンビアで来年新札が発行されるが、5万ペソ札には、昨年死去した文豪ガブリエル・ガルシア=マルケス(ガボ)の肖像が登場する。裏は、ガボの小説の中の舞台マコンドに地理的に近い先住民の古代居住地シウダー・ペルディーダが描かれる。

 5万ペソは、わずか16ドル強。元大統領カルロス・ジェラス=レストレポが刷り込まれる10万ペソは、将来のデノミナシオン用に使われるという。コロンビア中央銀行が9月25日発表した。

 2万ペソには元大統領アルフォンソ・ロペス=ミケルセン、1万ペソには人類学者ビルヒニア・グティエレス、2000ペソには画家デボラ・アランゴがそれぞれ登場する。2000ペソは従来通り詩人ホセ=アスンシオン・シルバ。 

2015年9月26日土曜日

モラレス・ボリビア大統領4選出馬へ向け改憲法成立

 ボリビア議会上下両院合同本会議は9月25日、エボ・モラレス大統領の4選出馬を認める改憲法案を可決した。2009年制定の憲法の168条は「大統領連続再選は1回だけ」と規定しているが、これが「2回まで可能」となる。この改憲法承認の是非を問う国民投票は、来年2月21日実施される見通しだ。

 モラレス大統領は社会主義運動(MAS)から2005年の大統領選挙に初出馬し当選、06年1月政権に就いた。だが新憲法制定作業を開始、任期を1年短縮し新憲法の下で09年再選され、任期を5年に戻して14年また再選された。

 だがMASは、新憲法下での最初の再選は2014年の大統領選挙と解釈し、今回の改憲で「2度再選可」としたことで2019年の次期選挙出馬が可能になるとの立場だ。05年選挙から数えれば連続4選を狙うことになる。

 本会議は賛成113、反対44で改憲案を可決した。

 国際司法裁判所は24日、ボリビアの言い分を認めて、同国がチレから奪われた海岸領土を回復するための交渉をチレに義務付けるか否かを審理することになった。

 ボリビアは、この裁定を「歴史的勝利」と位置付けており、モラレスは連日の勝利を収めた。

メキシコ学生43人強制失踪事件から1年経過

 メヒコ南部ゲレロ州イグアラ市で昨年9月26日、州都チルパンシンゴ近郊アヨツィナパの教諭養成学校生43人が強制失踪させられた事件から1年が経った。首都メヒコ市をはじめ全国各地で、追悼行事や政府への抗議行動が予定されている。

 これまでのところ、遺骨のDNA鑑定により、43人のうちの2人の身元が判明している。鑑定は、オーストリアのインスブルック大学法医学研究所で行なわれてきた。

 メヒコ検察庁は25日、保存されている遺骨6万柱の中から遺骨を選別して同研究所に送り、鑑定を続ける、と発表した。遺骨選別には、アルヘンティーナ法人類学チームが協力する。

 エンリケ・ペニャ=ニエト大統領は24日、学生の遺族・家族らと会合し、事件捜査継続を約束した。

2015年9月25日金曜日

アルファベット頭文字で表す日本の主要紙

 先刻、某紙のコロンビア和平に関する報道ぶりを批判したが、某紙だからB紙としてもよかった。この機会に、日本の主だった日刊紙名をアルファベットの頭文字で並べてみた。

 A:秋田魁新報、朝日新聞  B(某紙)=かつて防長新聞(山口)があった= C(ch):千葉日報、中国新聞(広島)、中日新聞(愛知)、中部経済新聞(同)  D:デイリー東北(青森)  E:愛媛新聞

 F:福島民友新聞、福島民報、福井新聞 G:岐阜新聞  H:北海道新聞、北国新聞(石川)  I:岩手日報、石巻新聞、茨城新聞、伊勢新聞  J:上毛新聞(群馬)、ジャパンタイムズ

 K:河北新報(宮城)、神奈川新聞、北日本新聞(富山)、京都新聞、神戸新聞、紀伊民報、高知新聞、熊本日日新聞、鹿児島新聞  L:  M:室蘭民報、宮崎日日新聞、南日本新聞(鹿児島)、毎日新聞

