2017年1月31日火曜日

アフリカ連合(AU)が西サハラ占領中のモロッコ復帰を承認

 アフリカ連合(AU)はアディスアベバの本部で1月30日、第28回首脳会議を開き、1984年に前身のアフリカ統一機構(OAU)を脱退したモロッコの復帰を認めた。モロッコは55番目の加盟国になった。

 モロッコに隣接する旧スペイン領西サハラはフランコ総統死後の1975年にスペインが統治を放棄、やがてモロッコに占領された。スペイン植民地時代の73年、独立を目指し結成されたポリサリオ戦線は76年、サハラウイ・アラブ民主共和国(SADR)を樹立、OAUへの加盟が認められた。

 OAUはモロッコの不法占拠を槍玉に挙げ続けたが、これに怒ったモロッコは脱退した。だが国王モハメド6世は昨年7月、復帰方針を表明、今首脳会議に向けて復帰工作を続けていた。今会議に同国王も出席した。

 30日の復帰の是非を問う投票では54カ国中39カ国が賛成、復帰が承認された。モロッコに対し依然厳しい態度をとるアルジェリア、ナイジェリア、南アフリカ、ケニア、アンゴラなどは、「加盟国の領土を占領している国に加盟資格はあるのか」と異論を唱えていた。

 モロッコ復帰は、「アフリカの保守化」を物語る。クーバをはじめラ米の左翼・進歩主義勢力はサハラウイを支持してきた。

 首脳会議開会式に出席したアントニオ・グテレス国連事務総長は演説で、「最も発展した諸国が国境を閉ざす一方で、アフリカ諸国の国境は、保護を求める人々に開かれている」と述べ、トランプ米政権の外国人入国規制政策を暗に批判した。

 南アのンコサザナ・ズマ大統領(AU現議長)は、「我々の民族の祖先が奴隷として連れて行かれた国が難民受け入れを拒否している」と、これまたトランプ政策を批判した。

 AUは、南スーダン紛争、リビア情勢悪化、マリ・ソマリア・ナイジェリア3国でのイスラム過激派攻勢、コンゴ民主共和国政情不安など難題を抱えている。

▼ラ米短信   ◎伯亜両国がメルコスールの対外市場多角化で一致

 伯亜両国貿易担当相は1月30日ブラジリアで会合。関税同盟である南部共同市場(メルコスール)加盟国の統合促進と、同市場と欧州連合(EU)、日本、カナダとの貿易関係強化で一致した。

▼ラ米短信   ◎ボリビア大統領がトランプを非難

 ボリビアのエボ・モラレス大統領は1月30日、「ラティーノス(ラ米人)に対し国境の壁を築き、他国での軍事介入を止めない」と、トランプ米政権を非難。壁建設を「人種主義、ファシズム的政策」と糾弾した。 

2017年1月30日月曜日

 エクアドルで移民・難民の権利を保障する「人的移動法」が発効。トランプ米政権の移民政策に対処

 エクアドール(赤道国)のラファエル・コレア大統領は1月28日、訪問先のスペイン・バルセローナ市で本国へのテレビ中継を通じて、移民や難民の権利を広く認める「人的移動法」に署名、同法は直ちに発効した。

 コレア大統領は署名に際し、スペイン在住の移民同胞およびラ米人移民を前に演説、「人は誰も移民状態において不法ではない」と強調した。同法は、赤道国が受け入れる難民・移民の権利を保障し、政府に在外同胞保護を義務付けている。

 演説でコレアは、ドナルド・トランプ米大統領の移民制限発言を念頭に、「大国の極めて残酷かつ非人間的演説によって、国家間の人的移動が困難になっている」と嘆いた。

 さらに、「ラ米の選良たちは西語を話しながら英語で考え、<アメリカンドゥリーム>、TPP、自由貿易を口にする。そんな人魚の囁きにたぶらかされての浅い眠りから覚めるべきだ。今や、(米国から)足蹴にされているではないか」と批判した。

 新法には、南米諸国連合(ウナスール)を結ぶ南米諸国間の移動を身分証だけで可能にする提案が盛り込まれている。赤道国は6万人の難民を受け入れているが、その95%は隣国コロンビアから流入した。

