2017年6月8日木曜日

★★★米南方軍がベネズエラ近海バルバドス領海で19カ国海軍合同演習「貿易風2017」を開始。ラ米・カリブ15カ国と米加英仏が参加。13日からの第2段階はTT領海で実施へ。マドゥーロ政権に軍事圧力かけるのが狙い  

 米南方軍は6月6日、ベネスエラへの軍事的圧力をかけるための「貿易風2017」という多国間軍事演習を開始した。始まった「第1段階」は6~12日、ベネスエラ北東沖約600kmのバルバドス領海で実施。続いて13~17日、「第2段階」がベネスエラの眼と鼻の先のトリゥニダーダ&トバゴ(TT)で展開される。

 南方軍はフロリダ州マイアミに司令部があり、ラ米・カリブ諸国ににらみを利かせる米州南方探題の役割を担う。カート・ティッド司令官(海軍大将)は7日、演習の目的を「カリブ海域での安全保障と、自然災害および犯罪取引に対応するため」と説明した。

 だがティッド提督は4月、米上院軍事委員会で、「<ベネスエラ危機>は地域の不安定要因となり、地域による対応を余儀なくされる」と証言、軍事介入の可能性を示唆した。ニコラース・マドゥーロ大統領のベネスエラ政権は「ティッド証言」を直ちに糾弾した。

 演習に参加しているのは、カリブ英連邦加盟12カ国のうちセントルシーアを除く11カ国、スリナム、アイチ(ハイチ)、ドミニカ共和国(RD)、メヒコのLAC(ラ米・カリブ)15カ国および米加英仏の計19カ国。LAC諸国の中には、親ベネスエラ諸国も含まれている。

 ティッド司令官は、米国務省、CIA、USAIDなどとともに、マドゥーロ政権打倒工作の「行程」を、ベネスエラ反政府勢力に指南してきた。USAIDは、反政府勢力の中核である保守・右翼野党連合MUDに活動資金も提供してきた。

 MUDは「行程表」に沿って、4月初めから70日近くベネスエラの都市部で街頭暴力戦術を展開してきた。だが「勝機」が見えないのと、マドゥーロ政権が7月30日の制憲議会(ANC)議員選挙に向けて邁進しているのに焦っている。これを観たトランプ政権と南方軍は、急遽、今演習に踏み切った。

 「第2段階」の実施現場は、ベネスエラ領海に隣接しており、ベネスエラ国軍(FANB)には緊張が走っている。南方軍には、軍事
圧力をかけて、マドゥーロ政権を支持している国軍を割り、軍事クーデターの可能性を高める狙いがある。

 だが、トランプ大統領が弾劾される可能性に直面しており、中東、北朝鮮、対中関係など難題を抱えている折から、米軍がベネスエラに直接軍事侵攻する可能性は現時点では乏しい、との見方は成り立つ。親ベネスエラ諸国を巻き込むのも得策ではない。

 しかし、だからこそ、内憂(弾劾可能性)を外患(ベネスエラ問題)排除によって打ち払いたいという危険な力学が働くこともありうるのだ。この誘惑が高じれば、極めて危険な事態となる。その場合、米軍は「有志国」を募るだろう。 

2017年6月6日火曜日

 ベネズエラ制憲議会(ANC)議員選挙は7月30日実施へ。政権党PSUVは選対本部設置。反政府野党連合MUDはボイコット

 ベネスエラ国家選挙理事会(CNE)のティビサイ・ルセーナ議長は6月4日、制憲議会(ANC)議員選挙を7月30日実施する、と発表した。全国の都市を選挙区とする地域選挙区出馬登録希望者は約2万人で、今月6~10日に選挙区有権者の3%の署名を集めなければならない。

 職能別選挙区には3万5000人余が出馬を希望。11~14日に署名を集める。ANC議員は545人で、5万5000人強が出馬を登録しており、現時点では101倍の激戦。だが、反政府勢力の中核である保守・右翼野党連合MUDはANC開設に反対しており、立候補していない。

