ニカラグア大統領ダニエル・オルテガ(71)と、新副大統領ロサリオ・ムリージョ(オルテガ夫人)が1月10日、就任した。任期は5年。オルテガは連続3期目。サンディニスタ革命政権期の1980年代を含めれば4期目となる。
就任式はマナグア中心部の革命広場で催された。ラ米からは、ベネスエラのニコラース・マドゥーロ、ボリビアのエボ・モラレス、エル・サルバドールのサルバドール・サンチェス=セレーン、オンドゥーラスのフアン・エルナンデスの各大統領、クーバのミゲル・ディアスカネル第一副議長らが出席。ハイチのミシェル・マルテリー元大統領も式に出た。
台湾の蔡英文総統、北朝鮮高官、ロシア特使も出席、日本からは土屋品子特使(自民党衆議院議員、日ニカ友好議員連盟会員)と、NGOピースボート国際コーディネイター草深比呂至が出席した。
マドゥーロ大統領は、マナグア空港到着に際し、「10年前にウーゴ・チャベス大統領が来て、ニカラグアに新し時代が始まったと言った。チャベスが始めた<大なる祖国ラ米>政策がニカラグアの社会政策を支援した。オルテガ政権の成果は大なる祖国の勝利だ」と述べた。
現地では、知識人、市民団体などの組織「G27」(27人グループ)や、野党「民主拡大戦線」(FAD)など反オルテガ勢力が、反政権闘争を開始すると宣言した。
最大援助国ベネスエラの経済危機でニカラグアは資金難に陥っている。また米議会で現在、「政治民主化」を国際金融機関の対ニカラグア融資の条件とする「ニカ法」の審議が続いている。法案成立を阻止したいオルテガ政権は米企業を雇い、米議会内でロビー活動を展開中。
政権党サンディニスタ民族解放戦線(FSLN)は一院制国会で91議席中、71議席を握っている。最高裁を始め司法機関も政権の影響下にある。
オルテガが初めて夫人を副大統領にしたことについて、「一族独裁支配の方向性が見えた」との批判が内外で強まっている。だがオルテガ以外にニカラグアの貧困問題を解決できる政治家が見当たらないのも事実。昨年11月の大統領選挙でオルテガは72・5%の得票を記録した。選管は投票率を62%と発表した。だが野党は30%と推定している。
貧困率はオルテガ政権下で42・5%から29・6%に、極貧率は14・6%から8・3%へ、それぞれ下がった。国民の7割が貧困でない経済状態にあるわけだが、貧困から非貧困層に上昇した「新非貧困者」の生活は依然厳しいと指摘されている。
◎ダニエル・オルテガ大統領就任演説
オルテガは就任演説で、まず「ニカラグアでもは女性に発言権がある」として、夫人で副大統領のロサリオ・ムリージョに発言を促した。ムリージョは「同胞女性たちよ、共に歩もう」と呼び掛けた。オルテガは次いでミゲル・オバンド枢機卿に、神の祝福を求め、それが済んでから演説を始めた。以下は、その要旨。
1980年代に米国が仕掛けた内戦のさなか、サンディニスタ政権は国際司法裁判所に米国を訴えた。同裁判所は、レーガン政権の米国に内戦介入を止め、賠償金を支払うよう命じた。その時点で被害額は170億ドルだった。米政府は判決に従わないまま今日に至るが、いつの日か米国が判決に応じるという希望を抱き続けている。
われわれ中米諸国首脳は米国の圧力に歯向かって、内戦和平を中米主導で進め、成果を挙げた。
1990年に発足したチャモロ政権は、われわれサンディニスタ政権の業績、痕跡をすべて消し去ろうと試みたが、叶わなかった。人民がそれを許さなかったからだ。
われわれには、街頭行動によってチャモロ、アレマン、ボラーニョ3代政権を倒す力があったが、政権奪取のための実力行使はしなかった。この国の民主がサンディニスタ革命によってもたらされたという事実にわれわれが深く関与していたからだ。
3代政権は和平合意と混合経済を伴っていた。内戦の廃墟の困難な状況の下で生まれた3代政権が民間企業の投資を再開させた業績は認めよう。
今日われわは、米拡張主義が押し付けた(ソモサ3代独裁のような)独裁の打倒ではなく、貧困と飢餓を無くすために団結して闘おう。平和と福利のために闘おう。
◎マナグアでFSP会合開く
大統領就任式に出席したラ米諸国の左翼政党、労連など40団体代表は1月11~12日、マナグアでフォロ・デ・サンパウロ(FSP=サンパウロフォーラム)会合を開く。議題は、ラ米、とりわけ南米諸国の右傾化、左翼勢力の巻き返し戦略など。
FSPは昨年12月17日ベルリンで、欧州左翼政党連合と初めて会合、協力関係の強化で一致した。同連合は2004年に発足、19政党が加盟している。双方は今年半ばマナグアで第2回会合を開く。