 N:新潟日報、奈良新聞、西日本新聞(福岡)、長崎新聞、日本経済新聞  O:大分合同新聞、大阪新聞、大阪日日新聞、沖縄タイムス、大島新聞

 P:  Q:  R:琉球新報  S:下野新聞(栃木)、埼玉新聞、信濃毎日新聞、静岡新聞、山陽新聞(岡山)、新日本海新聞(鳥取)、山陰中央新聞(島根)、四国新聞(香川)、佐賀新聞、産経新聞

 T:東奥日報(青森)、東京新聞、徳島新聞  U:  V:  W:和歌山新聞 X:  Y:山形新聞、山梨日日新聞、山口新聞、八重山日報、読売新聞  Z: 

コロンビア和平合意を全く速報しない某紙に抗議する

 コロンビア政府とFARCが9月23日夕から夜にかけてハバナで、半年以内に内戦を終結させるという歴史的合意に達した。今世紀ラ米の、米玖国交再開と並ぶ大ニュースだ。

 ところが、「全国紙」を自認する某紙は、24日夕刊でも25日朝刊でも、この歴史的大ニュースを全く報じていない。白昼夢のようだ。

 この新聞はローマ法王の訪玖取材のため、在米通信員をクーバに特派していた。法王は22日、訪玖を終え米国に去ったが、その翌日の和平合意だった。なぜ、これをハバナで取材できなかったのか。

 同紙本社には、共同・時事通信社電や外電が殺到していたはずだ。特落ち(特ダネ落とし)したのであれば、通信社電を掲載して速報し、同時に自社取材を開始して追い付けばよい。この努力をなぜ怠ったのか。メンツからか。だとしたら、読者を馬鹿にしている。

 購読料を支払っている読者は怒る。いったい、ニュース判断はどうなっているのだ。自社電がなかったため、あたかも大ニュースがなかったかのような紙面構成になったのだとすれば、あきれてものが言えない。

 そして編集者は傲慢極まりない。購読者として、この新聞に抗議する。ジャーナリスムの体をなしていないと。 猛反省を促す。

【この新聞は25日夕刊でようやく報じたが、ハバナ合意から一日半遅れだった。その記事は、コロンビア陸軍を補完して殺戮や土地奪取を恣にしてきた、内戦の最悪の癌である極右準軍部隊に触れていない。】 

☆国際司法裁がボリビア・チリ領土問題審理を可能と判断

 ハーグの国際司法裁判所は9月24日、ボリビアが太平洋岸領土回復のための交渉をチレに義務付けるよう要求した2013年の案件について、同裁判所にはボリビアの要求を「審理する権限がある」との判断を賛成14、反対2で可決し、「領土問題は決着済み」とのチレの主張を退けた。これにより、この案件の審理が継続されることになった。

 ボリビアのエボ・モラレス大統領は、この判断を「歴史的勝利」と受け止め、チレのミチェル・バチェレー大統領に対話を求めた。この判断を予測していたバチェレー大統領は、「チレの国土の一体性が損なわれることはありえない」と発言、強気の姿勢を示した。

 モラレスは訪米中のフランシスコ法王と電話会談し、25日国連で法王に謁見する約束を取り付けた。モラレスは、法王に仲介を求める意向だ。

 チレは1879年、ボリビア領だったアントファガスタ地方の硝石開発権をめぐって戦争を仕掛け、ボリビア・ペルー連合軍を破った。ボリビアから同地方を奪い、ペルーからアリーカ、タラパカ2地方を奪った。ボリビアはこれにより、内陸国になった。

 この戦争は、太平洋沿岸での海戦が中心だったことから、「太平洋戦争」と呼ばれている。

 以来ボリビアは「海への出口回復」を悲願としてきた。モラレスは特にこの問題に熱心で、4選を狙うための正統的理由づくりのためにも国際司法裁提訴を一大運動として展開してきた。

【モラレスは9月29日の国連総会演説で、チレに対話による問題解決を呼び掛けるとともに、「ボリビアは遅かれ早かれ海岸領土回復を実現させる」と述べた。】
 

2015年9月24日木曜日

★コロンビア内戦、半年以内に終結へ-歴史的合意成る-

 半世紀余り続いてきたコロンビア内戦が終結への最終段階に入った。フアン=マヌエル・サントス大統領と、ゲリラ組織FARC(コロンビア)革命軍のティモレオーン・ヒメネス最高司令は9月23日ハバナで会談後、遅くとも半年以内(2016年3月23日まで)に最終和平合意に調印すると発表した。

