アルゼンチン法廷は7月6日、出廷したクリスティーナ・フェルナンデス=デ・キルチネル(CFK)前大統領に対し、CFK所有の1500万ペソ(約130万米ドル)相当の不動産を差し押さえる、と伝えた。CFKは起訴されている。
CFKは「迫害だ」と反駁している。これに対し、欧州歴訪中のマウリシオ・マクリ大統領は7日ドイツで、「迫害ではない。亜国を法治国家にするという公約を遵守しているだけ」と交わし、「亜国にはもはや無処罰はない。判事、企業家、政治家、ジャーナリストであろうが誰であろうが、無処罰はない」と強調した。
CFKには以前から不正蓄財疑惑が渦巻いていたが、先月、CFK政権時代の公共事業政策担当者ホセ・ロペスが、ブエノスアイレス郊外の修道院に現金900万ドルを隠そうとして逮捕、起訴され、この事件を契機に、司直の手が前大統領に及んだ。
CFKは既に、3カ所に分散して隠し持っていた未申告の現金600万ドルを摘発されており、今度、不動産を差し押さえられた。法廷は当面、CFKが大統領時代、中銀にドル先物取引で相場より安くドルを売るよう命じ、国庫に損失を及ぼした責任を追及している。
だが追及の的は、公共事業に絡む不正蓄財。ロペスが隠そうとした900万ドルも、その一部と見られている。
CFKのキルチネル派はペロン派左翼。ペロン派は左翼、伝統保守、右翼に分裂しており、昨年の大統領選挙では右翼が離反。その右翼の支持を得た財界候補の右翼マクリが当選した。
マクリは「法治国家化」を大義名分として、ペロン派左翼潰しに乗り出している、と見ることができる。
▼ラ米短信 ブラジル国会下院のエドゥアルド・クーニャ議長は7月7日、辞任した。巨額の収賄事件で起訴されており、5月から議長と下院議員の資格停止処分に遭い、事実上「前議長」となっていた。議員は辞職しないとしている。
下院議長はワルテル・マラニャン議員が代行を務めてきたが、同代行の議長昇格はなく、近く議長選挙が実施されるもよう。
クーニャは、ブラジル民主運動党(PMDB)の実力者で、同党のミシェル・テメル大統領代行と共に、ヂウマ・ルセフ大統領を弾劾する「制度的クーデター」の陰謀の中心人物だった。