=2013年ピースボート(PB)78回航海紀行ルポ=「波路はるかに」第1回
【2月6日マゼラン海峡にて伊高浩昭】クラッシックで美しいPB客船「オーシャン・ドゥリーム」号は2月5日夜、亜国(アルヘンティーナ)ティエラ・デル・フエゴ州都ウスアイアを出港し、ビーグル海峡を経て、マゼラン海峡に入った。奇怪な姿のアンデス山脈南端の山並みに挟まれた海峡の濃紺の水路に白波が立つ。ここを船で通るのは3度目だが、往時の航海者たちの幻影を波間に見る。今は真夏だが、かつて夏でも氷河を抱き雪を被っていた山脈は、岩肌が浮かび、土や森が広がる。温暖化の深刻さを来る度に直視させられる。
私は1月末に成田を発ち、36時間のきつい長旅の末にバイレス(ブエノスアイレス)に着いた。同市とモンテビデオ(ウルグアイ首都)で重要なインタビューをし、厚さ5センチの大きく柔らかい超美味のビーフステーキを3度食べた。肉食が貧しい日本では考えられない安さだ。1500円程度だが、日本ならば赤ワイン、野菜サラダ、デザートなど込みで3万円位するのではないか。
南大西洋の海は、マゼラン海峡出口とマルビーナス(フォークランド)諸島の間の海域で1日半、大いに荒れた。衛星通信が途絶えたこともあった。乗船時の多忙さ、担当講座の連続、寄港地の多さ、悪天候などで、この紀行ルポの送信がきょうまで叶わなかった。ラ米情勢をはじめ、世の中の状況はほとんど把握出来ないままだ。徐々に把握し、考察していきたい。
船内には乗客900人と、乗員250人がいる。一蓮托生の動く運命共同体は、海峡の太平洋側出口海域で大波と強風区欧風に翻弄されたが、これから海峡周辺のフィーヨルド海域をチリ人水先案内人の先導でゆっくりと進むことになる。南米大陸南端の雄大な断崖の光景に再会したいが、光のあるうちに、そこを通過するのかどうかわからない。では次回まで。