コロンビア検察庁は2月29日、牧場主サンティアゴ・ウリーベを、極右準軍部隊を指揮し殺人などを犯した容疑で逮捕した。22年間に亘る捜査の結果、逮捕状が執行された。サンティアゴは、極右のアルバロ・ウリーベ前大統領(現上院議員)の実弟。
発表や報道によると、サンティアゴは1990年代にウリーベ兄弟の勢力基盤であるアンティオキア州内で準軍部隊(パラミリタレス)「12人の使徒」を組織、その指導者として、先住民を含む市民殺害、誘拐、脅迫など数多くの凶悪犯罪に関与した疑いが濃厚。
元コロンビア警察幹部らが90年代半ば、サンティアゴの事件関与を証言している。検察は120日以内にサンティアゴを起訴するか否かを決定する。
準軍部隊は1960年代初め、米陸軍特殊部隊(グリーンベレー)がコロンビア政府にゲリラ掃討のため組織を働き掛けた。80年代以降、準軍部隊は麻薬組織と一体化。政府秘密警察とも結託し、要人や左翼の暗殺に関わった。
90年代には、ゲリラの攻勢の前に手を焼いていた国軍と連携、「第2の陸軍」としてゲリラと戦った。軍に認可された準軍部隊は、先住民やアフリカ系の多い貧農層から土地を奪い、大地主に渡していた。抵抗する農民は家族ともども容赦なく虐殺した。
サントス現政権とコロンビア革命軍(FARC)は、半世紀を超える内戦に終止符を打つ和平協定に今月23日以降調印するため、最終交渉段階にある。政府とFARCは、準軍部隊を和平の最大阻害要因と見る点で一致している。
政府は昨年10月、前大統領ウリーベが、アンティオキア州知事だった90年代に準軍部隊による虐殺事件に関わった疑いで捜査を開始した。前大統領は、ゲリラとの和平による内戦終結に頑強に反対している。
この捜査と今回のサンティアゴ逮捕は、将来的に和平維持の障害となる準軍部隊を抑え込むための政府戦略だ。サントス政権の和平努力を支援するオバーマ米政権は、ウリーベ兄弟に対する「規制措置」を暗黙の裡に支持している。
サンティアゴ逮捕について、隣国ベネスエラのディオスダード・カベージョ国会議員(前国会議長)は29日、サンティアゴはベネスエラにも侵入を繰り返してきたコロンビア準軍部隊の最高指揮者であり、逮捕は当選だ、と述べた。
さらに、その黒幕のアルバロ・ウリーベ(前大統領)まで司直の手が及ぶのを期待する、と語った。