 双方はハバナで2012年11月から41回、和平交渉を続けてきた。貸座敷クーバのラウール・カストロ国家評議会議長が発表に立ち会った。大統領と最高司令は議長に促され、握手した。大統領の表情はぎこちなかったが、司令は笑顔だった。

 最大の問題は内戦当事者の断罪だった。決まったのは、外国人判事を含む「特別法廷」で治安部隊、FARCの双方の要員を裁くこと。内戦中に人道犯罪、虐殺、強姦などの戦争犯罪に関与したことを一定期間内に自発的に申し出た者には、禁錮5~8年の実刑が適用される。希望者は労働奉仕ができ、職業訓練が施される。

 罪を申し出ず捜査の結果、罪が判明した者には、最高20年の実刑判決が科せられる。政治的犯罪は恩赦の対象となる。

 FARC司令部要員ら幹部たちは、必ずしも処罰の対象にならない。FARC要員は和平合意調印後60日以内に武装解除のうえ武器を差し出す。

 FARCは政治組織に移行する。それを政府は支援する。

 玖米関係と並びラ米で最古の冷戦状況だったコロンビア内戦は、玖米国交正常化に続いて集結することになった。クーバが和平交渉の場となったことは象徴的だった。

 コロンビア国内には、アルバロ・ウリーベ前大統領に代表される大地主、準軍部隊、地方政治家ら、和平に反対する極右勢力があり、さまざまな妨害工作をしてきた。今後も破壊活動、対人テロなどが懸念されている。

【参考文献:伊高浩昭著『コロンビア内戦  ゲリラと麻薬と殺戮と』(2003年、論創社)】
  

コロンビア大統領とFARC最高司令がハバナで会談へ

 コロンビアのフアン=マヌエル・サントス大統領は9月23日、ハバナでFARC(コロンビア革命軍)の最高指導者「ティモシェンコ」こと、ロドリゴ・ロンドーニョ司令と会談する。和平交渉の難題だった「過渡的正義」に関する合意を発表するもよう。

 大統領は当初、ハバナでフランシスコ法王立ち合いの下で、同司令と共に発表したい意向だったが、法王の日程上、困難だったため、国連総会出席の途上、ハバナ入りすることになった。

 法王は20日ハバナの革命広場でのミサで、コロンビアに対し和平交渉で失敗しないよう、また国内法と国際法に照らして適法な和平に到達するよう促している。

 23日の合意発表には、ラウール・カストロ国家評議会議長が立ち合うことになる。難題は和平後、FARC指導者らへの禁錮刑を適用するか否かだった。FARCは、半世紀に及ぶ内戦で夥しい数の人道犯罪を犯したのは政府軍・警察、その手先の極右準軍部隊だとして、そのような国家テロリズムをも裁くべきだと主張してきた。

 一方、ベネスエラのニコラース・マドゥーロ大統領は23日、カリブ海のセントクリストファー・ネヴィスの首都バステールを訪れ、同国の第32回独立記念日式典に出席し、ティモシー・ハリス首相と会談した。

 マドゥーロはこの後、ドミニカの首都ロソーを訪問し、いったん帰国してから、国連総会出席のためニューヨークに向かう。
 
 

2015年9月23日水曜日

伊高浩昭執筆「ラ米乱反射」は「グアテマラ大統領失脚」事件

◎伊高浩昭の最近の仕事(2015年8月下旬以降)

★月刊誌LATINA9月号「ラ米乱反射113回」 鶴見俊輔とメキシコ

★週刊金曜日誌8月28日号 「対キューバ国交深化は米大統領選争点に」

★講演「<アメリカ>とは何か」  9月9日、都内の経営者団体定例会合で

★週刊読書人紙9月11日号 「伊高浩昭・柳原孝敦対談-『チェ・ゲバラ』(中公新書)刊行を機に 「ゲバラの夢見た世界とは  キューバ米国・国交樹立な何を意味するか」