 この選挙に備え、政権党PSUV(ペスーブ=ベネスエラ統一社会党)は、カラカス首都圏および全国各州で選挙対策本部「サモーラ200司令部」を設置している。

 ニコラース・マドゥーロ大統領は日曜定例TV番組で、反政府勢力の別働隊および前衛となって暴動を演じている若者らについて、「カプタゴーン」を使用している、と指摘した。この興奮剤はシリアで多く生産され、ISが使用していると伝えられる。

 大統領はまた、政府と対立しているルイサ・オルテガ検事総長について、「市民としては政治思想を選ぶ自由があるが、職務上はイデオロギーや政治思想を超えて真実を見極め、正義を施さねばならない」と強調した。

 首都圏チャカオ区アルタミーラで5月20日、反政府勢力別働隊による私刑で殴打され刺されて焼かれた青年オルランド・フィゲロア(21)が3日死亡した。また5月31日、ネルソン・モンカーダ判事を殺害した犯人は5日、治安部隊に包囲され自殺した。

 スペインのJL・Rサパテーロ前首相は4日、軍のラモベルデ刑務所で服役中の極右政党VP(人民意志)党首レオポルド・ロペスと面会した。デルシー・ロドリゲス外相と、首都圏リベルタドール区長ホルヘ・ロドリゲス(外相の実兄)が同伴した。

 一方、米ユナイテッド航空は3日、ヒューストンーアルバ゙ーカラカス往復週5便の運航を7月1日に打ち切る、と発表した。採算が合わないためという。既にエアカナダ、アリタリア、ルフトハンザ、アエロメヒコなど7社がVEN便を止めている。

 VENと中国は3日、マカオで開かれた会合で、合弁によるベネスエラでの重機械組立工場建設、既存バス組立工場拡張で合意した。両国間には790の合弁事業があり、総投資は620億ドル。
 

2017年6月5日月曜日

 スペイン人作家フアン・ゴイティソロ(86)がモロッコ・マラケシュで死去

 スペイン人作家フアン・ゴイティソロ(86)が6月4日、モロッコのマラケシュで死去した。小説、論集、随筆、紀行文、ジャーナリズム記事を書き、多作だった。1931年1月6日、バルセローナに生まれた。バスコとクーバの血を引く。兄ホセ=アグスティンは詩人、弟ルイスは学者である。

 フランコ独裁期の1956~69年、パリで亡命生活を送り、出版社ガリマールで文学所顧問を務めた。その職場で知り合ったモニク・ランジと78年結婚した。だが妻に死なれ、マラケシュに96年定住した。

 論集『小説の問題』(1962)、最後の小説『自国でも他国でも亡命者』(2008)などがある。オクタビオ・パス文学賞(2002)、フアン・ルルフォ・ラ米文学賞(04)、スペイン文学賞(08)、セルバンテス文学賞(14)などを受章した。

 ペリオディズモ(ジャーナリズム)に近い紀行文には、西国アルメリア市の地区を描いた『ラ・チャンカ』(1962)、『クーバ訪問記』(62)、『オスマントルコのイスタンブール』(89)、『サライェヴォ・ノート』(93)などがある。「社会派リアリズモ」路線と呼ばれた。

 1969~75年には、米国のカリフォリニア、ボストン、ニューヨークの3大学で文学を教えた。スペインのエル・パイース紙の寄稿者でもあり、露チチェン紛争、ボスニア戦争などを、同紙特派員として取材し、紀行を物にした。イスラム史・文化に造詣が深く、ジャーナリズムからの執筆依頼が多かった。

 私は、通信社時代の1998年、20世紀末企画の一環として「スペイン内戦」(1936~39)について記事を書くに際し、ゴイティソロに会うことにした。当時既に60年前の出来事だったスペイン内戦は、体験者が依然少なからず生存してはいたが、戦場は遺跡化していた。

 そこで終戦後間もなかった、ボスニア戦争を含むユーゴスラヴィア戦争の内戦的戦場を観ることにした。そこで読んだのが『サラェヴォ・ノート』(クアデルノ・デ・サラヘボ)だった。読んでから、マラケシュの自宅にいたゴイティソロにインタビュしたいと電話で伝えると、×月×日×時ごろ、サライェヴォのアテネフランスに来てほしいと言われた。