 大統領は、進歩的な新法の内容は国連難民高等弁務官から賞賛されている、と指摘した。新法により、赤外務省は「外務・人的移動省」と改名された。

 本国の首都キトでは28日、ギヨーム・ロング外務・人的移動相が声明を発表、「トランプ大統領の移民政策発表に伴い、厳しい時期の到来が予想されるため、移民同胞の利益を守る緊急領事業務計画を策定、展開させる」と発表した。

 ロングは同計画策定に際し最近訪米、移民保護団体や弁護士団体と協議した。計画には領事館業務時間延長、法的電話相談、移動領事館制度などが含まれている。

 同相はまた、「幸運にも在米同胞の多くは<聖域州>に居る。米政府の移民取締命令に従わない州だ」と述べた。さらに、「在米移民問題に対処するには、CELAC(ラ米・カリブ諸国共同体)のような機構を通じてラ米団結を国際社会に示す必要がある」、「CELACには、移民に厳しい米政権が醸す状況に対処する責任がある」と指摘した。

 在米エクアドール人は61万人で、うち20万人は不法滞在とされる。在西同胞は44万人で、うち23万人は西国の国籍を取得している。

2017年1月28日土曜日

 トランプとメキシコ大統領が電話会談し、対話継続で合意。ペルーとコロンビアの首脳がメキシコ支持を表明、自由貿易促進を呼び掛ける

 Dトランプ米大統領の国境の壁建設決定などをめぐり、米墨関係は急速に悪化していたが、同大統領とメヒコのエンリケ・ペニャ=ニエト(EPN)大統領は1月27日、1時間に亘って電話会談し、話し合いを続けてゆくことで合意した。

 トランプはホワイトハウスで来訪中のテレサ・メイ英首相との合同記者会見の場で、「電話会談は友好的だった。私はメヒコに対しきつく当たり過ぎていた。今後は公正かつ新しい関係において活動してゆく」と述べた。

 一方、EPNも「建設的だった」と評価。メヒコ政府は別途、「この会談で壁建設に関し今後、公に発言しないことで合意した」と明らかにしている。また米製銃器類の対墨密輸や国境地帯での麻薬取引の取締についても話し合ったと明かした。

 トランプは電話会談に先立ち、「メヒコはずいぶん長い間、米国を利用してきた。米側の巨額の貿易赤字と国境警備の弱さは変えねばならない」と微博(twt)発言していた。

 電話会談の内容はほとんど明らかにされていないが、当面の焦点は26日にいったん崩れた両首脳の直接会談をいつ実現させるかだ。トランプが壁建設費用をメヒコに負担させようとするかぎり、これを断固拒否するメヒコとの和解はない。来年12月1日までの任期を残すEPNにとり、壁建設費支払いに応じれば、即、政治生命が途絶えるだろう。

 かといって、今のトランプに翻意させるという勝算もない。メヒコの対米関係は歴史的な危機に陥っている。

 メヒコ人富豪カルロス・スリムは27日、「トランプは死刑執行人でなく取引者だ」と前置きし、EPNに向けて「降伏せず交渉すべきだ」と提言した。スリムは個人的にトランプと交流してきた。

 スリムはまた、「最良の壁は機会と雇用を醸成することだ。メヒコは輸出先の多角化が必要だ」とも指摘した。スリムは23日には、
在米同胞のためのスペイン語テレビ放送局を米国内に設ける、と発表している。

 一方、PPクチンスキ秘大統領とJMサントス・コロンビア大統領は27日、秘国アレキッパ市で27日会談。「メヒコを支援する。自由貿易推進のため対話と融和の情勢が基本的に重要だ」と強調した。

 両大統領はまた、両国および智墨のラ米太平洋岸4カ国で構成する「太平洋同盟」(AP)が墨米問題を話し合うため、発声映像画画面を通じて首脳会議を早急に開くことを智墨両首脳に提案した。

▼ラ米短信   ◎メヒコ人学生43人強制失踪事件発生から28カ月

 メヒコ・ゲレロ州内のアヨツィナパ農村教員養成学校生43人が同州イグアラ市で陸軍兵士、警官らによって強制失踪させられてから1月26日で2年4カ月が経過した。EPN政権は、事件を解決しないまま放置している。

 遺族、学生、支援団体は26日、首都メヒコ市にある検察庁前で6時間、抗議集会を開いた。その間、遺族代表と弁護士が検察側と交渉、2月9日にラウール・セルバンテス検察庁長官と話し合うことで合意した。遺族側は2月にMAオソリオ=チョン内相との会合も望んでいる。

