ジュネーブの国連人権理事会は3月28日、パラグアイ政府に対し、昨年6月15日に同国クルグアティで起きた農民11人虐殺事件の真相解明と、この事件を受けて、改革派のフェルナンド・ルーゴ大統領が解任された弾劾事件の経緯の調査を勧告した。
農民虐殺事件の背後には、農民たちに所有地の一部を占拠された大地主がいると見られている。同事件では出動した警官隊のなかの6人も死亡したが、政府は警官6人の死因だけを調査してきた。この事件の直後、保守・右翼勢力が多数派の国会は、ルーゴ大統領を大急ぎで弾劾・解任し、保守派の副大統領フェデリコ・フランコを大統領に昇格させた。
解任劇は手続き上も問題があり、政権奪回を狙うコロラード党をはじめとする保守・右翼勢力の陰謀と見なされている。ルーゴ解任に怒ったブラジル、アルゼンチン、ウルグアイは、パラグアイの南部共同市場(メルコスール)加盟資格を凍結した。パラグアイ大統領選挙は4月21日実施の予定で、この選挙により政情が正常化すれば、加盟資格凍結は解除される。
人権理事会はまたフランコ政権に対し、農民・先住民・人権活動家への迫害・拷問・殺傷を止めるよう勧告した。理事会は、大地主らがつくる用心棒組織「市民安全住民委員会」による拉致・拷問・殺傷事件を指摘し、政府に同「委員会」の取り締まりを求めた。
最近、ストロエスネル独裁時代に殺害された政治運動家らの遺体が発見され、そのなかに政治指導者アグスティン・ゴイブルと見られる遺体もあった。理事会は政府に、発見されたすべての遺体の身元の調査を開始するよう勧告した。
理事会はルーゴ前大統領らを証人に招き事情聴取して報告書を作成し、パラグアイ政府に勧告するに至った。