グアテマラ市にあるパボン刑務所で7月18日、集団殺人事件が起き、重要囚バイロン・リマ=オリーバおよび12人が死亡した。リマは、1998年4月26日のフアン・ヘラルディ司教暗殺事件の主犯だった。
同刑務所ではリマ派と、麻薬組織と繋がるマルビーン・モンティエル=マリーン派が勢力争いをしていた。刑務所当局と通じるリマは「刑務所内の王」と呼ばれていたが、最近、刑務所内での麻薬販売を禁止した。怒ったモンティエルは部下25人と共にリマらを襲撃した。モンティエルは2008年にニカラグア人15人、オランダ人1人の計16人の観光客を殺害、禁錮820年の刑に服していた。
この日は家族訪問日だったが、これに紛れて外部から武器類が持ち込まれた。リマは手榴弾で負傷した後、射殺された。他の12人のうち4人は首を切り落とされた。またアルゼンチン人モデルで、刑務所外での事業でリマと協力関係にあったとされるヨアンア・ビリエル(24)も巻き添えになり殺された。彼女は打ち合わせなどで訪問、リマと会っていた。
リマは元陸軍大尉。ヘラルディィ司教は、グアテマラ内戦(1960~96)中に起きた人道犯罪5万4000件の調査報告文書「歴史的記憶の回復-グアテマラ、二度と再び」を発表した二日後に殺害された。その人道犯罪の9割は軍・警察など当局絡みだった。
司教暗殺を命じたのは大統領親衛隊司令部。リマ、その父親の元陸軍大佐バイロン・リマ=エストラーダ、元司祭マリオ・オランテス、元軍曹オブドゥリオ・ビジャヌエバらが逮捕され、2001年から収監されていた。元大尉リマの刑期は20年だった。
ビジャヌエバは2003年、刑務所内で首を切り落とされ殺された。リマの父親と元司祭は減刑措置で釈放されている。元大尉は、刑務所当局と組んで、囚人の収監先刑務所の選択に関与、現金10万ドルを得ていたとされる。
また囚人に作らせた下着類を、愛国党に貢いでいた。同党は、昨年9月、大規模汚職で弾劾される直前に辞職、起訴・収監されたオットー・ペレス=モリーナ元軍人大統領の政党だった。
モンティエル派は事件後、他の刑務所に移された。メヒコや中米諸国では、囚人と刑務所当局の絡む腐敗事件が絶えない。