 私は、この約束を頼りに東京を出発、ウィーン経由でサライェヴォに入り、翌日、約束の日に無事インタビューをすることができた。ボスニアとクロアティアを取材してから、ウィーン経由でバルセローナに行き、スペイン内戦の傷跡を取材した。

 拙著『ボスニアからスペインへ-戦の傷跡をたどる』(2004年、論創社)は、この取材旅行をまとめたもので、ゴイティソロへのインタビューのほぼ全文を載せてある。世話になったこともあって、このオメナヘ(オマージュ)文を書いた。

 私は2011年3月、マラケシュに滞在したが、ゴイティソロと連絡をとらなかった。とれなかったのだ。日本で、東電原発大事故を伴う「東日本大震災」が発生した日だったからだ。

2017年6月4日日曜日

 今福龍太著『クレオール主義』を読む。「週刊読書人」が今福らの鼎談を特集。「週刊金曜日」は書評を掲載

 文化人類学者・今福龍太(東京外語大学教授)が『クレオール主義』を水声社から3月新装出版した。私は、「週刊金曜日」6月2日号に、「<島国全体主義>からの解放の鍵は多文化・多民族主義」と題して、書評を書いた。「島国全体主義」は私の造語である。

 限られた文字数で内容を紹介するため、私はラ米関係に的を絞った。クリオージョ、先住民族カリーベ人、ニカラグアの詩人ルベーン・ダリーオ(1867~1916)、モデルニズモ、ホセ・マルティ(1853~95)、「我らのアメリカ」、ネグリチュード運動などを本文から引っこ抜いて並べ、まとめた。全体主義の闇が狭い列島を覆おうとしている今、この本は市民に活路を与えるはずだ。そのことを書いた。金曜日誌を読んでほしい。

 「週刊読書人」5月5日号は『クレオール主義』再・新刊に際し、「ポスト・トゥルース(真実)に抗って」という鼎談を特集した。この専門紙は、新刊書の紹介はもちろんのこと、第1面から2~3ページに及ぶ対談などの特集記事が素晴らしい。明石健五編集長は特に企画熱心で、毎号のように面白い企画を読ませてくれる。

 鼎談には、今福龍太、中村隆之(大東文化大学講師)、松田法子(京都府立大学講師)が登場する。これは内容厖大で、さまざまな議論が展開されるため、全文を読まないと、鼎談の全体像は把握できない。読むのをお勧めしたい。
    

2017年6月3日土曜日

 チリ・ピノチェー軍政期の左翼大量殺害事件関与の元DINA要員106人に実刑判決▼パブロ・ネルーダ「毒殺」の真相が10月にも判明か▼ベネズエラ政府と検事総長の対立深まる。米GM社が完全撤退を発表

 チレ第1審法廷のエルナン・クリソスト判事は6月2日、ピノチェー軍政下の1975年に、当時の秘密警察、国家情報局(DINA)にチレ国内で殺された左翼119人「拉致・強制失踪」事件の被害者16人の事件に関与したとして、元DINA軍人106人(うち女性1人)に禁錮20年~541日の実刑判決を下した。刑は控訴審の判断を受けて決まる。

 殺害された119人は、共産党(PCCH)系武闘組織「革命的左翼運動」(MIR)と社会党(PSCH)の要員。軍政は、「仲間割れによる暴力と、亜国軍政当局との戦闘により亜国内で死亡した」と虚偽情報を流した。これを虚偽情報宣伝用メディアとして設立されたブラジルと亜国の週刊誌などが報じていた。同判事は2015年にも同119人事件の容疑者79人に実刑判決を下している。

 119人殺害事件は「コロンボ作戦」と呼ばれた。南米南部のブラジル、亜国、ウルグアイ、パラグアイ、チレ、ボリビアの軍政6国が米政府の後押しで結成した「コンドル作戦」の一部だった。ニクソン米政権のヘンリー・キッシンジャー国務長官は、コンドル作戦の黒幕だった。

