安倍首相が9月18~24日の期間に、NYでの国連総会出席に続いて22日ごろクーバを訪問することになった。14日の日本政府の発表によると、商談・投資環境改善による日本企業進出促進、日本の対北朝鮮懸案解決への協力取り付けが柱。
首相はハバナで、ラウール・カストロ国家評議会議長(85)およびフィデル・カストロ前議長(90)と会談する。日玖首脳会談は、1995年12月東京での村山首相とフィデル議長(当時)、2003年3月東京での小泉首相とフィデル議長の会談に次いで3度目となる。
首相来訪に懸けるクーバ側の最大の懸案は、日本の対玖債権1800億円のうちの1200億年の徳政。つまり帳消しだ。日本財界は既に民間債権を大幅に徳政している。
次いで政府開発援助(ODA)10億円程度の供与だ。日本は医療機材を援助するもよう。9月6日ハバナでラウール議長の後継者となるミゲル・ディアスカネル第1副議長と会談した山口公明党代表は、カストロ兄弟宛ての安倍首相の親書を渡したが、この会談で、日本国際協力機構(JICA)事務所設置などで一致している。
玖側はこれまで、日本が医療機材、薬品を提供し、それをクーバの医師、看護師らが使って第3国での災害救援活動に当たるという、国際的な合同支援活動を日本側に働き掛けてきた。
クーバはまた、観光産業隆盛に伴い、高級観光ホテル内での和食レストラン設置を考えており、このため日本語習得、料理人育成への協力をJICAに要請してきた。
北朝鮮関係では、日本側はこれまで訪玖した岸田外相ら閣僚3人をはじめ外務省高官を通じ、また来日した玖外相らを通じて、拉致事件解決への協力を要請してきた。
安倍首相の訪玖は日本首相として初めてだが、オバーマ米政権下での昨年の米玖国交再開によって可能になった。日本民間のによる対玖友好関係は以前から活発で、1960年代後半から70年代前半にかけては、日玖文化交流研究所の故・山本満喜子所長が率いた砂糖黍刈り援農隊の活動が際立っていた。
その後は、15回に及ぶNGOピースボート(PB)世界就航船のクーバ寄港(ハバナ13回、サンティアゴ2回)、音楽・スポーツ交流などが続けられてきた。
フィデル前議長は2010、11両年、PB船客各1000人のうちの希望者約600人と会見している。PBは来月NYからバハマを経てハバナに入港する。こうした米玖港間の直接航海は第3国旅客船には昨年まで不可能だった。
ちょうど今、阪本順治監督、オダギリジョー主演の映画「エルネスト」の撮影がクーバで為されている。革命家チェ・ゲバラの部下としてボリビアに遠征、1967年8月末にボリビア軍に処刑された日系2世フレディ・マエムラ(前村、父親は鹿児島県人の移民)の生き方・死に様を描くドキュメンタリードラマである。
フレディの姉、故マリー・マエムラ著『革命の侍』(松枝愛訳、伊高浩昭監修、2009年、長崎出版)を基にした映画で、来年10月9日のゲバラ没50周年に合わせて公開される。「エルネスト」は、ゲバラの名であり、フレディのゲリラ名でもある。