【モンテビデーオ発25日:松村真澄(NGOピースボート国際コーディネーター)】 ウルグアイ前大統領ホセ・ムヒーカ上院議員(81)は1月25日、夫人のルシーア・トポランスキ上院議員を伴って、モンテビデーオ入港中のピースボート(PB)世界一周船「オーシャン・ドゥリーム号」を訪問、船内を視察し、後方甲板で日本人乗客のうち約500人の前でウルグアイを紹介し、「人生論」など含蓄ある言葉を紡いだ。以下は発言要旨:
「ようこそウルグアイへ。この国の人口は350万人、そして牛はその4倍いる。一人当たりの肉(牛肉・羊肉)消費量は世界一で、世界一うまい肉が食べられる」
「南米一、公平な国で、1916年に南米で初めて女性の離婚権を認め、男女参加の選挙制度を確立した。教育は100年も前から公的機関が担ってきた。差別や人権の問題は少ない」
「PBは世界中を航海しながら、日本から平和、平等、人権、男女平等、非核などの重要なメッセージを運んでいる。その活動を私も応援している。異なる考えを持つ人から理解されない時もくじけてはならない」
「今に生きる私たちの責務は、これからの世代のために大自然を守り、紛争を無くすことだ。技術の爆発と消費主義に苦しめられ、戦争で死んでゆくのは最も貧しい人々なのだ」
「大統領期に質素な生き方をしていたのを<風変わりだ>とよく言われたが、質素な生き方を貫きたいからに他ならない。命と人生を愛しているからだ」
「大切な命は時間だ。時間は金(かね)では買えない。物を買うことは、人生の時間を費やして稼いだ金で買うのであり、物欲に惑わされれば人生の時間が失われてしまう」
「至高な価値は、利益や市場ではなく、人生だ。人生の闘いとは、時間を持って人間同士互いに気持を確かめ合うことだ。時間は子供、友人、人生を愛するためにある」
「日本は美しい。だが最高の美しさは、地球というこの惑星にある。世界中の人々は皆きょうだいだ。肌色を超越して人間は一つなのだ」
「人に認められたいがためでなく、自分の思うままに生きてほしい。国連特別開発目標達成のため頑張ってほしい。きょうは、どうもありがとう」
ムヒーカは約20分に亘り、海のようなラ・プラタ川を背景に通訳を交えて語りかけた。昨年4月来日した時はやや緊張気味だったが、地元では大いに打ち解けていた。
前大統領は船内で別途、ドナルド・トランプ米大統領の政策について訊かれ、「勘弁してくれ!メヒコだけでなく、ペルーやこのウルグアイにも影響が及ぶだろう。自国経済保護ばかり考えていれば、経済戦争が起きてしまう」と批判した。
この日、ムヒーカは青色の愛車フォルクスワーゲンを運転して波止場に到着した。自宅の農園で収穫したばかりのトマトでソースを作っているが、その作業の合間に船を訪れた。できたトマトソースは友人らに配るという。
オーシャン・ドゥリーム号は25日、リオデジャネイロから到着、夜、ブエノスイアレスに向かった。その後は、亜国パタゴニア最南の都市ウスアイア、南極半島、ウスアイア、ビーグル水道、マゼラン海峡を航行、チレのプンタアレナスを経てバルパライソに向かう。
▼ラ米短信 ◎ピースボートでのクーバ情勢講演会終わる
東京・高田馬場のNGOピースボート本部で1月25日夜、講師・伊高浩昭によるクーバ最新情勢につての講演と質疑応答の会合が開かれ、約40人が参加した。講師は、フィデル・カストロの功罪、死去の影響、クーバ経済・政治状況、トランプ米政権登場の影響、などについて語り、その後、30分間、活発な質疑応答が展開された。