▼▽▼キューバ東部のサンティアゴ市の病院で1月19日、受刑囚ウィリアム・ビジャール=メンドーサ(31)が死亡した。死因は敗血症と発表された。
キューバの非合法人権団体などによると、ビジャールは、サンティアゴの非合法団体「クーバ愛国連合(UPC=ウペセ)」に所属していた。人権団体やUPCは、「ビジャールは抗議行動中に逮捕され、刑務所内で抗議の断食ストライキを50日間続けた末、1月13日入院したが死亡した」として、「政治囚を死に至らしめた政府当局の責任」を追及している。
これを受けて、欧米などのメディアは「政治囚の死」を一斉に報じた。
キューバ当局は翌20日、事実関係を公表した。ビジャールは昨年11月25日、「公衆の面前で妻を殴打し、警官にも暴力を振るった」ため、暴行と公務執行妨害の現行犯として逮捕された「一般犯罪人」であり、UPCに加入したのは「逮捕後だ」としている。
ビジャールは裁判で禁錮4年の実刑を言い渡され、服役していた。「政治囚ではなく、断食ストで死んだのでもない」と、当局は強調する。
政府は23日、共産党機関紙グランマを通じて声明を発表し、ビジャールが「一般犯罪者」であることをあらためて指摘し、「受刑者の死が、なぜキューバの場合だけこのように取り上げられるのか」と反駁した。
そのうえで、外国メディア、特に「破壊活動勢力(反体制派)の側に立つ」欧米メディアと幾つかの政府を、「ビジャールの死を、キューバを貶めるために政治的に利用している」と、名指しで非難した。スペインと米国の政府に対しては、両国内での政治囚の死や人権状況を厳しく批判したうえで、糾弾している。
また、チリ政府報道官について、「キューバの非合法団体の言い分をそのまま受け入れた」と批判するとともに、「学生時代にピノチェー軍政と結びついていた」と、同報道官の過去の政治的立場を暴露して、非難した。
キューバは3月下旬、ローマ法王を迎える。ビジャールの死がキューバ政府にとって「極めてタイミングの悪い出来事」であるのは疑いない。