★月刊誌LATINA10月号(9月20日刊)

「ラ米乱反射114回」-「グアテマラ大統領が汚職事件機に失脚 支配体制が、出た釘<闇の成金勢力>」叩く」

「映画評」:チリ映画パトリシオ・グスマン監督作品「光のノスタルジア」および「真珠のボタン」=10月10日から岩波ホールで公開=

「書評」:山崎眞次著『メキシコ先住民の反乱-敗れし者たちの記録』(成文堂、3400円)

☆松枝愛書評:伊高浩昭著『チェ・ゲバラ 旅、キューバ革命、ボリビア』(中公新書、880円)

★著書刊行

7月25日 『チェ・ゲバラ 旅、キューバ革命、ボリビア』(中央公論新社中公新書、880円)

9月2日 『われらのアメリカ万華鏡』(立教大学ラ米研究所、非売品)

フランシスコ法王がキューバ訪問終え、米国入り

 フランシスコ法王は20日ハバナ、21日オルギン市でミサを執り行った後、22日、サンティアゴ郊外のクーバ守護聖母コブレの小聖堂でミサをした。

 法王は、「クーバ人は痛みと欠乏があったにも拘わらず、神への信仰を止めなかった」 と指摘、1959年元日のクーバ革命から90年代初頭まで30年余り、カトリック信者が置かれていた厳しい時期に暗に言及した。

 ラウール・カストロ国家評議会議長以下、最高幹部らはハバナ、オルギンに続き3度目のミサに出席、玖米和解を仲介した法王に最大限の感謝を表した。

 法王は、聖母コブレ小聖堂からサンティアゴ市までの約20kmを車で移動、沿道の市民たちに祝福を送り、サンティアゴ大聖堂でミサをした。

 その後、サンティアゴのアントニオ・マセオ国際空港から特別機でワシントンに向かった。機内で法王は、同行記者団に「当初メヒコのフアレス市から陸路、米国入りするつもりだったが、玖米和解が進んだため変更した」と明かした。

 法王は22日午後、ワシントンに到着、バラク・オバーマ大統領夫妻らに迎えられた。
  

2015年9月22日火曜日

ボリビアが国際司法裁判断に備え「海岸領土回復旗」掲揚へ

 オランダのハーグにある国際司法裁判所は9月24日、ボリビア政府が求めてきた太平洋岸領土回復の訴えを審理するか否かの判断を下す。ボリビアは1879年の太平洋戦争でチレに敗れ、現在のチレ・アントファガスタ州一帯を奪われ、海岸線を失った。

 同州の面積は12万km2、海岸線は400kmに及ぶ。かつては錫、現在は銅の一大産地だ。内陸国になったボリビアは以来、「海への出口」回復を悲願としてきた。

 エボ・モラレス大統領は21日、「海岸領土回復旗」を24日、全官庁および関連機関に掲げるよう命じた。この旗は地が海を意味する濃紺で、左肩にボリビア国旗と、虹色のウィパラ(先住民族旗)が並び、その周囲を国内9州を指す9個の金色の星が並ぶ。そして紺地の中央に、ひときわ大きな金色の星が一つ。これは未来の海岸領土を示す。

 一方、ぼリビアの訴えを受けて立ったチレのミチェル・バチェレー大統領は21日、上下両院議長、外相らと24日の国際司法裁判断に備えて協議した。

 国際司法裁は近年、ラ米ではニカラグア・コロンビア領海問題、ペルー・チレ領海線画定問題などで裁定を下してきた。

ベネズエラとコロンビアが国境問題で7項目の合意

  ベネスエラとコロンビアは9月21日、キトでの4カ国大統領会議で、国境問題解決のため7項目の合意に達した。

 ①召還された大使の即時帰任②国境での状況調査開始③カラカスで関係閣僚会合を23日開催④段階的正常化達成⑤互いの経済・政治・社会の在り方を尊重⑥相互に敬意を払い共生する雰囲気をつくるため友好と団結の精神醸成⑦エクアドール、ウルグアイ両国との協働継続。

 国境再開時期、長年ベネスエラに住みながらコロンビアに帰国せざるを得なくなったコロンビア人約2万人の扱い、賠償、国境地帯での物資・麻薬の密輸、暗躍するコロンビア準軍部隊の取締りなどの中心的問題は当面、閣僚会議などに委ねられるもよう。

