2017年5月7日日曜日

 ローマ法王フランシスコがベネズエラに「真摯な対話」を求め、「不信と絶望に負けてはならない」と訴える。チリも話し合い解決支持。政府系・反政府系両派の女性が行進したカラカスでは、反政府武装組織を摘発。

 ローマ法王フランシスコは、ベネスエラの政府と反政府勢力に向けて、「真摯な対話の橋を架け、到達した合意を完遂する意志があれば、ベネスエラが直面している難題の解決は可能となる」と、書簡で訴えた。ベネスエラ司教会議が5月6日、明らかにした。

 法王は書簡で、「ベネスエラ情勢を憂慮しつつ見守っている。最近の衝突と暴力に胸が痛む」と表明。「双方が不信と絶望に打ち負かされないよう望む」と呼び掛けた。ベネスエラ司教会議は保守的で、反政府勢力寄りの姿勢が目立っているが、法王は中立の立場で書簡を書いている。

 スリア州政府は6日、州内ロサリオデペルハー市で市の施設やウーゴ・チャベス像が破壊されたことについて犯人を追及すると表明した。未確認情報では、容疑者14人が逮捕されている。州政府は、州内の彫刻家にチャベス像制作コンクールへの参加を求めている。1位の作品を、像が破壊された公園に設置する方針。

 政府は6日、首都カラカスで活動していた武装犯罪組織4団体を摘発、要員を逮捕し、さまざまな武器類を押収したと発表した。これらの組織は反政府勢力の側で、破壊活動や殺傷に関与した疑いがある。

 カラカスでは6日、政府側と反政府側の女性がそれあぞれ別々に大挙して行進した。赤シャツ姿の目立つ政府側は、「死に反対、平和に賛成」を叫び、白シャツ姿の反政府側は「抑圧反対」を訴えた。

 反政府側NGO「市民による安保・防衛・国軍規制」は、国軍の一翼を担うボリバリアーナ国家警備隊(GNB)の士官ら85人が、反政府勢力による街頭行動を規制する上官命令を拒否、逮捕されていると表明している。だが未確認情報。

 一方、エルネスト・サンペール元コロンビア大統領(前ウナスール事務局長)は5日、一定期間内の地方選挙と大統領選挙実施、それに備えた政党活動開始、国会の権限回復、の3点を打開策としてベネスエラに要請。「暴力を止めよう。過激主義はベネスエラを救わない」と反政府側に訴えた。

 ドナルド・トランプ米大統領は5日、ペルーのPPクチンスキ(PPK)大統領と電話で会談、「ベネスエラ問題に米秘は協働して対処する」と明らかにした。トランプはラ米首脳の中で、英語が堪能なPPKをワシントンに最初に招き、会談している。

 だがラ米では、PPKは亜国のマウリシオ・マクリ大統領に次ぐ保守・右翼色の濃い首脳と位置付けられており、そのうえPPKはベネスエラ駐在大使を引き揚げている。現状ではベネスエラが「米秘協働」に影響される可能性は極めて乏しい。

 チレのエラルド・ムニョス外相は5日ワシントンで、レックス・ティラーソン米国務長官と会談。その後、記者団に「ベネスエラ問題は交渉による解決を望む」と語った。ラ米もベネスエラ情勢をめぐって強硬派、穏健派、マドゥーロ政権支持派に分かれている。
  

2017年5月6日土曜日

 ベネズエラ情勢:制憲議会(ANC)選挙の準備過程進む。カラボボ州で反政府破壊活動関与の犯罪45組織を特定、軍事・刑事法廷送りへ。米政府は反政府野党連合MUDを厚遇。政府は「野党外交」取締へ▼ブエノスアイレス市がアスルドゥイ像撤去へ▼コレア赤道国大統領がキューバ訪問

 ベネスエラのネストル・レベロール内相は5月5日、カラボボ州内で反政府勢力と連携・連動して暗躍する「組織犯罪集団45団体を特定した。逮捕状を執行する」と発表。武器不法所持、殺傷、破壊活動、略奪、暴行などの容疑で「刑事法廷と軍事法廷で裁く」と述べた。