 弁護士ビドゥルフォ・ロサーレスは、「検察は陸軍の関与を長らく伏せていたが、早期に明るみに出していたとすれば、捜査は異なる経過を辿っていたはずだ」と指摘した。一行は、レフォルマ大通りを独立記念碑まで行進した。

 EPNの支持率は10%台に落ち込んでいるが、その要因の一つがこのアヨツィナパ事件未解決だ。遺族らは、ニュースが対米関係に集中し、事件報道が少ないことに危機感を抱いている。

ダニス・タノヴィッチ監督映画「サラエヴォの銃声」を観る

 3月25日に新宿シネマカリテで封切られるダニス・タノヴィッチ監督2016年作品『サラエヴォの銃声』(原題「サラエヴォでの死」、フランス・ボスニアヘルツェゴビナ合作、85分)を試写会で観た。

 セルビア人ガヴリロ・プリンツィプは1914年6月末、サラエヴォ市内でオーストリア・ハンガリー帝国皇太子夫妻を待ち伏せ攻撃し暗殺した。この「サラエヴォ事件」を契機として、第1次世界大戦が勃発した。映画は、2014年6月末の事件100周年記念日に巻き起こる人間模様を描いている。

 サラエヴォ市内にある「ホテル・ヨーロッパ」が舞台。冒頭、記念番組制作中の女性の映像ジャーナリストが実際の暗殺現場に立つが、この場面以外はすべてホテル内部と屋上で撮影されている。サラエヴォの街はホテルの屋上と支配人室のガラス壁越しに見えるだけだ。

 筆者は、内戦のあった1990年代に取材でサラエヴォや周辺を取材したが、当時は戦火で破壊された建物が数多く残っていて、戦争の傷跡が生々しかった。だが、この映画は意図的に街並みを隠しており、街がどうなっているのか、この映画ではわからない。

 屋上に場所を移した女性ジャーナリストは歴史家に「サラエヴォ事件」以後の歴史を語らせ、次いで、100年前の暗殺者と同名のセルビア人青年にインタビューする。ボスニア人の彼女は、プリンツィプが「英雄かテロリストだったか」をめぐって論争する。

 一方、ホテルには欧州各地から100周年記念行事に参加する要人らが訪れつつある。早めに到着したフランス人は、部屋にこもって記念演説の稽古に余念がない。この仏要人も、サラエヴォにまつわる歴史を語る。その模様を、支配人の部下の男は密かに設置したカメラで監視する。この警備員の男はコカイン常習者。

 ホテルを取り仕切る支配人は大忙しだが、ホテルの経営は実は思わしくなく、借金取りと従業員から支払いを迫られている。既に2カ月給料をもらっていない従業員たちはストライキを決行する。

 ひょんなことからストの指導者にまつりあげられたのは、宿泊客の衣類を洗い整える係りの年配女性。その娘は、支配人から信頼される若く美しい切れ者だ。

 以上のような幾つもの人物と出来事が絡み合い、ドラマは進行する。題名は、暗殺者の再来を思わせる青年が、女性ジャーナリストと口論し気が高ぶったまま銃を手に階段を下りたところ、コカイン常習者の警備員と出くわし即座に射殺されてしまう場面に基づく。

 ここには「歴史は(変形されながら)繰り返される」というメッセージも含められている。ホテル内で、来訪する欧州要人らを迎えるため「喜びの歌」を練習していた少女らの合唱団は銃声が聞こえると避難するが、その際、わざわざ二列に並んで出てゆく。ここには、集団が機械的、組織的に行動するドイツ人への皮肉がある。かつてボスニアの通貨として独マルクが使われていた。

 現代欧州はメルケル政権のドイツによって動かされているが、ドイツ人が笛を吹いても欧州は踊れない、という批判が見受けられる。

 殺人事件の発生、ストライキで機能マヒに陥ったホテル、絶望する支配人という権力者。。。ここには90年代のボスニア内戦、その後の移民流入、右翼台頭、近年のロシアによるクリミア併合を防げなかったことなど、「欧州の分裂・失敗」への批判が込められている。それは、「ホテル・ヨーロッパ」の解体的危機に象徴されている。

 ボスニア人の監督ならではの視点がある。この映画に先立ち、パキスタンで起きた事件を基にした同監督作品「汚れたミルク  あるセールスマンの告発」が3月4日に新宿シネマカリイテで公開される。