 大統領会議終了後、ニコラース・マドゥーロVEN大統領は、仲介したラ米・カリブ諸国共同体(CELAC)と南米諸国連合(ウナスール)の機構名を挙げて謝意を表した。

 だがJM・サントスCOL大統領は、米国も加盟する米州諸国機構(OEA)の仲介を求めていた経緯から、両機構名を挙げずに、コレア、バスケス両大統領に感謝の意を伝えた。

[コロンビアのマリーア・オルギン外相は22日ボゴタで、「サントス、マドゥーロ両大統領はキトで非公式会談に臨んだ。極めて率直かつ困難な話し合いだったが、必要な会談だった」と明かした。]

ベネズエラ・コロンビア国境問題で大統領会議始まる

 エクアドール(赤道国)首都キトの大統領政庁カロンデレー宮で9月21日、ベネスエラ・コロンビア国境閉鎖問題の解決策を探るための大統領会議が始まった。

 ニコラース・マドゥーロVEN、フアン=マヌエル・サントスCOLの両当事国大統領、ラ米・カリブ諸国共同体(CELAC)輪番制議長国エクアドールのラファエル・コレア、南米諸国連合(ウナスール)輪番制議長国ウルグアイのタバレー・バスケスの両仲介役大統領の4人が会議に出席している。

 ベネスエラは8月19日、北部国境でコロンビアの極右準軍部隊(パラミリタレス)が不法行為を働いているなどの理由で一部国境を閉鎖、以来、閉鎖区間を拡大してきた。これにより、追放された約2000人を含むベネスエラ在住の2万人を超えるコロンビア人が帰国した。

 背景には、チャベス前ベネスエラ政権期からベネスエラを不安定化させるための米・コロンビア両国による準軍部隊を使った潜入工作がある。準軍部隊はコロンビア当局の暗黙の承認を受けて、石油をはじめとするベネスエラ産物資の密輸や麻薬密輸によって国境地帯で利権を築いている。

 ベネスエラの政権党国会議員が準軍部隊要員一味に自宅を襲われ、内縁の妻と共に惨殺される事件も起きており、マドゥーロ大統領は態度を硬化させていた。

 一方、サントス大統領は国境地帯で、帰国してきた同胞たちを支援しているが、国内には、大地主らの手先である準軍部隊によって土地を奪われ避難民となった600万人の貧しい元農民がいる。この大問題が「国境難民」によって現在、一時的に覆い隠されている。土地を奪われた農民の一部は、たまりかねて19日、ボゴタのコロンビア大統領政庁で抗議行動に出た。

 マドゥーロ大統領は会議に先立ち、キト大聖堂で解放者アントニオ=ホセ・デ・スクレ元帥の棺に参拝した。スクレは、解放者シモン・ボリーバルの部下で、エクアドールからペルー、ボリビアにかけてのスペイン植民地を解放に貢献した。

2015年9月21日月曜日

チリ映画「光のノスタルジア」と「真珠のボタン」を観る

 チレ映画界の名匠パトリシオ・グスマン監督(74)の「光のノスタルジア」(2010)と「真珠のボタン」(2015)を試写会で観た。

 何万光年もの遠い彼方・過去から地球に届く星の光を見る天文学者と、42年前(1973年)の軍事クーデターで殺された肉親の遺骨を探す女たちが、アタカマ砂漠で隣り合わせている。大空の星と、砂漠の砂に真実を求める人々の接点を描くのが第1作だ。

 19世紀に英国人船長に連れ去られたチレ南部パタゴニアの先住民青年と、1973年の軍事クーデターで殺され死体を海に投下された人々が海底に残した物の共通点は「ボタン」だった。第2作は、「水や海に宿る記憶」を描く。

 自然科学、地理、冷酷な史実が無理なく巧みに絡ませられている。

 これほど敬虔な気持ちにさせられる映像を創り出す監督も少ない。ラ米学徒、チレ学徒に観ることをお薦めする。

 10月10日から、東京・神田神保町の岩波ホールで公開される。

日本ラグビーの対南ア戦勝利に思う

 南アフリカが誇るラグビー代表チーム「スプリングボックス」に日本が勝った! 英国ブライトンで9月19日、W杯大会初戦、34対32で逆転勝利したのだ。これには驚愕した。

