ブラジル国会下院本会議は4月17日深夜、ヂウマ・ルセフ大統領の弾劾裁判を上院に要請する決議案を賛成367、反対137、棄権7、欠席(不参加)2で、可決した。昨年12月初め、下院が弾劾手続き開始を決めてから4カ月半で上院送りが決まった。
この決議には定数513の3分の2、342票が必要だが、それを25票上回る賛成票が投じられた。反政府諸党の激しい多数派工作で、政権党・労働者党(PT)の連立諸党が相次いで離脱、反政府側に寝返ったのが響いた。
弾劾の動きを「国会クーデター」と非難してきたルセフ大統領は、「怒りと悲しみをもって受け止めた」と表明した。
下院の弾劾裁判要請決議は18日、上院に送付される。定数81人の上院は近日中に、特別委員会(42人)を設置、25日にも委員長と書記を選出する見通し。
委員会は報告書を作成、採択後、本会議に送付する。本会議は5月末にも審議を開始するもよう。過半数(41)で、弾劾裁判開始を決議でき、そうなれば、ルセフ大統領は最長180日間の弾劾審理中、政権を離れ、ミシェル・テメル副大統領が大統領代行となる。
上院本会議は弾劾裁判所となり審理、180日間の期限内に、3分の2(54票)で裁定を下す。弾劾となれば、ルセフ大統領は解任され、代行が暫定大統領となって、2019年元日までのルセフの残り任期を担当する。
下院では反政府派の数と声が大きく、大統領派は弁明をほとんど認められずに、弾劾賛成派の演説で押し切られた。上院が弾劾法廷となれば、ルセフ大統領は弁明を許される。
リオデジャネイロ五輪は8月5日開会するが、ルセフが開会式に姿を見せないことは、ほぼ確実となった。
ルーラ前PT政権下で起きた汚職問題は、後継のルセフ2期目になって、弾劾裁判開始直前まで大統領と政府を追いこみ、窮地に立たせている。背後には、過去4回続けて大統領選挙で敗れた伯民社党(PSDB)など保守・右翼勢力のルーラ・ルセフ・PT潰しの策謀がある。
副大統領テメルも上下両院の各議長も、野党側に回った最大政党、伯民主運動党(PMDB)幹部で、3人とも収賄容疑がかけられている。これを棚上げし大統領弾劾の方向に突っ走っている。法治があって無いに等しいブラジルの大きな問題点がさらけ出されている。