★1973年9月のクーデターで発足したばかりのピノチェー軍政に「毒殺」された可能性が濃いノーベル文学賞詩人パブロ・ネルーダ(1904~73)の死因が10月にも公表される見通しとなった。

 ネルーダの甥ロドルフォ・レイエス=ムニョス弁護士が5月末に明らかにした。ネルーダは軍政によって首都サンティゴのサンタマリーア診療所に強制入院させられ、軍政が送り込んだ人物によって葡萄状菌を接種され死亡した可能性が浮上している。

 同弁護士は、「私は伯父が殺害された可能性を微塵も疑わない」と明言している。

◎ベネスエラ情勢

 ベネスエラのルイサ・オルテガ検事総長は6月2日ラジオ放送で、「ニコラース・マドゥーロ大統領は制憲議会開設を思い止まるべきだ」と述べた。また、12月10日実施予定の州知事・州会議員選挙を「繰り上げて早期実施すべきだ」と、国家選挙理事会(CNE)に提言した。さらに、「(政府は)検察から刑事事件捜査権を奪うつもりのようだ」と語った。

 これに対し、政権党PSUV(ベネスエラ統一社会党)の動員担当副党首ダリーオ・ビバスは、「(オルテガは)テロリズムとファシズムを支援しつつ暴力犯罪に密接に関わっている」と、「反政府勢力との関係」を指摘、「辞任すべきだ」と述べた。検察庁前には政府支持派が押し掛け、オルテガを「裏切り者」と呼び、辞任を求めた。

 反政府派大学生組織は2日、国営テレビ放送VTV本社にデモをかけた。VTV社長を兼ねるエルネスト・ビジェーガス情報相は学生代表を迎え入れ、対話。検察情報を基に街頭暴動最中の死者たちの死因を「正しく報道せよ」と迫る学生代表らに情報相は、「検察は捜査権を独占しているが、真実までは独占していない」と交わし、政府側には異なる死因判断があることを説明した。

 検察発表では、4月初めから暴力事件3390件を捜査、63人死亡、1189人負傷。「死者のうち19人は治安部隊要員が責任者」と見なしている。オンブズマン事務所は死者65人としている。またNGO「ベネスエラ社会紛争監視」(OVCS)によれば、4月1日~5月31日に全国で政治的な街頭暴力事件が計1791件あった。

 別件だが、米GM社は2日、カラボボ州バレンシア市から完全に撤退すると発表した。同市の工場で69年間、自動車を組み立ててきた。カラボボ州当局は「約束不履行」などを理由に4月18日同工場を接収、GMは提訴したが、最高裁が5月25日却下した。

 マドゥーロ大統領は、南アフリカとの鉱業開発技術協力、合弁会社設立で協定を結んだ2日、「我々にとって故ネルソン・マンデーラ(南ア大統領)は遺訓である。平等と平和を求め抵抗し闘争したアフリカ民族会議(ANC)の教訓は我々にも伝わっている」と述べた。

 
 
 

 
 
 

2017年6月2日金曜日

 ベネズエラが有志5カ国の対話醸成会合を招集。デルシー外相はメキシコでの次回外相会議で「アヨツィナパ問題」取上げると表明▼カラカスで極右が高裁判事暗殺した可能性浮上▼キューバ国会が「ベネズエラ連帯宣言」を採択▼バチェレー・チリ大統領が最後の施政報告演説 

 ベネスエラのデルシー・ロドリゲス外相は6月1日カラカスで記者会見し、国内対話醸成のためエル・サルバドール、ニカラグア、ドミニカ共和国、セントヴィンセント&グラナディーン、ウルグイアの有志5カ国の会合を招集する、と明らかにした。

 また、カリブ共同体(カリコム)が、ラ米・カリブ諸国共同体(CELAC)の枠組内で対話すべきだと提案したことについて、「国際法の原則に則った提案だ」と評価した。

 だが、「ベネスエラは、米州諸国機構(OEA)のいかなる決定をも認めない。したがって(反ベネスエラ決議採択工作をしている)アルマグロ(OEA事務総長)はOEAを破壊していることになる」と指摘した。ベネスエラの政情については、「反政府勢力が民主と憲法に反して暴力状況をつくってしまった、というのが真実だ」と強調した。