【参考:伊高浩昭著『ボスニアからスペインへ-戦の傷跡をたどる』(2004年、論争社)】 

2017年1月27日金曜日

 「壁建設費支払わないなら首脳会談中止も」とトランプに脅されたメキシコ大統領が訪米を中止。一方、第5回CELAC(ラ米・カリブ諸国共同体)首脳会議はトランプ政策を厳しく批判

 墨米両国関係は今、メヒコが英米石油資本などを国有化した1930年代以来、最悪の状態に陥っている。ドナルド・トランプ米大統領が「国境の壁建設」という愚かな政令を1月25日発したからだ。

 メヒコのエンリケ・ペニャ=ニエト(EPN)大統領は同日、当然のことながら「建設費など一銭も払わない」と応じた。するとトランプは26日、「払うつもりがないのなら、31日の(EPNとのワシントンでの)会談は中止するのがよかろう」と脅しをかけた。

  米政府は、メヒコからの輸入品に20%の関税をかけ、これを壁建設費に回す案を提示している。

 これに対しEPNは全国向けテレビ演説で、「米国内の全50カ所のメヒコ領事館は在米同胞を守るため全力を尽くす」と悲壮な表情で決意を伝えた。次いでEPNは、31日の訪米を中止すると発表した。追い詰められての決断だった。
 
 メヒコ世論は、日ごろ不人気な大統領をいつになく支持している。ジャーナリズム論調には、メヒコを見下すトランプの傲慢、横柄な態度を「高飛車に出て交渉を有利に進める戦法」と捉える分析が出ている。「トランプはやはり野卑な男だった」と書く者もいる。

 メヒコ穏健左翼の大御所クアウテモク・カルデナスは、早くからトランプとの会談をしないよう忠告していた。クアウテモクは30年代に米石油資本を国有化した故ラサロ・カルデナス大統領の息子。

 またホルヘ・カスタニェーダ元外相は、「トランプはメヒコを侮辱し、対話前から対立を煽っている。このような脅迫の下に居続けることはメヒコには耐えられない」と述べ、首脳会談中止を求めていた。
 
★このような非常事態に陥ったメヒコは強い対米交渉カードを持たねばならない。それには、対米関係が険悪化する可能性を秘めている「中国と政経両面の同盟関係を結ぶ」のが最良策との主張さえ見られる。

 一方、24日夜から25日までドミニカ共和国(RD)東端の保養地プンタ・カーナ(カーナ岬)で開かれた第5回CELAC(ラ米・カリブ諸国共同体)首脳会議は最終宣言で、米国やトランプの名を出さずに「不法移民犯罪者化と移民差別を糾弾する」との一項が盛り込まれた。

 またトランプの保護主義を念頭に、「LAC(ラ米・カリブ)地域は、移り気な金融市場と保護主義が醸す危険と不安に対し団結を強化する」の項目も加えられた。

 EPNは当初、この首脳会議に出席してLACの連帯を勝ち取り、反トランプ世論を醸成する戦略だったが、対米関係の急速な悪化で出席を取りやめた。その間、メヒコのルイス・ビデガライ外相とイルデフォンソ・グアハルド経済相はホワイトハウスで米側と10時間話し合った。

 CELAC首脳会議出席のラ米首脳陣からは対米批判が相次いだ。エクアドール(赤道国)のラファエル・コレア大統領(G77議長)は、「移民問題は壁では解決できない。解決策は富の再分配しかない」と指摘した。

 ボリビアのエボ・モラレス大統領は、「不法滞在者が一人もいなくなるよう<世界市民>制度創設を提案する」と述べ、「墨米国境の壁建設は馬鹿げたことだ」と切り捨てた。

 CELACの輪番制議長は会議閉会時に、ダニーロ・メディーナRD大統領から、エル・サルバドールのサルバドール・サンチェス=セレーン大統領に移った。サンチェスは、「加盟国間の新たな合意形成と活動活発化」の必要を訴えた。

 会議にはラウール・カストロ玖議長、ニコラース・マドゥーロVEN大統領、ダニエル・オルテガNICA大統領、ハイチのジョスレルム・プリヴェール暫定大統領、ガイアナのデイヴィド・グレンジャー大統領、ドミニカのチャールズ・サヴァリン大統領、ジャマイカのアンドゥルー・ホルネス首相も出席した。

