2017年4月30日日曜日

 ローマ法王フランシスコがベネズエラ対話は一部野党の反対もあり失敗したと認める。同国政府は外国メディアに「意図的誤報」をせぬよう求める▼法王が「核戦争は人類と文化を破滅させ、耐え難い」とし、北朝鮮に「対話による緊張緩和」を呼び掛け

 ローマ法王フランシスコは4月29日、訪問していたカイロからローマに戻る特別機内で70人の同行記者団と懇談。ヴァティカンによる去年のベネスエラでの対話促進努力は一部野党の反対などで失敗した、と明らかにした。

 ヴァティカンのピエトロ・パロリン国務長官(元ベネスエラ駐在法王庁大使)は昨年、仲介のための条件として、選挙行程表作成、反政府派囚人釈放、国際人道支援受入れ、国会権利復活などを提案した。だが成功しなかった。

 法王は、「問題の一つは、野党が分裂し、条件に同意しなかったことだ。野党が分裂していながら、紛争が毎時激化しているのは妙なことだ」と語った。

 さらに、「ベネスエラのために出来るかぎりの努力を払うが、今後、対話を促進するには極めて具体的な条件を定めるねばならない。保障が必要だ」と強調した。

 カラカスでは29日、デルシー・ロドリゲス外相がエルネスト・ビジェーガス伝達・情報相を伴って外国メディア記者団と会見。「内外メディアは街頭行動中に出た犠牲者について意図的誤報を繰り返している」として、「可能な限り公正な報道を心がけてほしい」と呼び掛けた。

 一例として、ベネスエラの保守・右翼紙エル・ナシオナルは、ある死んだ男子大学生について「催涙ガス弾を胸に受けて死亡した」と報じていることを挙げた。ビジェーガス情報相は、「現場のビデオは、治安部隊が離れた位置から催涙ガス弾を発射していたことを示している。ガス弾は至近距離から発射されないかぎり殺人能力を持たない」と指摘した。

 国内メディアのこうした報道を外国メディアのカラカス通信員が国外に発信するため、虚偽が国際社会に蔓延し、ベネスエラ政府がその都度、悪役として非難される事態に陥っている。両相が公正な報道を求めたのは、そのためだ。

 ビジェーガス情報相はさらに、英ロイター通信は「国家警備隊(GNB)要員が恣意的に記者を逮捕した」との説明付きで写真を流したが、後で「そのGNB要員は記者を助けていたことがわかった」と訂正した、という事実を明らかにした。また、破壊活動を続ける野党側覆面別働隊がロイター通信写真記者に、「自分たちを撮影しないでほしい」と言った事実も公表した。

 保守・右翼野党連合MUDは29日、5月1日に国家選挙理事会(CNE、中央選管)にデモをかけ、選挙実施日程公表を求め、同じく最高裁判所には判事総入れ替えを要求する、と発表した。当日は「国際労働者の日」(メイデー)であり、政府は支持派労働者の大動員を計画している。

 一方、商業会議所連盟は28日、ベネスエラの民間企業は2002年に83万社あったのが、今では25万社しかない、と明らかにした。ベネスエラ原油国際価格は28日、1b=42・46米ドルだった。

▼法王発言  ◎北朝鮮とトランプ米大統領来訪に触れる

 法王フランシスコは4月29日、ローマに向かう機内で「核戦争勃発の可能性」を記者団に訊かれて、「北朝鮮は自らの核開発をめぐって起きた緊張の緩和のため交渉すべきだ。彼らに外交での解決を促してきたが、今後も促す。ノルウェーをはじめ諸国が仲介意志を示している」と答えた。

 さらに、「米国は、壊滅的結果を招きかねない脅威に対処しようと圧力を強めているが、そのさなかに北朝鮮はミサイルを発射した。失敗したが、北朝鮮の状況は極めて熱くなっている」と指摘。「核戦争は人類と文化の大部分を破滅させる。人類は耐えられない」と警鐘を鳴らした。

 法王は、D・トランプ米大統領のヴァティカン訪問について訊かれ、「来訪について公式な連絡は受けていないが、謁見を求められれば対応する。これまで各国の政府首班と会ってきたように」と述べた。