 外相は、今月21日、メヒコの保養地カンクンで開かれるOEA外相会議には出席すると31日発表したが、その会議でアヨツィナパ問題を提起する、と述べた。2014年9月26~27日、メヒコ・ゲレロ州イグアラ市一帯で起きた農村教員養成学校生43人の強制失踪事件のことで、発生後32カ月経ったが、未解決ののまま放置されている。

 「ベネスエラの人権問題」をOEAで再三批判してきたメヒコに、その痛いところを蹴り込んで逆襲する戦略だ。

 制憲議会(ANC)議員の出馬登録は1日終了したが、政府中枢部と対立するルイサ・オルテガ検事総長は同日、最高裁が大統領にANC開設を発議する権限を認めたことについて、憲法が定める国民投票権という人民の権利をないがしろにする決定、と批判した。

 これに対し、ニコラース・マドゥーロ大統領は同日、「新憲法(大幅改定憲法)の最終草案ができたら、それを国民投票にかける」と約束した。

 一方、ネストル・レベロール内相は、カラカス市内で31日殺された首都圏高裁のネルソン・モンカーダ判事(37)は「反政府右翼の殺し屋に殺害された可能性がある」と指摘した。同判事は、14年に街頭暴動事件を教唆した罪などで服役中の極右政治家レオポルド・ロペスの無罪要求を昨年却下、ロペスの有罪はこれで確定した。このため逆恨みの犯罪と見られている。

 エルネスト・ビジェーガス情報相は、社長を兼任する国営テレビVTVに出演、反政府勢力はデモの目的地をVTV本社にしており、放送局を乗っ取る戦術のようだと非難。「だが、何があろうと放送が中断されることはない」と述べた。

 タレク・エルアイサミ執権副大統領は、反政府勢力の中核MUD(保守・右翼野党連合)の代表フリオ・ロドリゲス国会議長が、米投資会社ゴールドマンサックスがベネスエラ国営石油PDVSAの債券28億ドル分の購入を決めたことを誹謗中傷したとして、「反国家的言動」として提訴する考えを示した。

 ロシアのウラディーミル・プーチン大統領はモスクワで1日、通信社10社との会見で、ベネスエラ情勢に触れ、「ベネスエラは激しい政治闘争のさなかにある。反政府勢力も政府も憲法を守り、過激主義を許してはならない」と強調した。

◎クーバ国会が「ベネスエラ連帯宣言」を採択

 社会主義クーバの人民権力全国会議(ANPP、国会に相当)は6月1日、ベネスエラ連帯宣言を採択した。ラウール・カストロ国家評議会議長(共産党第1書記)は閉会演説で「ベネスエラの合憲政権の打倒を狙う攻撃、政策、内政干渉を糾弾せねばならない。経済権益を持つ彼らは、故ウーゴ・チャベス大統領が始めたボリバリアーナ革命の継続を阻もうとしている」と、ベスエラ内外の敵対勢力を非難した。

 議長はまた、「反政府勢力の多くは、2002年のチャベス大統領打倒クーデター未遂事件及び、03年の<石油クーデター>の首謀者と同一人物だ」と指摘した。

 さらに、「ベネスエラを支援する唯一の方法は、主権を全面的に尊重しつつ、立場の相違を和らげるため積極的対話を奨励することだ」と強調。続けて、「もしベネスエラでの人権や安全を懸念するのなら、多くの死傷者を出してきクーデター促進者(反政府勢力)の暴力行為を糾弾せねばならない。人を生きたまま焼くなどの彼らの行為は、最悪のファシズムを想起させる」と厳しく批判した。

 今回のANPPは、去年4月の第7回共産党大会で採択され、党中央委員会も承認した経済改革関連文書類を審議し採択するため開かれた。ラウール議長は採択された文書との関連で、「変わらねばならないものは全て変えよう。変える速度は、人民合意に基づいて」と述べた。