 だがブラジル、亜国、ペルーなど、新自由主義経済政策をとる保守・右翼系諸国は首脳が欠席、外相らが代理出席した。

2017年1月26日木曜日

 ウルグアイのホセ・ムヒカ前大統領がモンテビデオ入港中のピースボート世界周遊船で講演、持論の人生論を展開。トランプ米大統領の保護主義を批判した

【モンテビデーオ発25日:松村真澄(NGOピースボート国際コーディネーター)】 ウルグアイ前大統領ホセ・ムヒーカ上院議員(81)は1月25日、夫人のルシーア・トポランスキ上院議員を伴って、モンテビデーオ入港中のピースボート(PB)世界一周船「オーシャン・ドゥリーム号」を訪問、船内を視察し、後方甲板で日本人乗客のうち約500人の前でウルグアイを紹介し、「人生論」など含蓄ある言葉を紡いだ。以下は発言要旨:

 「ようこそウルグアイへ。この国の人口は350万人、そして牛はその4倍いる。一人当たりの肉(牛肉・羊肉)消費量は世界一で、世界一うまい肉が食べられる」

 「南米一、公平な国で、1916年に南米で初めて女性の離婚権を認め、男女参加の選挙制度を確立した。教育は100年も前から公的機関が担ってきた。差別や人権の問題は少ない」

 「PBは世界中を航海しながら、日本から平和、平等、人権、男女平等、非核などの重要なメッセージを運んでいる。その活動を私も応援している。異なる考えを持つ人から理解されない時もくじけてはならない」

 「今に生きる私たちの責務は、これからの世代のために大自然を守り、紛争を無くすことだ。技術の爆発と消費主義に苦しめられ、戦争で死んでゆくのは最も貧しい人々なのだ」

 「大統領期に質素な生き方をしていたのを<風変わりだ>とよく言われたが、質素な生き方を貫きたいからに他ならない。命と人生を愛しているからだ」

 「大切な命は時間だ。時間は金(かね)では買えない。物を買うことは、人生の時間を費やして稼いだ金で買うのであり、物欲に惑わされれば人生の時間が失われてしまう」

 「至高な価値は、利益や市場ではなく、人生だ。人生の闘いとは、時間を持って人間同士互いに気持を確かめ合うことだ。時間は子供、友人、人生を愛するためにある」

 「日本は美しい。だが最高の美しさは、地球というこの惑星にある。世界中の人々は皆きょうだいだ。肌色を超越して人間は一つなのだ」

 「人に認められたいがためでなく、自分の思うままに生きてほしい。国連特別開発目標達成のため頑張ってほしい。きょうは、どうもありがとう」

 ムヒーカは約20分に亘り、海のようなラ・プラタ川を背景に通訳を交えて語りかけた。昨年4月来日した時はやや緊張気味だったが、地元では大いに打ち解けていた。

 前大統領は船内で別途、ドナルド・トランプ米大統領の政策について訊かれ、「勘弁してくれ!メヒコだけでなく、ペルーやこのウルグアイにも影響が及ぶだろう。自国経済保護ばかり考えていれば、経済戦争が起きてしまう」と批判した。

 この日、ムヒーカは青色の愛車フォルクスワーゲンを運転して波止場に到着した。自宅の農園で収穫したばかりのトマトでソースを作っているが、その作業の合間に船を訪れた。できたトマトソースは友人らに配るという。

 オーシャン・ドゥリーム号は25日、リオデジャネイロから到着、夜、ブエノスイアレスに向かった。その後は、亜国パタゴニア最南の都市ウスアイア、南極半島、ウスアイア、ビーグル水道、マゼラン海峡を航行、チレのプンタアレナスを経てバルパライソに向かう。

▼ラ米短信  ◎ピースボートでのクーバ情勢講演会終わる

 東京・高田馬場のNGOピースボート本部で1月25日夜、講師・伊高浩昭によるクーバ最新情勢につての講演と質疑応答の会合が開かれ、約40人が参加した。講師は、フィデル・カストロの功罪、死去の影響、クーバ経済・政治状況、トランプ米政権登場の影響、などについて語り、その後、30分間、活発な質疑応答が展開された。

 
 

