六本木ヒルズ(森ビル)33階にFM81・3の「JーWAVE」放送局がある。2000~2130の「ブレイクスルー」という番組(金曜日担当、青木理パーソナリティー)に30分弱出演し、ブラジル情勢とリオ五輪について話し合った。
窓の外には東京タワーが赤く肢体を誇らしげに輝かせ、彼方にはベイブリッヂが万国旗で飾られた旅客船のように浮かび上がっていた。東京の街は星座にように光っていた。だからガラスの外に目が行くと、生放送に出ていることを忘れてしまう。くわばら、くわばらだ。
放送中に聴取者からTwtで質問が殺到する。その一つは、ブラジルの汚職体質についてだった。無処罰(インプニダー)の悪しき法治状況と、植民地時代から続く弱肉強食の国富収奪主義の伝統があるのと無関係でない旨、そして、ブラジルだけでなくラ米全体も同様に状況であること、を回答として話した。日本も汚職と無関係ではない。
日本滞在中の前ウルグイア大統領で現上院議員のペペ(ホセ)・ムヒーカ(80)のような、物質に惑わされない精神の億万長者はラ米では稀なのだ。否、世界中で在りえない「奇蹟的存在」だ。6日にペペと対話して、その印象を新たにした。
リオ五輪は、「完璧ではないが、8月5日に開会し、21日に閉会し、五輪は過去のものになるでしょう」と言う在日ブラジル人の意見を紹介しておいた。
私はブラジルも50年近く取材し、リオには4年住んだ。だから、大概の事は起承転結、係り結びとしてわかる。
スタヂオで、友人のジャーナリスト、高瀬毅にばったり会った。地下鉄六本木駅近くの喫茶店で、アイスクリーム突っつきながら愉快な会話を楽しんだ。
東京の中の異境・六本木、異邦人の多い街。誰もかれも、束の間の時を費やしている。ペペならば、「あなたは幸福ですか」と一人一人に訊ねるに違いない。
若い記者だったころ、幾夜も徹夜で酒を呑んだ夜の六本木を、実に久々に友人と歩いたことで、ブラジルは脳裡の果てに去ってしまった。