 議長は来年2月に退陣するが、任期が9カ月弱となったこと、石油供給源ベネスエラの政経危機、トランプ政権下で玖米関係が停滞する可能性などを踏まえ、「改革」について極めて慎重な展望ぶりだった。

▼ラ米短信   ◎バチェレー智大統領が最後の施政報告

 チレのミチェル・バチェレー大統領は6月1日、国会で最後の施政報告演説をした。来年3月11日任期を終える。バチェレーは2006~10年、14~18年の2期務めたきた。計8年間を振り返って、「貧富格差是正に努めたが容易ではなく、政策結果は完全ではなかった」と述べた。

 重点政策として、民主憲法起草過程前進、税制改革、選挙法改正、腐敗防止法制定、堕胎合法化、教育改革などで成果を挙げたと自賛した。

 また先住民族マプーチェ人の「500年越しの土地闘争」に終始符を打つため、アラウカニーアの居住地域で統合的計画を促進してきたことを強調した。

 チレでは11月19日、大統領選挙第1回投票が実施される。保守・右翼勢力が優勢と見られている。

 

2017年6月1日木曜日

 米州諸国機構(OEA)外相会議は主権尊重派が動き、「ベネズエラ糾弾決議」に失敗。デルシー外相は21日のメキシコでの外相会議出席へ▼ベネズエラが国連・非植民地化委員会委員長国に選出さる▼制憲議会(ANC)議員選挙立候補登録始まる。

 ベネスエラへの介入を容易にする決議採択を目論んでいた米州諸国機構(OEA)の保守・右翼諸国は、5月31日ワシントンでの特別外相会議で、親ベネスエラ諸国の反逆により決議ができず、失敗した。デルシー・ロドリゲスVEN外相はカラカスで、「国際規範に則った倫理的なALBA(米州ボリバリアーナ同盟)とカリコム(カリブ共同体)の声が、ベネスエラ介入を目論む勢力を制した」と、会議結果を評価した。

 OEAには米州35カ国のうち社会主義クーバを除く34カ国が加盟。うちベネスエラは4月末、脱退を表明、今会議に欠席したが、脱退手続きには2年かかり、加盟資格は19年4月ごろまで続く。

 今回出席国が33カ国で、重要決議には3分の2の23カ国の賛成が必要。米加墨のTLCAN(NAFTA)3国、亜伯秘コロンビアなど計14カ国の「G14」(反ベネスエラ14カ国グループ)は、今会議前に23カ国の賛成を固める多数派工作に失敗。その結果、「唯一の合意は<合意がなかったこと>」(デルシー外相)という惨敗に終わった。

 会議を主導したのは、カリコム諸国を代表するバハマのダレン・ヘイフィールド外相だった。「カリコムは、ベネスエラの問題はベネスエラが解決すべきだ、という立場だ。OEAは介入すべきではない」と「G14」との立場の違いを強調。「全加盟国が基本的にベネスエラでの対話と和解を求めているのは確かなので、同国内の緊張緩和を促しつつ合意を形成すればいい」と主張。

 これにG14が賛成。会議は4時間余り討議した後、決議なしの流会となった。OEAは6月19~21日、墨カンクンで第47回外相会議を開くが、その前にOEA大使会議で引き続きベネスエラ問題を話し合うことになった。

 デルシー外相は、「ニコラース・マドゥーロ大統領の指示により、カンクン外相会議にはベネスエラ防衛のため出席する」と明らかにした。カンクン会議の前哨戦は既に始まっている。

 今会議でルイス・ビデガライ墨外相は、マドゥーロ政権が進めている制憲議会(ANC)開設過程に反対し、街頭暴動教唆罪などで服役している刑事犯の政治家を「政治囚」と呼び釈放を求めた。これに対しデルシーは、「ビデガライは、失敗国家メヒコを覇権主義国家(米国)の庇護の下に置くべく発言した。墨政府はラ米人民を攻撃し、自国人民をも蹂躙している」と糾弾。