 スリア州ロサリオデペルハー市では、広場にあった故ウーゴ・チャベス前大統領の銅像が、反政府派の若者たちによって倒され、破壊され、燃やされた。私刑さながらの光景で、破壊された像は遺体のように路上に横たわった。

 5日には、負傷していた若者2人が病院で死亡。一連の反政府行動での死者は37人に達した。政府と、保守・右翼野党連合MUDの双方は6日、カラカスでそれぞれ、支持派の女性を動員して行進する。相互に「対抗行進」(コントゥラ・マルチャ)となる。

 制憲議会(ANC)担当のエリーアス・ハウア教育相は4日、大統領政庁(ミラフローレス宮)で、全国のコムーナ(コミューン)評議会の代表者たちと会合。ANC議員候補擁立、改憲条項草案策定などについて話し合った。

 ハウアは8日には、MUD諸党代表との会合を予定しているが、MUDからの回答はない。来週にかけてハウアは、州知事、市長、宗派、大学学長、大学生、先住民、労農、経営者などの代表たちとの会合も予定している。国内の各階層・職能分野と広く意見を交換したうえで、ANC議員選挙を実施するためだ。

 ララ州知事ヘンリー・ファルコン(MUD)は5日、ハウアとの会合に出席しないと逸早く表明した。ハウアは、「国内右翼勢力や米右翼はベネスエラが、あたかもリビアやシリアのような内戦状態にあるかのように国際世論に印象づけようとしてきた」と非難した。デルシー・ロドリゲス外相は、MUDに「暴力を止め、(ハウアとの)ANC会合に参加せよ」と呼び掛けた。

 同外相は、フリオ・ボルヘス国会議長が前日ワシントンで、米州諸国機構(OEA)のルイス・アルマグロ事務総長に会い、マドゥーロVEN政権が通告したOEA離脱決定を覆すよう、国会決議を添えて要請したことに関し、外交は政府の権限であり、ボルヘスを越権行為により法廷で処分する、と語った。外相は、ボルヘスはアルマグロと組んで、ベネスエラへの外国の介入を促進している、と糾弾した。

 アルマグロ(前ウルグアイ外相)の上司だったホセ・ムヒーカ前大統領は4日モンテビデーオで、「ベネスエラ情勢の反理性的過激化は右翼に利し、米国にトランプ政権がある今、極めて危険だ。ラ米人にとり特に危険なのは内政干渉という爆弾投下であり、アルマグロの行為はベネスエラのみならずラ米全体にとって危険だ」と、厳しく指摘した。

 国会議長ボルヘスは5日ワシントンで、ベネスエラ政権に厳しいラ米・カリブ諸国のOEA駐在大使たちと会合。続いてホワイトハウス(米大統領政庁)でマイク・ペンス副大統領、ハーバート・マクマスター安保担当大統領補佐官とOEA離脱阻止をめぐって会談した。米政府のこの厚遇ぶりは、米国とMUDの政治的癒着を象徴している。

 訪米中のエラルド・ムニョス智外相は5日、アルマグロと会談、「政治・外交交渉による事態打開を支持する」と伝えた。事務総長が固執する反マドゥーロ強硬路線とは距離を置く構えを示すものだ。

 OEAはベネスエラ問題だけを話し合う特別外相会議を22日開催する見通し。アルマグロは、ベネスエラ国会の離脱阻止要請を議題にしたい構えだ。これとは別にOEAの定例外相会合が6月20~21日、メヒコで開催される。

▼ラ米短信   ◎ブエノスアイレス市議会がアスルドゥイ像撤去を決定

 BsAs市議会は5月4日、大統領政庁(カサ・ロサーダ)裏に建つ、ボリビアと亜国北部独立の女性英雄フアーナ・アスルドゥイが独立戦争で戦う姿を描いたボリビア政府制作の銅像を撤去することを決めた。

