エル・サルバドール(ES)のマウリシオ・フネス前大統領(56)は妻、および息子3人と共にニカラグアに政治亡命した。ニカラグア政府が9月6日発表した。フネスはESで、大統領期(2009~14)の不正蓄財、影響力不当行使などで追及されている。
ES最高裁は今年2月、フネスを取調べる許可を検察庁に与え、当局は8月フネスの邸宅などを家宅捜索した。フネスは大統領選挙出馬時、選挙運動を任せたミゲル・メネンデスの企業に大統領就任後、政府事業を優先的に発注。見返りに利益を得ていた疑い指摘されている。不正蓄財は少なくとも30万ドルとされる。
フネスは身の危険を感じたとして6月からマナグアに滞在していたが、ES検察庁が起訴に向けて本格的な捜査を開始した8月末、亡命を決意。9月1日ニカラグア外務省に申請、2日許可された。
ダニエル・オルテガ大統領が書記長を務める政権党FSLNと、ES政権党FMLNは友党。サルバドール・サンチェス=セレーンES現大統領は、前任者フネスを支持している。
フネスは検察庁の捜査を「政治的迫害」と反駁している。FMLNのメダルド・ゴンサレス書記長は6日、フネスは大統領在任中、フネスの前の政権まで政権党だった極右野党ARENA(国民共和同盟)所属の元大統領フランシスコ・フローレス(故人)の公金横領罪による捜査を後押ししたとみなされ、ARENA幹部らから逆恨みされて「腐敗捜査」対象にされていると指摘。亡命を進めたのは自分だと明かした。
ES当局の捜査対象には、フネス現夫人および、母親の異なる長男(34)、さらに別の母親の次男(25)も含まれている。現夫人との間の3男は2歳。
政治評論家には、ブラジル保守・右翼勢力がルーラ元大統領を不動産不正入手などで起訴し、ルーラの政治生命を奪おうとしているのと、フネス迫害は状況が似ていると指摘している。人気のあるフネスには、将来的に政権復帰の可能性があると見られている。