2015年12月16日水曜日

エルマンノ・オルミ監督の長編「木靴の樹」を観る

 イタリア映画の巨匠エルマンノ・オルミ監督(83)が1978年に制作し、カンヌ国際映画祭最高賞パルムドールをはじめ数々の映画賞を獲得した『木靴の樹』を試写会で観た。187分の一大長編だ。

 監督の生地であるイタリア北部ロンバルディア州ベルガモの田園が舞台で、時代設定は19世紀末。悪代官を彷彿させる万能の地主の下で虐げられて働く貧しいの農民4家族の喜怒哀楽と過酷な運命を描く。

 彼方の山脈まで続く広大で美しい田園の四季、絵画の「落ち穂拾い」や「種まく人」を想起させる人々など、情景描写が素晴らしい。だが家畜のガチョウや豚を殺し料理する残酷なリアリズムも映し出される。

 封建的風土で農奴のように生きる人々の実存を見る。現代に生きる私たちは、時空を超えて、彼らに私たちの過去を見る。さらに現在も苦境から解放されていない世界各地の無数の人々の存在に思いを馳せる。だから共感できるのだ。

 制作から38年、今も新しいのは、作品が人間を深く描き、「古典」となっているからだ。

 ★2016年3月26日(土)から、東京・神田神保町の岩波ホールで公開され、順次全国展開する。必見の名作!