2017年1月24日火曜日

 ベネズエラ国立霊廟に軍事独裁と戦ったジャーナリストでゲリラだったファブリシオ・オヘーダの遺骨が納められる

 ベネスエラ政府は1月23日、ラウール・レオニ政権期の1966年、軍部諜報局(SIFA)に虐殺されたジャーナリストでゲリラだったファブリシオ・オヘーダ(当時37)の遺骨を、カラカス市内の南部一般墓地から国立霊廟(パンテオン・ナシオナル)に移し、盛大な記念式典を催した。

 ファブリシオは1929年生まれ、国立ベネスエラ中央大学卒、エル・ナシオナル紙記者となり、大統領政庁を担当した。57年、共産党(PCV)、民主共和同盟(URD)および左翼活動家らと地下組織「愛国会議」を結成。時のマルコス・ペレス=ヒメネス独裁軍政打倒を目指し闘争を開始する。

 翌58年1月23日、愛国会議と軍部が結集、軍政打倒に成功する。ニコラース・マドゥーロ現政権は、この日に因んで遺骨を移納した。

 58年末の選挙でロムロ・ベタンクール政権が誕生、ファブリシオはURD所属の下院議員になる。翌59年1月23日、革命戦争に勝利して3週間余しか経っていなかったフィデル・カストロ玖反乱軍最高司令官がカラカスを訪問、熱狂的に迎えられた。

 フィデルはファブリシオを招待。これを受けてクーバに翌60年4月まで滞在する。ファブリシオは帰国するやURDと訣別し、議員を辞職。62年に共産党がゲリラ組織「民族解放軍」(FALN)を結成する際、ドゥグラス・ブラボらと協力し参加、ゲリラ闘争に入った。

 同年末、逮捕されるが、翌63年脱獄。65年にはFALN議長に収まった。だが組織内に台頭した非武闘争派と抗争。66年6月初め、同派に裏切られ、「居場所は首都」と暴露された。

 これを受けてSIFAは同月20日ファブリシオを逮捕、拷問して虐殺。翌21日、「独房内で自殺した」と発表した。チャベス政権末期の2012年11月、遺骨は発掘され、法医学調査に付された。

 国立霊廟前での式典では、国軍の栄誉礼に続いてマドゥーロ大統領が演説、「人民革命闘争を遂行した革命家の模範」と讃え、「解放者勲章」を死後叙勲し、遺族に渡した。国立霊廟にはシモン・ボリーバルをはじめ独立期の英雄たちが眠っている。

 式典には大統領夫人シリア、タレク・エルアイサミ執権副大統領、ディオスダード・カベージョ国会議員(政権党副党首)、ブラディーミロ・パドゥリーノ国防相ほか、オンブズマンのタレク・サアブ、最高裁長官、検事総長らが参列した。元ゲリラ、ルフォ・メネセス(84)も出席した。

 ファブリシオの人生を紹介したオンブズマンのサアブは、「大統領ラウール・レオニの命令で拷問され殺害されたのには疑いの余地がない。そのうえ自殺説をでっちあげた」と、51年前の政権を糾弾した。

 ジャーナリストで元副大統領のホセ=ビセンテ・ランヘールも演説、「ファブリシオはベネスエラ人民の尊厳と共に国立霊廟に入った」と述べた。パドゥリーノ国防相は、「ファブリシオは人民の解放、尊厳、独立のために闘った」と語った。

 式典に出席しなかった閣僚からも賛辞が相次いだ。デルシー・ロドリゲス外相は、「祖国解放のための人民闘争の鑑。偉大な革命家、人民殉死者、思想家だった」と礼賛した。故ウーゴ・チャベス大統領の実兄アダン・チャベス文化相は、「遺骨移納には歴史的正統性がある。尊厳、勇気、祖国愛への栄誉礼だ」と指摘。エリーアス・ハウア教育相も、「ファブリシオは権力の側に居て安閑としていることもできたが、それを拒否し、権力を糾弾して闘争の道に入った」と述べた。

▼ラ米短信   ◎メヒコ富豪が在米メヒコ系向けテレビ放送開始を決定

 富豪カルロス・スリムは1月23日、在米メヒコ人およびメヒコ系市民3370万人向けにテレビ放送「ヌエストラ・ビシオン」(私たちの視点)を年内に米国内で開始する、と発表した。放送内容は「100%メヒコ製」にするという。

 スリムは、ドナルド・トランプ米大統領のメヒコとメヒコ人に対する一連の言動に鑑み、在米放送開設を決意したと表明した。