2016年9月1日木曜日

★★★大統領弾劾でブラジル「バナナ共和国」に成り下がる

 ブラジル国会上院の大統領弾劾法廷は8月31日、上院議員81人全員がヂウマ・ルセフ大統領弾劾投票に参加、弾劾賛成61、反対20で弾劾を決定。ルセフ大統領は解任され、政敵のミシェル・テメル大統領代行(ブラジル民主運動党=PMDB)が大統領に昇格就任した。

 テメルは19年元日までのルセフの残り任期を務める。これにより03年元日から13年8カ月続いた労働者党(PT)政権は終わった。テメルはG20首脳会議の開催地中国にいそいそと向かった。ブラジルが加盟するBRICSの他の4カ国は対応に苦慮しており、弾劾について言及を控えている。

 ルセフは、政治的権利を8年間剥奪するか否かを問う投票では、賛成42、反対、36、棄権3で、剥奪を免れた。剥奪には3分の2の54人の賛成が必要だったからだ。弾劾も同様だが、賛成票が54票を7票上回った。

 ルセフ弾劾は、「粉飾決算」による責任を問われたものだが、過去にカルドーソ政権もルーラ政権もやってきたことであり、弾劾条件を満たす重大犯罪ではない。このため、選挙で勝てない保守・右翼勢力が国会と司法を使って決行したクーデター、とも見方が定着。テメル代行体制は非難されてきた。

 直接的な真相は、巨額の収賄で追及されている多くの上下両院議員が追及を阻止するため打った政変劇ということ。弾劾手続きは昨年12月、収賄を追及され始めたエドゥアルド・クーニャ下院議長(当時、PMDB)が、追及を許可したルセフへの報復として開始した。

 また弾劾裁判の判事役となった上院議員81人のうち、議長を含む35人が収賄で追及対象となっている。またテメル自身も追及されているが、副大統領、大統領代行、大統領と要職にあって、捜査など直接的追及を免れてきた。

 財界、米国、ラ米新自由主義保守・右翼陣営は、テメル政権の石油産業をはじめとする民営化を願い、今回の政変を歓迎している。

【参考資料:伊高浩昭「バナナ共和国に成り下がったブラジル 事実上のクーデターでルセフ大統領弾劾へ」(岩波書店「世界」2016年7月号掲載)】

 14年10月の大統領選挙で5450万票を得て再選されたルセフの弾劾に怒ったベネスエラ、エクアドール、ボリビアは、ブラジル駐在大使を召還した。ラファエル・コレア赤大統領は、弾劾理由をでっちあげ民主政治を裏切った、と厳しく非難した。

 ニカラグアのオルテガ政権も弾劾を糾弾、ルセフとルーラ元大統領への連帯を表明した。亜国のクリスティーナ・フェルナンデス前大統領は、「ブラジル初の女性大統領弾劾は(ラ米・南米)地域の民主政治を後退させた」と述べ、オヤンタ・ウマーラ前ペルー大統領もルセフへの連帯を表した。クーバのラウール・カストロ政権も弾劾を「国会・司法クーデター」と見なしている。

★クーバ短信  米ジェットブルー航空の旅客便1番機(エアバスA320)が8月31日、フロリダ州フォート・ローダーデイルを飛び立ち、クーバ中部のサンラクラーラ市に到着した。乗ってきたアンソニー・フォックス米運輸長官はハバナで、ブルーノ・ロドリゲス外相、アデル・イスキエルド運輸相と会談した。

 9月1日米シルヴァー航空機サンタクラーラ便、7日アメリカン航空(AA)オルギン便、シエンフエゴス便、8日AAカマグエイ便、サンタクラーラ便、マタンサス便が、それぞれ就航する。