ブラジル国会下院で4月4日、ヂウマ・ルセフ大統領の弾劾審議をするかしないかをめぐる特別委員会(65人)の審議が始まり、ルセフ政権で司法相を経験した弁護士ジョゼ・カルドーゾが90分間、弁護の陳述を展開した。
カルドーゾは、大統領弾劾審議は、大統領が直接関与した例外的に重大な過失がある場合に限って認められており、粉飾決算などを弾劾審議開始の理由にするのは違憲だ、と訴えた。
同弁護士はまた、下院議長エドゥアルド・クーニャは昨年12月、国営石油会社絡みの贈収賄事件に関与、500万ドルを収賄した疑いで下院倫理委員会で追及されることが決まった翌日、野党勢力の要求を入れて大統領弾劾審議開始を決めたが、これは倫理委員会による追及を阻止しなかった大統領へのクーニャによる報復行為だ、と糾弾した。
特別委員会は5日間審議し、11日にも採決する。次いで採決結果は下院本会議に送付される。本会議は審議の末、17日にも採決する。弾劾決議には、下院定数513の3分の2の342票が必要。逆に見れば、大統領側は172票を固めれば、弾劾を阻止することができる。
本会議が弾劾を決議すれば、議案は上院に送られる。上院は単純過半数で弾劾審議継続を決めることができ、決まれば180日間、大統領は職務を離れなければならない。その間、副大統領(ミシェル・テメル)が大統領代行となる。
上院本会議は180日の間に審議し、3分の2で最終的に決議する。弾劾が成れば、大統領は解任され、大統領代行(副大統領)が暫定大統領として、ルセフ大統領の2018年大みそかまでの残り任期を務めることになる。18年には次期大統領選挙が実施され、新大統領は19年元日就任する。
下院本会議が弾劾決議を否決すれば、その瞬間、廃案となる。ルセフ大統領は近く大型人事を断行し、連立与党から離脱した最大政党PMDB(伯民主運動党)が占めていた閣僚や官庁などの多数の高官職務を、弾劾反対の約束と引き換えに下院議員らに割り振る考えだ。
下院議長クーニャは収賄罪で起訴されながら、不逮捕特権に守られてきた。だが3日の報道で暴露された「パナマ文書」に氏名が載っており、新たな醜聞が加わって、地に落ちている信用はさらに傷ついた。
一方、最高裁は7日にも、腐敗罪で起訴されているルーラ前大統領の文官長(官房長官)就任の是非を判断する。ルーラは野にいれば、労働者階級の最高指導者として弾劾反対で大動員をかけることができるが、政権を内側から支えるため大統領に次ぐ実力者となれば、在野活動が難しくなる。このようjなジレンマを抱えているが、閣僚となれば不逮捕特権が得られることになる。
ルーラは18年の大統領選挙に出馬する意志を表明している。