 この銅像は、ボリビアのエボ・モラレス大統領から贈られたもので、2015年6月、当時のクリスティーナ・フェルナンデス亜国大統領によって除幕式が挙行された。

 政権がラ米右翼勢力の旗頭マウリシオ・マクリ大統領の手に移ったため、政権の史観や好みに合わない記念物は排除されることになる。

▼ラ米短信   ◎エクアドール大統領がフィデル墓参

 赤道国のラファエル・コレア大統領は24日の任期切れを前に3日、クーバのサンティアゴ市に到着、市内の聖母エフィフェニア墓地にあるホセ・マルティ廟とフィデル・カストロの墓に4日参拝。「2人は世界史に名を残したラ米の巨人だった」と述べた。

 コレアはハバナに移動、ラウール・カストロ国家評議会議長からホセ・マルティ勲章を授与された。また国立ハバナ大学から名誉博士号を授与された。 

2017年5月5日金曜日

 ロシアのロスネフト社がキューバに石油を供給。トランプ政権への鞘当てか▼ベネズエラ情勢: 反政府勢力による破壊活動激化で、カラボボ州に軍事法廷復活。政府は野党連合MUDに制憲議会選挙参加を呼び掛け

  露国営石油ロスネフト社は5月3日、クーバに25万トンの石油を輸出することで合意し、10日に最初の24万9000bが到着する、と発表した。その内訳は原油とディーゼル。総量25万トンをいつまでに輸出するのかや代金の額などは明らかにされていない。

 クーバはベネスエラから優遇条件で原油を輸入していたが、同国経済の悪化で供給量が半減、エネルギー事情が悪化、経済成長も昨年、マイナスに転じた。

 ラウール・カストロ議長は昨年7月から、プーチン政権に優遇条件での原油供給を求めていた。25万トンと量的には大したことはないにせよ、ここへきて露社が輸出に踏み切ったのは、関係が悪化しているトランプ米政権への牽制策と言える。

 ベネスエラ国営石油PDVSA(ペデベサ)は昨年、ロシアから借款を受ける際、担保として、同社所有の在米製油所CITGOの株の49・9%をロシアに渡した。これも米政府の神経を苛立たせた。

 ロシアは4月には、先にウラカン(ハリケーン)被害6300万dの出たクーバに、復興資金として150万dを贈っている。

★ベネスエラ情勢   カラボボ州で軍事法廷復活

 ボリバリアーナ国家警備隊(GNB)のアントニオ・ベナビデス長官は5月4日、武装決起、治安部隊への襲撃、略奪、破壊活動に関与した43人を逮捕、裁判を軍事法廷に委ねる、と発表した。

 ニコラース・マドゥーロ大統領は4月17日、騒擾状態とゴルペ(クーデター)を未然に防ぐための「サモーラ文民・軍人合同計画」(プラン・サモーラ)を発動した。この計画には重大犯罪者を対象とする軍事法廷活用が含まれている。ネストル・レベロール内相も、カラボボ州で武装蜂起があった、との判断を示している。

 検察庁は、4月初めから4日朝までの反政府勢力の抗議行動および暴動で、死者35人、負傷者717人が出た、と発表した。死者はカラカス首都圏、カラボボ州が多い。

 アンソアテギ州にある地域工科大学では4日、学生会を開いていた学生会長フアン・ロペス(23)が、侵入した2人組の殺し屋から至近距離で銃撃され即死した。他の4人も重軽傷を負った。ロペスは政府支持派であり、警察は反政府勢力が殺し屋を雇ったとみて捜査中。

 刑務所管理相は、検事総長が3日「当局の実力過剰行使」に触れたことに関し、暴力、襲撃、破壊活動を続けている反政府暴徒のことをなぜ指摘しないのか、と批判した。電力相は5月になってから鉄塔破壊を試みた男3人が感電死した、と明らかにした。

 政府は、一連の暴動で破壊され放火され略奪された店舗に4日、総額110億ボリーバルの復興手当金を支給した。

 マドゥーロ大統領が政令で打ち出した制憲議会(ANC)議員選挙について、その担当官エリーアス・ハウア教育相は4日、ANCおよび選挙の説明会に出席するよう、保守・右翼野党連合MUDに呼び掛けた。

