2018年6月14日木曜日

 今日14日、革命家チェ・ゲバラ生誕90周年記念日▼キューバや生国アルゼンチンで記念行事▼ハバナでは日玖合作映画「エルネスト」上映▼亜国ロサリオでは市営バスが特別路線走る▼現代キューバの若者は国外での「新しい生き方」目指す★ゲバラの娘アレイダが政府の経済政策を批判

 キューバ革命でカストロ兄弟と並ぶ英雄だった「エル・チェ」=エルネスト・チェ・ゲバラ(1928~67)=の公式な誕生日の6月14日、キューバ、アルゼンチンなどゆかりの地で生誕90年記念行事が催される。

 ハバナでは13日、エル・チェの側近中の側近だったハリー・ビジェガス革命軍退役少将らがシンポジウムで、革命家エル・チェについて語り合う。14日には、ラス・ビージャス州都サンタクラーラ入口にあるチェ・ゲバラ像前で遺族や政府要人が参列し、記念式典が挙行される。

 ここには1967年のボリビア遠征で死んだゲバラと部下たちの廟がある。日系ボリビア人ゲリラ、フレディ前村ウルタードの遺骨もここにある。
 その前村の25年の短い生涯を描いた日玖合作映画「エルネスト」(阪本順治監督、キノフィルムズ、2017年)が19日、ハバナで記念上映され、次いで一般公開される。この上映会には阪本監督が出席し挨拶する。

 生地である亜国サンタフェ州ロサリオ市では、社会党所属のモニカ・フェイン市長の肝いりで、市営トロリーバスの一路線が「エル・チェ路線」と名付けられ、革命家の顔が大きく描かれたバスが既に走っている。14日の前後、期間限定の走行だ。

 同市での14日の生誕90周年式典には、ホセ・ムヒーカ前ウルグアイ大統領が来賓として参列する予定。ムヒーカは若き日、同国のゲリラ「民族解放運動(MLN)ートゥパマロス」の幹部で、警官隊に銃撃され死線をさまよったこともある。
 彼は革命直後のハバナとモンテビデーオでエル・チェに会い、影響を受けた。ムヒーカは2016年4月の来日時、東京での記者会見で、「人生で最も影響に残る人物はエル・チェだ」と語った。

 ロサリオ市内にはゲバラの立像がある。没後50周年記念日(昨年10月9日)前の8月、市内の右翼勢力がゲバラ像撤去運動を展開、賛否両派が対立した。今回のバスの車体に市側がゲバラの顔を描いたことにも像撤去派は激しく反発し非難している。

 15年末に保守・右翼陣営の財界人マウリシオ・マクリが大統領になって以来、右翼陣営が勢力を拡げている。ロサリオの像撤去運動は、その表れの一つだった。

 ゲバラは晩年、「新しい人間」という革命的人間像を打ち出した。様々な人物からの影響が見られるが、ジャンポール・サルトルもその一人だ。ゲバラはハバナでサルトル夫妻とフランス語で深夜語り合い、相互に強い印象を受けた。

 サルトルの「アンガージュマン」を実践したのが、知識人で医師だったエル・チェだった。アルジェリア対仏独立戦争期のイデオローグ、フランツ・ファノンの影響も見受けられる。大江健三郎の言う「正統的人間」もアンガージュマン思想に立っている。

 今日、キューバの若者たちは、外国での人生設計を企図し、出国してゆく。キューバ社会主義の「改革開放」の歩みの遅さに希望を失っているためだ。「新しい生き方」、これが昨今の多くの若者たちの希望となっている。

 4月に就任したミゲル・ディアスカネル国家評議会議長の最重要課題の一つは、未来への人材である若者に魅力的な「繁栄する社会主義社会」を建設することなのだ。

★チェ・ゲバラの娘アレイダが経済政策を批判

 医師アレイダ・ゲバラ=マルチは14日、玖通信社プレンサ・ラティーナのインタビューで、「玖労働者が給料だけで生活できないのは深刻な問題だ」と指摘。「生活費を海外からの送金に頼るのも(政策上)筋違いだ」とも語った。

 アレイダは、「経済政策の失敗があったが、これを修正するのは革命体制の美点だ」と述べ、「政府は経済状況改善にもっと尽力すべきだ。エル・チェが経済建設現場にもっと必要だ」と強調した。

 チェ・ゲバラは革命初期の1959~54年、農地改革庁工業局長、中央銀行総裁、工業相として経済建設に携わった。