 高橋尚子の五輪マラソンと、荒川イナバウアー静香の五輪フィギュアースケートの金メダルは特別な快挙だった。だが、ラグビーのこの勝利は、パラディグマ(パラダイム)が違う。つまり異次元なのだ。

 私は30余年前、3年余りヨハネスブルクに駐在していた間中、南ア・ラガーの凄さに目を見張らされていた。当時、最も厳しい状態にあった人種隔離(アパルトヘイト)体制の守護神のような存在に映った。

 虐げられていた多数派で貧しい痩せた黒人のスポーツはサッカーだった。「白人のラグビー」と「黒人のサッカー」、これも、スポーツ界のアパルトヘイト現象だった。

 今大会前にも、黒人選手を加えるか否かでもめたと聞く。この辺りに、南ア・ラグビーの弱さがある。

 私は現役記者時代、五輪大会2回、サッカーW杯大会2回、柔道、バレーボールなどの世界選手権、ワールドカップ、プロボクシング世界選手権試合など、さまざまなスポーツ競技を取材した。

 「スポーツのわからない外信記者は駄目、国際情勢のわからないスポーツ記者は駄目」と見なされていた時代だ。私にとって、スポーツは国際情勢の一部だった。

 いま、40年に及んだスポーツ取材を振り返ってみて、今回の日本ラグビーの勝利ほどの驚きは味わったことがないのを確認した。1968年のメヒコ五輪サッカーの3位決定戦があったアステカ競技場の記者席に私はいた。あの時の銅メダルの驚きも、今回のラグビーの勝利の驚きに及ばない。

 日本ラグビーチームは国際多人種チームであり、文化的混血選手団だ。オコエ、ダルビッシュ、室伏を挙げるまでもなく、優れた肉体的混血選手も増えている。彼らはダブルであり、トゥリプレである。球技も文化的混血によって力は何倍にもなる。

 日本の国会も人種混交、文化的混血が進めば、視野が国際的となり思慮深くなって、憲法を蹂躙するような議員らの居場所はなくなるだろう。


ローマ法王がキューバ人にイデオロギーを離れた思考促す

 フランシスコ法王は9月20日、ハバナの革命広場で1時間あまりミサを執り行い、「神への勤行は決してイデオロギー的なものではない。思想のためでなく、人々のためのものだからだ」と述べ、革命イデオロギーと反社会主義イデオロギーが交錯するクーバ社会に、イデオロギーを離れて思考する試みを促した。

 法王はまた、2012年からハバナで続けられてきたコロンビア政府とゲリラFARC(コロンビア革命軍)との和平交渉への支持を表明し、コロンビアに和解を求めた。

 ミサには30万人が参加、ラ米諸国や米国から駆けつけた信者も少なからずいた。招待席3500席が用意され、最前列をラウール・カストロ国家評議会議長、クリスティーナ・フェルナンデス亜国大統領、バレーラ・パナマ大統領夫人ロレーナ、クーバ政府要人らが占めた。JCバレーラ大統領は先に訪玖したばかり。

 革命広場には、ミサの時間を除き、キリストを讃えるアフロクバーノ調の曲と合唱隊の歌が流れていた。

 法王は、ラウールに向かって、対米国交正常化実現への努力と、コロンビア和平支援を感謝した。革命広場には「法王は希望を運んできた」と書かれたプラカードが見られた。祭壇の右手彼方の内務省建物の壁面には、おなじみのチェ・ゲバラの鉄枠肖像があって、「宗教と革命の均衡」を演出する役割を担った。

 ミサを終えた法王は、ハバナ市内の邸宅にフィデル・カストロ前議長を訪れ40分間、国際情勢や環境問題について会談した。その後、革命広場の背後にある革命宮殿(政庁・共産党本部)でラウール議長と約1時間会談した。

 次いで法王は、旧市街にあるハバナ大聖堂で儀式を行ない、若者たちとの会合に臨んだ。フェルナンデス亜国大統領は、フィデルを邸宅に訪ねた後、帰国の途に就いた。