 MUDの顔、フリオ・ボルヘス国会議長は4日ワシントンの米州諸国機構(OEA)本部でルイス・アルマグロ事務総長に会い、ベネスエラのOEA脱退を認めないとする国会決議の文書を手渡した。

 ムヒーカ・ウルグアイ前政権の外相だったアルマグロは反マドゥーロの急先鋒で、ムヒーカ前大統領から絶縁されている。バスケス現ウルグイア政権の政権党連合「拡大戦線」(FA)に属する左翼政党「民族解放運動トゥパマロス」(MLN-T)は4日、アルマグロをベネスエラ政変誘発の陰謀に加担していると糾弾した。

 クーバ系右翼の共和党議員ら米連邦議会議員十数人は4日、ベネスエラ情勢を国連安保理で話し合うよう、トランプ政権に要請した。

 デルシー・ロドリゲスVEN外相は4日、コロンビアのマリーア・オルギン外相が前日、ANC開設がベネスエラ問題の解決に寄与するとは思わないと発言したことに関し、内政干渉として一蹴。「組織的に人権蹂躙を続けてきたコロンビア支配勢力にはなおさら、他国に干渉する倫理的資格はない」と扱き下ろした。

 だがコロンビアおよび亜PAR伯CR・HON・GUA墨の8カ国政府は4日、VEN政府に「過剰警備をやめ人権を尊重するよう」呼び掛けた。反政府派暴徒による破壊活動や治安部隊襲撃には触れていない。デルシーの激しい反撃を招くのは必至だ。

 レックス・ティラーソン米国務長官は4日、欧州諸国と協働してベネスエラ問題に対処したい、と述べた。マドウーロ政権はMUDとの対話実現のための回路として、従来からの南米諸国連合(ウナスール)の対話仲介団に、ラ米・カリブ諸国連合(CELAC)の対話促進団4カ国をこのほど加えた。 

2017年5月4日木曜日

 ベネズエラ大統領が制憲議会選挙実施決定を告知。政府・野党MUD間の対話促進国団にエル・サルバドールなどCELAC4カ国決まる▼プエルト・リコが財政破綻を宣言▼パナマ運河第3閘門式水路を旅客船が初の通航

 ベネスエラのニコラース・マドゥーロ大統領は5月3日、政令で数週間以内に制憲議会(ANC)議員選挙を実施する、と告知した。大統領はチャビスタ(政府支持派)に対し、棄権者が出ないよう組織を開始するよう呼び掛けた。

 保守・右翼野党連合MUDを中核とする反政府勢力に対しては、「改定憲法が将来の選挙の基盤になる。多数派を自認する野党は選挙実施を要求しているが、ANC議員候補を立て、多数派であることを示せ」と促した。

 マドゥーロはさらに、「チャベス派はANCで、2015年の釘(国会議員選挙での惨敗)を抜き、ボリバリアーナ勝利の道を復活させる機会を得る」と強調。「ミシオネス(各種社会政策)を廃止できないよう憲法に盛り込む。改憲で暴力か平和かを選ぶことができる」と述べた。

 国家選挙理事会(CNE)のティビサイ・ルセーナ議長は政令を受けて、「ANC選挙で難題解決のための国民対話の場ができる。きょう始まった改憲への新しい過程は国を安寧に導き、誰にも幸いする」と指摘した。

 デルシー・ロドリゲス外相は、前日のCELAC外相会議でベネスエラ対話促進協力国にエル・サルバドール(CELAC議長国)、ドミニカ共和国(同前議長国)、ニカラグア、セントヴィンセント&グラナディーンの4カ国が決まった、と発表した。

 反政府勢力の抗議行動と、その前衛に位置する若者たちの別働隊の行動は3日も首都チャカオ区アルタミーラを中心に展開され、治安部隊ともみ合った。一人が死亡、火炎瓶を受けた別働隊の若者1人を含む約170人が負傷した。

 別働隊は投石や火炎瓶で治安部隊を攻撃した。野党所属のチャカオ区長は区警察に別働隊を規制させず、別働隊の背後を護衛に守られて行進した。それがビデオで流された。

 別働隊は治安部隊を攻撃して挑発、規制される様子を「弾圧」としてビデオに収め、内外にユーチューブで流す戦術をとっている。これにより国際社会での反マドゥーロ政権世論を醸成、打倒しようという戦略だ。

