米州諸国機構(OEA)のルイス・アルマグロ事務総長(前ウルグアイ外相)は5月31日、OEAの「米州民主憲章」第20条に基づき、ベネスエラの民主状況を討議するため6月10~20日、常設理事会(大使会議)を開催する、と発表した。
同20条は、事務総長もしくは加盟国は同会議を招集できると定めているが、事務局長が独自に招集したのは初めて。アルマグロと、ベネスエラのニコラース・マドゥーロ大統領は最近、ベネスエラ情勢をめぐって激しい非難合戦をしている。
OEAは米州35カ国のうち、クーバを除く34カ国が加盟している。本部はワシントンにあり、米国務省の強い影響下にある。かつては「米国の植民地省」と酷評されていた。
アルマグロは今回、ベネスエラ国会から民主憲章適用の要請があったが、同国に「民主秩序に重大な影響を及ぼす民主秩序変更があるのは明らか」として、理事会を招集した。だが、アルマグロの先走りに不快感を示す加盟国もある。
OEAの動きを受けてカラカスでは、反マドゥーロの急先鋒の一人、国会議長ヘンリー・ラモスが、「マドゥーロは、問題を打開し、名誉ある退陣を可能にするため、退陣すべきだ」と述べた。一方、大統領派労働者5万人は31日、カラカスで大統領支援デモを展開した。大統領は大群衆を前にアルマグロの決定を糾弾し、憲章適用があれば「国民反逆」で対抗しようと訴えた。
一方、OEA輪番制議長国アルヘンティーナは、OEA大使を会議を6月1日開き、ベネスエラに問題解決のため全当事者の対話促進にOEAが協力するという趣旨の声明を出すことについて決議したいと、穏健な姿勢を打ち出して。いる
反マドゥーロ派野党指導者の中には、軍部に「憲法とマドゥーロのどちらにつくか」と、蜂起を促す者もいる。28日、首都圏で退役陸軍少将フェリックス・ベラスケスが暗殺されたが、政府は軍部挑発を狙った極右武装集団の犯行と見ている。
チャベス前政権期に幹部を入れ替えられ厚遇されてチャベス派になった軍部は、野党が要求しているマドゥーロ罷免のための国民投票を来年1月10日以降に実施するのを望んでいる、との見方がある。
その日は故ウーゴ・チャベスが4期目に就任した日の4周年。チャベスは2013年3月死去、後継のマドゥーロの任期はチャベスの残り任期とされ、来年の1月10日になれば、任期6年の3分の2が過ぎたことになる。
憲法は、大統領が任期4年を過ぎてから罷免された場合、副大統領が暫定政権を担うと定めている。その場合、チャベス派の重鎮で副大統領のアリストーブロ・イズトゥーリスが昇格する。軍部には、マドゥーロが退陣してもチャベス派政権が続けばやりやすい、との考えがあるという。
▼ラ米短信 クーバのミゲル・ディアスカネル第一副議長は5月31日、東京・大手町の経団連で開かれた日玖経済懇話会加盟社幹部らとの夕食懇談会で演説、「特に過去2年緊密化している両国関係活性化に鑑み、通商関係などを拡大させたい」と述べた。
副議長はまた、クーバ政府の経済改革政策の概要と、4月の第7回クーバ共産党大会の結論について説明した。