☆★☆アルゼンチン人ピアニスト、パブロ・シーグレルの「ジャズ・タンゴ」コンサート(LATINA主催)を11月21日、有楽町朝日ホールで聴いた。なかなか良かった。前回よりもずっと良かった。
☆全14曲のうちアストル・ピアソーラが3曲、11曲はシーグレルの自作品だった。「ラ・ラユエラ」(あるいはラ・ラジュエラ、石蹴り遊び)という自作のこの題名は、亜国人作家、故フリオ・コルタサルの同名の代表作を思わせる。本人に関係を訊ねると、全く関係ないとのことだった。
☆私は開演前に楽屋でシーグレルにインタビューした。マエストロは、自分がピアソーラの「革新タンゴ」の流れを汲み、新しい演奏法と創作を絶えず心がけていることを淡々と語った。
☆ニューヨークに定住しており、年2回ブエノスアイレスに帰る。創作のためには亜国と距離を置くことが必要なのかと訊くと、その必要はないと答えた。
☆伝統的なタンゴも弾くには弾くが、一たび指がピアノの鍵盤に触れるや創作が始まり、伝統作品も「自分のタンゴ」になる。ここは強調した。
★演奏を聴いて、絵画に例えれば「伝統タンゴは具象画で、ピアソーラやシーグレルのタンゴは抽象画だ。抽象曲に歌詞は要らない」-こんな直感を得た。
★ピアソーラの名曲「リベルタンゴ」は無論、リベルター(自由)とタンゴを合わせた言葉だ。だが、「タンゴ・リブレ(自由なタンゴ)」という在り来たりのニュアンス(意味合い)ではなく、「タンゴ=自由」というセンティード(意味)なのだ、と感知できた。
☆これらの★2つは、会場に足を運んだ収穫だった。
☆バンドネオン北村総、コントラバス西嶋徹、ギター鬼怒無月(きど・なつき)、フルート赤木りえ。4人の日本人奏者がシーグレルに息を合わせた。シーグレルも、若い4人を盛り立てた。だから良かったのだろう。
☆ところで、ビオロン(ヴァイオリン)が欠けていた。何故か。これを訊き忘れた。シーグレルが成田空港を離れる前に、この質問をしなければならない。