 4月初めから5月3日までの街頭破壊行動での死者は34人、負傷者は700人に上る。一部には治安部隊の行き過ぎた規制行動も指摘されるが、ルイサ・オルテガ検事総長は3日、米WSJ紙によるインタビューで、「国家が遵法でないと、市民に合法行動を要求できない」と語った。

 ルイス・モッタ電力相は、反政府地下勢力による送電塔など電力施設への破壊活動が起きていることに関し、「改憲で電力施設破壊者への刑罰を厳しくすることができる」と表明した。

 一方、亜国人左翼でパルラスール(南部共同市場加盟国議会)議員のオスカル・ラボルテは、4月末にワシントンでマクリ(亜国大統領)とトランプが会談したことについて、トランプは亜伯両国軍を使ってベネスエラを攻めたい考えではないか、と述べた。

▼ラ米短信    ◎プエルト・リコが財政破綻

 米植民地(米自由連合州)プエルト・リコ(PR)のリカルド・ロセジョー知事は5月3日、負債730億ドルを抱え財政が破綻した、と発表した。返済期限は2日で切れていた。

 PRは6月11日、PRを米国の正式な一州にするか、独立するかの島民投票実施を予定している。だが財政破綻で実施が危ぶまれている。

▼ラ米短信    ◎パナマ運河第3水路を初の旅客船が通航

 パナマ運河庁(ACP)は5月2日、世界最大級のコンテナ運搬船コスコ(1万3425個積載)がパナマ運河第3閘門式水路を太平洋側からカリブ海へと通航した、と明らかにした。

 また4月29日には、米超大型旅客船デズニーワンダー号(乗客2700人)が第3水路を、旅客船として初めて通航した。米フロリダ州カニャベラル港から加州サンディエゴ港までの2週間の航海途上だった。

 第3水路は去年6月26日に営業が開始され、一日平均5・9隻が通航している。旅客船通航は4月1日から通航受付が始まっていた。10月からの18年度には超大型旅客船18隻が通航予約済みという。

2017年5月3日水曜日

 ベネズエラ国軍がマドゥーロ大統領の制憲議会選挙提案を支持。反政府野党連合MUDはジレンマに陥る。CELAC外相会議は対話路線支持。「域内の問題話し合うのに米国は不要」とキューバ外相

 ベネスエラのニコラース・マドゥーロ大統領は5月2日、制憲議会議員選挙を3日告知すると発表した。国軍(FANB)は、ブラディミロ・パドゥリーノ国防相名で、「外部勢力による内政干渉、反政府勢力の政治的不寛容、反政府勢力過激派による暴力・蛮行・不安定化行動を前にして、広範な世論を喚起する名案だ」と、支持を表明した。

 反政府保守・右翼政党連合MUDは、大統領提案を前にディレンマに陥っている。提案を受け入れれば、街頭行動による「騒擾状態」演出で政権打倒に持ち込む戦略が中断を余儀なくされる。拒否し選挙を蹴れば、2005年12月の国会議員選挙時にボイコットした結果、国会全議席をチャベス派に奪われた苦い経験の再来となる。

 逆に見れば、どう転んでもマドゥーロ政権に有利な選挙提案であり、ここに政権側の狙いがある。米国務省の西半球担当次官補マイクル・フィッツパトリックは、「ベネスエラはまたも試合中に規則を替えた」と反応した。MUDと連携してマドゥーロ政権を倒したい国務省にも、マドゥーロ提案は「意外な隠し球」だったようだ。

 MUD幹部のヘスース・トレアルバは、、「MUDには、闘争続行のために十分な内外からの支援がある」と述べ、資金が潤沢なことを臭わせた。

 2日もMUDの別働隊が破壊活動を繰り返した。オンブズマンのタレク・サアブは、カラボボ州バレンシアでオンブズマン事務所が略奪され放火されたと発表、犯人の若者を映したビデオ映像を公開した。これで破壊されたオンブズマン事務所は全国で8カ所となった。