 さらに、「メヒコは麻薬組織の犯罪、相次ぐジャーナリスト殺害、その他の社会的暴力で、世界一危険な国の一つだ。またラ米域内で不平等が最も激しい国の一つであり、民主が危うくなっている」と指摘した。

 外相会議には外相18人が出席、他は代理だった。米国は国務省の大物でラ米通のトーマス・シャノン政治問題担当次官補が出席。ベネスエラ問題解決のため、OEA加盟諸国などによる「連絡グループ」結成が必要との立場を表明した。

 ドミニカ共和国(RD)は1965年に米海兵隊に侵略され、流血の第三次に陥り、改革政権復活を阻まれた。それだけに米軍介入の口実になりやすいOEA決議には厳しく対応する。今会議でも、「ベネスエラの問題はベネスエラが解決すればよい。他の国々は解決努力に連帯すればいい」と、介入したいG14を突き放した。

 5月24日にモレーノ新政権が発足したエクアドール(赤道国)は、「ベネスエラの反政府勢力が対話を拒否しているのは遺憾だ。南米諸国連合(ウナス-ル)の仲介路線に沿ってベネスエラを支援すべきだ」と強調した。ウナスール本部は、キト郊外にある。

 ベネスエラのALBA同盟国ニカラグアは、「内政不干渉原則に反する今会議開催そのものに反対する」と前置きし、「ベネスエラだけが解決の当事者だ」と、G14に釘を刺した。

 ボリビアは「OEAは、加盟国の主権を弱めたい事務職員(ルイス・アルマグロ事務総長を指す)の個人的・政治的利益から、ベネスエラに暴力を焚きつけてきた」と糾弾。「今会議に反対だ。自由な人民は保護者を必要としない」と続けた。さらに、「アルマグロは政治俳優と化し、ベネスエラ紛争を醸し、加盟国ではなく、覇権主義国(米国)の利益を代弁している」と扱き下ろした。

 アルマグロは外相会議正面の議長関の隣に座していたが、攻撃されて苦々しい顔を見せるだけだった。事務総長は大使会議の決定を受けて、もしくは大使会議から委託されて重要発言をするが、重要問題であるベネスエラ問題に関し勝手に発言し続けてきた。この点にも加盟国の批判が高まっている。

 一方、ベネスエラは31日、国連総会で第1委員会(軍縮)の副委員長と、非植民地化委員会の委員長に選ばれた。マドゥーロ大統領は非同盟諸国運動の議長を務めており、それも評価された。

 ラファエル・ラミーレスVEN国連大使は、「米国の圧力にも拘わらずベネスエラは得票率95・6%で非植民地化委員長に選ばれ、米国に<尊厳>という教訓を与えた。ベネスエラは国際社会で敬意を払われているのだ」と強調。「ラ米も国連も<米国の裏庭>ではないのだ」と指摘した。

 ベネスエラ最高裁・憲法法廷は31日、制憲議会(ANC) 開設の発議は大統領の権限であり、必ずしも国民投票実施を必要としない、との判断を下した。これを受けて同日、ANC議員選挙の立候補届けが始まった。6月1日までの2日間で登録する。

 反政府勢力を率いる保守・右翼野党連合MUDは、ANC議員選挙ボイコットをあらためて表明した。MUD内の極右で、4月以来の暴力を含む街頭抗議行動を指揮しているエンリケ・カプリーレス(ミランダ州知事)は31日、伯紙バロール・ド・ブラジルから、「2012年の大統領選挙の際、オデブレヒト社(伯建設最大手)から選挙資金をもらった」と書かれた。300万ドルをもらったとされる。

 この選挙で故ウーゴ・チャベス前大統領に敗れ、13年4月の大統領選挙ではマドゥーロ現大統領に敗れた。このため「失うものがない」カプリーレスは反政府動員行動の先頭に立っているが、18年末の大統領選挙でのMUD候補としての出馬への道は険しい。
 
 ベネスエラ中央銀行は31日、通貨ボリーバル・フエルテ(bf)を64・13%切り下げ、1米ドル=2010bfとした。闇市場では、1d=6000bfにもなっている。