2016年4月17日日曜日

第7回キューバ共産党大会でラウール・カストロ第1書記が報告演説

 クーバ共産党(PCC)の第7回大会が4月16日、ハバナの会議殿堂で始まった。1961年のこの日、フィデル・カストロ首相(当時)が米傭兵部隊の来襲を前に「社会主義革命」を宣言した。その55周年に因む。

 大会は19日まで続く。17~19日の3日間は、クーバ島カリブ海岸コチーノス(豚)湾ヒロン浜一帯で米傭兵部隊が上陸作戦を展開し、クーバ革命軍と民兵部隊に撃破された期間。その55周年でもある。

 代議員1000人が出席、平均年齢は48歳と若返っている。43%は女性だ。党員は昨年1月から党細胞ごとに協議を重ね、2011年の前回大会で定められた変革のための「経済社会指針」の実行状況、問題点、今大会の議題などを話し合った。その総合体が今大会で討議される。

 今大会では、2030年までの「経済社会開発15年計画」が策定される。これに欠かせないベネスエラによる原油供給は3月、両国間で決まっている。また、国交再開で活発化してい米国との経済関係も新計画の与件として組み込まれている。

 党幹部人事も焦点だ。ラウール・カストロ第1書記兼国家評議会議長に次ぐ党内序列2位は、革命第1世代のホセ=ラモーン・マチャード第2書記(国家評議会副議長)だが、第2書記が、ラウール議長の後継者である国家評議会第1副議長ミゲル・ディアスカネル政治局員に移るか否かが最大の関心事。

 もしそうなれば、18年2月にラウールの議長任期が終わり議長に就任するミゲルへの信頼が「絶対的」となったことを示唆する。ラウールは党規上、21年まであと5年間、第1書記に留まることが可能。

 ラウール第1書記は16日、党大会の開会演説(中央委員会報告)で、「急がず休まず、着実に前進する」と持論を述べ、「統計や
ドグマに囚われない討議」を求めた。

 前回大会で承認された「経済社会指針」313項目は、21%が実行され、77%が実行中で、2%は手つかず。ラウールは、「指針実行は容易でなく、障害や矛盾があった」と指摘、最初の5年間では終わらないことを認めた。

 変革過程では、弱者に打撃となる「衝撃療法」は用いず、国有財産・サービスの民営化を促す新自由主義も採らない、と従来からの原則を確認した。

 また、「経済政策は、革命がもたらした平等主義や正義を壊すものではなく、党を中心とする人民団結を損なわせるものでもない」と強調。だが、「(悪)平等主義を克服し、各人が能力と労働に応じて社会主義原則を守る」べきことを付言した。

 指針実行には規律、より多くの貢献、改革過程積極関与が人民に求められるとしながらも、二重通貨制度が問題を複雑化させていると指摘。銀行預金は外貨、兌換ペソ(CUC)、通貨ペソ(CUP)のいずれでも可能であることを確認した。

 配給制度については、大幅に廃止されたが、(貧困層、孤老らのために)今後も補助金による配給を続けると述べ、加速する高齢化社会に対策を講じると語った。

 外資導入では建設中のマリエル開発特区(ZEDM)を例に挙げた。日本を含む債権国から公的債務の大きな部分の返済を免除されたことで可能になった「債務再編」のお陰で、クーバ経済への信頼が増し、通商、投資、融資の可能性が膨らんだ、と指摘した。

 国営企業については「効率化が必要」と従来通りの発言。労働者への賃金による刺激策を肯定しながらも、その前提として労働者の能力的準備が不可欠と述べた。

 農産品価格(の高騰)を問題だと指摘、生産不足が原因とした。年間20億ドルも輸入してる食糧に関しては、その生産を阻害している要因を廃棄すると強調した。農牧業以外の分野-商業、技術サービス、軽工業、建設など-での協同組合化は引き続き促進される。自営業には50万人が従事している。

 ラウールは、「私有財産制度は資本制への復帰や富の集中化を意味せず、あくまで社会主義国家の開発、革命に資するためにある」と前置きし、体制変換を狙う「強大な外国勢力」(米国)に警告した。

 党員には、模範、闘争心、準備、倫理、政策、イデオロギー、大衆への関与を要求。「ばらばらになれば何世代にもわたるクーバ人民の犠牲によって鍛えられた祖国、社会主義、独立は終わる」とし、党の下に団結し、脅威に対抗、侵略から守ると強調した。

 さらに、「圧力や<人魚の心地よい誘い>があっても、威厳、恥意識、主権国家人民としての価値・原則に則って生きよう」と呼び掛けた。

 また、LAC(ラ米・カリブ)との連帯と、米植民地プエルト・リコの独立支援を確認した。