 ララ州では、MUD派暴徒が国営石油PDVSAの油送車一台に放火、炎上させた。また首都カラカス市チャカオ区では、警官一人がMUD派暴徒に暴行され、私刑に遭う前に救出された。

 一方、サンサルバドールでは2日、ラ米・カリブ諸国共同体(CELAC)の緊急外相会議が開かれた。エル・サルバドール(ES)のサンルバドール・サンチェス=セレーン大統領は開会演説で、「合法政権下にあるベネスエラが早期に安寧・安定を回復するために、兄弟諸国として連帯しつつ努力を払おう。ベネスエラ憲法の枠内で対話による解決を図るのが正しい道だ」と呼び掛けた。

 会議は非公開だった。今会議開催を要請したベネスエラのデルシー・ロドリゲス外相は、閉会後の記者会見で、「対話と安寧のために建設的、有益、協力的な会合だった。対話過程に参加するよう要請した国々はみな受諾してくれた」と語った。

 さらに質問に答える形で、「反政府勢力(野党)の一部は叛乱を目指している」と糾弾。「ベネスエラはワシントンの命令下に置かれることなどまっぴらごめんだ。アルマグロ(事務総長)のOEA(米州諸国機構)は国際法違反だ」と非難した。

 ベネスエラの同盟国クーバのブルーノ・ロドリゲス外相は、「討議は建設的で対話を支持し、ベネスエラ人民への主権と独立への支持が際立った」と指摘。「CELACは、OEAと異なり、我々独自の思想、精神、文化に彩られている。LAC(ラ米・カリブ)域内の問題を話し合うのに、域外の大国(米国・カナダ)を加える必要はない」と、米加両国が加盟しているOEAを批判した。

 ボリビアのフェルナンド・ウアンクニ外相は、「ベネスエラ問題は、外部からの押し付けや政治的利害抜きで対処せねばならない」と強調、OEAの内政干渉を批判した。

 しかし、内政干渉に固執する伯PAR秘墨のラ米4カ国と、ベネスエラから援助を受けていないカリブ英連邦系のTT・バハマ・バルバドスの3国、計7カ国は外相も代理も派遣せず、欠席した。全会一致制をとるCELACの今外相会議は、共同声明を策定できずに閉会した。

 議長を務めたウーゴ・マルティネスES外相は、「声明は出せなかったが、問題の深刻さを軽減して、今月後半ドミニカ共和国(RD)で開かれる別のCELAC会合に臨むことができる」と述べた。

2017年5月2日火曜日

 ベネズエラのN・マドゥーロ大統領が制憲議会を開設し「人民憲法」制定と発表。デルシー外相がラ米8カ国を内政干渉で糾弾。野党指導者夫人が「反政府行動は無政府主義と蛮行に堕した」と嘆く。サンサルバドールで2日CELAC外相会議開催へ

 ベネスエラのニコラース・マドゥーロ大統領は5月1日、首都カラカスでの「国際労働者の日」の政府支持派労働者大集会で演説、「平和を確立し、ファシストクーデターの陰謀進行を打ち破るための手段が他にないため、労働者階級は人民制憲議会を開設し、独自性のある新しい憲法を制定する」と強調、少なくとも500人の制憲議会議員を選出する選挙を実施すると発表した。

 大統領は、故ウーゴ・チャベス前大統領が1999年に制定した現行のボリバリアーナ憲法を「強化するため」と説明した。これに対し、メイデー行進を首都で別途実施した反政府勢力の指導部である、保守・右翼野党連合MUDは猛反発し、徹底抵抗する方針を打ち出した。MUDは、18年末に予定される次期大統領選挙の早期繰り上げ実施を政府に要求している。

  しかしエリーアス・ハウア大統領制憲議会委員会委員長(教育相、社会開発・ミシオネス革命担当副大統領)は2日、野党を含む全政党に制憲議会開設とその選挙に関し説明会を開くよう命じられた、と発表した。ハウア委員長は、現行憲法には「クーデター政権による憲法廃止を防ぐ条項がない」として、同条項を盛り込むなど憲法強化が必要との考えを示した。

