ブラジルの野党「社会主義と自由の党」(PSOL)は11月28日、国会下院のロドリーゴ・マイア議長に、ミシェル・テメル大統領を弾劾裁判にかける手続きを開始するよう正式に要求した。理由は、私的事項に権限を行使したこと。
大統領の側近で大統領府長官だったジェデル・ヴィエイラ=リマは25日、バイーア州内に持つ不動産に関する私的案件を処理するため、文化省管轄下にある歴史文化財庁(IPHAN)に圧力をかけたことが暴露され、辞任した。マルセロ・カレーロ前文化相が、リマの発言を録音、これを証拠として提示していた。
カレーロはまた、同じ案件でテメル大統領も圧力をかけたと暴露、大統領発言を録音していたことを明らかにした。PSOLはこれを受けて、弾劾裁判を下院議長に要請した。受理したマイア議長は、「根拠がない」と述べており、弾劾裁判には否定的だ。
ヂウマ・ルセフ前大統領の政権党だった労働者党(PT)も、テメルに辞任を要求している。テメルは、ルセフを強引に弾劾に持ち込んだ守旧派の筆頭で、テメル政権は正統性に欠けている。
一方、国営石油会社ペトロブラスの巨額の汚職事件に関与、収賄した下院議員たちは24日、お手盛り恩赦法案を採択しようとしたが、テメルが27日、腐敗事件のお手盛り恩赦は許さないと言明。法が成立しても拒否権を行使すると述べた。だが当のテメルにも、ペトロブラス絡みの巨額収賄嫌疑がかけられている。
ルセフ前大統領は、過去には弾劾条件にならなかった決算処理を理由に弾劾された。テメルの影響力行使は重大な逸脱だ。テメルは深刻な事態に陥ったが、現状ではマイア議長が弾劾裁判手続き開始に踏み切る可能性は乏しい。
因みに、クチンスキ・ペルー政権のマリアーノ・ゴンサレス国防相は28日、愛人を月給4600ドルの顧問に採用していたことが醜聞事件となって辞任に追い込まれた。