2016年9月2日金曜日

エル・サルバドールが内戦被害者に賠償金支払い開始へ

 エル・サルバドール(ES)のサルバドール・サンチェス=セレーン大統領は8月31日、内戦中(1980~92)に起きた政府軍などによる重大人道犯罪事件の被害者への賠償金を支払うための「内戦時重大人権蹂躙被害者への賠償金支払い計画」を発表した。

 全国262市のうち134市にまたがる6235人が対象。「地方開発社会投資基金」(FISDL)から、一人毎月15~50ドルを支払うことになるもよう。

 同国最高裁は7月、内戦中の人道犯罪加害者ら責任者を免罪する恩赦法を違憲として無効にした。恩赦法は1993年、クリスティアニ極右政権が制定した。

 同法廃止により、内戦時の軍人・警官、極右勢力など加害者が逮捕、裁判の対象になる。最高裁は、内戦時加害者を自国で裁けるようになったため、外国への身柄引渡を禁止した。

 1989年11月首都サンサルバドール市内にある中米大学(UCA)キャンパスのイエズス会礼拝所でスペイン人会士らを虐殺し逮捕されている退役軍人らの身柄引渡も不可能になった。スペイン政府は長年、引渡を求めていた。

 サンチェス大統領は賠償金計画を発表する際、国家元首として内戦中の政府軍などによる人道犯罪を謝罪した。フネス前大統領も謝罪している。

★ベネスエラ短信  野党連合MUDが率いるベネスエラ反政府勢力は9月1日カラカスで「カラカス攻略」と銘打って、一大動員による抗議行進を決行した。主催者側は、少なくとも45万人が参加したと主張している。

 これに対し、ニコラース・マドゥーロ大統領を支持する政権党連合は「対抗行進」を実施、目抜きのボリーバル大通りなど中心街を支持者で埋め尽くした。政府、反政府双方合わせて100万人近い党員や市民が動員されたとする見方もある。

 反政府派は、マドゥーロ大統領罷免の是非を問う国民投票の年内実施要求を掲げて行進した。ブラジルのヂウマ・ルセフ大統領が弾劾罷免された翌日に合わせ、大規模動員を実現した。

 だが、これをクーデター誘発の陰謀と見なす政権側は対抗動員を仕掛け、野党側の意図をくじいた。MUDは7日に再度、大規模行進を計画している。

 大統領は「勝利演説」で、ミラフローレス宮(大統領政庁)から500mしか離れていない場所で、武装一味92人を逮捕したと発表した。2002年4月起きたウーゴ・チャベス大統領打倒のクーデターは、反政府派の抗議行進中、狙撃者たちが無差別発砲した事件が誘因になった。MUDの今回の行進は概ね平和裏に実施されたが、暴力肯定路線の若者らが反発、不法行為を働いた。

 国家選挙理事会(CNE=選管)は、国民投票実施申請に必要な第2次署名(有権者の20%=400万人)の収集活動開始は早くても10月下旬としている。その400万人の署名が正しいか否かの検証には年内いっぱいかかる見通しだ。

 このため国民投票実施は来年1月10日を過ぎてからになる公算が大きい。その日は、マドゥーロ大統領の6年の任期が半分を過ぎる日。その後実施される国民投票でマドゥーロが罷免された場合、2年足らずの残り任期は、アリストーブロ・イズトゥーロス副大統領が担うことになる。

 一方、年内に実施され1月10日までに大統領が罷免されれば、新大統領を選ぶ選挙実施となる。MUDは大統領選挙実施を狙い、年内の国民投票実現を訴えてきた。