 ローマ法王フランシスコは4月29日、ベネスエラの対話確立のための交渉はMUDが分裂したため成功しなかったと発言、ローマカトリックが主流のベネスエラをはじめとするラ米全域に衝撃を与えた。MUDは1日、法王への公開書簡を発表、「我々は分裂しておらず団結している」と前置きし、「我々が受け入れる対話は選挙だけ」と念を押した。

 法王は1日、発言の影響の大きさに鑑みベネスエラ情勢に関しローマであらためて発言、「ベネスエラ政府と同国社会の全構成者に対し、暴力が極限に達するのを避け、交渉による解決を図るよう呼び掛ける」と述べた。マドゥーロ大統領は、「法王は政治対話醸成のため最大の努力を払っており、敬意を表したい」と謝意を表した。

 2度目の法王発言にMUDは反応していないが、コロンビア外務省の主唱で亜URU伯PAR智コロ秘CRのラ米8カ国政府が賛同。併せて、「人権尊重、暴力行使停止、法治国家回復、<政治囚>釈放、国会機能回復、選挙日程発表」を呼び掛けた。

 これを受けてデルシー・ロドリゲスVEN外相は1日、「非合憲政権ブラジルおよび他の7カ国は、国際法を破り、ゴルペ(クーデター)を奨励する重大な過ちを犯した」と8カ国政府を糾弾した。

 ニカラグアのダニエル・オルテガ大統領は「ベネスエラを不安定化させている右翼勢力」を非難、マドゥーロ政権断固支持を表明。エル・サルバドールのサルバドール・サンチェス=セレーン大統領もマドゥーロ政権支持を打ち出した。同国の首都サンサルバドールでは2日、ベネスエラ情勢をめぐるCELAC(ラ米・カリブ諸国共同体)の緊急外相会議開催が予定されている。

 ハバナ革命広場での労働者100万人行進で演説したクーバ労働者中央連盟(CTC)のウリーセス・ギラルテ書記長も、マドゥーロ政権無条件支持を表明、ベネスエラへの内政干渉を続ける米州諸国機構(OEA)と「域内反動勢力」を糾弾した。

 マドゥーロ大統領は4月30日、4年間の施政を振り返って、チャベス前政権の公約を遂行してきたと強調、住宅160万戸を建設したと成果を自賛した。

 4月初めから激化している反政府勢力による抗議行動と、その別働隊による破壊活動については、「街頭暴動を凌いで秩序と安寧を維持してきた」と述べながらも、「右翼による蛮行とテロリズムは社会を混沌とさせた。彼らによる4月の行動は待ち伏せの暴力行為であり、ベネスエラを反革命ファシズムに陥れるための策謀だった」と厳しく非難した。

 さらに「文民と軍人の団結で祖国と憲法を守ろう。平和への権利と人命尊重を考えつつ省察しよう」と述べ、「OEA脱退決定はアルマグロ(OEA事務総長)への強烈なボディーブローになった」と指摘。「ベネスエラのOEAからの解放は、<我らのアメリカ>にとり悲劇である旧態依然たるOEAの終焉の第一歩となるだろう」と語った。

 大統領は、最低賃金と食糧購入券(計14万8000b=ボリーバル)を5月1日から60%引き上げ、20万bにすると発表した。闇ドル市場で20万bは約50ドル。年金も連動して引き上げられた。財界や非政府系労連は、生産増大を伴わない賃上げはインフレを招く、と批判している。

 一方、MUD幹部ヘンリー・ラモス前国会議長の妻ディアナ・ダゴスティーノが父親フランコ・ダゴスティーノと交わした電話通話が29日暴露された。ディアナは、「反政府抗議行動は無政府主義、蛮行に堕落した。VP(人民意志)党員が特にひどい。ベネスエラを炎上させよたいかのようだ。PJ(まず正義を)も同じだ。カプリーレス(PJ党首)は(2度大統領選挙に敗れて)失うものが何もない。彼も街を燃やそうとしている」と嘆いている。

 ボリビアのエボ・モラレス大統領は29日、「OEAによる反ベネスエラ決議は反ボリビアでもある。米国によるベネスエラ侵略にアルマグロは加担するな」と事務総長に警告した。モラレスはベネスエラが一大産油国であるのを念頭に、「ラ米での過去のゴルペは、人民蜂起、左翼政権、天然資源保護のある国々で決行された」と指摘した。ボリビアも原油、天然ガス、金、亜鉛、リチウムなど地下資源が豊かだ。 

2017年5月1日月曜日

 アルゼンチン軍政(1976~83)に肉親を奪われた「五月広場の母たち」が抗議行動開始40周年を迎え、ブエノスアイレスで記念行事挙行

 アルヘンティーナ(亜国)軍政期(1976~83)に少なくとも3万2000人が殺害された。その多くは拉致されたまま「行方不明」になり、遺体・遺骨は見つかっていない。この恐るべき人道犯罪には、当時のニクソン米政権や南米南部の軍政諸国も関与した。

 この国家テロリズムを果敢に追及してきた勇気ある市民団体が亜国に幾つかある。代表的な組織(NGO)は「五月広場の母たちの会」、「五月広場の母たちの会-創設者路線」、「五月広場の祖母たちの会」である。

 肉親、とりわけ娘や息子の命を軍政に奪われた母たちは1977年4月30日、ブエノスアイレス市中心街の大統領政庁(カサ・ロサーダ)前の「五月広場」で軍政に「息子・娘を返せ」と叫び、抗議行動を開始した。それから丸40年が過ぎた。

 軍政は、母親たちの集会にスパイを送り込み逮捕、航空機に乗せて、生きたままラ・プラタ川に投棄した。後に2人の母親の遺体が河口近くの岸に流れ着き、軍政の蛮行が明るみに出る。

 彼女たちは、父、兄弟姉妹、夫、息子・娘、孫らを失った。抗議すれば命を奪われたり弾圧されたりした。その風雪の40年を深い皺に刻みつつ耐えてきた彼女らの生存者たちは、多くは車椅子で、支援者らとともに4月30日、五月広場を行進した。広場では、「行方不明」になったままの多くの人々の顔写真と拉致された当時の状況を書いた文字が展示された。

 「母たちの会」は、民政移管が1983年に成った後、党派性、指導部選出、政権と距離の取り方などをめぐって対立、86年に分裂した。分派したのは、無党派で、突出した指導者を持たない水平組織の「創設者路線」(ノラ・コルティーニャスら集団指導)。一方、「母の会」はエベ・デ・ボナフィニ会長の強力な指導の下、ペロン主義者色を鮮明にしてきた。

 孫を奪われた祖母たち約600人が結成した「祖母たちの会」(エステラ・デ・カルロット会長)は、この4月23日、奪われた赤子をまた一人発見した。122人目で、39歳になる女性だ。「祖母たちの会」は「創設者路線」と協働している。

 「創設者路線」指導者の一人コルティーニャスはこの日、記者団を前に、「軍政期の犠牲者は3万人余では少なすぎる。もっと多かったはずだ。軍政期の機密文書を公開せよ」と、マクリ現政権に訴えた。

 さらに、「大統領よ、間違ってはいけない。あなたたち政治家の言動は記録され歴史になる。拒絶者として歴史に名を残すことになるのだから」と、文書公開を拒否しないよう求めた。

 「母たちの会」のエベ会長は、「マクリ(大統領)よ、ヤンキー(トランプ米政権)と愚かな取引するのを止めよ。さもないと、そのうち尻に一発かまされるぞ(裏切られる)」と激しい言葉を吐き、ワシントンでトランプと会談したばかりのマクリを糾弾した。また、「(政府は)対話に応じよ。呼び鈴を決してならすな(軍政期のような連行は許さない)」と厳しく要求した。

 この日、マクリは1日繰り上げた「国際労働者の日」(メイデー)の、各労連による行事のうち、ペロン派保守派の「62労組」の集会に顔を出した。エベは、これをも批判、「彼らは(労組とは言っているが)働いていない」と遣り込めた。